資料2006年01月23日 【会計資料】 実務対応報告第16号 会社法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い(2006年1月23日号・№147)
下記資料は、(財)財務会計基準機構のホームページより同財団の許可を得て転載しています。なお、同財団の公表物は、著作権等により保護されており、同財団の許可なく複写・転載等は禁じられています。利用等に当たっては、同財団事務局(tel:03-5510-2711)へご連絡下さい。
実務対応報告第16号
会社法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い
平成17年12月27日
企業会計基準委員会
目的
新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理については、平成14年3月29日に実務対応報告第1号「新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い」(最終改正平成17年12月27日)(以下「実務対応報告第1号」という。)及び平成15年9月22日に実務対応報告第11号「外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理に関する実務上の取扱い」(以下「実務対応報告第11号」という。)が公表されている。
本実務対応報告は、会社法(平成17年法律第86号)が平成17年7月26日に公布されたことに伴い、同法による新株予約権のうち平成17年12月27日公表の企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」(以下「ストック・オプション会計基準」という。)に示されていないもの及び同法による新株予約権付社債の会計処理についての実務上の取扱いを明らかにすることを目的としている。加えて、外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理及び会社法において新たに明示された自己新株予約権に関する会計処理についても取り扱っている。
本実務対応報告は、第95回企業会計基準委員会に出席した委員11名全員の賛成により承認された。
会計処理
Q1 新株予約権の会計処理をどのように行うか?
A 会社法に基づき発行された新株予約権の会計処理(ただし、ストック・オプション会計基準で示された新株予約権を除く。)は、次のように行うこととなる。
1.発行者側の会計処理
(1)発行時の会計処理
新株予約権は、その発行に伴う払込金額(会社法第238条第1項第3号)を、純資産の部に「新株予約権」として計上する。
実務対応報告第1号において、新株予約権の発行価額は、以前の新株引受権付社債の会計処理(「金融商品に係る会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)第六一)を勘案し、負債の部に計上することとしていたが、平成17年12月9日公表の企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(以下「純資産会計基準」という。)に従い、新株予約権は純資産の部に表示することとなる(純資産会計基準第4項及び第7項)。
(2)権利行使時の会計処理
① 新株を発行する場合
新株予約権が行使され、新株を発行する場合の会計処理は、当該新株予約権の発行に伴う払込金額(会社法第238条第1項第3号)と新株予約権の行使に伴う払込金額(会社法第236条第1項第2号又は第3号)を、資本金又は資本金及び資本準備金に振り替える。
② 自己株式を処分する場合
新株予約権が行使され、自己株式を処分する場合の自己株式処分差額の会計処理は、自己株式を募集株式の発行等の手続により処分する場合に準じて取り扱う(企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」(最終改正平成17年12月27日)(以下「自己株式等会計基準」という。)第9項から第11項)。
なお、自己株式処分差額を計算する際の自己株式の処分の対価は、当該新株予約権の発行に伴う払込金額と新株予約権の行使に伴う払込金額との合計額とする。
(3)失効時の会計処理
新株予約権が行使されずに権利行使期間が満了し、当該新株予約権が失効したときは、当該失効に対応する額を失効が確定した会計期間の利益(原則として特別利益に該当する。)として処理する。
2.取得者側の会計処理(新株予約権の発行会社以外が取得者となる場合)
(1)取得時の会計処理
新株予約権は、有価証券の取得として処理する。
これは、新株予約権証券が有価証券に該当する(証券取引法第2条第1項第6号)ため、金融商品会計基準及び「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品会計実務指針」という。)の有価証券に関する定めにより認識・測定されるという考え方による。したがって、新株予約権は、取得時に時価で測定し(金融商品会計実務指針第29項)、保有目的の区分に応じて、売買目的有価証券又はその他有価証券として会計処理する。
なお、時価の算定については、新株予約権が株式に対するコール・オプションとしての性格を有するため、デリバティブ取引に対する評価方法(金融商品会計実務指針第101項から第104項)に準じて行うことが適当と考えられる。
(2)権利行使時の会計処理
新株予約権の権利を行使し、発行会社の株式を取得したときは、当該新株予約権の保有目的区分に応じて、売買目的有価証券の場合には権利行使時の時価で、その他有価証券の場合には帳簿価額(金融商品会計実務指針第57項(4))で株式に振り替える。
(3)譲渡時の会計処理
新株予約権に対する支配が他に移転したときは、その消滅を認識するとともに、移転した新株予約権の帳簿価額とその対価としての受取額との差額を当期の損益として処理する(金融商品会計基準第二二)。新株予約権を発行会社に譲渡した場合(会社法第236条第1項第7号)においても同様に行う。
(4)失効時の会計処理
新株予約権を行使せずに権利行使期間が満了し、当該新株予約権が失効したときは、当該新株予約権の帳簿価額(金融商品会計実務指針第91項に基づき減損処理している場合には、減損処理後の帳簿価額)を当期の損失として処理する。
Q2 自己新株予約権の会計処理をどのように行うか?
