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解説記事2007年07月23日 【ニュース特集】 取得条項付新株予約権を用いた買収防衛策を巡る課税上の論点(2007年7月23日号・№220)

ブルドックソース VS スティール・パートナーズで注目
取得条項付新株予約権を用いた買収防衛策を巡る課税上の論点

 2007年7月9日、東京高裁は、米国の投資ファンド スティール・パートナーズによるブルドックソースの買収防衛策の差止めを求める仮処分申請の抗告を棄却、買収防衛策の是非は最高裁で争われることになったが、買収防衛策自体の是非とともに注目を集めているのが、ブルドックソースが活用した取得条項付新株予約権を用いた買収防衛策を巡る課税関係だ。
 敵対的買収者以外の株主に対して譲渡益課税があるのかどうか、敵対的買収者から買い取られた新株予約権の課税関係など論点は多い。
 これらの点については、いずれ課税当局から何らかの見解が示されるものと思われるが、本誌読者から多数のお問い合わせをいただいたことから、本稿ではそれに先立ち論点整理を試みた。

ブルドックソースの買収防衛策とは?  ブルドックソースの買収防衛策は、全株主に対し、1株につき3個の新株予約権を与えるもの。
 新株予約権はスティール・パートナーズにも交付されるが、ブルドックソースは同ファンドには権利行使させず、約23億円でこれを買い取ることにより、同ファンドの議決権比率を大幅に低下させることを狙いとしている(図1参照)。

国税庁平成17年7月7日付公表資料の「ライツプラン」との違い  この買収防衛策自体の是非は7月17日現在最高裁の判断待ちという状況だが、さらに、当該買収防衛策を巡る課税関係についても疑問点は多い。
 新株予約権を使った買収防衛策を巡る課税関係について、国税庁は平成17年4月28日および平成17年7月7日付で、「新株予約権を用いた敵対的買収防衛策に関する原則的な課税関係について」「新株予約権を利用したライツプランの【新類型】に関する原則的な課税関係について」を公表している。
 このうち平成17年7月7日付の「新株予約権を利用したライツプランの【新類型】に関する原則的な課税関係について」(次頁の資料参照)は、ブルドックソースが採用した買収防衛策と類似したスキームとなっている。しかしながら、ブルドックソースの買収防衛策は、「有事」の後、すなわち敵対的買収者であるスティール・パートナーズが登場した後に導入されていることや、敵対的買収者であるスティール・パートナーズに新株予約権の権利を行使させず、発行会社であるブルドックソースが新株予約権を約23億円で買い取るなどの点において、平成17年7月7日付の資料にあるライツプランとは相違がある。
 このため、平成17年7月7日付の「新株予約権を利用したライツプランの【新類型】に関する原則的な課税関係について」がそのまま適用できるのかどうかについては疑問が残るところだ。


株式のみ交付なら、株主に課税関係は発生せず  ブルドックソースが活用した取得条項付新株予約権を巡る課税関係で、現時点においてハッキリしているのは、取得条項付新株予約権を株主に交付してから取得条項を発動させ、新株予約権と引換えに株式を交付した場合には、株式のみの交付であるということで「譲渡原価=譲渡対価」となり、株主に課税関係は生じないということである(法法61条の2第14項5号、所法57条の4第3項5号)。

スティール・パートナーズ以外の株主の課税関係が焦点に  一方、ブルドックソースの買収防衛策のように、敵対的買収者(スティール・パートナーズ)には新株予約権を行使させず(すわなち、株式を交付せず)、新株予約権を現金で買い取ったケースにおける課税関係は現時点では明確でない。
 この点については、以下の3つの考え方がある。
 第一に、ブルドックソースの買収防衛策は、法人税法および所得税法が課税繰延べの要件として求める「株式のみ」の交付に当たらないことから、スティール・パートナーズのような敵対的買収者のみならず、他の株主に対しても譲渡益課税が生じるという考え方だ。
 第二に、スティール・パートナーズを除く株主については、「株式のみ」が交付されていることから、スティール・パートナーズ以外の株主には課税関係が生じないとする考え方である。
 第三に、敵対的買収者には株式を交付せずに新株予約権を現金で買い取った場合について、「敵対的買収者にも一旦株式を交付したうえで、その株式を現金で買い戻した」と考えることで、法人税法61条の2第14項5号、所得税法57条の4第3項5号にいう「株式のみを交付した」こととして、買収者以外の株主には課税関係が生じないとする考え方がある。この考え方に立った場合、ブルドックソースにとっては自己株式の取得となることから、敵対的買収者に対しては、現金買取の時点において「みなし配当課税」および「譲渡益課税」が行われることになる(図2参照)。

 現時点では、上記のいずれの課税関係となるのか、当局の正式見解は明らかにされていないが、少なくとも第三の案については、仮に敵対的買収者に株式を一旦交付するとしても、議決権を持つ敵対的買収者が株式を譲渡するとは考えにくいことから、「これでは買収防衛策にならないのでは?」との指摘があり、現実的ではないといえそうだ。
 なお、ブルドックソースは、スティール・パートナーズ以外の株主に課税関係が生じることとなった場合、新株予約権を自発的に行使してもらう方法を考えている模様だ。この場合、新株予約権は無償発行であることから取得価額ゼロ、一方、譲渡価額は1円とされるため、課税関係が生じないという。

ブルドックソースに23億円の損失発生?  ここまで、主にスティール・パートナーズ以外の株主の課税関係について述べてきたが、スティール・パートナーズに付与した新株予約権を買い取ったブルドック側の処理も大きな論点となる。
 もし、前段で述べたように、「敵対的買収者にも一旦株式を交付したうえで、その株式を現金で買い戻した」と考えるならば、ブルドックにとっては自己株式の取得となる。この場合、みなし配当相当額は利益積立金のマイナス、そして自己株式を消却すれば、その金額が資本金等の額のマイナスとなる。
 一方、ブルドックソースがあくまで「新株予約権」を現金で買い取ったと考えると、この新株予約権は、そのままだといずれ行使期間切れによって無価値化する可能性が高い。買い取った新株予約権が無価値となれば、ブルドックソースにおいては新株予約権という資産が滅失したことになることから、税務上もその取得に要した約23億円の損失が生じるという可能性も出てこよう。

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