解説記事2015年03月09日 【ニュース特集】 税理士業をめぐるトラブル、最新の裁判事例を一挙紹介!(2015年3月9日号・№585)
非上場株式の評価に関する助言義務が問題となった事例も
税理士業をめぐるトラブル、最新の裁判事例を一挙紹介!
本誌でもたびたびお伝えしているように、税理士や税理士法人が多額の損害賠償を請求されるなど、民事裁判の当事者となるケースが後を絶たない。本特集では、税理士や税理士法人が裁判の当事者となった事件で、ここ最近判決が下された裁判事例を3つ紹介する。1つめは、税理士法人が所有する顧問先の決算書について、顧問先の株主に対し開示する義務があるか否かが問題となったもの。2つめは、依頼者と税理士法人の間で締結された決算・税務申告などの支援業務に「依頼者が保有する株式の評価に関する助言・説明義務」が含まれるか否かが問題となったものだ。さらに、3つめは、税理士がコンサル会社との間で締結した税務顧問先の紹介業務契約をめぐるトラブルが訴訟に発展した事例を紹介する。
税理士法人が持つ顧問先決算書、顧問先株主への開示義務が問題に
最初に紹介する裁判事案(事例1①)は、原告相続人がX会社(原告相続人が40%、被相続人が10%の出資持分を持つ非上場会社)の株主であることを理由として、X会社の決算書作成業務を行っていた被告税理士法人に対し、X社の決算書の開示を求めるとともに、被告税理士法人が原告相続人に対しX社の決算書の開示を拒絶したことが不法行為を構成するなどと主張して、被告税理士法人に対し損害賠償を請求した訴訟だ(図1参照)。
税理士法人、守秘義務を理由に開示拒否 この裁判の発端は、原告相続人(被相続人の子)と他の法定相続人(被相続人の後妻。原告相続人は先妻の子)との間で、被相続人の遺産確認に関し対立が生じたことに始まる。
原告相続人は、遺産内容を確認するため、X社の決算書の控えを持つ被告税理法人に対しX社の決算書の開示を請求。しかし、被告税理士法人は、守秘義務などを理由に原告相続人の開示請求を拒絶していた。そのため、原告相続人は、被告税理士法人に対し決算書の開示を求める裁判のなかで、原告相続人がX社の株主であることを指摘し、被告税理士法人に対しX社の決算書の開示を求める権利があると主張した。一方の被告税理士法人は、税理士としての業務上の責任はその依頼者に対してのみ負うべきものであって、被告税理士法人は依頼者ではない原告相続人に対し何らの義務を負うことはないと反論した。
裁判所、株主であることは決算書開示請求の理由にあたらず
原告相続人の主張に対し裁判所は、被告税理士法人はX社の代表者Aから依頼されてX社の決算書を作成し、その控えを所持しているものであって、被告税理士法人が原告相続人に対してX社の決算書を開示すべき根拠があるとは認められないと指摘。また、裁判所は、原告相続人がX社の株主であることを被告税理士法人に対する開示請求の根拠としている点については、原告相続人がX社の株主であるとしても株主の地位に基づく権利の行使は会社に対してされるべきものであって、被告税理士法人が依頼者からの委任事務の処理に関して所持する書類の開示を求める理由とはならないと判断した。
そのうえで、裁判所は、原告相続人の被告税理士法人に対するX会社の決算書の開示請求は理由がないと結論付けた。
税理士が他の相続人に不連絡・不説明でも違法性なし
なお、本裁判事案(事例1②)で原告相続人は、他の法定相続人(被相続人の後妻。X社の代表者A)からの依頼により、相続税の申告手続を原告相続人に説明することなく進めたことなどを理由に、被告税理士法人に対し損害賠償を請求していた(図2参照)。
しかし、この請求に対し裁判所は、相続税の申告手続は共同相続人の全員が共同して行わなければならないものではなく、税理士が依頼者からの委任に基づき相続税の申告書作成事務を行うにあたり、他の法定相続人に対し連絡や説明をしなかったからといって、その行為に不法行為を構成するような違法性があるとはいえないと判断した(東京地裁平成27年2月23日判決)。
原告会社、税理士法人が算定した株価と正当な価格との差額を賠償請求
次に紹介する裁判事案(事例2)は、被告税理士法人が作成した株価算定報告書により、原告会社が所有する非上場株式(以下「本件株式」)をX社に対し著しく不当な価格で売却することになったと主張して、原告会社が被告税理士法人に対し損害賠償を請求していた訴訟だ(図3参照)。
