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環境2025年09月15日 風力撤退、太陽光は対立 温暖化対策戦略見直しも 再エネ逆風 提供:共同通信社

 政府が将来の主要電源と位置付ける再生可能エネルギーが逆風にさらされている。切り札とされた洋上風力発電は三菱商事がコスト増を理由に撤退、大規模太陽光発電所(メガソーラー)も環境影響を巡り各地で対立が起きている。再エネ拡大は地球温暖化対策にも不可欠で、官民ともに戦略見直しを迫られそうだ。

撤退

 「日本の脱炭素には貢献できなかった」。三菱商事の中西勝也(なかにし・かつや)社長は8月、秋田・千葉両県の3海域で進めてきた洋上風力発電事業の撤退を発表した。再エネ拡大に向けた政府の肝いり案件で、2021年に同社が中部電力の子会社などと落札。風車計134基(計170万キロワット)を設置し、28年以降に順次運転を始める計画だった。だが22年のロシアによるウクライナ侵攻以降、インフレや円安などで建設費が想定の2倍以上に膨らんだ。
 洋上風力は陸上よりも安定して風を受けやすく、大型化で効率的に発電できるため、海に囲まれた日本とは相性が良いとされていた。政府は撤退に至った経緯を検証し、後継事業者を再公募して仕切り直す方針。事業者支援の拡充など具体策を年内にまとめる。

対立

 メガソーラーを巡っては、環境破壊や景観悪化への懸念から摩擦が生じている。北海道は今月、釧路湿原国立公園周辺の建設工事について、森林法で定めた許可を得ずに進めたとして、森林区域での中止を事業者に勧告した。環境省の野生生物保護センター付近の民有地にパネル6600枚を設置する計画で、タンチョウやオジロワシなど希少生物の生態系への悪影響も危惧されていた。
 奈良県は1月、五條市の県有地で検討していたメガソーラー建設を断念した。災害時の破損を不安視する声などを受け、規模が大幅に縮小された。仙台市も今月、大規模な森林伐採を伴う事業の自粛を求める方針を策定するなど、けん制の動きも広がる。福島市では市街地から望める先達山(せんだつやま)の山肌が露出して住民の苦情が相次ぎ、市は23年に「ノーモアメガソーラー宣言」を発表している。

削減

 2月に閣議決定したエネルギー基本計画は、再エネを最大電源と位置付ける。電源全体に占める割合を現在の2割程度から、40年度には4~5割程度に拡大させる。同時決定した地球温暖化対策計画は、温室効果ガス削減目標を「35年度に13年度比60%減、40年度に同73%減」としている。
 だが前提とする再エネ拡大が想定通り実現しなければ温暖化対策計画も共倒れの恐れがある。帝国データバンクによると、再エネ中心の発電事業者の倒産、休廃業、解散の件数は、24年度は過去最多の52件。事業者の淘汰(とうた)は今後も進む可能性がある。
 メガソーラーに関し浅尾慶一郎環境相は今月12日の記者会見で「自然環境との調和を図るため、地域の実情に応じた仕組みが求められている」とし、関係省庁と課題を共有し、対応を検討する考えを示した。環境団体「350.orgジャパン」の伊与田昌慶(いよだ・まさよし)さんは「世界の再エネ拡大の道筋は揺るがない。政府は目標を断念して逆行するのではなく、支援を強化すべきだ」と指摘している。

再生可能エネルギー

 太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなどを利用するエネルギー。石油や石炭、天然ガスといった化石燃料と違って繰り返し利用できる。地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を発電時にほとんど排出しない。政府はエネルギー基本計画で、2040年度に電源構成比率を太陽光23~29%、風力4~8%、水力8~10%、地熱1~2%、バイオマス5~6%に高める目標を掲げている。

(2025/09/15)

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