資料2009年12月16日 【税務通達等】 看護学生等に貸与した奨学金に係る債務免除益等の取扱いについて(文書回答事例)(平成21年12月16日)
看護学生等に貸与した奨学金に係る債務免除益等の取扱いについて
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/bunshokaito/gensen/091113/index.htm
取引等に係る税務上の取扱い等に関する事前照会
照会
照会者
①氏名・名称 (ドクリツギョウセイホウジンコクリツビョウインキコウ)独立行政法人国立病院機構
②総代又は法人の代表者 (リジチョウ ヤザキ ヨシオ)理事長 矢崎 義雄
照会の内容
③照会の趣旨(法令解釈・適用上の疑義の要約及び照会者の求める見解の内容) 別紙記載の項目1のとおり 1 事前照会の趣旨
独立行政法人国立病院機構(以下「国立病院機構」といいます。)では、病院に必要な看護師又は助産師(以下「看護師等」といいます。)の確保を目的として、「独立行政法人国立病院機構奨学金貸与規程」(以下「本件貸与規程」といいます。)を定め、平成21年4月から、国立病院機構に属する全国145の病院すべてにおいて、看護学生に対する「奨学金貸与要領」を設けて奨学金制度を実施しております。
この奨学金制度に基づき無利息で奨学金の貸与を受けた看護学生が、卒業後、奨学金の貸与を受けた病院において、看護師等としてその貸与期間相当の期間業務に従事したときは、奨学金の返還債務を免除することとしています。
この場合の奨学金の無利息貸付け及びその返還債務を免除したことによる経済的利益については、課税しなくて差し支えないものとして取り扱ってよろしいか照会いたします。
④照会に係る取引等の事実関係(取引等関係者の名称、取引等における権利・義務関係等) 別紙記載の項目2のとおり 2 事前照会に係る取引等の事実関係
本件貸与規程は、国立病院機構が看護学校等に在籍する学生を対象とする奨学金の貸与について定め、病院に必要な看護師等の確保を目的とするものです(本件貸与規程1条)。
奨学金の貸与対象となる者は、看護学校等に在籍する学生であって、卒業後、奨学金の貸与を受ける病院に常勤職員として勤務することを希望する学生とし、その旨を記載した「奨学生誓約書」を奨学金の貸与を行う病院の院長(以下「院長」といいます。)に提出します(本件貸与規程3条、5条)。
奨学金の貸与期間は、奨学生(奨学金の貸与を受ける者)になった日の属する年度から看護学校等を卒業する年度(最長4年間)までの期間で、貸与額は、各病院が定めている「奨学金貸与要領」によります(本件貸与規程6条)。
奨学金は無利息で貸与し、奨学生が看護学校等を卒業後、奨学金の貸与を受けた病院において、常勤職員として引き続き貸与期間相当の期間業務に従事したときは、(1年以上業務に従事した場合は、1年につき1年間分)奨学金の返還債務を免除します(本件貸与規程7条、11条)。ただし、奨学生が看護師等の免許を取得できないとき、卒業後奨学金の貸与を受けた病院に勤務しないときや自己都合で退職した場合には、院長の指定した日までに奨学金の全額(又は残額)を返還しなければならないほか、国立病院機構会計規程に基づく延滞金支払も必要となります(本件貸与規程12条、13条)。
なお、奨学金の貸与額は、各病院の「奨学金貸与要領」において、年間40万円から80万円の範囲で定められており(注)、また、それ以外の部分は本件貸与規程と同じ内容となっております。
(注) 看護学生が負担する在学費用について国立病院機構附属看護学校(以下「附属看護学校」といいます。)を例にとると、年間の授業料、教科書代、教育活動費その他実習費等の附属看護学校に支払わなければならない金額は、年間約90万円であり、貸与額は在学費用の範囲内とするようにしています。
⑤④の事実関係に対して照会者の求める見解となることの理由 別紙記載の項目3のとおり 3 事前照会者の求める見解となることの理由
現在、国立病院機構の各病院における看護師の離職率は、平均で約11%と非常に高く、常に新規の採用が必要な状態にあり、看護師等の確保が重要な課題となっています。そのため、国立病院機構としては、病院に必要な看護師等を確保するための施策として奨学金制度を定め実施しているところです。
また、国立病院機構以外にも看護学生に対する同様の奨学金制度を実施している病院が多数見受けられるところであり、「看護師等の人材確保の促進に関する法律」が制定されていることからも推察されるように、一般的に他の病院においても同様に看護師不足の状態にあるのではないかと考えられます。
