解説記事2012年04月02日 【税務マエストロ】 タックスヘイブン対策税制-適用除外基準①(2012年4月2日号・№445)
税務マエストロ
税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座
今週のマエストロ&テーマ
タックスヘイブン対策税制-適用除外基準①
#37 品川克己
日本公認会計士協会租税調査会専門委員(国際租税専門部会)
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース(マネージング・ディレクター)
略歴 89年より大蔵省主税局に勤務。90年7月より同国際租税課にて国際課税関係の政策立案・立法及び租税条約交渉等に従事。96年ハーバード・ロースクールにて客員研究員として日米租税条約について研究。97年より00年までOECD租税委員会に主任行政官として出向(在フランス)し、「OECD移転価格ガイドライン」及び「OECDモデル条約」の改定、及び関連会議の運営に従事。01年9月財務省を辞職し現職。
次回のテーマ
#38 経営戦略に応える企業再編成税制 税理士 朝長英樹 経営戦略の1つとして組織再編成税制を活用できる方法を、同税制等の創設を主導した筆者が事例形式で解説する。
※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
e-mail:ta@lotus21.co.jp
マエストロの解説 日本企業が海外に保有する子会社が、その実効税率負担が20%以下となり、タックスヘイブン対策税制の対象となる特定外国子会社等に該当する場合には、原則として合算課税の対象となる。しかしながら、その子会社(特定外国子会社等)が現地で合理性のある事業を実態的に行っていると認められる場合には、タックスヘイブン対策税制の適用から除外される(つまり合算課税の対象とならない)こととされている。この判断基準は、「適用除外基準」として法令上明記されているが、曖昧な基準であることから実務的には問題となることが多いところである。
1 適用除外基準―総論
(1)概 要 外国関係会社が特定外国子会社等に該当する場合には、原則として、タックスヘイブン対策税制の合算課税の対象となるのであるが、一定の要件を満たした場合には、合算課税の対象とならない(措法66の6④)。つまり、タックスヘイブン対策税制の適用から除外されることから、一般に、この一定の基準は「適用除外基準」と呼ばれている。
適用除外基準は、①事業基準、②実体基準、③管理支配基準、④所在地国基準、⑤非関連者基準の5つの基準であるが、このすべて(④所在地国基準又は⑤非関連者基準は業種に応じていずれかが適用される)を満たした場合に、適用除外となるのであるが、この基準の内容が抽象的であることから、実務上、適用基準の充足について議論となる場合が多い。
この適用除外基準の趣旨は、日本企業の正常な海外進出を阻害しないことにある(脚注1)。タックスヘイブン対策税制の制度趣旨は租税回避防止にあるため、特定外国子会社等が、たとえ現地での租税負担が低くても、租税負担軽減のために存在しているのではなく、その存在に経済合理性がある(つまり租税回避でない)のであれば、あえて合算課税の対象とすべきではないとの考え方によるものである。したがって、適用除外基準は、租税回避ではないことの証明であり、これを具体的な基準としたものと捉えることもできる。
なお、税負担の低い国に子会社を設けることを性悪説的にとらえ、すべての外国子会社を合算課税の対象とする、租税負担の中立性を重視する考え方がある。我が国のタックスヘイブン対策税制もこの考え方に偏向し、呼称も「外国子会社合算税制」に変更すべきとの意見もあるが、租税回避防止を趣旨としないのであれば、適用除外基準の必要性も認められなくなろう。また、タックスヘイブン対策税制は、そもそも租税回避防止を趣旨とした租税特別措置であり、その趣旨、制度として国会で成立しているのであるから、国会での議論を経ずに、制度の内容を一方的に変更することはできないはずである。ましてや、呼称を変更することで、タックスヘイブン対策税制の趣旨、内容を変更することはできないであろう。
(2)適用除外基準の全体像 適用除外基準は、前頁の図にあるように、4段階の種類の基準で構成されている。このすべてを満たした場合に、はじめて合理性のある事業を実態的に行っていると認められることとなる。すべて満たしている場合に、合算課税が行われないこととなる。
2 適用除外基準―個別論点
(1)事業基準 事業基準は、特定外国子会社等の営む主たる事業が、次のものでないことを求める基準である。
