カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2015年03月23日 【未公開裁決事例紹介】 相続税の納付義務承継、期限後申告に正当理由なし(2015年3月23日号・№587)

未公開裁決事例紹介
相続税の納付義務承継、期限後申告に正当理由なし
請求人の主張は相続人間の主観的事情

○亡父に課されるべき相続税の納付義務を承継した審査請求人が、原処分庁の相続税調査を受けて相続税の期限後申告書を提出したことについて、審判所が、当該期限後申告に国税通則法66条1項ただし書に規定する正当な理由はないと判断した事例(平成26年11月7日裁決)。

基礎事実
 イ 被相続人、共同相続人等の概要
 ×××に死亡した本件被相続人の相続(以下「本件相続」という)に係る共同相続人は、本件被相続人の妻A、父Bおよび母Cの3名であり、法定相続分に基づく割合はそれぞれ3分の2、6分の1、6分の1である。
 請求人は、本件被相続人の兄である。
 ロ 請求人が承継した父Bに係る相続税の納付義務  本件相続に係る相続税の法定申告期限は×××であったが、父Bは、法定申告期限までに相続税の申告書を提出しなかった。
 ×××に父Bが死亡したことにより、父Bの相続に係る共同相続人である母Cおよび請求人は、本件相続に係る父Bに課されるべき相続税の納付義務をそれぞれ2分の1の割合で承継した。
 また、×××に母Cが死亡したことにより、母Cの相続に係る単独相続人である請求人は、母Cが承継した本件相続に係る父Bに課されるべき相続税の納付義務を承継した。
 ハ 父Bによる本件相続に係る財産等の調査等  父Bは、請求人に本件相続に係る財産等の調査を依頼し、これを受けた請求人は、平成20年8月か9月頃、本件被相続人が生前代表取締役であった×××の関与税理士である×××を介して、本件相続に係る相続財産の全てを管理していた妻Aに対し、本件相続に係る相続税の申告のために必要であるから、本件相続に係る相続財産および相続税法3条《相続又は遺贈により取得したものとみなす場合》1項各号に規定する財産(以下、同項各号に規定する財産を「みなし相続財産」という)の明細を提示してほしい旨依頼したが、妻Aは、これを提示しなかった。
 妻Aは、×××、父Bおよび母Cを相手方として、×××に対し、本件相続に係る遺産分割の調停を申し立てた(以下、妻Aが申し立てた当該遺産分割の調停を「本件遺産分割調停」という)。
 本件遺産分割調停の申立書の「遺産目録」および当該申立書に添付された「債務及び葬式費用の明細書」と題する各書類(以下「本件遺産目録等」という)には、本件相続に係る財産の種類ごとの価額、債務等の種類ごとの価額およびこれらの各合計額が記載されており、記載された財産の合計額は×××、債務等の合計額は×××である。
 別表2(編注:省略、以下同じ)の順号46の「本件被相続人を受取人とする養老生命共済金」(以下「本件生命共済金」という)は、相続税法3条1項1号に規定する共済金である。
 ニ 原処分に至る経緯等  原処分に係る調査(以下「本件調査」という)の担当者(以下「本件調査担当者」という)は、平成25年11月19日、本件相続に係る父Bに課されるべき相続税の納付義務を承継した請求人に対し、本件相続に係る調査の事前通知をした上で、本件調査を開始した。
 本件調査担当者は、本件調査の結果、本件相続に係る財産および債務等の明細は別表2の「期限後申告書」欄のとおりであり、父Bについて本件相続に係る相続税の申告義務が認められると判断し、平成25年12月20日、請求人に対し、父Bについて相続税の申告が必要となることを指摘し、併せて、期限後申告の勧奨を行った。
 これに対し、請求人は、平成25年12月20日、原処分庁に対し、本件相続に係る父Bの相続税の期限後申告書(以下「本件申告書」という)を提出した。
 本件申告書に記載された財産および債務等の価額は、別表2の「期限後申告書」欄のとおりであり、このうち、順号49の「妻Aが取得したものとみなされる財産」(以下、妻Aが取得したものとみなされる財産を「本件みなし相続財産」という)の価額×××は、相続税法3条1項1号に規定する生命保険金等の価額および同項3号に規定する生命共済契約に関する権利の価額の合計額である。
 原処分庁は、平成25年12月25日付で、本件申告書に基づき、本件相続に係る相続税の無申告加算税の賦課決定処分(平成25年12月25日付×××でされた処分。以下「本件賦課決定処分」という)をした。 