ところで、所得税基本通達9-15では、「使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員又は使用人に当該役員又は使用人としての職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させ、又は免許若しくは資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用又は大学等における聴講費用に充てるものとして支給する金品については、これらの費用として適正なものに限り、課税しなくて差し支えない。」とされています。
国立病院機構における奨学金制度は、看護師等の確保を目的とするものであって、病院が経済的合理性を踏まえその業務遂行上の必要に基づいて実施しているものであって、看護師等の資格は、病院の使用人としての職務に直接必要なものといえます。
また、上記通達は、既に雇用関係のある使用人等に対して支給する職務上必要な技術・資格の取得費用についての取扱いを定めたものと考えられますが、本件の奨学金制度に基づく奨学金の貸与は、看護学校等を卒業後、奨学金の貸与を受ける病院に常勤職員として勤務することを希望する学生を対象とし(誓約書の提出が必要)、将来の勤務を前提とするものであることから、使用人等に対して支給するものと特段の差異はないと考えます。
さらに、奨学金の貸与及びその返還債務の免除は、本件貸与規程及び各病院の奨学金貸与要領に基づき実施するものであって、特定の者に利益を与えることを目的とするなど恣意的に行われるものではないこと、及び奨学金の貸与額についても、上記2(注)のとおり、看護学生が負担しなければならない在学費用を超えるものではないことからみても、適正なものであると考えます。
以上のことから、奨学金の無利息貸付け及びその返還債務を免除したことによる経済的利益については、所得税基本通達9-15に準じて課税しなくて差し支えないものとして取り扱われると考えられます。
⑥関係する法令条項等 所得税法第9条第1項第14号、所得税基本通達9-15
⑦添付書類 ・独立行政法人 国立病院機構奨学金貸与規程 ・独立行政法人 国立病院機構奨学金貸与要領
回答
⑧回答年月日 平成21年12月16日 ⑨回答者 国税庁課税部長
⑩回答内容 標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。
ただし、次のことを申し添えます。
(1) ご照会に係る事実関係が異なる場合又は新たな事実が生じた場合は、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります。
(2) この回答内容は国税庁としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではありません。
取引等に係る税務上の取扱い等に関する事前照会
照会
照会者
①氏名・名称 (ドクリツギョウセイホウジンコクリツビョウインキコウ)独立行政法人国立病院機構
②総代又は法人の代表者 (リジチョウ ヤザキ ヨシオ)理事長 矢崎 義雄
照会の内容
③照会の趣旨(法令解釈・適用上の疑義の要約及び照会者の求める見解の内容) 別紙記載の項目1のとおり 1 事前照会の趣旨
独立行政法人国立病院機構(以下「国立病院機構」といいます。)では、病院に必要な看護師又は助産師(以下「看護師等」といいます。)の確保を目的として、「独立行政法人国立病院機構奨学金貸与規程」(以下「本件貸与規程」といいます。)を定め、平成21年4月から、国立病院機構に属する全国145の病院すべてにおいて、看護学生に対する「奨学金貸与要領」を設けて奨学金制度を実施しております。
この奨学金制度に基づき無利息で奨学金の貸与を受けた看護学生が、卒業後、奨学金の貸与を受けた病院において、看護師等としてその貸与期間相当の期間業務に従事したときは、奨学金の返還債務を免除することとしています。
この場合の奨学金の無利息貸付け及びその返還債務を免除したことによる経済的利益については、課税しなくて差し支えないものとして取り扱ってよろしいか照会いたします。
④照会に係る取引等の事実関係(取引等関係者の名称、取引等における権利・義務関係等) 別紙記載の項目2のとおり 2 事前照会に係る取引等の事実関係
本件貸与規程は、国立病院機構が看護学校等に在籍する学生を対象とする奨学金の貸与について定め、病院に必要な看護師等の確保を目的とするものです(本件貸与規程1条)。
奨学金の貸与対象となる者は、看護学校等に在籍する学生であって、卒業後、奨学金の貸与を受ける病院に常勤職員として勤務することを希望する学生とし、その旨を記載した「奨学生誓約書」を奨学金の貸与を行う病院の院長(以下「院長」といいます。)に提出します(本件貸与規程3条、5条)。
奨学金の貸与期間は、奨学生(奨学金の貸与を受ける者)になった日の属する年度から看護学校等を卒業する年度(最長4年間)までの期間で、貸与額は、各病院が定めている「奨学金貸与要領」によります(本件貸与規程6条)。
