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解説記事2010年03月29日 【ニュース特集】 残余利益分割法適用の移転価格課税で取消裁決(2010年3月29日号・№348)

研究開発費は国外関連者の分割指標とすべき
残余利益分割法適用の移転価格課税で取消裁決

 電気機器メーカーとその国外関連者との間の取引について移転価格課税がなされた事案で、国税不服審判所が法人税の更正処分等を取り消した事例があった(東裁(法)平21第108号・一部取消・全部取消)。裁決では、国外関連者から配当がなされている場合の移転価格税制の適用、独立企業間価格の算定において残余利益分割法を適用する点で課税庁の主張が認められ、残余利益分割法適用に際しての比較対象企業の選定、国外関連者の負担資金を同社の分割指標として研究開発費の金額に含める点などで請求人の主張が認められている。
 今回の特集では、裁決事例の主な争点ごとに、当事者の主張および審判所の判断等について、その概要を紹介する。

移転価格課税を適用しないとする法令の規定は存在しない  本事案は、審査請求人(以下「請求人」という)が、国外関連者との間で行った各取引(本件国外関連取引)について、移転価格課税が行われたことの適否等が争われたもの。請求人と国外関連者の取引の概要および審査請求における主な争点は、下掲のとおり。
争点1. 国外関連者が請求人に対し配当をしているにもかかわらず移転価格課税が行われたことの適否  争点1において、請求人は、本件国外関連取引により、仮に所得移転があったとしても、請求人と国外関連者は配当を通じて所得の適正配分を図っており、本邦の課税権は確保されている。それにもかかわらず、移転価格税制を適用することは、本邦移転価格税制の立法趣旨に反するものであり、違法ないし著しく不当な処分であると主張。
 これに対し、審判所は、国外関連者から配当があった場合に、移転価格税制を適用しないとする法令は存在しないなどとして、請求人の主張を退けている。
 なお、この点に関する審判所の判断内容については、下掲参照。

調査により比較対象取引が把握できなかったと認定 争点2. 独立企業間価格の算定において、残余利益分割法を適用したことの適否  争点2では、本件国外関連取引に係る独立企業間価格の算定について、基本三法(独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法)および基本三法と同等の方法が適用できるか否かが検討された。その際、本件国外関連取引を一の取引とみるか、個別取引ごとに独立企業間価格の算定を行うかが問題とされている。
 争点2に関する当事者双方の主張は、次頁のとおり。
 審判所は、まず、本件国外関連取引を一の取引とみるべきか否かの検討について、独立企業間価格の算定は、原則として個別の取引ごとに行うべきであるから、例外的に複数の取引を一の取引とみる場合には、個別の取引で評価するよりもより合理的であるとする理由が必要であるというべきであると指摘。
 請求人グループの行為が一体的に営まれている事情は認められるものの、そのことから直ちに本件国外関連取引が一の取引であるとはいえず、基本三法および基本三法と同等の方法の検討上本件国外関連取引を一の取引とみるべき合理的な理由は認められない。したがって、本件国外関連取引における独立企業間価格を算定するにあたっては、最初に個別取引ごとに独立企業間価格を算定できるか否かを検討すべきであるとした。
裁判所、基本三法および基本三法と同等の方法を用いることはできない  そして、基本三法および基本三法と同等の方法の適用の可否について、課税庁は、本件国外関連取引それぞれについて、個別の取引という観点から、各種の情報収集などの調査を行ったが、いずれについても適切な比較対象取引を把握することはできなかったものと認定。また、本件国外関連取引には特殊性があり、当該特殊性を十分に考慮する必要があるなどの状況下においては、請求人および国外関連者が価値の高い重要な無形資産を使用して製造した製品と同種または類似の製品に係る取引をそれぞれの取引の相互関係と同様の関係の下で把握することは現実的に極めて困難であったと判断。
 課税庁は可能な限りの調査を尽くしていると評価でき、にもかかわらず適切な比較対象取引を把握することができなかった以上、本件については、基本三法および基本三法と同等の方法を用いることはできないというべきであるとした。