争点および主張
 本事案における争点は、本件相続に係る父Bの相続税の期限内申告書の提出がなかったことについて、通則法66条1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当するか否か。当事者の主張は、のとおり。

【表】
請 求 人 原 処 分 庁
 以下のとおり、父Bは、法定申告期限日までに本件みなし相続財産の内容および価額の全容を知ることができなかったものであり、このような事情は、真に納税者の責めに帰することのできない事情であり、無申告加算税を賦課することが不当または酷になるものであるから、本件相続に係る父Bの相続税の期限内申告書の提出がなかったことについて、通則法66条1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当する。
(1)父Bは、本件生命共済金以外にもみなし相続財産となる生命保険金等があることは分かっていたので、本件相続に係る相続税の申告の必要性を検討するため、平成20年8月か9月頃、×××を通じて、本件被相続人の相続財産の全てを管理していた妻Aに対し、みなし相続財産を含む相続財産の内容を明らかにするよう依頼した。
  しかしながら、妻Aは、×××に対し、みなし相続財産を含む相続財産の内容を明らかにする資料を一切開示しなかったので、父Bは、これらを確認することができなかった。
(2)本件遺産目録等には、本件相続に係る財産の種類および価額が記載されていたが、みなし相続財産については本件生命共済金およびその価額しか記載されておらず、その他のみなし相続財産は記載されていなかったため、父Bは、本件遺産目録等によっても、本件みなし相続財産を含む相続財産の全容を知ることができなかった。なお、父Bは、本件みなし相続財産について、生命保険会社等に対して契約内容の照会を行わなかったが、それは、権利者である妻Aの同意を得ない限り、生命保険会社等は開示請求に応じないと考え、照会を行わなかったものである。
 そして、本件遺産目録等に記載されている財産の価額(本件生命共済金の価額を含む)および債務等の価額を基に、保険金の非課税限度額を考慮して本件相続に係る課税価格を算出すると、課税価格は基礎控除額80,000,000円を下回ることから、父Bは、相続税の申告書を提出しなかったものである。
 以下のとおり、父Bは、みなし相続財産を含む相続財産の全容を把握するために相当の努力を払って調査しても、本件相続に係る課税価格が基礎控除額80,000,000円を上回ることを把握できなかったとは認められず、また、他に正当な理由を認めるに足る事実も認められないから、本件相続に係る父Bの相続税の期限内申告書の提出がなかったことについて、通則法66条1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当しない。
(1)父Bは、請求人に依頼して、×××を通じて、妻Aに対し、みなし相続財産を含む相続財産を確認しようとしたが、妻Aの直接連絡をしてもらいたい旨の求めに応じて自ら妻Aに対して連絡を取ることはなく、これらの財産の確認および相続税の申告手続を進めようとしなかった。
(2)本件遺産目録等に財産の合計額は×××と記載されていることからすると、父Bは、本件相続に係る課税価格が基礎控除額80,000,000円を上回ることは容易に想定できたものであり、この時点で、再度、本件みなし相続財産を含む相続財産の確認および相続税の申告の要否の検討を行っていれば、本件相続に係る相続税の申告書を法定申告期限内に提出することが可能であったと認められるが、父Bがこれらの財産の確認を行った事実は認められない。

