解説記事2009年10月12日 【ニュース特集】 民主党政権への移行に伴う新たな税制改正プロセス(2009年10月12日号・№325)
税制改正要望は各省税制担当副大臣を通じ税調に
民主党政権への移行に伴う新たな税制改正プロセス
民主党政権の誕生により大きな影響を受けることとなるのが、税制改正のプロセスだ。
例年の税制改正は、自民党政務調査会の各部会で業界団体等からの税制改正要望のヒアリングが行われ、要望事項を取りまとめたうえで自民党税調に持ち込むというプロセスとなっていたが、民主党はこれまでの党税調と政府税調が併存する体制を改め、これを政府税調に一本化する新たな枠組みを導入、業界団体等から直接税調に要望を出すことができないようにするなど、税制改正プロセスに大きな変化がみられる。
本特集では、民主党政権下における新たな税制改正プロセスをお伝えする。
税制改正の最終意思決定権はすべて政治家に 民主党政権誕生により最も大きく、かつ明確に変わったのが、税制調査会の枠組みだ。
自民党政権下では、政府税制調査会と自民党税制調査会の2つの税制調査会が存在していたが、民主党は、この併存体制を改め、これを政府税制調査会に一本化する形の新たな税制調査会の枠組みを創設している(政府として9月29日に「税制調査会の設置について」(今号33頁参照)を閣議決定している)。
新政府税制調査会の最大の特徴といえるのは、そのメンバーのすべてが政治家により構成されている点だ(図表1参照)。
閣議決定された「税制調査会の設置について」によると、「ただし、会長は、必要があると認めるときは、関係者の出席を求めることができる」の1文があるが(同文書の「2」参照)、ここでいう「関係者」とは、連立与党を組む社民党の阿部知子政審会長と国民新党の下地幹郎政審会長のことを指しており、ここもやはり政治家となる。
ただし、政府税制調査会、および自民党税制調査会でいう小委員会に該当する政府税制調査会の「企画委員会」とも、「専門的事項について意見を求めるため、学識経験者の参集を求めることができる」とされており(同文書の「8」参照)、学識経験者(学者)も政府税制調査会に参画することになる。とはいえ、税制改正に関する最終的な意思決定はあくまで政治家が行うことには変わりなく、学識経験者は税制改正の方針等について提言を行うといった位置付けになりそうだ。
また、学識経験者は中長期の税制改正の方向性を検討する「専門家委員会」も構成する模様で、これに、会計士、税理士等の実務家が委員会の内外から関わることも検討されているようだ。
週2回のペースで開催 一方、自民党政権下の政府税制調査会では業界団体やマスコミも委員に名を連ねていたが、新政府税制調査会ではメンバーから外れた格好となっている。
なお、新政府税制調査会は、火曜と木曜の週2回のペースで開催していく予定だ。
業界団体等から政府税調への直接的な要望は不可に それでは、新しい政府税制調査会の設置により、税制改正のプロセスは具体的にどのように変わることになるのだろうか。
この点については閣議決定文書では触れられていないが、今後は、業界団体等から政府税制調査会への直接の税制改正要望は認められなくなることが、本誌取材で判明している。
自民党政権下では、「業界団体→自民党政務調査会の各部会→自民党税調」という流れで業界団体の要望が税制改正へとつながってきたが、民主党政権下ではこのプロセスは改められ、今後、業界団体の要望は各省の税制改正担当の副大臣を通じ、(副大臣による取捨選択を経たうえで)政府税制調査会に対し伝えられることになる(図表2参照)。
これに伴い、政務調査会の各部会を通じた税制改正要望というこれまでのプロセスは消滅することになる。
税制改正のスケジュールとその内容 例年の税制改正プロセスでは、8月末には各省庁からの税制改正要望が出そろう一方、業界団体等は9月25日前後までに税制改正要望を自民党政務調査会の各部会に提出、部会のヒアリングを経て10月末には税制改正要望が取りまとめられ、11月中旬以降に自民党税制調査会が開催、12月中旬には税制改正大綱が公表されるというスケジュールを踏んできた。
民主党政権移行後においては、一旦は8月末に提出された各省庁からの税制改正要望はなかったこととされ、再提出が求められている。また、上述のとおり、政務調査会の各部会を通じた業界団体等からの税制改正要望は消滅することになる。これを受け業界団体等は、経済産業省や金融庁が今般開始した新たな税制改正要望プロセス(次頁コラム参照)等にのっとり、税制改正要望を行うことになる。
例年なら8月末に出そろう各省庁からの税制改正要望がいまだ出てこないなか、税制改正大綱の取りまとめが年明け以降にずれ込むことを懸念する声も少なくないが、民主党関係者は本誌の取材に対し、「あくまで年内の取りまとめを目指す」としている。
ただし、租税特別措置の適用対象の明確化とその効果を検証できる仕組みを作ることを目的に創設される「租税特別措置透明化法(案)」については、平成22年度税制改正に先行して秋の臨時国会に提出、前倒しで実施したい考えも持っているようだ。
もっとも、租税特別措置透明化法はあくまで租税特別措置法の見直しをスムーズに進めるための“ツール”ともいえる。実際に租税特別措置の見直しを行うにあたっては、見直しの前提となる適用実績や効果の検証が年末までに間に合わず、平成22年度税制改正での見直しが実現できない租税特別措置が出てくる可能性もあろう。