A 会社法に基づく自己新株予約権の会計処理は、次のように行うこととなる。
1.取得時の会計処理
自己新株予約権を取得したときの取得価額は、取得した自己新株予約権の時価(取得した自己新株予約権の時価よりも支払対価の時価の方が、より高い信頼性をもって測定可能な場合には、支払対価の時価)に取得時の付随費用を加算して算定する。
自己新株予約権の取得は、株主との資本取引ではなく、新株予約権者との損益取引であることから、その取得価額はその後の損益に影響を与えることとなる。したがって、取得の対価の種類に関わらず、当該取得価額は時価に基づき算定する。なお、自己新株予約権の取得時には、その後、当該自己新株予約権を消却するか、処分するかが必ずしも明らかではないため、取得時には損益を計上しない。
2.保有時の会計処理
自己新株予約権は、取得原価による帳簿価額を、純資産の部の新株予約権から、原則として直接控除する。また、保有する自己新株予約権に関する①目的となる株式の種類、②権利行使されたものと仮定した場合の目的となる株式の種類ごとの増加株式数、及び③当期末残高について株主資本等変動計算書に注記を行う(企業会計基準適用指針第9号「株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針」第13項(3))。
自己新株予約権は資産性を有するが、自らが発行した新株予約権を取得し、当該自己新株予約権を資産の部に計上した場合、自己新株予約権とこれに対応する新株予約権の金額が資産の部と純資産の部に両建てされることとなる。しかしながら、当該取引は自らが発行した新株予約権の買戻しであり、資産の部と純資産の部との両建て表示ではなく、相殺表示する方が実態に即していると考えられる。
なお、自己新株予約権の帳簿価額が、対応する新株予約権の帳簿価額を超える場合において、当該自己新株予約権の時価が著しく下落し、回復する見込みがあると認められないときは、時価との差額(ただし、自己新株予約権の時価が、対応する新株予約権の帳簿価額を下回るときは、当該自己新株予約権の帳簿価額と当該新株予約権の帳簿価額との差額)を当期の損失として処理する。また、自己新株予約権が処分されないものと認められるときは、当該自己新株予約権の帳簿価額と対応する新株予約権の帳簿価額との差額を当期の損失として処理する。
また、連結財務諸表上、親会社が発行した新株予約権を親会社が保有している場合及び連結子会社が発行した新株予約権を当該連結子会社が保有している場合は、それぞれの個別財務諸表と同様、自己新株予約権として処理する。一方、親会社が発行した新株予約権を連結子会社が保有している場合及び連結子会社が発行した新株予約権を親会社が保有している場合は、連結会社相互間の債権と債務の相殺消去(連結財務諸表原則第四六)に準じて処理する(連結財務諸表原則注解(注解14)4の定めは適用されない)。これらは、新株予約権が株主資本以外の項目であることを重視したものである。
3.消却時の会計処理
自己新株予約権を消却した場合、消却した自己新株予約権の帳簿価額とこれに対応する新株予約権の帳簿価額の差額を、自己新株予約権消却損(又は自己新株予約権消却益)等の適切な科目をもって当期の損益として処理する。
4.処分時の会計処理
自己新株予約権を処分した場合、受取対価と処分した自己新株予約権の帳簿価額との差額を、自己新株予約権処分損(又は自己新株予約権処分益)等の適切な科目をもって当期の損益として処理する。
Q3 新株予約権付社債の会計処理をどのように行うか?
A 会社法に基づき発行された新株予約権付社債の会計処理は、次のように行うこととなる。
1. 転換社債型新株予約権付社債の場合
転換社債型新株予約権付社債(募集事項において、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないこと及び新株予約権が付された社債を当該新株予約権行使時における出資の目的とすること(会社法第236条第1項第2号及び第3号)を、あらかじめ明確にしている新株予約権付社債)は、以前の転換社債と経済的実質が同一であると考えられるため、その会計処理は以下のとおりとする。
なお、転換社債型新株予約権付社債について、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないことをあらかじめ明確にしている場合とは、以前の転換社債と経済的実質が同一となるように、例えば、以下のいずれかが募集事項に照らして明らかな場合である。
① 新株予約権について取得事由を定めておらず、かつ、社債についても繰上償還を定めていないこと。
② 新株予約権について取得事由を定めている場合には、新株予約権が取得されたときに社債も同時に償還されること、かつ、社債について繰上償還を定めている場合には、社債が繰上償還されたときに新株予約権も同時に消滅すること。
(1)発行者側の会計処理
① 発行時の会計処理
転換社債型新株予約権付社債について、その発行に伴う払込金額は、以下のいずれかの方法により会計処理する。
ア 社債と新株予約権のそれぞれの払込金額を合算し、普通社債の発行に準じて処理する(一括法)。
イ 転換社債型新株予約権付社債の発行に伴う払込金額を、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分した上で、社債の対価部分は、普通社債の発行に準じて処理し、新株予約権の対価部分は、新株予約権の発行者側の会計処理(Q1のA1参照)に準じて処理する(区分法)。
なお、転換社債型新株予約権付社債を社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分する場合には、金融商品会計基準注解(注15)1に準ずる方法によることとなるが、社債と新株予約権それぞれの払込金額が明らかに経済的に合理的な額と乖離する場合には、当該払込金額の比率で配分する方法を適用することは適当でない。このような場合には、区分法における他の方法を適用することとなる。
② 新株予約権の行使時の会計処理
ア 新株を発行する場合
新株予約権が行使され、新株を発行する場合において、発行時に一括法を採用しているときは、当該転換社債型新株予約権付社債の社債金額(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高がある場合(金融商品会計基準第三五)には当該金額を加減した金額)を、資本金又は資本金及び資本準備金に振り替える。[設例1]
また、発行時に区分法を採用しているときは、当該転換社債型新株予約権付社債における社債の対価部分(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高がある場合には当該金額を加減した金額)と新株予約権の対価部分の合計額を、資本金又は資本金及び資本準備金に振り替える。
イ 自己株式を処分する場合
新株予約権が行使され、自己株式を処分する場合の自己株式処分差額の会計処理は、自己株式を募集株式の発行等の手続により処分する場合に準じて取り扱う(自己株式等会計基準第9項から第11項)。