一の移転価格算定手法での独立企業間価格の算定に理由あり  そのうえで、審判所は、課税庁が残余利益分割法を関連取引全体を対象に適用したことについて、次の理由から、違法性は認められないと判断している。
 ①課税庁の調査において基本三法および基本三法と同等の方法を用いることができないと認められること、②請求人の主張する基本三法および基本三法と同等の方法を用いることはできないこと(請求人は、国外関連者への販売取引について独立価格比準法、国外関連者からの最終製品の購入取引について再販売価格基準法、無形資産の供与取引について独立価格比準法と同等の方法を適用できると主張したが、採用されなかった)、③請求人および国外関連者は、それぞれ重要な無形資産を有しており、このような場合に残余利益分割法を適用することは、有効な方法であると認められること。
 本件国外関連取引は、×××を最終製品とする一連の取引であり、利益分割法は請求人と国外関連者の営業利益の合計額を基本として用いられる移転価格算定手法であることから、それぞれの取引について利益分割法を検討するのではなく、国外関連取引に係る分割対象利益に影響がある非関連者間取引に挟まれる関連取引全体を対象に一の移転価格算定手法を使って独立企業間価格を算定することには理由があると認められること。
比較対象企業の選定に関する請求人の主張を認める 争点3. 残余財産分割法の適用における問題点
3-1. 国外関連者の基本的利益の算定において、比較対象企業からX社を除くべきか否か
 裁決では、上記のように本件国外関連取引全体について、残余財産分割法を適用することが認められている。そして、残余財産分割法の適用における問題点について審理された。
 争点3-1について、課税庁は、①国外関連者の基本的利益の算定の基礎とした選定は、公開データを用いた合理的な基準に基づく妥当な選定であると主張。
 この点、審判所は、基本的利益である「重要な無形資産を有しない非関連者間取引において通常得られる利益に相当する金額」を計算する場合には、国外関連者の事業と同種の事業を営み、市場、事業規模等が類似する法人の中から重要な無形資産を有しない法人を比較対象企業として選定する必要があると指摘。そのうえで、①財務諸表の数値が著しく変動していること、②財務諸表には、国外関連者と同種の事業を営む法人の損益がそれぞれ連結対象となる短期間しか反映されていないことから、X社の財務諸表については、国外関連者の比較対象企業としての通常の事業状況で得られる利益水準を示しているとは認められないと判断。
 国外関連者の基本的利益を算出するに際して、X社は比較対象企業としては適当ではなく、課税庁が選定した比較対象企業の中からX社を除いて各事業年度の基本的利益を計算することが相当であるとして、課税庁の主張を退けている。

国外関連者の分割指標としての研究開発費とみるのが相当
3-2. 国外関連者が負担した費用を請求人の分割指標として研究開発費の金額に含めたことの適否
 争点3-2について、課税庁は、重要な無形資産の価値を測定するにあたり、負担した費用と無形資産との明確な関係性が認められないにもかかわらず、単に資金を負担したとの理由だけで資金負担者に無形資産の帰属を認めることになれば、所得の発生に寄与した程度を推測するに足りる要因で当事者の合算利益をあん分する方法である利益分割法が形骸化することとなり、関連企業との間の取引を通じた海外への所得移転を安易に認めてしまう結果を招き、それが移転価格税制創設の趣旨に反することは明白の理であるなどと主張。
 残余利益分割法の適用上、所得の発生に寄与した程度を測定するにあたって、国外関連者の負担した費用を国外関連者の分割指標とすることにも、請求人の分割指標から差し引くことにも理由がないとした。
 これに対し、審判所は、請求人および国外関連者は、研究開発によりそれぞれ製造に係る無形資産を形成していることから、研究開発費を残余利益配分の指標として用いることは合理的であると認定した。
 また、国外関連者が、研究開発の研究テーマの策定に参加しており、事前に資金リスクを負担していることなどの点(下掲参照)を総合的に勘案すると、国外関連者は本件研究開発において相応の役割を果たしており、本件研究開発を通じて生じる無形資産の形成等に貢献していると認められることから、国外関連者の負担費用は、残余利益分割法による独立企業間価格の算定にあたっては、国外関連者の分割指標としての研究開発費とみるのが相当であると判断している。

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