・株式(出資を含む)もしくは債券の保有:いわゆる持株会社
・工業所有権その他の技術による生産方式およびこれに準ずるもの(当該権利に関する使用権を含む。)もしくは著作権(出版権および著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の提供:ロイヤルティ受取会社など
・船舶もしくは航空機の貸付:船舶、航空機リースなど(脚注2)
これらの事業は、あえて日本国外で行わなくてもよいのではないか、つまり、国外で行うことの経済合理性が希薄であるとの考え方によるものである。しかし、海外のグループ子会社を統括する地域統括会社がグループ会社からの配当を受領するケースは多く存在しており、これらが持株会社と認定されれば、その時点で事業基準を満たさないこととなる。持株会社なのか統括会社(サービス提供)なのかを判定する基準が不明確であることから、恣意的な認定、課税につながることも否定できない基準でもある。
(その他の基準については、次号以降解説)
記事に関連するお問い合わせ先 記事に関するお問い合わせは週刊「T&Amaster」編集部にお寄せください。執筆者に質問内容をお伝えいたします。
TEL:03-5281-0020 FAX:03-5281-0030 e-mail:ta@lotus21.co.jp
※なお、内容によっては回答いたしかねる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
脚注
1 制度導入時の「昭和53年度の税制改正に関する答申」には次のように述べられている。「正常な海外投資活動を阻害しないため、所在地国において独立企業としての実体を備え、かつ、それぞれの業態に応じ、その地において事業活動を行うことに十分な合理性があると認められる海外子会社は適用除外とする。」
2 租税特別措置法第66条の6第3項に規定する「船舶若しくは航空機の貸付け」とは、いわゆる裸用船(機)契約に基づく船舶(または航空機)の貸付けをいい、いわゆる定期用船(機)契約又は航海用船(機)契約に基づく船舶(又は航空機)の用船(機)は、これに該当しない(措通66の6-15)。
今週のマエストロ&テーマ
タックスヘイブン対策税制-適用除外基準①
#37 品川克己
日本公認会計士協会租税調査会専門委員(国際租税専門部会)
税理士法人プライスウォーターハウスクーパース(マネージング・ディレクター)
略歴 89年より大蔵省主税局に勤務。90年7月より同国際租税課にて国際課税関係の政策立案・立法及び租税条約交渉等に従事。96年ハーバード・ロースクールにて客員研究員として日米租税条約について研究。97年より00年までOECD租税委員会に主任行政官として出向(在フランス)し、「OECD移転価格ガイドライン」及び「OECDモデル条約」の改定、及び関連会議の運営に従事。01年9月財務省を辞職し現職。
次回のテーマ
#38 経営戦略に応える企業再編成税制 税理士 朝長英樹 経営戦略の1つとして組織再編成税制を活用できる方法を、同税制等の創設を主導した筆者が事例形式で解説する。
※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
e-mail:ta@lotus21.co.jp
マエストロの解説 日本企業が海外に保有する子会社が、その実効税率負担が20%以下となり、タックスヘイブン対策税制の対象となる特定外国子会社等に該当する場合には、原則として合算課税の対象となる。しかしながら、その子会社(特定外国子会社等)が現地で合理性のある事業を実態的に行っていると認められる場合には、タックスヘイブン対策税制の適用から除外される(つまり合算課税の対象とならない)こととされている。この判断基準は、「適用除外基準」として法令上明記されているが、曖昧な基準であることから実務的には問題となることが多いところである。
1 適用除外基準―総論
(1)概 要 外国関係会社が特定外国子会社等に該当する場合には、原則として、タックスヘイブン対策税制の合算課税の対象となるのであるが、一定の要件を満たした場合には、合算課税の対象とならない(措法66の6④)。つまり、タックスヘイブン対策税制の適用から除外されることから、一般に、この一定の基準は「適用除外基準」と呼ばれている。
適用除外基準は、①事業基準、②実体基準、③管理支配基準、④所在地国基準、⑤非関連者基準の5つの基準であるが、このすべて(④所在地国基準又は⑤非関連者基準は業種に応じていずれかが適用される)を満たした場合に、適用除外となるのであるが、この基準の内容が抽象的であることから、実務上、適用基準の充足について議論となる場合が多い。