なお、自己株式処分差額を計算する際の自己株式の処分の対価について、発行時に一括法を採用している場合は、当該転換社債型新株予約権付社債の社債金額(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高がある場合には当該金額を加減した金額)とする。また、発行時に区分法を採用している場合は、当該転換社債型新株予約権付社債における社債の対価部分(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高がある場合には当該金額を加減した金額)と新株予約権の対価部分の合計額とする。
(2)取得者側の会計処理(新株予約権付社債の発行会社以外が取得者となる場合)
転換社債型新株予約権付社債の取得価額は、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分せず、普通社債の取得に準じて処理し、権利を行使したときは株式に振り替える(一括法)。
「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「金融商品会計意見書」という。)によれば、契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品について、払込資本を増加させる可能性のある部分とそれ以外の部分の価値をそれぞれ認識することができるならば、それぞれの部分を区分して処理することが合理的であるとされている。しかしながら、以前の転換社債については、転換権が行使されると社債は消滅し、社債の償還権と転換権が同時に各々存在し得ないことから、それぞれの部分を区分して処理する必要性は乏しいとされている(金融商品会計意見書・七1)。
金融商品会計意見書の考え方は、以前の転換社債と経済的実質が同一である会社法に基づき発行された転換社債型新株予約権付社債の会計処理にも適用することが可能と考えられるため、発行者側については、以前の転換社債と同様に、一括法と区分法のいずれの方法も認められることとし(金融商品会計基準第六一2(1))、取得者側については、一括法により処理することとした(金融商品会計基準第六一2(2))。
また、会社法施行日前の商法(以下「旧商法」という。)では、従前の転換社債型新株予約権付社債について、社債の発行価額(旧商法第341条ノ3第1項第1号)と新株予約権の行使に際して払い込むべき金額(旧商法第341条ノ13第1項)が同額でなければならず(旧商法第341条ノ3第2項)、また、通常の新株予約権の行使と同様に、新株予約権の発行価額と新株予約権の行使に際して払い込むべき金額の合計が新株の発行価額とみなされる(旧商法第341条ノ15第5項及び旧商法第280条ノ20第4項)とされていた。
しかしながら、会社法ではこれらの定めが存在しないため、本実務対応報告では、新株予約権が行使されたときに資本金又は資本金及び資本準備金に振り替える額について、発行時に一括法を採用している場合は、当該転換社債型新株予約権付社債の社債金額(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高がある場合には当該金額を加減した金額)とし、発行時に区分法を採用している場合は、当該転換社債型新株予約権付社債における社債の対価部分(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高がある場合には当該金額を加減した金額)と新株予約権の対価部分の合計額とした。この結果、新株予約権が行使されたときには、一括法と区分法のいずれを採用している場合にも損益が生じないこととなる。
2. 転換社債型新株予約権付社債以外の場合
(1)発行者側の会計処理
転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債について、その発行に伴う払込金額は、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分する。社債の対価部分は、普通社債の発行に準じて処理し、新株予約権の対価部分は、新株予約権の発行者側の会計処理に準じて処理する(区分法)。
また、新株予約権が行使されたときの会計処理については、転換社債型新株予約権付社債の発行時に区分法を採用している場合に準じて処理する(1(1)②参照)。
(2)取得者側の会計処理(新株予約権付社債の発行会社以外が取得者となる場合)
転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債の取得価額は、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分する。社債の対価部分は、普通社債の取得に準じて処理し、新株予約権の対価部分は、新株予約権の取得者側の会計処理に準じて処理する(区分法)。
金融商品会計意見書によれば、新株予約権付社債のように契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品について、払込資本を増加させる可能性のある部分とそれ以外の部分の価値をそれぞれ認識することができるならば、それぞれの部分を区分して処理することが合理的であるとされている(金融商品会計意見書Ⅲ七1)。
したがって、転換社債型新株予約権付社債以外の場合は、発行者側及び取得者側ともに区分法を適用することとした。これは、以前の新株引受権付社債の会計処理について、分離型あるいは非分離型を区別することなく、発行者側及び取得者側ともに区分法を適用していること(金融商品会計基準第六一1)と整合的である。
なお、区分法を適用する場合には、金融商品会計基準注解(注15)に準ずる方法によることとなるが、社債と新株予約権それぞれの払込金額が明らかに経済的に合理的な額と乖離する場合には、当該払込金額の比率で配分する方法を適用することは適当でない。このような場合には、区分法における他の方法を適用することとなる。
Q4 社債と新株予約権を同時に募集し、かつ、両者を同時に割り当てる場合(以前の分離型新株引受権付社債と同様の場合)、当該社債及び新株予約権の会計処理をどのように行うか?
A 社債と新株予約権は別々に証券が発行されるので発行後には個別に流通することになるが、社債と新株予約権を同時に募集し、かつ、両者を同時に割り当てる場合には、発行時において両者は実質的に一体のものとみられるため、その経済的実質は転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債と同一であると考えられる。したがって、発行者側及び取得者側ともに会計処理は区分法(Q3のA2参照)により行うことが適当であると考えられる。
なお、社債と新株予約権を同時に募集していない場合又は両者を同時に割り当てていない場合でも、実質的に一体のものとみられるときは、社債と新株予約権を個々に会計処理せずに、それぞれの払込金額を合計した上で区分法を適用することに留意する必要がある。例えば、社債と新株予約権を同時に募集していない場合とは一部の割当てを時間的にずらしているような場合であり、両者を同時に割り当てていない場合とは一部の社債と新株予約権の割当てを別々の者に行うような場合である。
Q5 外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理をどのように行うか?
