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コラム2010年05月31日 【編集部レポート】 資本的支出か否か?汚染土壌対策費の取扱い(2010年5月31日号・№356)

編集部レポート
資本的支出か否か?汚染土壌対策費の取扱い
福岡国税局が事前照会に回答

 昨今では、アスベストやダイオキシン類による汚染など、環境被害が全国的な社会問題となって久しいが、土壌汚染に対する企業側の対策については、税務上の取扱いも1つのポイントとなる。具体的には、工事等の費用が修繕費となるのか、資本的支出のどちらになるのかという点だ。
 この点、福岡国税局は5月20日、「汚染土壌対策に要する費用に係る法人税法上の取扱いについて」(平成22年3月20日付)と題する文書回答を公表している(今号32頁参照)。1つの事例として参考になりそうだ。

工事費用などの取扱いを明確化  事前照会によれば、①工事等に要する費用(遮水壁の埋設、汚染土壌の掘削除去、地盤補修、良質土による埋戻しおよびアスファルト舗装に要する費用)、②焼却に要する費用(汚染土壌に係る焼却処分の委託に要する費用)、③汚染土壌対策中の維持管理費等として要する費用(汚染土壌対策中に生ずる簡易倉庫の賃借料ならびに浄化設備の稼動、汚染土壌の一時保管に要する水道光熱費、人件費および委託費その他の一般管理費(減価償却費を除く))、④浄化設備の取得・設置に要する費用について、それぞれ税務上の取扱いの明確化を求めている。
 法人税法上は、法人が有する固定資産について支出する金額のうち、(1)その支出のうち当該固定資産の使用可能期間を延長させる部分に対応する金額、(2)その支出のうち当該固定資産の価額を増加させる部分に対応する金額については、資本的支出に該当し、減価償却資産になるとされている(法令132、55①)。
 今回の事前照会においても、それぞれの費用が資本的支出に該当するかどうかがポイントとなる。

被害拡大の予防が目的  福岡国税局によれば、①の汚染土壌の掘削除去および良質土による埋戻しに要する費用については、工場跡地を土壌が汚染する前の状態に回復するために要するものであり、資本的支出に該当しないことから、修繕費に該当するとしている。
 また、遮水壁の埋設およびアスファルト舗装に要する費用については、「防壁」および「舗装道路」という新たな構築物を取得したようにもみえるが、被害拡大を予防する観点から設置したものであり、いずれも汚染対策終了後も埋設(敷設)した状態を維持するものであることなどから修繕費に該当し、それぞれの工事の完了した日の属する事業年度において損金の額に算入することができるとしている。

浄化設備は土地と一体化  一方、④の浄化設備の取得・設置費用については、土地と一体化しており汚染土壌対策終了時のみならず将来にわたって処分することができない前述の遮水壁やアスファルト舗装とは異なり、汚染土壌対策終了時に処分(除却、転用または売却)することができるものであるため、減価償却資産の取得費用に該当し、減価償却の対象資産として資産計上することとしている。

焼却費用や維持管理費用等は損金算入可  そのほか、②の焼却に要する費用については、汚染土壌の処分のために要するものであり、特に資産計上の必要性について疑義が生ずるものではないため、焼却処分という役務の提供に応じて損金の額に算入することができる。
 また、③の維持管理費等として要する費用についても、汚染土壌対策中の簡易倉庫に係る賃借料のほか、浄化設備の稼動に要するものや汚染土壌の一時保管をするための倉庫の維持・管理等に要するものであり、資産計上の必要性について疑義が生ずるものではない。このため、事業年度終了の日までに債務が確定しているものを当該事業年度において損金の額に算入することができることになる。

税制と企業会計は異なる  ところで、企業会計上は、平成22年4月1日以後開始する事業年度から資産除去債務に関する会計基準が適用されることになる。
 同会計基準は、国際的な会計基準とのコンバージェンスの観点から策定されたもので、平成20年3月31日に企業会計基準委員会(ASBJ)が企業会計基準第18号として公表したものである。
 同会計基準によれば、資産除去債務(有形固定資産の取得、建設、開発または通常の使用によって生じる当該有形固定資産の除去に関わる法律上の義務およびそれに準ずるもの)については、有形固定資産の取得等によって発生した時に負債として計上することになる。
 その一方、資産除去債務に対応する除去費用については、資産除去債務を負債として計上した時に、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加えることになる。資産計上された資産除去債務に対応する除去費用は、減価償却を通じて、当該有形固定資産の残存耐用年数にわたり、各期に費用配分することになる。

税務上は損金算入できず  ただし、企業会計上、資産除去債務に対応する除去費用を関連する有形固定資産の帳簿価額に加えたとしても、税務上は、債務が確定しているとはみなされないため、損金算入することは認められていない(法法22③、法基通2- 2- 12)。

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