奨学金は無利息で貸与し、奨学生が看護学校等を卒業後、奨学金の貸与を受けた病院において、常勤職員として引き続き貸与期間相当の期間業務に従事したときは、(1年以上業務に従事した場合は、1年につき1年間分)奨学金の返還債務を免除します(本件貸与規程7条、11条)。ただし、奨学生が看護師等の免許を取得できないとき、卒業後奨学金の貸与を受けた病院に勤務しないときや自己都合で退職した場合には、院長の指定した日までに奨学金の全額(又は残額)を返還しなければならないほか、国立病院機構会計規程に基づく延滞金支払も必要となります(本件貸与規程12条、13条)。
なお、奨学金の貸与額は、各病院の「奨学金貸与要領」において、年間40万円から80万円の範囲で定められており(注)、また、それ以外の部分は本件貸与規程と同じ内容となっております。
(注) 看護学生が負担する在学費用について国立病院機構附属看護学校(以下「附属看護学校」といいます。)を例にとると、年間の授業料、教科書代、教育活動費その他実習費等の附属看護学校に支払わなければならない金額は、年間約90万円であり、貸与額は在学費用の範囲内とするようにしています。
⑤④の事実関係に対して照会者の求める見解となることの理由 別紙記載の項目3のとおり 3 事前照会者の求める見解となることの理由
現在、国立病院機構の各病院における看護師の離職率は、平均で約11%と非常に高く、常に新規の採用が必要な状態にあり、看護師等の確保が重要な課題となっています。そのため、国立病院機構としては、病院に必要な看護師等を確保するための施策として奨学金制度を定め実施しているところです。
また、国立病院機構以外にも看護学生に対する同様の奨学金制度を実施している病院が多数見受けられるところであり、「看護師等の人材確保の促進に関する法律」が制定されていることからも推察されるように、一般的に他の病院においても同様に看護師不足の状態にあるのではないかと考えられます。
ところで、所得税基本通達9-15では、「使用者が自己の業務遂行上の必要に基づき、役員又は使用人に当該役員又は使用人としての職務に直接必要な技術若しくは知識を習得させ、又は免許若しくは資格を取得させるための研修会、講習会等の出席費用又は大学等における聴講費用に充てるものとして支給する金品については、これらの費用として適正なものに限り、課税しなくて差し支えない。」とされています。
国立病院機構における奨学金制度は、看護師等の確保を目的とするものであって、病院が経済的合理性を踏まえその業務遂行上の必要に基づいて実施しているものであって、看護師等の資格は、病院の使用人としての職務に直接必要なものといえます。
また、上記通達は、既に雇用関係のある使用人等に対して支給する職務上必要な技術・資格の取得費用についての取扱いを定めたものと考えられますが、本件の奨学金制度に基づく奨学金の貸与は、看護学校等を卒業後、奨学金の貸与を受ける病院に常勤職員として勤務することを希望する学生を対象とし(誓約書の提出が必要)、将来の勤務を前提とするものであることから、使用人等に対して支給するものと特段の差異はないと考えます。
さらに、奨学金の貸与及びその返還債務の免除は、本件貸与規程及び各病院の奨学金貸与要領に基づき実施するものであって、特定の者に利益を与えることを目的とするなど恣意的に行われるものではないこと、及び奨学金の貸与額についても、上記2(注)のとおり、看護学生が負担しなければならない在学費用を超えるものではないことからみても、適正なものであると考えます。
以上のことから、奨学金の無利息貸付け及びその返還債務を免除したことによる経済的利益については、所得税基本通達9-15に準じて課税しなくて差し支えないものとして取り扱われると考えられます。
⑥関係する法令条項等 所得税法第9条第1項第14号、所得税基本通達9-15
⑦添付書類 ・独立行政法人 国立病院機構奨学金貸与規程 ・独立行政法人 国立病院機構奨学金貸与要領
回答
⑧回答年月日 平成21年12月16日 ⑨回答者 国税庁課税部長
⑩回答内容 標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。
ただし、次のことを申し添えます。
(1) ご照会に係る事実関係が異なる場合又は新たな事実が生じた場合は、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります。
(2) この回答内容は国税庁としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではありません。
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