A 以下においては、会社法に基づき発行された外貨建転換社債型新株予約権付社債について、実務上多く用いられている一括法を適用した場合の取扱いを明らかにしている。[設例2]
1.発行時の会計処理
発行時の円貨への換算は、発行時の為替相場による。
2.決算時の会計処理
決算時の円貨への換算は、決算時の為替相場による。また、決算時の換算によって生じた換算差額は、当期の為替差損益として処理する(「外貨建取引等会計処理基準」(以下「外貨基準」という。)一2(2))。
3.新株予約権行使時の会計処理
新株予約権行使時に資本金又は資本金及び資本準備金に振り替える額の円貨への換算は、当該権利行使時の為替相場による。また、権利行使時の換算によって生じた換算差額は、当該権利行使時の属する会計期間の為替差損益として処理する。なお、新株予約権行使時の為替相場については外貨基準注解注2によることとなる。
日本公認会計士協会会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(以下「外貨実務指針」という。)では、以前の外貨建転換社債の発行及び換算について、以下の2つの考え方が示されている(外貨実務指針第63項)。
(1)転換社債の発行を潜在的株式の発行と解する考え方
この考え方による場合、新株の発行価額を転換社債の発行時の為替相場により円換算することになる(外貨基準一2(1)②ただし書き及び外貨実務指針第20項)。
(2)転換社債の転換による新株の発行を現物出資や相殺と解する考え方
この考え方による場合には、転換社債の発行と転換による新株の発行をいったん切断して考え、新株の発行価額を転換時の為替相場により円換算することになる。
また、実務対応報告第11号において、従前の転換社債型新株予約権付社債は以前の転換社債と経済的実質が同一と考えられるため、従前の外貨建転換社債型新株予約権付社債の決算時の円換算の処理については、以前の外貨建転換社債と同様、上記(1)の考え方に基づき、転換社債型新株予約権付社債の発行時の為替相場により行うこととされている(実務対応報告第11号2)。
しかしながら、会社法においては、上記(2)の現物出資の考え方によることが明らかにされた(会社法第284条第1項)ため、会社法に基づき発行された外貨建転換社債型新株予約権付社債の決算時の円貨への換算は決算時の為替相場によることとし、新株予約権行使時の円貨への換算はその権利行使時の為替相場によることとした。
なお、実務対応報告第11号において、従前の外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行に伴う入金外貨額に本邦通貨による為替予約等が締結されている場合には、振当処理を適用することができるとされていた(実務対応報告第11号2(1))が、本実務対応報告が適用される取引については、振当処理が認められないこととなる点に留意する必要がある。これは、本実務対応報告の適用により、当該外貨建転換社債型新株予約権付社債は毎決算時の為替相場により換算され、発行後において為替変動リスクにさらされることになるため、将来の外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行に伴う入金外貨額に関わる為替予約等は、振当処理が認められない予定取引に関わる為替予約等に該当することとなるためである(外貨実務指針第5項)。
適用対象
Q6 本実務対応報告が適用される「会社法による新株予約権及び新株予約権付社債」とはどのようなものか?
A 本実務対応報告は、会社法施行日後に発行の決議のあった会社法による新株予約権及び新株予約権付社債について適用する。また、会社法施行日前に発行の決議があった旧商法による新株予約権を取得した場合の自己新株予約権についても会社法施行日後においては本実務対応報告を適用する。
なお、会社法施行日前に発行の決議があった旧商法による新株予約権及び新株予約権付社債については、実務対応報告第1号及び実務対応報告第11号の定めによることとなる(ただし、当該新株予約権に係る自己新株予約権の会社法施行日後における会計処理を除く。)。
設例
[設例1]転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理(一括法)
1.前提条件
(1)転換社債型新株予約権付社債の発行
額面総額:500,000千円
払込金額:450,000千円(割引発行)
期間:X1年4月1日からX11年3月31日(10年間)
(2)社債発行差金は償還期間で定額法により償却する。
(3)決算日は3月31日である。
(4)X3年4月1日に、上記転換社債型新株予約権付社債のすべてについて新株予約権の行使の請求があり、新株を発行した。
(5)新株予約権の行使に際して出資をなすべき1株当たりの金額(転換価格)は50千円とする。新株の発行時に出資された額はすべて資本金とする。
(6)社債利息については考慮しないものとする。
2. 会計処理
(単位:千円)
(1)発行時(X1年4月1日)

(注1)権利行使により資本金に振り替える額は、新株予約権が行使された転換社債型新株予約権付社債の社債金額(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高(社債発行差金残高)がある場合には当該金額を加減した金額)
(注2)50,000千円×8年/10年=40,000千円
[設例2]外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理(一括法)
1.前提条件
(1)新株予約権付社債の発行に伴い払い込まれた金銭の総額は1,000千ドル(平価発行、期間10年)とする。
(2)新株予約権の行使に際して出資をなすべき1株当たりの金額(転換価格)は500円とする。なお、新株予約権の行使により交付される株式数は、社債の額面金額を換算(固定)レート210円/ドルで円に換算した金額を、転換価格で除した数とする。新株の発行時に出資された額はすべて資本金とする。
(3)為替相場
発行日 212円/ドル
最初の決算日 220円/ドル
新株予約権行使時 215円/ドル
(4)社債利息については考慮しないものとする。
2.会計処理
(単位:千円)

実務対応報告第16号
会社法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い
平成17年12月27日
企業会計基準委員会
目的
新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理については、平成14年3月29日に実務対応報告第1号「新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い」(最終改正平成17年12月27日)(以下「実務対応報告第1号」という。)及び平成15年9月22日に実務対応報告第11号「外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理に関する実務上の取扱い」(以下「実務対応報告第11号」という。)が公表されている。
本実務対応報告は、会社法(平成17年法律第86号)が平成17年7月26日に公布されたことに伴い、同法による新株予約権のうち平成17年12月27日公表の企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」(以下「ストック・オプション会計基準」という。)に示されていないもの及び同法による新株予約権付社債の会計処理についての実務上の取扱いを明らかにすることを目的としている。加えて、外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理及び会社法において新たに明示された自己新株予約権に関する会計処理についても取り扱っている。
本実務対応報告は、第95回企業会計基準委員会に出席した委員11名全員の賛成により承認された。
会計処理
Q1 新株予約権の会計処理をどのように行うか?
