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解説記事2004年10月25日 【編集部レポート】 京都議定書の発効秒読みでクローズアップされる環境税の導入(2004年10月25日号・№088)

レポート
京都議定書の発効秒読みでクローズアップされる環境税の導入
 編集部


 ロシアが京都議定書を批准する法案を承認したことで、京都議定書が発効する見通しとなっている。ここで、俄然クローズアップされてきたのが環境税の導入だ。環境省や農林水産省では、平成17年度税制改正要望に環境税の創設を明記。環境税の導入が現実味を帯びてきた格好だ。一方、経済産業省や経済界は、環境税の導入に大反対の立場を採っている。今回は、環境税導入に向けての動向をレポートする。

ロシアが批准すれば京都議定書は発効へ
 日本においては、2002年6月に京都議定書を締結。京都議定書では、2008年から2012年の5年間において、二酸化炭素等の排出削減目標を先進国でマイナス5%を掲げており、日本における排出削減目標はマイナス6%となっている。発効要件については、①条約締結国の55カ国の批准、②排出削減義務を負う国(先進国)のうち、1990年の二酸化炭素排出量の55%を占める国の批准となっており、現時点では発効されていない。しかし、ロシア政府が9月30日の閣議で京都議定書を批准する法案を承認。批准に向けた動きが進展している。ロシアが批准することになれば、京都議定書は発効要件を満たすことになり、その90日後に議定書が発効することになる。


環境省と農林水産省がタッグ
 日本においては、現在、地球温暖化対策推進大綱の評価及び見直し作業を推進中。同大綱は、京都議定書による二酸化炭素等の排出削減目標を履行するための具体的な対策をまとめたもの。税などについての経済的手法については、「他の手法との比較を行いながら、環境保全上の効果、マクロ経済・産業競争力等国民経済に与える影響、諸外国における取組の現状等の論点について、地球環境保全上の効果が適切に確保されるよう国際的な連携に配慮しつつ、様々な場で引き続き総合的に検討する」と明記されている。
 これらを受け、環境省は平成17年度税制改正要望において、地球温暖化対策を推進するための環境税(仮称)の創設を盛り込んだ。また、農林水産省でも森林吸収源対策を目的として、環境税の創設を平成17年度税制改正要望に明記した。しかし、具体的な税率や課税標準などの詳細は明らかにされていない。
 環境省の中央環境審議会が8月30日に公表した「温暖化対策税制とこれに関連する施策に関する中間取りまとめ」では、企業の国際競争力を失うといった指摘があるものの、温暖化対策税制は有力な手段であると明記している(※中間報告では名称を温暖化対策税と明記)。温暖化対策税は、温室効果ガスの排出又は化石燃料の消費に対して課税することで、化石燃料を政策的に割高にする仕組みであるとしている。中間報告においても、税制改正要望と同じく具体的な仕組みは明記されなかったものの、炭素1トン当たり約3,400円(税収約9,500億円)の低率の課税に加え、その税収を効率的に温暖化対策に用いることにより、2010年において、二酸化炭素の排出量を1990年と比べて2%削減することが可能としている。

課税段階が最初の論点
 前述した通り、平成17年度税制改正要望では、具体的な税率や課税標準などの詳細は明らかにされていないが、現在、環境省の中央環境審議会では、環境税の制度設計について検討を開始している。
 まず、環境税導入に際し、化石燃料に課税することとした場合には、輸入から消費に至るまでのどの段階で、何に着目して、誰に課税するのかが論点となる。現時点では、化石燃料の輸入時点又は採取場からの採取時点で課税を行う「最上流課税」、化石燃料の製造場からの出荷時点で課税を行う「上流課税」、化石燃料の消費者への供給時点で課税を行う「下流課税」が挙げられている。

ハイブリッド課税の提案も
 9月28日に開催された環境省の中央環境審議会総合政策・地球環境合同部会における第12回施策総合企画小委員会では、この課税段階について議論。環境省では、石炭やガソリンなどの主な化石燃料について、上流課税、下流課税それぞれの場合に、想定し得る納税義務者を仮設定し、課税場がどの程度の数になるかを試算している。例えば、ガソリンの場合では、上流課税なら、納税義務者は輸入業者及び精製業者となり、課税場数は約300場、下流課税なら、納税義務者は販売店又は消費者となり、課税場数は約5万場としている。
 ただ、上流課税にしても、また、下流課税にしてもそれぞれメリット、デメリットがある。例えば、上流課税であれば、価格転嫁を行うことは難しいため、消費者が税負担を実感しにくく、税の価格インセンティブ効果が期待できないといった指摘がある。また、下流課税の場合は、膨大な徴税コストが必要となり、徴収漏れの問題が生じやすいといった点が指摘されている。このため、上流課税及び下流課税を組み合わせる課税(ハイブリッド課税)についても、検討すべき課題として提案が行われている。
 その他、環境税を課す場合には、企業の国際的競争力の観点や低所得者への配慮から軽減措置を講ずる方向で検討を行っている。環境省では、軽減措置を講じるものについて、①温室効果ガスを排出しないもの、②国際競争力、産業構造の激変緩和への対応等産業活動への配慮を行うもの、③低所得者層、中小企業者層に対する配慮が必要なもの、④温暖化対策の観点から行っているものに分けて考えていく方針。例えば、④では、排出削減努力を行う者に対しては税を軽減する措置を講じるといったことが想定されている。

