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解説記事2011年02月14日 【ニュース特集】 Q&Aで読み解く公認会計士制度の見直し(2011年2月14日号・№390)

実務経験がなくても企業財務会計士になれるケースが
Q&Aで読み解く公認会計士制度の見直し

 会計分野のプロフェッショナルとなる新たな資格である「企業財務会計士」の創設などを盛り込んだ公認会計士法等の一部改正案が今通常国会に提出される運びだ。金融庁に設置されている「公認会計士制度に関する懇談会」(座長:東祥三内閣府副大臣)は、公認会計士試験に合格しても資格を取得できない多くの待機合格者(いわゆる就職浪人)をできるだけ出さない方針のもと、公認会計士制度の見直しに着手。昨年8月4日に同懇談会の中間報告書を公表し、その後、今年の1月21日に開催された同懇談会において公認会計士試験・資格制度の見直し案が了承されている(本誌388号11頁参照)。
 今回の特集では、「税理士は企業財務会計士になれるのか」「企業財務会計士に実務経験は必要か」「公認会計士と企業財務会計士のダブル資格の取得は可能か」など、取材により判明した事項も含め、公認会計士試験・資格制度の見直しの概要をお伝えする。

試験制度の見直し編

Q 新しい公認会計士制度はいつから実施されるのでしょうか?
A
平成25年から実施される運びとなっています。政府は、今通常国会に「資本市場及び金融業の基盤強化のための金融商品取引法等の一部を改正する法律案(仮称)」を3月中旬にも提出する方針。同法案の中に公認会計士法等の一部を改正する法律案も含まれます。
 なお、今回の見直しの概要はのとおりです。


Q 今後の合格者は減少していく方向なのでしょうか?
A
金融庁によれば、監査法人による採用の低迷など、平成23年以降の当面の合格者数は1,500人から2,000人程度を目安として運用されることが望ましいとしています。平成22年公認会計士試験の現行制度での合格者は1,923人ですので、多少減少することが予想されます。


Q 現行の論文式試験の合格者も、新制度の新しい資格である「企業財務会計士」に
なれるのでしょうか?
A
試験制度の枠組み自体は変更ありませんので、一定の実務・教育経験が2年以上あれば、「企業財務会計士」になることはできる方向となっています。

Q 公認会計士試験の試験科目について、何か変更点はあるのでしょうか? 
英語などが試験科目に入るのですか?
A
試験科目については、何ら変更はありません。従来どおりです。ただし、幅広い知識や教養を問えるよう出題内容を工夫することとされています。具体的には、公認会計士・監査審査会で決めることになりますが、企業内でのIT活用のウェイトが高まっている状況を踏まえ、IT関連知識を問う問題や将来的な国際会計基準の導入を見据え、英語などの問題を一部取り入れる方向のようです。

Q 現行の短答式試験は年2回実施されていますが、1回になるのでしょうか?
A
1回になる方向です。法律の改正事項ではないので、今後、公認会計士・監査審査会が決定することになります(公認会計士法では毎年1回以上行うこととされています)。年2回の短答式試験の実施が受験者を増加させ、結果的に待機合格者の増加を招いたといった指摘などもあり、見直される方向になったわけです。

Q 短答式試験の合格と論文式試験の科目合格の有効期間については、
どのような見直しが行われるのでしょうか?
A
現行では、短答式試験の合格および論文式試験の科目合格の有効期間については、それぞれの合格から2年間とされていますが、短答式試験の合格から1年に短縮されます。趣旨としては、短期での合格を促す意味があるようです。
 ただし、就職を促すため、一定の実務、たとえば、資本金1億円以上の企業等における公認会計士等として必要な知識・技能の習得に資する実務に従事している者については、有効期間を5年間延長し、合計で6年間を有効期間として認めることとしています。

Q 科目合格の有効期間が延長される場合の一定の実務として例示されている「資本金1億円以上の企業等における公認会計士等として必要な知識・技能の習得に資する実務」とは具体的にはどのような実務のことですか?
A
経理・財務部に配属されていなくても、たとえば、総務部や法務部といった部署でも一定の実務に該当することになる方向です。具体的には、政令あるいは内閣府令で規定されることになりそうですが、公認会計士等の仕事に関係する部署であれば、幅広く認められることになりそうです。

Q 今後、会計専門職大学院への入学を考えています。短答式試験の免除方法が見直されると聞きました。どのようになるのでしょうか?
A
現行、会計専門職大学院修了者については、短答式試験の財務会計論、管理会計論、監査論が免除されます。短答式試験については、科目合格の概念がないため、残りの1科目である企業法については、会計専門職大学院修了後に試験を受けて合格しなければなりません。今回の見直しでは、在学中であっても企業法の合格を認め、この場合には、修了後すぐに短答式試験の4科目に合格することになります。したがって、早期に論文式試験に取り組むことが可能になります。