A 会社法に基づき発行された新株予約権の会計処理(ただし、ストック・オプション会計基準で示された新株予約権を除く。)は、次のように行うこととなる。
1.発行者側の会計処理
(1)発行時の会計処理
新株予約権は、その発行に伴う払込金額(会社法第238条第1項第3号)を、純資産の部に「新株予約権」として計上する。
実務対応報告第1号において、新株予約権の発行価額は、以前の新株引受権付社債の会計処理(「金融商品に係る会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)第六一)を勘案し、負債の部に計上することとしていたが、平成17年12月9日公表の企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(以下「純資産会計基準」という。)に従い、新株予約権は純資産の部に表示することとなる(純資産会計基準第4項及び第7項)。
(2)権利行使時の会計処理
① 新株を発行する場合
新株予約権が行使され、新株を発行する場合の会計処理は、当該新株予約権の発行に伴う払込金額(会社法第238条第1項第3号)と新株予約権の行使に伴う払込金額(会社法第236条第1項第2号又は第3号)を、資本金又は資本金及び資本準備金に振り替える。
② 自己株式を処分する場合
新株予約権が行使され、自己株式を処分する場合の自己株式処分差額の会計処理は、自己株式を募集株式の発行等の手続により処分する場合に準じて取り扱う(企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」(最終改正平成17年12月27日)(以下「自己株式等会計基準」という。)第9項から第11項)。
なお、自己株式処分差額を計算する際の自己株式の処分の対価は、当該新株予約権の発行に伴う払込金額と新株予約権の行使に伴う払込金額との合計額とする。
(3)失効時の会計処理
新株予約権が行使されずに権利行使期間が満了し、当該新株予約権が失効したときは、当該失効に対応する額を失効が確定した会計期間の利益(原則として特別利益に該当する。)として処理する。
2.取得者側の会計処理(新株予約権の発行会社以外が取得者となる場合)
(1)取得時の会計処理
新株予約権は、有価証券の取得として処理する。
これは、新株予約権証券が有価証券に該当する(証券取引法第2条第1項第6号)ため、金融商品会計基準及び「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品会計実務指針」という。)の有価証券に関する定めにより認識・測定されるという考え方による。したがって、新株予約権は、取得時に時価で測定し(金融商品会計実務指針第29項)、保有目的の区分に応じて、売買目的有価証券又はその他有価証券として会計処理する。
なお、時価の算定については、新株予約権が株式に対するコール・オプションとしての性格を有するため、デリバティブ取引に対する評価方法(金融商品会計実務指針第101項から第104項)に準じて行うことが適当と考えられる。
(2)権利行使時の会計処理
新株予約権の権利を行使し、発行会社の株式を取得したときは、当該新株予約権の保有目的区分に応じて、売買目的有価証券の場合には権利行使時の時価で、その他有価証券の場合には帳簿価額(金融商品会計実務指針第57項(4))で株式に振り替える。
(3)譲渡時の会計処理
新株予約権に対する支配が他に移転したときは、その消滅を認識するとともに、移転した新株予約権の帳簿価額とその対価としての受取額との差額を当期の損益として処理する(金融商品会計基準第二二)。新株予約権を発行会社に譲渡した場合(会社法第236条第1項第7号)においても同様に行う。
(4)失効時の会計処理
新株予約権を行使せずに権利行使期間が満了し、当該新株予約権が失効したときは、当該新株予約権の帳簿価額(金融商品会計実務指針第91項に基づき減損処理している場合には、減損処理後の帳簿価額)を当期の損失として処理する。
Q2 自己新株予約権の会計処理をどのように行うか?
