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解説記事2004年08月30日 【編集部解説】 要綱案(第二次案)から浮かび上がる新会社法の骨格 新会社法の行方を探る(2)(2004年8月30日号・№080)

要綱案(第二次案)から浮かび上がる新会社法の骨格 新会社法の行方を探る(2)

要綱案(第二次案)

第2部 株式会社関係 第3 機関関係
3 取締役・取締役会

(5) 内部統制システムの構築に関する決定・開示
① 内部統制システムの構築の基本方針については、取締役会が設置された株式会社においては取締役会の専決事項とし(商法260条2項、商法特例法21条の7第3項各号)、当該決議の概要を営業報告書の記載事項とするものとする。
② 大会社については、内部統制システムの構築の基本方針の決定を義務付けることとし、委員会等設置会社に係る商法特例法21条の7第1項2号に規定する法務省令で定める事項につき所要の整備を行うものとする。

memo
 これは要綱試案にはなかったもので、要綱案(第二次案)にて新たに加えられることとなった提案です。経済産業省・経済産業政策局長の私的研究会である「リスク管理・内部統制に関する研究会」(座長:脇田良一 明治学院大学学長)が平成15年6月27日に公表した報告書「リスク新時代の内部統制」によると、内部統制とは「企業がその業務を適正かつ効率的に遂行するために、社内に構築され、運用される体制及びプロセス」と定義した上で、リスクマネジメントと一体となって機能する内部統制を構築する必要があるとしています。なお、(5)①に関しては、すでに有価証券報告書等において開示が必要とされている「コーポレート・ガバナンスの状況」の開示内容と一部重複するものといえます。また、(5)②に関しては、現在、委員会等設置会社においてのみ必要とされている事項が、広く大会社であれば要求されることとなります。内部統制のコーポレート・ガバナンスへの貢献度が高く評価された結果といえます。
 アメリカやフランスでは、内部統制に関する経営者のレポートに対して監査人が検証することが制度化されています。我が国でも、同様の制度が導入されることで欧米にくらべて低額とされる会計監査人の監査報酬の改善に資することが期待されています。

 
 
要綱案(第二次案)
 第2部 株式会社関係 第3 機関関係
3 取締役・取締役会

(7) 取締役会の書面決議
① 取締役会の決議の目的である事項につき、各取締役が同意をし、かつ、業務監査権限を有する監査役が設置されている場合には各監査役が特に意見を述べることがないときは、書面による決議をすることができる旨を定款で定めることができるものとする。
② 代表取締役(代表執行役)等による取締役会への定期的な業務執行状況の報告に関する取締役会については、現に開催することを要するものとする等の措置を講ずるものとする。

memo
 現行商法下でもテレビ会議方式・電話会議方式による取締役会の開催は一定の要件下で認められていると解釈されています(要綱試案補足説明)。もっとも、これは取締役会に出席できない一部の取締役の取扱いに過ぎず、取締役会自体は現実に開催する必要があります。そこで、要綱案(第二次案)では取締役会の書面決議が提案されることとなりました((7)①参照)。
 取締役会の書面決議が可能になることは、多忙な社外取締役や外国在住の取締役が決議に参加することが容易になるというメリットがあります。もっとも、取締役会の形骸化を防ぐために、代表取締役等の定期的な業務執行状況の報告に関する取締役会は実際に開催する必要があります((7)②参照)。よって、書面決議の対象は緊急の巨額借入や執行役の選解任、譲渡制限会社における株式譲渡承認等に限定されることとなります。また、現行商法の260条4項(前項ノ取締役ハ三月ニ一回以上業務ノ執行ノ状況ヲ取締役会ニ報告スルコトヲ要ス)が据え置かれるとすれば、取締役会を1年に4回以上「現に開催すること」が必要であることには変わりないこととなります。
 なお、当然のことですが、書面決議は取締役会を設置した株式会社(前号5頁参照)においてのみ問題となります。
 
 
要綱案(第二次案)
第2部 株式会社関係 第3 機関関係
3 取締役・取締役会

(10) 株主代表訴訟
① 株主代表訴訟を提起することができない場合
  株主は、次に掲げる場合には、株主代表訴訟に係る訴えを提起することができないものとする。
イ 当該訴えの提起につき、当該株主が自己若しくは他人の不正な利益を図り、又は会社に損害を加える目的を有する場合
ロ 当該訴訟の追行により、会社の正当な利益が著しく害されること、会社に過大な費用の負担が生ずることその他これに準ずる事情が生ずることが、相当の確実さをもって予測される場合

memo
 要綱試案で「なお検討する」とされていた「行為時株主原則の導入」(取締役の問題行為が発覚した後に株式を取得し代表訴訟を提起するというような行為を防ぐために、取締役の行為時においてすでに株主であったことを代表訴訟を起こす要件とすること)ですが、その後の議論の結果、今回の改正では見送りとされました。濫訴を防止するための「訴訟委員会制度」も同様に見送られました。もっとも、濫用的な訴訟を防止する必要性は依然として変わりありません。そこで、要綱案(第二次案)では上記イとロが新設されることとなりました。
 
