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解説記事2010年06月21日 【開示実務解説】 新「四半期決算短信様式・作成要領」の実務対応のポイント(2010年6月21日号・№359)

開示実務解説
新「四半期決算短信様式・作成要領」の実務対応のポイント

 東京証券取引所上場部 企画担当調査役 内藤友則

はじめに

 東京証券取引所(以下「東証」という)では、上場制度整備懇談会ディスクロージャー部会報告「四半期決算に係る適時開示、国際会計基準(IFRS)の任意適用を踏まえた上場諸制度のあり方について」(脚注1)(平成22年3月24日公表)における提言の内容等を踏まえ、四半期決算に係る適時開示の見直しを行うこととし、平成22年6月1日付で新しい「四半期決算短信様式・作成要領」(脚注2)を策定・公表し、平成22年6月末日以降に終了する四半期決算に係る開示から適用することとしている。また、平成22年6月末日以前に終了する四半期決算のうち、改正後規則の施行日以降の発表分から早期適用できることとしている。
 今回の見直しは、近時の環境変化などを踏まえ行うこととしたものであるが、このうち、四半期決算に係る適時開示の見直しについては、東証により開示を求める枠組みを最低限に留め、上場会社自身が、投資者ニーズにおいて四半期決算に必要となる開示時期や開示内容を考え、適切に四半期決算に係る適時開示を行う枠組みを用意したものである。
 実際に、四半期決算情報のより適切な開示が実現するかどうかは、従来にも増して、上場会社の取組みに期待するところが大きいものとなっている。当初は、どのような開示が投資者から求められるか、様々な面で試行錯誤が重ねられることも多いと考えられるが、積極的なIR活動などを通じた上場会社と投資者・株主との間のコミュニケーションを通じて、各社の実状に応じた的確なディスクロージャーが行われる慣行が定着することを期待するものである。
 上場会社においては、今回の見直しの趣旨をご理解いただき、投資者ニーズを十分に考慮し、より適切な適時開示の実現に向けて、積極的にご対応いただくことをお願いしたい。

Ⅰ.四半期決算短信の開示内容
 四半期決算に係る適時開示の内容は、従来、東証からすべての上場会社に対して一律に同様の内容の開示を要請してきたものであるが、東証による画一的な開示を求める枠組みは最小限に留め、原則として、上場会社の判断によって、投資者ニーズに応じて的確な開示内容を選択することができるよう見直しを行うこととした。
 新しい四半期決算短信は、取引所所定の四半期決算短信(サマリー情報)様式とその添付資料で構成される(様式について、表1参照)。
 四半期決算短信には、最低限、上場規則に基づきサマリー情報を開示するとともに、必須の内容として開示が要請される基本財務諸表(要約で可)を添付することが求められる。また、これ以外の開示内容や、四半期決算説明会などの開催などについては、上場会社において、投資者ニーズを踏まえて開示、対応の要否を判断するものとしている。
 なお、東証では、新「四半期決算短信様式・作成要領」を策定・公表するとともに、上場会社の実務上の便宜を図る観点から、新「四半期決算短信様式・作成要領」に則って四半期決算短信を作成する場合の記載例を東証ホームページにおいて公表しているため、ご参照いただきたい(脚注2)。
 上場会社は、IR活動や記者会見等を通じて、投資者・株主との間のコミュニケーションを密接に行い、投資者ニーズを把握するように努めるとともに、これに応える適切な開示を行うことが求められる。

1.サマリー情報  上場会社は、取引所が定める所定の四半期決算短信(サマリー情報)様式により開示することが義務付けられるが、従来のサマリー情報との主な変更点は、次のとおりである。

① 表題等部分に以下の情報を追加
 ・開示資料の表題に会計基準・連結非連結の
 別の表示
 ・四半期決算補足説明資料の作成有無の表示
 ・四半期決算説明会の開催有無の表示

 四半期決算補足説明資料の作成有無および四半期決算説明会の開催有無については、四半期決算短信の開示時点において、作成または開催を予定している場合についても、「有」として表示していただくこととなるため、留意されたい。

② 四半期レビュー手続の実施状況に関する表示を要請
 四半期決算短信において開示される四半期財務諸表は、金融商品取引法上の四半期レビュー手続の対象ではないため、投資者に対して注意喚起を行う観点から、サマリー情報において四半期レビュー手続の実施状況を表示することが求められる。
 なお、四半期レビュー手続に関して公認会計士等との間に大きな意見の隔たりがあるなど、投資者に誤解が生じ得る特段の事情があるときには、その事情等について開示することが考えられる。また、四半期報告書の提出と同日に四半期決算短信の開示を行う場合などは、一般に、四半期レビュー手続が完了していることから、その旨をサマリー情報において表示することが考えられる。

③ 開示対象ファイルの明確化
 今回、PDFファイルに加えて、XBRLファイルを作成し、開示することを明確化している。
 なお、TDnet利用時の留意点として、サマリー情報のPDFファイルは、文書作成ソフト(Word等)により作成したファイルを登録することとなるため、留意されたい(脚注3)。