平成19年度には消費税税率引き上げの議論が
 ただ、下流課税については、平成19年度税制改正において消費税の税率引き上げ議論が控えていることから、財務省側は難色を示している模様。また、最上流課税及び上流課税については、消費者に対する価格転嫁の問題(本誌No.064参照)がある他、ハイブリッド課税についても「課税しやすいところから取る」との批判が経済界から出ており、一筋縄ではいかない状況のようだ。

平成17年度からの環境税導入は困難
 政府税制調査会では、10月12日開催の基礎問題小委員会で環境税についての検討を行っている。京都議定書が発効されることになれば、日本も国際的な責任が生じることになる。このため、石弘光政府税調会長は、環境税の議論はしなければならないとしているが、前述の通り、環境省での環境税の制度設計についての検討は始まったばかりであり、日程的に平成17年度税制改正には間に合わないとしている。また、環境税以外の二酸化炭素の削減方法など、大きな枠組みを決めてからでないと中味についての議論は難しいとの認識も示している。したがって、少なくとも平成17年度からの環境税導入は難しい状況となっている。


経済界は引き続き注視
 一方、経済産業省や経済界などでは、仮に平成17年度税制改正で環境税が導入されなかったとしても、平成18年度以降については分からないという認識のもと、今後も引き続き環境税導入反対運動を行っていく方針だ。
 例えば、日本経済団体連合会では、9月17日に公表した「平成17年度税制改正に関する提言」において、環境税導入に断固反対の立場を表明。基本的に従来通りの環境自主行動計画の推進などを行っていくというスタンスをとっている。環境税導入について、デフレ経済下では、消費者への価格転嫁は難しい他、企業の国際競争力が失われ、産業の空洞化が進む点などを指摘している。加えて、石油石炭税、揮発油税、地方道路税、軽油取引税など、既存のエネルギーに対する課税負担は過大であるとしている。
 また、平成16年度の地球温暖化対策予算は1兆2,586億円にのぼっているが、その使途や評価が不明確であり、追加的な財源が必要であれば、その理由や目的を明らかにすべきとしている。地球温暖化対策推進予算では、新幹線鉄道整備(約686億円)など、直接、地球温暖化には関係のないものが含まれているといった指摘もある。このような状況を鑑みると、企業の理解は得にくいのが現状のようだ。
 
 京都メカニズム
 京都議定書の特徴の一つが京都メカニズム。これは、京都議定書で設けられた国別の約束の達成のために、他国における排出削減量、他国の割当量の活用を認める措置のこと。クリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施(JI)及び国際排出量取引がある。
 京都議定書に基づく京都メカニズムを活用した方が、国内で温室効果ガス削減を進めるのに対し費用効果が高いとされており、積極的に活用すべきとの指摘がある。ただし、京都メカニズムは、国内対策に対して補足的な位置付けとなっている。


 
 環境税導入賛成企業は30.2%
 環境省は9月22日、平成15年度環境にやさしい企業行動調査結果を公表した(調査対象は6,354社で有効回答数2,795社)。それによると、地球温暖化防止のための炭素税の導入については、賛成と回答した企業は7.2%、どちらかといえば賛成と回答した企業が23.0%となっており、合計で30.2%であった。一方、自主的努力だけで十分であると回答した企業は17.5%、規制的な措置を活用すべきとした企業は21.4%と、環境税導入に否定的な意見も多い他、わからないと回答した企業も25.2%にのぼっている。
 
 排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い案が公表
 環境税については、平成17年度税制改正では見送りの公算が高いが、一方、会計上の処理については、企業会計基準委員会(ASB)が9月29日に実務対応報告公開草案第14号「排出量取引の会計処理に関する当面の取扱い案」を公表している(※関連記事及び原文は本誌No.083、087参照)。

京都メカニズムにおける排出クレジットを対象
 現時点では、京都議定書は発効されていないが、最近では、我が国においても、自主的な行動計画として設定した数値目標や将来何らかの義務が課された際の数値目標を達成するための補完的手段として、京都議定書において定められた京都メカニズムにおけるクレジット(排出クレジット)を獲得し、これを排出量削減に充てることを想定した取引や、第三者へ販売するために排出クレジットの獲得を図る取引が見受けられているため。今回の実務対応報告では、京都メカニズムにおける排出クレジットを対象としており、排出クレジットに関る投資は、現状では事業投資に該当するものと考えられることから、原則として、取得原価基準による会計処理を行うことになる。

連結財務諸表における在外子会社の取扱いは?
 在外子会社及び関連会社の会計処理についても、原則として、今回の実務対応報告が適用される。ただ、その所在地国の会計基準における会計処理が異なる場合であっても、明らかに合理的ではないと認められる場合を除き、連結財務諸表上、当該会計処理を採用することができるとしている。また、在外子会社等に排出量削減義務が課されているような場合については、今回の実務対応報告の検討対象と異なるため、同一環境下で行われた同一の性質の取引等に該当しない場合には、その所在地国の会計基準において認められている会計処理など、合理的と考えられる会計処理を採用することになる。
 なお、実務対応報告は、平成17年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表から適用される予定。ただし、平成17年3月31日以前に関する事業年度からも適用できる。
 

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