資格制度の見直し編

Q 新しい「企業財務会計士」とは、どのような資格なのでしょうか?
A
企業の会計分野のプロフェッショナルという位置付けの資格です。業務内容は、①財務書類の調製、財務に関する調査・立案・相談、②監査業務の補助です。資格要件としては、論文式試験の合格と一定の実務・教育経験が2年以上必要です。公認会計士と同様、日本公認会計士協会への登録が必要であり、継続的専門研修(CPE)も義務付けられます。

Q 企業財務会計士になるための「一定の実務・教育経験2年以上」とはどのようなものでしょうか? 実務経験がなくても企業財務会計士になれるのでしょうか?
A
公認会計士の資格要件として認められる実務要件のほか、たとえば、①資本金1億円以上の企業等における会計実務、②一定の会計専門職大学院の修了などが該当します。
 ②については、実務に該当するカリキュラム、たとえば、会計専門職大学院で行う事例研究やインターンなどをメルクマールに今後決められる予定となっています。したがって、一定の要件を満たすことになる2年間の会計専門職大学院を修了し、論文式試験に合格すれば、実務経験がなくても、企業財務会計士になることができます。ただし、2年間の会計専門職大学院を修了しても、公認会計士になるための実務経験年数には、最高で1年しか年数に算入することができません。留意したい点です。

Q 企業財務会計士になれば、税理士登録もできるのでしょうか?
A
できません。資格制度の枠組みは変わっていませんので、これまでどおり、税理士登録をするには、公認会計士の資格が必要です。

Q 税理士は、企業財務会計士に登録することができるのでしょうか?
A
そのままではできません。公認会計士試験の論文式試験まで合格し、一定の実務・教育経験が2年以上あることが必要です(なお、税理士の場合、短答式試験の財務会計論、論文式試験の租税法については免除されます)。

Q 企業財務会計士から公認会計士にステップアップするにはどのようなことが必要になるのでしょうか?
A
これまでどおり、実務補習+修了考査合格と実務経験が必要になります。しかし、これまで2年以上だった実務経験が3年以上と厳しくなっているので留意したい点です。この点は、諸外国の基準に合わせたものです。
 その一方、実務経験となる業務(参照)の弾力化が行われます。たとえば、資本金5億円未満であっても上場企業など、監査を受ける企業における会計実務であれば、実務経験の年数に算入することができるようになる方向です。


Q 企業財務会計士と公認会計士の両方に登録することは可能なのでしょうか?
A
できません。たとえば、企業財務会計士から公認会計士になるには、企業財務会計士について登録抹消しなければなりません。逆のケースも同様です。

公認会計士制度の見直し編

Q 公認会計士の資格要件が見直されると聞きました。
大学を卒業しなければ、公認会計士試験を受けることができなくなるのでしょうか?
A
大学の卒業要件までは求められません。しかし、大学等高等教育機関での一定の科目履修が資格要件に追加される見込みとなっています。

Q 私は大学の文学部に通っていますが、会計関係の科目を履修しなければ、公認会計士の試験を受けることができなくなるのでしょうか?
A
会計等の科目の履修は求められません。今回の公認会計士制度の見直しでは、大学等高等教育機関での一定の科目履修が求められますが、これについては、一般教養の科目について、一定以上の単位数を求める方向のようです。この場合、留意しなければならないのは、会計等の科目についての単位数は除かれるということです。これは、会計等の専門科目については公認会計士試験で確認することができるためです。このため、社会人・公認会計士として必要な一般教養科目の履修が必要になります。

Q 日本公認会計士協会による登録抹消の事由に新しく追加された項目とは何ですか?
A
今回、公認会計士等が一定期間所在不明である場合には、日本公認会計士協会が登録抹消できる仕組みに変更されます。公認会計士として業務を行うには、同協会に登録することが必要です。同協会によれば、平成20年度の継続的専門研修(CPE)義務不履行者で氏名等が公表された120名のうち、90名については、連絡先不明などにより、義務不履行の理由がわかっていない状況です。たとえば、税理士法や社会保険労務士法では、資格登録を受けた者については、2年以上継続して所在が不明であれば登録を取り消すことができるとされていますが、現行の公認会計士法ではこのような規定はなく、現在、同協会では所在不明の会員についても登録取消しができないといった弊害が指摘されています。

開示の見直し編

Q 企業内の公認会計士や企業財務会計士の人数等を有価証券報告書で開示することになるのでしょうか?
A
上場会社等に対して、公認会計士や企業財務会計士などの会計専門家の活用等の促進やその状況の開示に関する規定が創設される予定です。ただ単に、会計専門家の人数を記載するのではなく、企業が財務諸表への信頼性向上に向け、どのような努力を行っているのか、あるいは開示の適正化に向けた施策をどのように行っているかなどの記載を求めることになるようです。

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