④ サマリー情報の記載事項の明確化
 今回、サマリー情報による開示を上場規則上義務付けることとしているが、これに伴いサマリー情報に記載する事項を明確化している。
 具体的には、サマリー情報の1頁目に「3.連結業績予想」までを記載することとしたほか、任意でハイライト情報や個別情報など投資者の投資判断上有用な情報を追加することができることを明確化している(業績予想や配当予想の取扱いは従前どおりの取扱いとなる)。
 なお、サマリー情報を作成するにあたっては、東証の定める記載上の注意に従って開示することが必要となるため、留意されたい。

2.添付資料  四半期決算短信(添付資料)の内容は、東証から必須の内容として開示を要請する事項を除いて、上場会社は、自社の開示に対する投資者ニーズに応じて開示の要否を判断することが可能となる(表2・表3参照)。

Ⅱ.四半期決算短信の開示時期
 四半期決算に係る適時開示の時期は、従来、東証からすべての上場会社に対して一律に、四半期末後30日以内に開示することが望ましいものとして早期開示を要請してきたが、具体的な開示時期の目安を示すことは取り止め、投資者ニーズに応じた適切な時期を選択し、開示することができるよう見直しを行うこととした。
 上場会社は、IR活動や記者会見等を通じて、投資者・株主との間のコミュニケーションを密接に行い、投資者ニーズを把握するように努めるとともに、これに応える適切な時期に開示することが求められる。
 なお、上場会社内部における重要な会社情報の滞留を解消する観点や、投資者に早期に情報提供を行うことは一般的に望ましいと考えられることから、開示可能となった段階で速やかに開示することが望まれることはいうまでもない。
 また、上場規則上、四半期決算の内容が定まった場合は直ちに開示しなければならないという義務を変更することは予定していない。そのため、金融商品取引法上、四半期報告書を四半期末後45日以内に提出しなければならないことから(提出期限延長に係る財務局長等の承認を受けた場合を除く)、遅くとも、四半期報告書の提出までには、四半期決算に係る適時開示を行うことが必要となる。ご留意いただきたい。

Ⅲ.四半期決算短信のその他の取扱い
 新しい四半期決算短信におけるその他の取扱いのポイントを掲げると、次のとおりである。

① 追加開示の取扱いの明確化
 今回、四半期決算に係る投資者の投資判断上有用な情報を早期に開示する観点から、まず必須の内容について四半期決算短信の開示をした後、四半期報告書を提出するまでの間、その他有用な情報の開示が可能となった段階で、四半期決算短信の追加開示ができることを明確化することとした。

② 軽微な変更・訂正の簡略化
 従来、四半期決算短信を開示した後に、四半期報告書との差異が生じる場合などは、直ちに訂正開示することを一律に求めていたが、今回、上場会社・投資者双方の実務を合理化する趣旨から、四半期報告書の提出前に変更・訂正すべき事情が生じた場合、投資者の投資判断上重要な変更・訂正である場合を除いて、四半期報告書の提出後遅滞なく訂正開示することで差し支えないことを明確化することとした。
 これにより、たとえば、開示した指標値の0.01%を超えない訂正などは、重要な訂正ではないものとして、その都度開示する必要がなくなることになるため、留意されたい。
 また、訂正対象についても、サマリー情報および必須の内容として開示を要請している事項に限ることとし、これ以外の部分の訂正は、上場会社の判断により行うように整理することとした。
 なお、投資者の投資判断上重要な訂正については直ちに訂正開示することが義務付けられるため、留意されたい。

③ 説明会資料の公平な情報提供
 上場会社が、四半期決算に係る補足説明資料を作成し、四半期決算説明会において第三者に提供する場合には、自社ホームページに掲載するなどの方法により当該資料の投資者への公平な情報提供に努めることを企業行動規範上の努力義務として設けることとした。
 なお、決算説明会は、上場会社において投資者ニーズに応じて開催するものであり、東証として開催を強制・要請しているものではないことに留意されたい。


脚注
1 上場制度整備懇談会ディスクロージャー部会報告の全文および同部会の審議状況は、東証ホームページhttp://www.tse.or.jp/(HOME>制度・規則>上場制度の総合整備>ディスクロージャー部会)を参照。
2 「四半期決算短信様式・作成要領」および「記載例」は、東証ホームページhttp://www.tse.or.jp/(HOME>上場商品>決算情報の適時開示制度>四半期決算)を参照。なお、パブリック・コメントに付した原案を紹介するものとして、拙稿「四半期決算に係る適時開示の見直し等に向けた制度要綱の公表とその概要」本誌353号16頁参照。
3 TDnetオンライン登録サイトにおいて作成したサマリー情報のXBRLファイルは、当面、旧様式のままとなっているため、PDFファイルを作成することはできないが、XBRLファイルは、旧様式のまま当該ファイルを登録することとなる。

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