 
要綱案(第二次案)
 第2部 株式会社関係 第3 機関関係
4 監査役

(1) 監査役の権限
① 監査役は、原則として、業務監査権限及び会計監査権限を有するものとする。
② 大会社以外の株式譲渡制限会社においては、定款で当該株式会社における監査役の権限を会計監査権限に限定することができるものとする。
③ 業務監査権限を有する監査役が設置されていない株式会社(委員会等設置会社を除く。)における株主の権限等について、次のような取扱いをするものとする。
イ 株主は、裁判所の許可を得ることなく、取締役会の議事録を閲覧することができる。
ロ 株主は、取締役が株式会社の目的の範囲内にない行為その他法令若しくは定款に違反する行為を行い又は行うおそれがある場合には、取締役会の招集を請求すること、及び一定の場合(商法259条4項参照)には、自ら取締役会を招集することができる(商法260条ノ3参照)。
ハ 株主は、自己の請求又は招集により開催された取締役会については、これに出席し、意見を述べることができる。
ニ 定款に基づく取締役の過半数の同意(取締役会を設置する場合には、取締役会の決議)による取締役等の責任の一部免除制度は、適用しない。
ホ 取締役は、株式会社に著しい損害を及ばすおそれのある事実を発見した場合には、株主にこれを報告しなければならない(商法274条ノ2参照)。
ヘ 株主の取締役の違法行為差止請求権(商法272条)の行使要件につき、監査役が同請求権を行使する場合の行使要件(商法275条ノ2第1項)と同様の要件に緩和する。

memo
 新会社法のもとでは、監査役を設置しない機関設計が広く認められています(前号5頁参照)。確かに現行の監査役制度が実効性が高くはなかった(特に中小会社において)のも事実です。しかし、新会社法のもとでは、中小会社において取締役の権限が強化されることになるため、いかにして適切なコーポレート・ガバナンスを達成する仕組みを作るかが問題となります。新会社法では、監査役を設置しない機関設計を採用した場合、株主の権限を強化することで、適切なコーポレート・ガバナンスの達成を図っています。
 
 
要綱案(第二次案)
第2部 株式会社関係 第3 機関関係
5 会計参与
  次に掲げる規律が適用される「会計参与(仮称)」という会社の機関を新設するものとする。

(1) 会計参与の設置
  株式会社は、定款で会計参与を設置する旨を定めることができるものとする。
(2) 会計参与の資格・選任等
① 資格
  会計参与は、公認会計士(監査法人を含む。)又は税理士(税理士法人を含む。)でなければならないものとする。
② 兼任禁止
イ 会計参与は、株式会社又はその子会社の取締役、執行役、監査役、会計監査人又は支配人その他の使用人を兼ねることができないものとする。
ロ 会計監査人と会計参与とが併存することは妨げられないものとする。
③ 選任方法等
  会計参与は、株主総会で選任し、その任期・報酬等については取締役と同様の規律に従うものとする。
(3) 会計参与の職務等
① 計算書類の作成
  会計参与は、取締役・執行役と共同して、計算書類を作成するものとする。
② 株主総会における説明義務
  会計参与は、株主総会において、計算書類に関して株主が求めた事項について説明しなければならないものとする。
③ 計算書類の保存
  会計参与は、株式会社とは別に、計算書類を5年間保存しなければならないものとする。
④ 計算書類の開示
  株主及び株式会社の債権者は、会計参与に対して、いつでも計算書類の閲覧等を請求することができるものとする。
⑤ その他
  会計参与は、①から④までに掲げるもののほか、計算書類の作成等に必要な権限を有するものとする。
(4) 会計参与の責任
  会計参与の会社・第三者に対する責任については、社外取締役と同様の規律を適用するものとし(商法266条5項、7項、12項、18項、19項、266条ノ3参照)、株式会社に対する責任については、株主代表訴訟の対象とするものとする。
(5) 会計参与の登記
  会計参与を設置した旨及び当該会計参与の氏名又は名称を登記事項とするものとする。
  