原告会社は、本件株式の正当な価格は1株8,500円であったにもかかわらず、1株5,000円が相当である旨明記された株価算定報告書を被告税理士法人が原告会社に提示し、本件株式の売買単価を1株5,000円に決定させたことが被告税理士法人の債務不履行(および不法行為)に該当すると主張。原告会社は、被告税理士法人に対し、正当な価格との差額の一部(1億円)の損害賠償を請求した。
株式評価の助言・説明義務の有無が問題に 裁判で争点となったのは、原告会社と被告税理士法人の間で締結されていた「業務委託契約(月次決算・税務申告などに関し、被告税理士法人が指導・助言を行うことにより原告会社の各業務を支援する旨の内容)」に基づき、被告税理士法人が原告会社に対し株式の評価について適切な助言、指導などを行う義務があったか否かという点だ。
この点に関し原告会社は、被告税理士法人が業務委託契約に基づき原告会社から業務委託を受けているため、株式の評価について、原告会社に対し適切な助言・指導・説明などを行う義務があったと主張した。
決算支援業務に株式評価の助言は含まれず しかし、この原告会社の主張に対し裁判所は、業務委託契約に基づく被告税理士法人の義務は原告会社の会計や経理業務などであるため、株式評価のような原告会社の所有する資産の評価などの業務は被告税理士法人が業務委託契約に基づいて行う業務には含まれないと指摘。さらに、裁判所は、被告法人が原告会社から継続的な業務委託契約を受けていたことをもって、被告税理士法人が原告法人に対し株式の評価について適切な助言、指導、説明を行う義務を負うということもできないと指摘した。
そのうえで裁判所は、業務委託契約に基づき、被告税理士法人が原告法人に対し株式の評価について適切な助言などを行う義務を負うことはできないから、原告会社の主張は採用できないと判断。原告会社の被告税理法人に対する損害賠償請求をすべて斥けた。(東京地裁平成27年1月28日判決)。
税務顧問先の紹介業務めぐる訴訟、税理士がコンサル会社に賠償請求
最後に紹介する裁判事案(事例3)は、税理士(兼公認会計士)がコンサル会社に対し、複合機のリース契約を締結すれば月額顧問料2万円以上の顧問先を3件以上紹介すると提案したにもかかわらず、条件を満たす顧客が紹介されなかったなどと主張して損害賠償を請求した訴訟だ(図4参照)。
コンサル会社が税理士に対し提案したのは、複合機のリース契約を締結すれば、①顧問先(1件当たり月額顧問料2万円以上、3件以上)を紹介すること、②コンサル会社が月額顧問料の総額について3万円までの差額(3万円と実際の月額顧問料の総額との差額)を補填することなどを内容とするもの。この提案を受け税理士は、①平成24年1月から平成30年1月までの間に顧問先を紹介すること、②月額顧問料の総額が3万円未満の場合はその差額をコンサル会社が補填することなどを内容とする契約をコンサル会社との間で締結するとともに、リース会社との間で複合機のリース契約を締結した。
この契約締結後、税理士は、平成24年1月から同年9月までの間に、コンサル会社から8件程度の顧客の紹介を受けた。ただ、実際に顧問契約の締結に至ったのは、①月額顧問料2万円の顧問先、②月額顧問料1万円の顧問先の2件にとどまっていた。この点に関し税理士は、月額顧問料2万円以上の顧問先を3件以上紹介することが不可能であったにもかかわらず、コンサル会社がそのような条件を提示したなどと主張して、コンサル会社に対し損害賠償を請求する訴訟を提起した。
地裁、顧客紹介が不可能とは認められず 裁判所は、コンサル会社は他の税理士との関係では平成23年10月から平成24年4月までの間に月額顧問料2万円以上の顧客を含む20件以上の顧客を紹介した実績がある点などを指摘。この点を踏まえ裁判所は、仮に「月額顧問料2万円以上の顧客を3件以上紹介する」ことがコンサル会社の債務内容を構成するとしても、契約期間である平成24年1月から平成30年1月までの間に月額顧問料2万円以上の顧客を3件以上紹介することが不可能であったと認めることはできないと判断した。また、裁判所は、月額顧問料の総額が3万円に達するまでコンサル会社がその差額を補填していたことを踏まえれば、短期間で一定数の顧問先が紹介されなければ税理士が不当に損失を被る内容の契約であったとは認められないと判断。税理士のコンサル会社に対する損害賠償請求を斥けた(東京地裁平成26年9月29日判決)。
税理士業をめぐるトラブル、最新の裁判事例を一挙紹介!