A 会社法に基づく自己新株予約権の会計処理は、次のように行うこととなる。
1.取得時の会計処理
自己新株予約権を取得したときの取得価額は、取得した自己新株予約権の時価(取得した自己新株予約権の時価よりも支払対価の時価の方が、より高い信頼性をもって測定可能な場合には、支払対価の時価)に取得時の付随費用を加算して算定する。
自己新株予約権の取得は、株主との資本取引ではなく、新株予約権者との損益取引であることから、その取得価額はその後の損益に影響を与えることとなる。したがって、取得の対価の種類に関わらず、当該取得価額は時価に基づき算定する。なお、自己新株予約権の取得時には、その後、当該自己新株予約権を消却するか、処分するかが必ずしも明らかではないため、取得時には損益を計上しない。
2.保有時の会計処理
自己新株予約権は、取得原価による帳簿価額を、純資産の部の新株予約権から、原則として直接控除する。また、保有する自己新株予約権に関する①目的となる株式の種類、②権利行使されたものと仮定した場合の目的となる株式の種類ごとの増加株式数、及び③当期末残高について株主資本等変動計算書に注記を行う(企業会計基準適用指針第9号「株主資本等変動計算書に関する会計基準の適用指針」第13項(3))。
自己新株予約権は資産性を有するが、自らが発行した新株予約権を取得し、当該自己新株予約権を資産の部に計上した場合、自己新株予約権とこれに対応する新株予約権の金額が資産の部と純資産の部に両建てされることとなる。しかしながら、当該取引は自らが発行した新株予約権の買戻しであり、資産の部と純資産の部との両建て表示ではなく、相殺表示する方が実態に即していると考えられる。
なお、自己新株予約権の帳簿価額が、対応する新株予約権の帳簿価額を超える場合において、当該自己新株予約権の時価が著しく下落し、回復する見込みがあると認められないときは、時価との差額(ただし、自己新株予約権の時価が、対応する新株予約権の帳簿価額を下回るときは、当該自己新株予約権の帳簿価額と当該新株予約権の帳簿価額との差額)を当期の損失として処理する。また、自己新株予約権が処分されないものと認められるときは、当該自己新株予約権の帳簿価額と対応する新株予約権の帳簿価額との差額を当期の損失として処理する。
また、連結財務諸表上、親会社が発行した新株予約権を親会社が保有している場合及び連結子会社が発行した新株予約権を当該連結子会社が保有している場合は、それぞれの個別財務諸表と同様、自己新株予約権として処理する。一方、親会社が発行した新株予約権を連結子会社が保有している場合及び連結子会社が発行した新株予約権を親会社が保有している場合は、連結会社相互間の債権と債務の相殺消去(連結財務諸表原則第四六)に準じて処理する(連結財務諸表原則注解(注解14)4の定めは適用されない)。これらは、新株予約権が株主資本以外の項目であることを重視したものである。
3.消却時の会計処理
自己新株予約権を消却した場合、消却した自己新株予約権の帳簿価額とこれに対応する新株予約権の帳簿価額の差額を、自己新株予約権消却損(又は自己新株予約権消却益)等の適切な科目をもって当期の損益として処理する。
4.処分時の会計処理
自己新株予約権を処分した場合、受取対価と処分した自己新株予約権の帳簿価額との差額を、自己新株予約権処分損(又は自己新株予約権処分益)等の適切な科目をもって当期の損益として処理する。
Q3 新株予約権付社債の会計処理をどのように行うか?
A 会社法に基づき発行された新株予約権付社債の会計処理は、次のように行うこととなる。
1. 転換社債型新株予約権付社債の場合
転換社債型新株予約権付社債(募集事項において、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないこと及び新株予約権が付された社債を当該新株予約権行使時における出資の目的とすること(会社法第236条第1項第2号及び第3号)を、あらかじめ明確にしている新株予約権付社債)は、以前の転換社債と経済的実質が同一であると考えられるため、その会計処理は以下のとおりとする。
なお、転換社債型新株予約権付社債について、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないことをあらかじめ明確にしている場合とは、以前の転換社債と経済的実質が同一となるように、例えば、以下のいずれかが募集事項に照らして明らかな場合である。
① 新株予約権について取得事由を定めておらず、かつ、社債についても繰上償還を定めていないこと。
② 新株予約権について取得事由を定めている場合には、新株予約権が取得されたときに社債も同時に償還されること、かつ、社債について繰上償還を定めている場合には、社債が繰上償還されたときに新株予約権も同時に消滅すること。
(1)発行者側の会計処理
① 発行時の会計処理
転換社債型新株予約権付社債について、その発行に伴う払込金額は、以下のいずれかの方法により会計処理する。
ア 社債と新株予約権のそれぞれの払込金額を合算し、普通社債の発行に準じて処理する(一括法)。
イ 転換社債型新株予約権付社債の発行に伴う払込金額を、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分した上で、社債の対価部分は、普通社債の発行に準じて処理し、新株予約権の対価部分は、新株予約権の発行者側の会計処理(Q1のA1参照)に準じて処理する(区分法)。
なお、転換社債型新株予約権付社債を社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分する場合には、金融商品会計基準注解(注15)1に準ずる方法によることとなるが、社債と新株予約権それぞれの払込金額が明らかに経済的に合理的な額と乖離する場合には、当該払込金額の比率で配分する方法を適用することは適当でない。このような場合には、区分法における他の方法を適用することとなる。
② 新株予約権の行使時の会計処理
ア 新株を発行する場合
新株予約権が行使され、新株を発行する場合において、発行時に一括法を採用しているときは、当該転換社債型新株予約権付社債の社債金額(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高がある場合(金融商品会計基準第三五)には当該金額を加減した金額)を、資本金又は資本金及び資本準備金に振り替える。[設例1]
また、発行時に区分法を採用しているときは、当該転換社債型新株予約権付社債における社債の対価部分(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高がある場合には当該金額を加減した金額)と新株予約権の対価部分の合計額を、資本金又は資本金及び資本準備金に振り替える。
イ 自己株式を処分する場合
新株予約権が行使され、自己株式を処分する場合の自己株式処分差額の会計処理は、自己株式を募集株式の発行等の手続により処分する場合に準じて取り扱う(自己株式等会計基準第9項から第11項)。