この適用除外基準の趣旨は、日本企業の正常な海外進出を阻害しないことにある(脚注1)。タックスヘイブン対策税制の制度趣旨は租税回避防止にあるため、特定外国子会社等が、たとえ現地での租税負担が低くても、租税負担軽減のために存在しているのではなく、その存在に経済合理性がある(つまり租税回避でない)のであれば、あえて合算課税の対象とすべきではないとの考え方によるものである。したがって、適用除外基準は、租税回避ではないことの証明であり、これを具体的な基準としたものと捉えることもできる。
なお、税負担の低い国に子会社を設けることを性悪説的にとらえ、すべての外国子会社を合算課税の対象とする、租税負担の中立性を重視する考え方がある。我が国のタックスヘイブン対策税制もこの考え方に偏向し、呼称も「外国子会社合算税制」に変更すべきとの意見もあるが、租税回避防止を趣旨としないのであれば、適用除外基準の必要性も認められなくなろう。また、タックスヘイブン対策税制は、そもそも租税回避防止を趣旨とした租税特別措置であり、その趣旨、制度として国会で成立しているのであるから、国会での議論を経ずに、制度の内容を一方的に変更することはできないはずである。ましてや、呼称を変更することで、タックスヘイブン対策税制の趣旨、内容を変更することはできないであろう。
(2)適用除外基準の全体像 適用除外基準は、前頁の図にあるように、4段階の種類の基準で構成されている。このすべてを満たした場合に、はじめて合理性のある事業を実態的に行っていると認められることとなる。すべて満たしている場合に、合算課税が行われないこととなる。
2 適用除外基準―個別論点
(1)事業基準 事業基準は、特定外国子会社等の営む主たる事業が、次のものでないことを求める基準である。
・株式(出資を含む)もしくは債券の保有:いわゆる持株会社
・工業所有権その他の技術による生産方式およびこれに準ずるもの(当該権利に関する使用権を含む。)もしくは著作権(出版権および著作隣接権その他これに準ずるものを含む。)の提供:ロイヤルティ受取会社など
・船舶もしくは航空機の貸付:船舶、航空機リースなど(脚注2)
これらの事業は、あえて日本国外で行わなくてもよいのではないか、つまり、国外で行うことの経済合理性が希薄であるとの考え方によるものである。しかし、海外のグループ子会社を統括する地域統括会社がグループ会社からの配当を受領するケースは多く存在しており、これらが持株会社と認定されれば、その時点で事業基準を満たさないこととなる。持株会社なのか統括会社(サービス提供)なのかを判定する基準が不明確であることから、恣意的な認定、課税につながることも否定できない基準でもある。
(その他の基準については、次号以降解説)
記事に関連するお問い合わせ先 記事に関するお問い合わせは週刊「T&Amaster」編集部にお寄せください。執筆者に質問内容をお伝えいたします。
TEL:03-5281-0020 FAX:03-5281-0030 e-mail:ta@lotus21.co.jp
※なお、内容によっては回答いたしかねる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
脚注
1 制度導入時の「昭和53年度の税制改正に関する答申」には次のように述べられている。「正常な海外投資活動を阻害しないため、所在地国において独立企業としての実体を備え、かつ、それぞれの業態に応じ、その地において事業活動を行うことに十分な合理性があると認められる海外子会社は適用除外とする。」
2 租税特別措置法第66条の6第3項に規定する「船舶若しくは航空機の貸付け」とは、いわゆる裸用船(機)契約に基づく船舶(または航空機)の貸付けをいい、いわゆる定期用船(機)契約又は航海用船(機)契約に基づく船舶(又は航空機)の用船(機)は、これに該当しない(措通66の6-15)。
当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。
週刊T&Amaster 年間購読
新日本法規WEB会員
試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。
人気記事
人気商品
-

-

団体向け研修会開催を
ご検討の方へ弁護士会、税理士会、法人会ほか団体の研修会をご検討の際は、是非、新日本法規にご相談ください。講師をはじめ、事業に合わせて最適な研修会を企画・提案いたします。
研修会開催支援サービス -