本誌でもたびたびお伝えしているように、税理士や税理士法人が多額の損害賠償を請求されるなど、民事裁判の当事者となるケースが後を絶たない。本特集では、税理士や税理士法人が裁判の当事者となった事件で、ここ最近判決が下された裁判事例を3つ紹介する。1つめは、税理士法人が所有する顧問先の決算書について、顧問先の株主に対し開示する義務があるか否かが問題となったもの。2つめは、依頼者と税理士法人の間で締結された決算・税務申告などの支援業務に「依頼者が保有する株式の評価に関する助言・説明義務」が含まれるか否かが問題となったものだ。さらに、3つめは、税理士がコンサル会社との間で締結した税務顧問先の紹介業務契約をめぐるトラブルが訴訟に発展した事例を紹介する。
税理士法人が持つ顧問先決算書、顧問先株主への開示義務が問題に
最初に紹介する裁判事案(事例1①)は、原告相続人がX会社(原告相続人が40%、被相続人が10%の出資持分を持つ非上場会社)の株主であることを理由として、X会社の決算書作成業務を行っていた被告税理士法人に対し、X社の決算書の開示を求めるとともに、被告税理士法人が原告相続人に対しX社の決算書の開示を拒絶したことが不法行為を構成するなどと主張して、被告税理士法人に対し損害賠償を請求した訴訟だ(図1参照)。
税理士法人、守秘義務を理由に開示拒否 この裁判の発端は、原告相続人(被相続人の子)と他の法定相続人(被相続人の後妻。原告相続人は先妻の子)との間で、被相続人の遺産確認に関し対立が生じたことに始まる。
原告相続人は、遺産内容を確認するため、X社の決算書の控えを持つ被告税理法人に対しX社の決算書の開示を請求。しかし、被告税理士法人は、守秘義務などを理由に原告相続人の開示請求を拒絶していた。そのため、原告相続人は、被告税理士法人に対し決算書の開示を求める裁判のなかで、原告相続人がX社の株主であることを指摘し、被告税理士法人に対しX社の決算書の開示を求める権利があると主張した。一方の被告税理士法人は、税理士としての業務上の責任はその依頼者に対してのみ負うべきものであって、被告税理士法人は依頼者ではない原告相続人に対し何らの義務を負うことはないと反論した。
裁判所、株主であることは決算書開示請求の理由にあたらず
原告相続人の主張に対し裁判所は、被告税理士法人はX社の代表者Aから依頼されてX社の決算書を作成し、その控えを所持しているものであって、被告税理士法人が原告相続人に対してX社の決算書を開示すべき根拠があるとは認められないと指摘。また、裁判所は、原告相続人がX社の株主であることを被告税理士法人に対する開示請求の根拠としている点については、原告相続人がX社の株主であるとしても株主の地位に基づく権利の行使は会社に対してされるべきものであって、被告税理士法人が依頼者からの委任事務の処理に関して所持する書類の開示を求める理由とはならないと判断した。
そのうえで、裁判所は、原告相続人の被告税理士法人に対するX会社の決算書の開示請求は理由がないと結論付けた。
税理士が他の相続人に不連絡・不説明でも違法性なし
なお、本裁判事案(事例1②)で原告相続人は、他の法定相続人(被相続人の後妻。X社の代表者A)からの依頼により、相続税の申告手続を原告相続人に説明することなく進めたことなどを理由に、被告税理士法人に対し損害賠償を請求していた(図2参照)。
しかし、この請求に対し裁判所は、相続税の申告手続は共同相続人の全員が共同して行わなければならないものではなく、税理士が依頼者からの委任に基づき相続税の申告書作成事務を行うにあたり、他の法定相続人に対し連絡や説明をしなかったからといって、その行為に不法行為を構成するような違法性があるとはいえないと判断した(東京地裁平成27年2月23日判決)。
原告会社、税理士法人が算定した株価と正当な価格との差額を賠償請求
次に紹介する裁判事案(事例2)は、被告税理士法人が作成した株価算定報告書により、原告会社が所有する非上場株式(以下「本件株式」)をX社に対し著しく不当な価格で売却することになったと主張して、原告会社が被告税理士法人に対し損害賠償を請求していた訴訟だ(図3参照)。