なお、自己株式処分差額を計算する際の自己株式の処分の対価について、発行時に一括法を採用している場合は、当該転換社債型新株予約権付社債の社債金額(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高がある場合には当該金額を加減した金額)とする。また、発行時に区分法を採用している場合は、当該転換社債型新株予約権付社債における社債の対価部分(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高がある場合には当該金額を加減した金額)と新株予約権の対価部分の合計額とする。
(2)取得者側の会計処理(新株予約権付社債の発行会社以外が取得者となる場合)
転換社債型新株予約権付社債の取得価額は、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分せず、普通社債の取得に準じて処理し、権利を行使したときは株式に振り替える(一括法)。
「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「金融商品会計意見書」という。)によれば、契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品について、払込資本を増加させる可能性のある部分とそれ以外の部分の価値をそれぞれ認識することができるならば、それぞれの部分を区分して処理することが合理的であるとされている。しかしながら、以前の転換社債については、転換権が行使されると社債は消滅し、社債の償還権と転換権が同時に各々存在し得ないことから、それぞれの部分を区分して処理する必要性は乏しいとされている(金融商品会計意見書・七1)。
金融商品会計意見書の考え方は、以前の転換社債と経済的実質が同一である会社法に基づき発行された転換社債型新株予約権付社債の会計処理にも適用することが可能と考えられるため、発行者側については、以前の転換社債と同様に、一括法と区分法のいずれの方法も認められることとし(金融商品会計基準第六一2(1))、取得者側については、一括法により処理することとした(金融商品会計基準第六一2(2))。
また、会社法施行日前の商法(以下「旧商法」という。)では、従前の転換社債型新株予約権付社債について、社債の発行価額(旧商法第341条ノ3第1項第1号)と新株予約権の行使に際して払い込むべき金額(旧商法第341条ノ13第1項)が同額でなければならず(旧商法第341条ノ3第2項)、また、通常の新株予約権の行使と同様に、新株予約権の発行価額と新株予約権の行使に際して払い込むべき金額の合計が新株の発行価額とみなされる(旧商法第341条ノ15第5項及び旧商法第280条ノ20第4項)とされていた。
しかしながら、会社法ではこれらの定めが存在しないため、本実務対応報告では、新株予約権が行使されたときに資本金又は資本金及び資本準備金に振り替える額について、発行時に一括法を採用している場合は、当該転換社債型新株予約権付社債の社債金額(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高がある場合には当該金額を加減した金額)とし、発行時に区分法を採用している場合は、当該転換社債型新株予約権付社債における社債の対価部分(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高がある場合には当該金額を加減した金額)と新株予約権の対価部分の合計額とした。この結果、新株予約権が行使されたときには、一括法と区分法のいずれを採用している場合にも損益が生じないこととなる。
2. 転換社債型新株予約権付社債以外の場合
(1)発行者側の会計処理
転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債について、その発行に伴う払込金額は、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分する。社債の対価部分は、普通社債の発行に準じて処理し、新株予約権の対価部分は、新株予約権の発行者側の会計処理に準じて処理する(区分法)。
また、新株予約権が行使されたときの会計処理については、転換社債型新株予約権付社債の発行時に区分法を採用している場合に準じて処理する(1(1)②参照)。
(2)取得者側の会計処理(新株予約権付社債の発行会社以外が取得者となる場合)
転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債の取得価額は、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分する。社債の対価部分は、普通社債の取得に準じて処理し、新株予約権の対価部分は、新株予約権の取得者側の会計処理に準じて処理する(区分法)。
金融商品会計意見書によれば、新株予約権付社債のように契約の一方の当事者の払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品について、払込資本を増加させる可能性のある部分とそれ以外の部分の価値をそれぞれ認識することができるならば、それぞれの部分を区分して処理することが合理的であるとされている(金融商品会計意見書Ⅲ七1)。
したがって、転換社債型新株予約権付社債以外の場合は、発行者側及び取得者側ともに区分法を適用することとした。これは、以前の新株引受権付社債の会計処理について、分離型あるいは非分離型を区別することなく、発行者側及び取得者側ともに区分法を適用していること(金融商品会計基準第六一1)と整合的である。
なお、区分法を適用する場合には、金融商品会計基準注解(注15)に準ずる方法によることとなるが、社債と新株予約権それぞれの払込金額が明らかに経済的に合理的な額と乖離する場合には、当該払込金額の比率で配分する方法を適用することは適当でない。このような場合には、区分法における他の方法を適用することとなる。
Q4 社債と新株予約権を同時に募集し、かつ、両者を同時に割り当てる場合(以前の分離型新株引受権付社債と同様の場合)、当該社債及び新株予約権の会計処理をどのように行うか?
A 社債と新株予約権は別々に証券が発行されるので発行後には個別に流通することになるが、社債と新株予約権を同時に募集し、かつ、両者を同時に割り当てる場合には、発行時において両者は実質的に一体のものとみられるため、その経済的実質は転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債と同一であると考えられる。したがって、発行者側及び取得者側ともに会計処理は区分法(Q3のA2参照)により行うことが適当であると考えられる。
なお、社債と新株予約権を同時に募集していない場合又は両者を同時に割り当てていない場合でも、実質的に一体のものとみられるときは、社債と新株予約権を個々に会計処理せずに、それぞれの払込金額を合計した上で区分法を適用することに留意する必要がある。例えば、社債と新株予約権を同時に募集していない場合とは一部の割当てを時間的にずらしているような場合であり、両者を同時に割り当てていない場合とは一部の社債と新株予約権の割当てを別々の者に行うような場合である。
Q5 外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理をどのように行うか?
