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解説記事2016年12月05日 【ニュース特集】 平成29年度税制改正で相続税の節税策に対応(2016年12月5日号・№669)

ニュース特集
広大地評価の適正化、海外居住を利用した租税回避に対処
平成29年度税制改正で相続税の節税策に対応

 平成29年度税制改正では、相続税の節税策に対処する改正が複数実施されることになりそうだ。与党税制調査会で財務省は、相続税等の財産評価の適正化や納税義務者の範囲の見直しなどを提案。この見直し案は12月8日をめどに取りまとめる平成29年度税制改正大綱に盛り込まれる方向だ。具体的な改正内容は、広大地評価通達については、実際の取引価格(時価)と相続税評価額が大きく乖離する事例に対処するためにその評価方法の見直しを行う。また、非上場株式の評価については株式保有特定会社の判定基準を見直す。さらに、国外財産に対する相続税等の課税範囲については、相続税等が課税されない海外居住期間を現行の5年から10年に延長する見直しを行う。本特集では、財務省が提案した改正内容をお伝えする。

形状や面積に基づく評価で、取引価格(時価)と相続評価額との乖離を解消
 相続税関連の論点のなかで、相続税等の財産評価実務に大きなインパクトがあるといえるのは、広大地の評価方法の見直しだ。
 広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、都市計画法規定の開発行為を行うとした場合に道路や公園などの公共公益的施設用地の負担が必要と認められる土地のことである(財産評価基本通達24-4)。ただし、大規模工場用地に該当するものやマンション等の敷地に適しているものは、広大地の対象から除外されている(同通達)。
 広大地の評価額は、広大地の面する路線の路線価に面積と広大地補正率を乗じることにより計算される。

 広大地補正率の計算式は次のとおりだ。

 その減額効果は、広大地の面積が500㎡であれば57.5%、5,000㎡であれば35%と非常に大きいことから、ある土地が広大地に該当するか否かは相続税等の土地評価実務のなかで重要性が高いものとなっている。
 この広大地評価に関し税務当局が問題視するのが、広大地の形状によっては、その形状を加味して決まる取引価格と相続税評価額が大きく乖離している事例が多数発生しているだけでなく、富裕層の節税策に利用されている事例が発生している点だ(図1参照)。

 この問題に対処するために、平成29年度税制改正では、現行の面積に応じて比例的に減額する評価方法から、各土地の個性に応じて面積・形状に基づき評価する方法に見直し、実際の取引価格と相続税評価額との乖離を解消するとともに、適用要件の明確化を図る改正が実施される。
 見直し後の広大地の評価は、現行の「広大地補正率」に代わって、「形状(不整形・奥行)を考慮した補正率×面積を考慮した規模格差補正率」により計算されることになる。新たな評価方法のキーとなる補正率は、外部専門業者の実態調査に基づき設定される方向だ。

国外財産が課税対象外となる海外居住期間を10年(現行5年)に延長
 現行の相続税法では、被相続人(贈与者)および相続人(受贈者)の住所がいずれも5年を超えて海外にあれば、国内財産は日本の相続税・贈与税が課税される一方で、国外財産は課税の対象外とされている(相法1条の3)。
 この規定を利用して海外への住所移転後5年を経過した後に国外に移した財産を相続・贈与するという租税回避スキームが問題視されるなか、平成29年度税制改正では、この海外居住を利用した租税回避スキームを抑止する改正が実施される方向だ。具体的には、被相続人(贈与者)および相続人(受贈者)が国内に住所を有していたことのある期間の基準が、現行の「5年」から「10年」に延長される(図2参照)。

株式保有特定会社の判定基準に「新株予約権付社債」を追加
 このほか平成29年度税制改正で実施されることが確実な相続税等の財産評価の適正化に関する論点としては、株式保有特定会社の判定基準の見直しがある(図3参照)。

 株式保有特定会社とは、総資産額に占める株式保有割合が50%以上である非上場会社のことで、その株式評価は大会社の原則的な評価方法である類似業種比準方式に代えて純資産価額方式で評価される(財産評価基本通達189(2)等)。この規定は、平成元年頃のバブル期に横行した節税策(上場株式を非上場会社に出資し、その非上場会社の株式を類似業種比準方式で評価することで評価額を極端に圧縮するというもの)に対処するために平成2年の税制改正で創設されたものだ。
 もっとも、現行の株式保有特定会社の判定基準は、評価会社の「株式」の保有割合に着目するため、株価と連動して価額が形成される「新株予約権付社債」を非上場会社に出資し類似業種比準方式を適用するという節税策は現在も可能となっている。この問題に対処するため平成29年度税制改正では、株式保有特定会社の判定基準に「新株予約権付社債」を追加する改正が実施される方向だ。

Column 税制当局主導でまとめた納税環境整備、他の改正項目は?
 今回お伝えした相続税の節税策の対処案は、自民・公明両党の税制調査会における「納税環境整備」の議論のなかで財務省が提案したもの。納税環境整備は、課税の適正化や納税者の利便性向上などを踏まえ税制当局主導でまとめられたものであるため、実務家の強い関心が寄せられる改正項目である。相続税・贈与税以外の項目では、無限責任社員の第二次納税義務の整備(今号8頁参照)や、申告要件の見直し(同9頁参照)、民法における成年年齢引下げ案に対する税制上の対応(同11頁参照)などが盛り込まれており、いずれも平成29年度税制改正大綱に明記される方向だ。

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