一方、民主党がかねてから主張し、マニフェストにも盛り込まれた「特殊支配同族会社課税(実質一人会社のオーナー課税)制度」の廃止と、中小法人に対する法人税率引下げ(現行18%→11%)についても、すでに先の通常国会において法案が提出されていることから、早期実施を目指し、やはり秋の臨時国会で法案が提出されるとの観測があったが、両改正とも経済産業省の税制改正要望に盛り込まれる方向であることから、平成22年度税制改正プロセスに乗ってくる公算が高くなった。
民主党は、上述のほか、ガソリン税等の暫定税率の廃止、子ども手当導入に伴う配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の廃止などマニフェストに盛り込まれた税制改正項目を優先して実施していく意向であるが、マニフェストに載っていない項目についても、副大臣を通じて税制改正要望が上がってきた項目については、議論していく方針だ。
コラム 経産省および金融庁、一般企業や個人からの税制改正要望を受付け 民主党政権になり、業界団体等から税制調査会に対する直接の税制改正要望ルートがなくなるなか、「企業や実務家の声が税制改正に反映されにくくなるのではないか」との声も聞かれるところだ。
こうしたなか経済産業省および金融庁は、一般企業や個人等からの税制改正要望を受け付けている。
経済産業省を例にとると、税制改正要望は、電子メール、郵送のいずれかの方法によることとされ、締切りは平成21年10月14日(水)18:00必着(ヒアリングを希望する場合は平成21年10月8日(木)18:00必着)となる。
税制改正要望は国税のみならず、地方税についても行うことが可能だが、内容は「経済産業政策に関わる税制改正要望」に限定される。「経済産業政策」というと、たとえば試験研究税制等がすぐに思い浮かぶところだが、経済産業省が所管する中小企業庁が取り扱う事業承継税制等も含まれることが本誌の取材で確認されている。
なお、ヒアリングは希望者全員に対しては行われず、要望内容等を勘案したうえで、経済産業省から連絡があった要望者のみに対して行われる。
政府等に特別なルートを持たない一般企業や実務家の税制改正要望が採用されることになれば、画期的なことといえそうだ。
<経済産業省 平成22年度税制改正要望の受付について> http://www.meti.go.jp/topic/data/091001aj.html ※金融庁は下掲URL参照(10月9日に締切り) http://www.fsa.go.jp/news/21/sonota/20091002-2.html
民主党政権への移行に伴う新たな税制改正プロセス
民主党政権の誕生により大きな影響を受けることとなるのが、税制改正のプロセスだ。
例年の税制改正は、自民党政務調査会の各部会で業界団体等からの税制改正要望のヒアリングが行われ、要望事項を取りまとめたうえで自民党税調に持ち込むというプロセスとなっていたが、民主党はこれまでの党税調と政府税調が併存する体制を改め、これを政府税調に一本化する新たな枠組みを導入、業界団体等から直接税調に要望を出すことができないようにするなど、税制改正プロセスに大きな変化がみられる。
本特集では、民主党政権下における新たな税制改正プロセスをお伝えする。
税制改正の最終意思決定権はすべて政治家に 民主党政権誕生により最も大きく、かつ明確に変わったのが、税制調査会の枠組みだ。
自民党政権下では、政府税制調査会と自民党税制調査会の2つの税制調査会が存在していたが、民主党は、この併存体制を改め、これを政府税制調査会に一本化する形の新たな税制調査会の枠組みを創設している(政府として9月29日に「税制調査会の設置について」(今号33頁参照)を閣議決定している)。
新政府税制調査会の最大の特徴といえるのは、そのメンバーのすべてが政治家により構成されている点だ(図表1参照)。
閣議決定された「税制調査会の設置について」によると、「ただし、会長は、必要があると認めるときは、関係者の出席を求めることができる」の1文があるが(同文書の「2」参照)、ここでいう「関係者」とは、連立与党を組む社民党の阿部知子政審会長と国民新党の下地幹郎政審会長のことを指しており、ここもやはり政治家となる。
ただし、政府税制調査会、および自民党税制調査会でいう小委員会に該当する政府税制調査会の「企画委員会」とも、「専門的事項について意見を求めるため、学識経験者の参集を求めることができる」とされており(同文書の「8」参照)、学識経験者(学者)も政府税制調査会に参画することになる。とはいえ、税制改正に関する最終的な意思決定はあくまで政治家が行うことには変わりなく、学識経験者は税制改正の方針等について提言を行うといった位置付けになりそうだ。
また、学識経験者は中長期の税制改正の方向性を検討する「専門家委員会」も構成する模様で、これに、会計士、税理士等の実務家が委員会の内外から関わることも検討されているようだ。
週2回のペースで開催 一方、自民党政権下の政府税制調査会では業界団体やマスコミも委員に名を連ねていたが、新政府税制調査会ではメンバーから外れた格好となっている。
なお、新政府税制調査会は、火曜と木曜の週2回のペースで開催していく予定だ。