memo  
 昨年10月に公表された要綱試案には記述されていなかった提案です。6月2日に開催された第23回法制審議会会社法(現代化関係)部会において、初めて提案されました。会計参与に就くことができるのは公認会計士(監査法人)または税理士(税理士法人)だけ。日本公認会計士協会は同部会において配布した文書にて、「中小会社の計算書類の正確性を高める効果が期待できる」と賛成の意を表しています。一方、かねてから「小会社における計算書類の適正担保制度」を提案していた日本税理士会連合会も、6月9日の同部会で「日本税理士会連合会が提言してきました内容と基本的な考え方については何ら相違がない」「会計参与制度の導入に伴いまして、いわゆる信頼性の高い計算書類が開示されることにより株主・会社債権者の保護が図られるほか、金融機関等との取引、あるいは中小会社の活性化(略)に役立つことが期待される」ことから賛意を示しています。
 中小会社の計算書類の信頼性確保は、保証・担保に過度に依存した中小企業金融からの脱却のために必要なことであるだけに、会計参与制度の実効性が気になるところです。日本公認会計士協会は上記文書において「大会社に対しても、高度に専門化しつつある会計実務に的確に対応し、かつ、適切な情報開示を進めるために、一定の効果が期待できる」としていますが、計算書類を適切に作成する能力の高く、かつ、監査法人が関与している大会社が、どれほど会計参与を必要としているのか、ニーズの面から疑問と思われます。また、中小会社においても責任面を考慮すると就任に消極的な公認会計士・税理士が多いのも事実。会計参与制度がどこまで広がりを見せるか疑問もあるところです。
 なお、会計参与に関しては70号の特集(新制度「会計参与」を分析)をご参照ください。
 
 
要綱案(第二次案)
第2部 株式会社関係 第3 機関関係
6 会計監査人

(1) 会計監査人の任意設置の範囲
  大会社以外の株式会社は、定款で、会計監査人を設置することができるものとし、みなし大会社の制度は、廃止するものとする。
(2) 会計監査人の欠格事由
  公認会計士法の規定により当該株式会社に係る監査をすることができない者を欠格事由とし、商法特例法4条2項1号、3号及び4号前段は削除する方向で規定を整理する。
(3) 会計監査人の報酬
  監査役会(監査役の過半数)又は監査委員会に、会計監査人の報酬の決定に関する同意権限を付与するものとする。
(4) 会計監査人の株式会社に対する責任
① 会計監査人の株式会社に対する責任の一部免除
  会計監査人の株式会社に対する責任について、社外取締役と同様の一部免除制度(商法266条5項、7項、12項、18項、19項参照)を導入するものとする。
② 株主代表訴訟
  会計監査人の会社に対する責任について、株主代表訴訟の対象とするものとする。
(5) 会計監査人が不適法意見を述べる場合等の措置
  会計監査人が不適法意見を述べる場合又は監査のための必要な調査をすることができなかった旨を述べる場合には、決算公告において、その旨を明示しなければならないものとする。
(6) 会計監査人の登記
  会計監査人を設置した旨及び当該会計監査人の氏名又は名称を登記事項とするものとする。
  
memo
 会計監査人が株主代表訴訟の対象となりました。会計監査人は会社の内部機関ではないことから、日本公認会計士協会としても反対の立場を強く主張していましたが、議論の大勢に押し切られる結果に。もっとも、要綱試案で提案されていた「完全子会社の監査の特例」(下の「参考」を参照)は要綱案(第二次案)では削除されています。一部上場会社の完全子会社で商法特例法の適用を受けている会社は1,000社以上(6月2日の第23回法制審議会会社法(現代化関係)部会における発言より)あるだけに、会計士業界に甚大な影響を与える改正はなんとか回避できた結果となりました。
 会社債権者等の利害関係者は不適法意見等が表明された場合、決算公告からその事実を知ることが可能となります。なお、要綱試案では「会計監査人が不適法意見を述べている場合には、決算公告において、その旨を明示しなければならないものとする」とありましたが、要綱案(第二次案)では「監査のための必要な調査をすることができなかった旨を述べる場合」も追加されています。
 なお、要綱案(第二次案)では会計監査人が登記事項とされています。新会社法のもとでは中小会社においても会計監査人を設置する機関設計を選択することが可能となります(前号5頁参照)。登記簿を閲覧すれば会計監査人を設置している会社か否かが一目瞭然となり、会社の信用力形成の一助となるものと思われます。また、会計監査人の登記制度は、運用次第では、いわば確信犯的な会計監査人非設置の大会社において、会計監査人の設置が強制される契機になりうるだけに、登記制度の詳細が気になるところです。
 
参考:要綱試案より 
第4部 株式会社・有限会社関係 第4 機関関係
11 会計監査人

(1) 会計監査人の設置範囲の強制
③ 完全子会社の特例
  連結計算書類作成会社の完全子会社については、大規模な会社であっても会計監査人の設置を強制しないものとする方向で検討する。
  

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