A 以下においては、会社法に基づき発行された外貨建転換社債型新株予約権付社債について、実務上多く用いられている一括法を適用した場合の取扱いを明らかにしている。[設例2]
1.発行時の会計処理
発行時の円貨への換算は、発行時の為替相場による。
2.決算時の会計処理
決算時の円貨への換算は、決算時の為替相場による。また、決算時の換算によって生じた換算差額は、当期の為替差損益として処理する(「外貨建取引等会計処理基準」(以下「外貨基準」という。)一2(2))。
3.新株予約権行使時の会計処理
新株予約権行使時に資本金又は資本金及び資本準備金に振り替える額の円貨への換算は、当該権利行使時の為替相場による。また、権利行使時の換算によって生じた換算差額は、当該権利行使時の属する会計期間の為替差損益として処理する。なお、新株予約権行使時の為替相場については外貨基準注解注2によることとなる。
日本公認会計士協会会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(以下「外貨実務指針」という。)では、以前の外貨建転換社債の発行及び換算について、以下の2つの考え方が示されている(外貨実務指針第63項)。
(1)転換社債の発行を潜在的株式の発行と解する考え方
この考え方による場合、新株の発行価額を転換社債の発行時の為替相場により円換算することになる(外貨基準一2(1)②ただし書き及び外貨実務指針第20項)。
(2)転換社債の転換による新株の発行を現物出資や相殺と解する考え方
この考え方による場合には、転換社債の発行と転換による新株の発行をいったん切断して考え、新株の発行価額を転換時の為替相場により円換算することになる。
また、実務対応報告第11号において、従前の転換社債型新株予約権付社債は以前の転換社債と経済的実質が同一と考えられるため、従前の外貨建転換社債型新株予約権付社債の決算時の円換算の処理については、以前の外貨建転換社債と同様、上記(1)の考え方に基づき、転換社債型新株予約権付社債の発行時の為替相場により行うこととされている(実務対応報告第11号2)。
しかしながら、会社法においては、上記(2)の現物出資の考え方によることが明らかにされた(会社法第284条第1項)ため、会社法に基づき発行された外貨建転換社債型新株予約権付社債の決算時の円貨への換算は決算時の為替相場によることとし、新株予約権行使時の円貨への換算はその権利行使時の為替相場によることとした。
なお、実務対応報告第11号において、従前の外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行に伴う入金外貨額に本邦通貨による為替予約等が締結されている場合には、振当処理を適用することができるとされていた(実務対応報告第11号2(1))が、本実務対応報告が適用される取引については、振当処理が認められないこととなる点に留意する必要がある。これは、本実務対応報告の適用により、当該外貨建転換社債型新株予約権付社債は毎決算時の為替相場により換算され、発行後において為替変動リスクにさらされることになるため、将来の外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行に伴う入金外貨額に関わる為替予約等は、振当処理が認められない予定取引に関わる為替予約等に該当することとなるためである(外貨実務指針第5項)。
適用対象
Q6 本実務対応報告が適用される「会社法による新株予約権及び新株予約権付社債」とはどのようなものか?
A 本実務対応報告は、会社法施行日後に発行の決議のあった会社法による新株予約権及び新株予約権付社債について適用する。また、会社法施行日前に発行の決議があった旧商法による新株予約権を取得した場合の自己新株予約権についても会社法施行日後においては本実務対応報告を適用する。
なお、会社法施行日前に発行の決議があった旧商法による新株予約権及び新株予約権付社債については、実務対応報告第1号及び実務対応報告第11号の定めによることとなる(ただし、当該新株予約権に係る自己新株予約権の会社法施行日後における会計処理を除く。)。
設例
[設例1]転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理(一括法)
1.前提条件
(1)転換社債型新株予約権付社債の発行
額面総額:500,000千円
払込金額:450,000千円(割引発行)
期間:X1年4月1日からX11年3月31日(10年間)
(2)社債発行差金は償還期間で定額法により償却する。
(3)決算日は3月31日である。
(4)X3年4月1日に、上記転換社債型新株予約権付社債のすべてについて新株予約権の行使の請求があり、新株を発行した。
(5)新株予約権の行使に際して出資をなすべき1株当たりの金額(転換価格)は50千円とする。新株の発行時に出資された額はすべて資本金とする。
(6)社債利息については考慮しないものとする。
2. 会計処理
(単位:千円)
(1)発行時(X1年4月1日)

(注1)権利行使により資本金に振り替える額は、新株予約権が行使された転換社債型新株予約権付社債の社債金額(発行時における社債金額と払込金額との差額に係る未償却残高(社債発行差金残高)がある場合には当該金額を加減した金額)
(注2)50,000千円×8年/10年=40,000千円
[設例2]外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理(一括法)
1.前提条件
(1)新株予約権付社債の発行に伴い払い込まれた金銭の総額は1,000千ドル(平価発行、期間10年)とする。
(2)新株予約権の行使に際して出資をなすべき1株当たりの金額(転換価格)は500円とする。なお、新株予約権の行使により交付される株式数は、社債の額面金額を換算(固定)レート210円/ドルで円に換算した金額を、転換価格で除した数とする。新株の発行時に出資された額はすべて資本金とする。
(3)為替相場
発行日 212円/ドル
最初の決算日 220円/ドル
新株予約権行使時 215円/ドル
(4)社債利息については考慮しないものとする。
2.会計処理
(単位:千円)

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-
-
団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -
Copyright (C) 2019
SHINNIPPON-HOKI PUBLISHING CO.,LTD.