業界団体等から政府税調への直接的な要望は不可に それでは、新しい政府税制調査会の設置により、税制改正のプロセスは具体的にどのように変わることになるのだろうか。
この点については閣議決定文書では触れられていないが、今後は、業界団体等から政府税制調査会への直接の税制改正要望は認められなくなることが、本誌取材で判明している。
自民党政権下では、「業界団体→自民党政務調査会の各部会→自民党税調」という流れで業界団体の要望が税制改正へとつながってきたが、民主党政権下ではこのプロセスは改められ、今後、業界団体の要望は各省の税制改正担当の副大臣を通じ、(副大臣による取捨選択を経たうえで)政府税制調査会に対し伝えられることになる(図表2参照)。
これに伴い、政務調査会の各部会を通じた税制改正要望というこれまでのプロセスは消滅することになる。
税制改正のスケジュールとその内容 例年の税制改正プロセスでは、8月末には各省庁からの税制改正要望が出そろう一方、業界団体等は9月25日前後までに税制改正要望を自民党政務調査会の各部会に提出、部会のヒアリングを経て10月末には税制改正要望が取りまとめられ、11月中旬以降に自民党税制調査会が開催、12月中旬には税制改正大綱が公表されるというスケジュールを踏んできた。
民主党政権移行後においては、一旦は8月末に提出された各省庁からの税制改正要望はなかったこととされ、再提出が求められている。また、上述のとおり、政務調査会の各部会を通じた業界団体等からの税制改正要望は消滅することになる。これを受け業界団体等は、経済産業省や金融庁が今般開始した新たな税制改正要望プロセス(次頁コラム参照)等にのっとり、税制改正要望を行うことになる。
例年なら8月末に出そろう各省庁からの税制改正要望がいまだ出てこないなか、税制改正大綱の取りまとめが年明け以降にずれ込むことを懸念する声も少なくないが、民主党関係者は本誌の取材に対し、「あくまで年内の取りまとめを目指す」としている。
ただし、租税特別措置の適用対象の明確化とその効果を検証できる仕組みを作ることを目的に創設される「租税特別措置透明化法(案)」については、平成22年度税制改正に先行して秋の臨時国会に提出、前倒しで実施したい考えも持っているようだ。
もっとも、租税特別措置透明化法はあくまで租税特別措置法の見直しをスムーズに進めるための“ツール”ともいえる。実際に租税特別措置の見直しを行うにあたっては、見直しの前提となる適用実績や効果の検証が年末までに間に合わず、平成22年度税制改正での見直しが実現できない租税特別措置が出てくる可能性もあろう。
一方、民主党がかねてから主張し、マニフェストにも盛り込まれた「特殊支配同族会社課税(実質一人会社のオーナー課税)制度」の廃止と、中小法人に対する法人税率引下げ(現行18%→11%)についても、すでに先の通常国会において法案が提出されていることから、早期実施を目指し、やはり秋の臨時国会で法案が提出されるとの観測があったが、両改正とも経済産業省の税制改正要望に盛り込まれる方向であることから、平成22年度税制改正プロセスに乗ってくる公算が高くなった。
民主党は、上述のほか、ガソリン税等の暫定税率の廃止、子ども手当導入に伴う配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除の廃止などマニフェストに盛り込まれた税制改正項目を優先して実施していく意向であるが、マニフェストに載っていない項目についても、副大臣を通じて税制改正要望が上がってきた項目については、議論していく方針だ。
コラム 経産省および金融庁、一般企業や個人からの税制改正要望を受付け 民主党政権になり、業界団体等から税制調査会に対する直接の税制改正要望ルートがなくなるなか、「企業や実務家の声が税制改正に反映されにくくなるのではないか」との声も聞かれるところだ。
こうしたなか経済産業省および金融庁は、一般企業や個人等からの税制改正要望を受け付けている。
経済産業省を例にとると、税制改正要望は、電子メール、郵送のいずれかの方法によることとされ、締切りは平成21年10月14日(水)18:00必着(ヒアリングを希望する場合は平成21年10月8日(木)18:00必着)となる。
税制改正要望は国税のみならず、地方税についても行うことが可能だが、内容は「経済産業政策に関わる税制改正要望」に限定される。「経済産業政策」というと、たとえば試験研究税制等がすぐに思い浮かぶところだが、経済産業省が所管する中小企業庁が取り扱う事業承継税制等も含まれることが本誌の取材で確認されている。
なお、ヒアリングは希望者全員に対しては行われず、要望内容等を勘案したうえで、経済産業省から連絡があった要望者のみに対して行われる。
政府等に特別なルートを持たない一般企業や実務家の税制改正要望が採用されることになれば、画期的なことといえそうだ。
<経済産業省 平成22年度税制改正要望の受付について> http://www.meti.go.jp/topic/data/091001aj.html ※金融庁は下掲URL参照(10月9日に締切り) http://www.fsa.go.jp/news/21/sonota/20091002-2.html
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