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解説記事2009年11月23日 【ニュース特集】 融通手形の不渡事故、納税の猶予該当事実に(2009年11月23日号・№331)

消費税の納税猶予申請に対する不許可処分を取消し
融通手形の不渡事故、納税の猶予該当事実に

 国税通則法46条(納税の猶予の要件等)2項は、納税者に災害、盗難または病気、負傷、事業上の著しい損失等に類する事実があった場合、納税を猶予することができる旨規定している。
 本特集では、納税の猶予該当事実を確認するとともに、主要取引先からの依頼を受けて振り出した融通手形の不渡事故について、請求人に帰責性がなく猶予該当事実に当たるとした裁決事例を紹介する。消費税の納税猶予申請に対する不許可処分が取り消された事例であり、確認しておきたい。

通則法46条2項と猶予通達の概要  国税通則法46条2項は、災害や盗難、事業の休廃止、事業上の著しい損失等に類する事実(猶予該当事実)があったため、納付すべき国税を一時に納付することができないと認められる場合に、納税者の申請に基づいて納税を猶予することができる旨を規定している(下掲参照)。

 同項の規定に関する取扱いについては、「納税の猶予等の取扱要領の制定について」(以下「猶予通達」という)第2章第1節(通常の納税の猶予)において、「1.納税の猶予の要件」「2.納税の猶予をする金額」「3.納税の猶予をする期間」が定められている。

通則法46条2項1号・2号類似の事実が例示  納税者に納税の猶予が許可されるためには、前述のとおり、猶予該当事実があることが要件の1つとなる。
 この猶予該当事実については、「猶予通達」第2章第1節1(3)に具体的な取扱いが定められている。特に、第2章第1節1(3)ホにおいては、納税者に災害、盗難または病気、負傷に類する事実があったこと(通則法46条2項1号・2号類似)について、詐欺・横領等による財産の喪失、交通事故の損害賠償、売掛金等の回収不能など該当する複数の事実が例示されている(次頁参照)。

主要取引先の倒産により手形債務を負うことに  「猶予通達」第2章第1節1(3)ホの例示には、いわゆる融通手形(資金調達のため原因行為なく振り出された手形)の振出しが掲げられていないが、請求人が売掛債権を有する主要取引先の依頼を受けて振り出した融通手形の不渡事故が、通則法46条2項1号類似の猶予該当事実に当たるとされた裁決事例(関裁(諸)平21第3号・平成21年7月6日裁決)があるので紹介する。
約束手形5通を振出し  審査請求人(以下「請求人」という)の融通手形の振出しから納税の猶予の申請に至るまで経緯は、次のとおりである。
 土木工事を営む請求人は、主要な取引先であるX社の依頼を受けて、同社に対して額面金額合計449万2,000円の約束手形5通を振り出した。X社はY社に対して、この手形を裏書譲渡した。その後、X社が倒産し、Z社がX社との間の信用保証委託契約に基づき、Y社に対してX社の負う手形債務449万2,000円を代位弁済し、各手形を譲り受けた。
毎月1万円ずつ弁済  Z社は、手形の所持人として振出人である請求人に対して、手形の額面金額449万2,000円および年6%の割合による金員の支払いを求め、裁判所に手形債務金履行請求の調停を申し立てた。その後、請求人とZ社の間で、請求人に手形債務として449万2,000円の支払債務が存在し、請求人はZ社に対し、同債務のうち36万円を平成16年2月から平成19年1月まで毎月1万円ずつ分割して弁済すること、同債務から36万円を控除した残額等の支払方法は平成19年1月以降当事者双方が協議して定める旨の調停が成立した(参照)。
税務署は納税の猶予不許可処分
 請求人は、平成18年11月2日に税務署に対して、消費税を支払うためのまとまった資金が用意できないとして納税の猶予の申請(猶予期間は18年11月2日から19年11月1日まで)をした(参照)。
 これに対し税務署は、平成19年4月24日付で納税の猶予を不許可とする原処分をした。

平成12年の手形不渡事故等に直接基因していると主張  審査請求において請求人は、①平成12年にX社に対して手形を振り出したが、同社が倒産し、そのあおりを受けて、手形が決済できず、手形交換所による取引停止処分を受けたこと、②それ以降、取引先は現金取引のみに限定され、手形債務の支払いを現在も続行していること、③その後、請求人の主要な取引先の倒産、廃業または経営不振により仕事が減少して年間の売上金額が激減し、平成18年においても回復しておらず消費税の支払資金を用意できない状況にあることを挙げ、このような納付困難な状況は、平成12年の手形不渡事故や請求人の主要な取引先の倒産等に直接基因していると主張。通則法46条2項の猶予該当事実があり、納税の猶予の要件を充足しているとした。
請求人自身に原因があると主張  一方、税務署は、下記①・②の理由から、請求人の責めに帰すことがやむを得ない事由によって売上げの減少が生じたのではなく、納税猶予の要件を充足していないと主張した。
① 請求人の主張するX社の倒産という事実をもって、請求人について納付が困難となっていると認定することができない。
② 請求人が主張する損失発生の原因は、X社の依頼を受けてX社に対し融通手形として手形を振り出したことが原因であり、不渡事故を起こして手形債務を負うこととなったことおよび取引先が限定されることとなった原因は請求人自身にある。

売掛金等の回収不能の場合と同視できる  審判所は、本事案での請求人の猶予申請の理由について、通則法46条2項4号(事業上の著しい損失)または5号(4号類似)の猶予該当事実に基づくものではなく、同項5号(1号類似)の猶予該当事案に基づくものと認定。そのうえで、通則法46条2項に関する法令解釈(下掲参照)に則して、次のような判断を行っている。
債務保証と類似の関係と認められ、請求人に帰責性はない  請求人はX社に対して約450万円の売掛債権を有していたところ、X社が経営困難に陥り、そのまま倒産すれば当該売掛債権の全額が回収不能となることなどから、やむを得ず、手形を振り出したものと認められる。本件手形の振出しが、X社に対する金銭の贈与等と同視できるような特段の事情は窺われない。
 請求人とX社は、X社が手形割引により借入れをし、手形の満期日までに借入金を返済することによって、請求人に手形債務を負担させないこととしていたものの、その後、X社が倒産したため、請求人が手形債務を弁済しなければならなくなったのであり、このことは債務保証と類似の関係と認められる。
 そうすると、手形の振出しおよびX社の倒産による手形債務の負担について、請求人に帰責性があるということはできない。
やむを得ず振り出し、不測の事態により資金繰りが困難に  取引先に対して融通手形の振り出した場合は、「猶予通達」第2章第1節1(3)ホに例示されている事実のいずれにも当たらないが、振出人である請求人と受取人であるX社との人的関係や取引上の要請から、やむを得ず融通手形を振り出し、融通手形の受取人であるX社の倒産による手形債務を負うという、不測の事態により資金繰りが困難になったという点で、売掛金等の回収が不能になった場合と同視できる。本件の場合は、通則法46条2項1号に類する事実として、猶予該当事実に当たると解するのが相当である。

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