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解説記事2006年04月03日 【ニュース特集】 すべての株式への譲渡制限か、監査役の新たな選任が必要に(2006年4月3日号・№157)

ニュース特集
公開小会社の監査役、監査役を務める税理士は要注意
すべての株式への譲渡制限か、監査役の新たな選任が必要に


 会社法施行を目前に控える中、監査役の権限に関して、一部の会社において早急な対応をしなければならない問題が出てきた。
 この問題とは、会社法施行に伴い、商法特例法上は会計監査にとどまっていた小会社の監査役の権限が業務監査にまで及ぶ結果、公開会社である小会社において、現監査役の任期が終了してしまうというもの。放置すれば、会社法上、監査役の選任の手続の懈怠により、過料の対象になり得る。
 上場企業の100%子会社には、株式に譲渡制限をつけていないケースが少なくなく、これらの企業の中に
は会社法施行前に臨時株主総会を開いて対応を図ろうとするところもあるようだが、実際には6月の定時株主総会(3月決算会社の場合)で監査役を選任する等の対応で足りることになる。

1 会社法施行の影響

会社法施行で小会社監査役にも業務監査権限
 一般に、監査役の権限には業務監査権限及び会計監査権限の2種類があるが、商法特例法上、小会社の監査役の権限は、このうち「会計監査権限」に限定されてきた(商法特例法22条1項)。
 これに対し、5月1日から施行される会社法においては、従前の小会社の監査役を含めすべての監査役に、「会計監査権限」「業務監査権限」の両方の権限が付与されることになる(会社法381条1項)。

 ただ、会社法上、公開会社でない株式会社は、監査役の権限の範囲の限定を定款により行う必要がある(会社法389条1項)。したがって、このような会社が従来どおり監査役の権限を「会計監査権限」に限定するためには、定款にその旨を定める必要があるのだが、従前の小会社については、整備法により、整備法の施行時において監査役の監査権限を会計監査に限定する旨の定めがあるものとみなされる(整備法53条)ことになっている。
 すなわち、この場合、実際には定款の変更を行わなくても、「みなし規定」により、監査役の権限はこれまでと同様に会計監査権限に限定されることになるわけだ。
公開小会社の監査権限は自動的に業務監査権限にまで拡大
 ただし、注意しなければならないのは、上記「みなし規定」が適用されるのは、あくまでも公開会社でない株式会社、すなわち株式の譲渡制限が付された小会社に限定されるということだ(整備法53条)。
 一方、公開会社(譲渡制限株式でないものが1種類でもある会社。公開会社=上場会社ではない点に注意!)については、会社法上、会社の規模に関わらず、監査役の権限を「会計監査権限」に限定することは認められない(会社法381条1項、389条1項)。したがって、商法特例法上は、会計監査権限にとどまっていた「公開会社である小会社」の監査役の権限は、業務監査権限にまで及ぶことになる。

公開会社(会社法2条5号)
その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう。


放置すれば過料の対象に!
 そして、ここで問題になるのが、会社法では監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、監査役の任期が満了してしまうということだ(会社法336条4項3号)。
 現監査役は、任期終了後も新任の監査役が就任するまで引き続き監査役の権利義務を承継することになる(会社法346条1項)。しかし、この場合には、法定の監査役を欠いていることになり、この状態を放置すれば、監査役選任手続を怠っていたことになって、過料の対象となり得る(会社法976条1項22号)。

2 対象になる会社と対応方法

上場企業の子会社に「譲渡制限なし」のケースが多数 税理士の顧問先も
 公開会社である小会社には、株式に譲渡制限をつけていない小会社が該当するが、いわゆるグリーンシート銘柄や、上場会社の子会社にはこれに該当するものが数多くあるものとみられる。また、上場準備の過程で早めに譲渡制限を外してしまった会社の中にも該当するところが少なからずありそうだ。
 特に盲点となりそうなのが、上場会社の100%子会社だろう。これは、100%子会社ということで、一見「公開会社」に見えないためだ。しかし、大企業の100%子会社には株式の譲渡制限を定款に規定していない、すなわち、公開会社に該当するところが多数存在するようだ。親会社が100%の株式を保有しているがために、あえて譲渡制限を付す必要がなかったからと考えられる。
 また、このほかにも、たまたま譲渡制限がついていない小会社は多数あるとみられる。こうした小会社は税理士の顧問先であることも多いと思われ、対応を怠れば、税理士の注意義務が問われる可能性もあろう。
対応方法は二つ
 過料という事態を回避するために、会社がとるべき方法は二つある。
 一つは、すべての株式に譲渡制限を付す旨の定款変更を株主総会で決議することだ。ただし、株式に譲渡制限を付すには1か月間の公告期間が必要になる(商法350条1項)。また、定款変更には議決権の過半数を有する株主が出席し、3分の2以上の賛成による特別決議が必要であるため、非友好的株主が3分の1超存在する会社においては、決議に困難を伴う可能性もあるだろう。
 もう一つの方法は、従来の会計監査権限に加え業務監査権限も有する監査役を新たに選任する旨を株主総会で決議することである(会社法309条)。この場合、会社法施行前後の監査役は同一人物でも問題はない。ただ、新監査役には、会計に関する知識のみならず、業務監査を遂行できるだけの見識と経験を持った人物を選任する必要があることに留意する必要があろう。
対応は定時株主総会でも可
 一部の会社は、会社法施行前に臨時株主総会を開催し、上記二つの方法のいずれかの対応を図ろうと考えているようだが、臨時株主総会の基準日の公告は基準日の2週間前(商法224条ノ3第3項)、官報の枠取りがその1週間程度前であること、さらに、臨時株主総会の招集通知が会日の2週間前(商法232条1項:短縮していれば1週間前)であることを考え合わせると、会社法の施行前に対応を図るとすると、現時点で既にギリギリのタイミングとなっている。
 しかし、当局関係者によると、3月決算の会社の場合、来る6月の定時株主総会において監査役の選任決議を行っておけば、速やかに新監査役の選任を行ったものとして「過料」の対象とされることもない模様だ。ただ、そうであっても、譲渡制限を付す場合の公告期間などを考えると残された時間は多くはなく、早急な対応が必要になることには変わりはない。

対応策!
1.すべての株式に譲渡制限を付す旨の定款変更を株主総会で決議する
2.会計監査権限に加え業務監査権限も有する監査役を株主総会で選任する

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