審判所の判断
(1)争点
(本件相続に係る父Bの相続税の期限内申告書の提出がなかったことについて、通則法66条1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当するか否か。)
 イ 法令解釈  通則法66条1項に規定する無申告加算税は、申告納税方式を採用する国税において、納税者の判断と責任において行われる申告が、納税義務を確定する上で重要な意義を有していることから、当初から適正に申告し納税した者との間の客観的不公平の実質的な是正を図るとともに、無申告による納税義務違反の発生を防止し適正な申告納税の実現を図り、もって納税の実を挙げようとする行政上の措置であると解され、同項ただし書に規定する期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合を除き、期限後申告書の提出という客観的事実のみによりこれを課することとしているものと解される。
 上記のような無申告加算税の趣旨に照らせば、上記の正当な理由があると認められる場合とは、法定申告期限内に申告できなかったことについて真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があり、上記のような無申告加算税の趣旨に照らしても、なお、納税者に無申告加算税を賦課することが不当または酷になる場合をいうものと解される。
 ロ 判断 
 上記の請求人の主張欄(1)(2)において、請求人が、本件相続に係る父Bの相続税の期限内申告書の提出がなかったことについて主張する事情は、①父Bは、本件被相続人の相続財産の全てを管理していた妻Aに対し、みなし相続財産を含む相続財産の全容を把握するための明細の提示を依頼したが、応じてもらえず、また、②妻Aが申し立てた本件遺産分割調停に際し、妻Aが作成した本件遺産目録等を得たものの、それには本件生命共済金以外のみなし相続財産が記載されておらず、父Bは、記載されていないみなし相続財産を生命保険会社に照会しても回答は得られないと考えたため、本件遺産目録等に記載された財産のみに基づいて相続税の課税価格を計算すると、課税価格は基礎控除額を下回ることになったというものである。
 そこで、上記①および②の各事情を検討すると、上記①の事情は、相統人相互の人間関係に基因する事情であり、また、上記②の事情について、本件において、本件生命保険共済金以外のみなし相続財産の価額が零円であるのかまたはこれを加算して相続税の課税価格を計算しても基礎控除額を上回ることはないと考えるに足りる客観的事情は特に見当たらず、要するに、上記②の事情は、父Bが、相続人相互の人間関係により本件生命共済金以外のみなし相続財産の価額が確認できないままであったが、これをあえて課税価格に加えないと自己判断して課税価格を計算した結果、課税価格が基礎控除額を下回ることとなったというものであるから、相続人相互の人間関係を前提とした父Bの自己判断に係る事情といえる。
 そうすると、請求人が主張する上記各事情は、父Bを含む相続人間の主観的事情をいうものにすぎないから、父Bが本件相続に係る相続税の期限内申告書を提出しなかったことについて、真に納税者の責めに帰することのできない客観的な事情があったということはできない。
 したがって、本件相続に係る父Bの相続税の期限内申告書の提出がなかったことについて、通則法66条1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」には該当しない。
(2)本件賦課決定処分  上記(1)のとおり、本件相続に係る父Bの相続税の期限内申告書の提出がなかったことについて、通則法66条1項ただし書に規定する「正当な理由があると認められる場合」に該当しないところ、原処分庁は、本件申告書の提出により、請求人に対し、加算税の基礎となる税額を×××、これに基づく無申告加算税の額を×××として本件賦課決定処分を行っているので、この点について検討する。 
 上記基礎事実のとおり、父Bの死亡により、母Cおよび請求人は、本件相続に係る父Bに課されるべき相続税額をそれぞれ2分の1の割合で承継することになるから、本件申告書の提出により、父Bが納付すべき相続税額×××(本件申告書の提出により確定した別表1(編注:省略)の「期限後申告」欄の「納付すべき税額」欄の金額)について、母Cおよび請求人が承継する相続税額はそれぞれ×××となり、母Cの死亡により、請求人は、母Cが承継した相続税額×××も承継することになるから、請求人は、父Bの死亡により承継した相続税額×××と母Cの死亡により承継した相続税額×××の各納付義務を負うことになる。
 そして、請求人が納付義務を承継した上記各相続税額について、通則法118条《国税の課税標準の端数計算等》3項の規定を適用して加算税の基礎となる税額を計算するとそれぞれ×××となり、当該各金額について、通則法66条1項および2項の規定を適用して無申告加算税の額を計算するとそれぞれ×××となる。
 そうすると、本件申告書の提出により、請求人が納付すべき無申告加算税の額は、上記各金額を合計した金額×××となり、この金額は、本件賦課決定処分の額×××を下回るから、本件賦課決定処分は、その一部を取り消すべきである。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索