原告会社は、本件株式の正当な価格は1株8,500円であったにもかかわらず、1株5,000円が相当である旨明記された株価算定報告書を被告税理士法人が原告会社に提示し、本件株式の売買単価を1株5,000円に決定させたことが被告税理士法人の債務不履行(および不法行為)に該当すると主張。原告会社は、被告税理士法人に対し、正当な価格との差額の一部(1億円)の損害賠償を請求した。
株式評価の助言・説明義務の有無が問題に 裁判で争点となったのは、原告会社と被告税理士法人の間で締結されていた「業務委託契約(月次決算・税務申告などに関し、被告税理士法人が指導・助言を行うことにより原告会社の各業務を支援する旨の内容)」に基づき、被告税理士法人が原告会社に対し株式の評価について適切な助言、指導などを行う義務があったか否かという点だ。
この点に関し原告会社は、被告税理士法人が業務委託契約に基づき原告会社から業務委託を受けているため、株式の評価について、原告会社に対し適切な助言・指導・説明などを行う義務があったと主張した。
決算支援業務に株式評価の助言は含まれず しかし、この原告会社の主張に対し裁判所は、業務委託契約に基づく被告税理士法人の義務は原告会社の会計や経理業務などであるため、株式評価のような原告会社の所有する資産の評価などの業務は被告税理士法人が業務委託契約に基づいて行う業務には含まれないと指摘。さらに、裁判所は、被告法人が原告会社から継続的な業務委託契約を受けていたことをもって、被告税理士法人が原告法人に対し株式の評価について適切な助言、指導、説明を行う義務を負うということもできないと指摘した。
そのうえで裁判所は、業務委託契約に基づき、被告税理士法人が原告法人に対し株式の評価について適切な助言などを行う義務を負うことはできないから、原告会社の主張は採用できないと判断。原告会社の被告税理法人に対する損害賠償請求をすべて斥けた。(東京地裁平成27年1月28日判決)。
税務顧問先の紹介業務めぐる訴訟、税理士がコンサル会社に賠償請求
最後に紹介する裁判事案(事例3)は、税理士(兼公認会計士)がコンサル会社に対し、複合機のリース契約を締結すれば月額顧問料2万円以上の顧問先を3件以上紹介すると提案したにもかかわらず、条件を満たす顧客が紹介されなかったなどと主張して損害賠償を請求した訴訟だ(図4参照)。
コンサル会社が税理士に対し提案したのは、複合機のリース契約を締結すれば、①顧問先(1件当たり月額顧問料2万円以上、3件以上)を紹介すること、②コンサル会社が月額顧問料の総額について3万円までの差額(3万円と実際の月額顧問料の総額との差額)を補填することなどを内容とするもの。この提案を受け税理士は、①平成24年1月から平成30年1月までの間に顧問先を紹介すること、②月額顧問料の総額が3万円未満の場合はその差額をコンサル会社が補填することなどを内容とする契約をコンサル会社との間で締結するとともに、リース会社との間で複合機のリース契約を締結した。
この契約締結後、税理士は、平成24年1月から同年9月までの間に、コンサル会社から8件程度の顧客の紹介を受けた。ただ、実際に顧問契約の締結に至ったのは、①月額顧問料2万円の顧問先、②月額顧問料1万円の顧問先の2件にとどまっていた。この点に関し税理士は、月額顧問料2万円以上の顧問先を3件以上紹介することが不可能であったにもかかわらず、コンサル会社がそのような条件を提示したなどと主張して、コンサル会社に対し損害賠償を請求する訴訟を提起した。
地裁、顧客紹介が不可能とは認められず 裁判所は、コンサル会社は他の税理士との関係では平成23年10月から平成24年4月までの間に月額顧問料2万円以上の顧客を含む20件以上の顧客を紹介した実績がある点などを指摘。この点を踏まえ裁判所は、仮に「月額顧問料2万円以上の顧客を3件以上紹介する」ことがコンサル会社の債務内容を構成するとしても、契約期間である平成24年1月から平成30年1月までの間に月額顧問料2万円以上の顧客を3件以上紹介することが不可能であったと認めることはできないと判断した。また、裁判所は、月額顧問料の総額が3万円に達するまでコンサル会社がその差額を補填していたことを踏まえれば、短期間で一定数の顧問先が紹介されなければ税理士が不当に損失を被る内容の契約であったとは認められないと判断。税理士のコンサル会社に対する損害賠償請求を斥けた(東京地裁平成26年9月29日判決)。
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