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解説記事2017年04月03日 【税務マエストロ】 外国子会社合算税制の総合的見直し③(2017年4月3日号・№685)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
外国子会社合算税制の総合的見直し③

#186 品川克己
PwC税理士法人

略歴 89年より大蔵省主税局に勤務。90年7月より同国際租税課にて国際課税関係の政策立案・立法及び租税条約交渉等に従事。96年ハーバード・ロースクールにて客員研究員として日米租税条約について研究。97年より00年までOECD租税委員会に主任行政官として出向(在フランス)し、「OECD移転価格ガイドライン」及び「OECDモデル条約」の改定、及び関連会議の運営に従事。01年9月財務省を辞職し現職。

次回のテーマ
#187
資産の譲渡等の範囲(4)
税理士 熊王征秀 消費税率引上げ、それに伴う課税の適正化など、消費税法の改正が続く。消費税マエストロが実務ポイントを解説する。

※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。

5 一定所得の部分合算課税制度の範囲の拡充
(1)制度の概要
 経済活動基準のすべてを満たす外国関係会社であっても、一定の所得(受動的所得)については、会社単位ではなく、原則としてその所得についてのみが合算課税の対象とされる(部分合算課税制度)。なお、合算課税にあたってのトリガー税率は定められていないが、適用免除とされるための同様(20%)の基準が定められている。
 この制度は、改正前の資産性所得の合算課税と実質的に同様の制度といえる。会社単位の合算課税は、外国子会社の経済実態に即して課税すべきという考え方から、経済活動基準を満たさない場合には、会社の外形として実体なしとの判断のもと合算課税の対象とするものである一方で、受動的所得の合算課税は、所得の性質に着目して合算課税の対象とする制度である。所得の性質に着目して、合算課税の対象とするのであれば、これら一定の受動的所得のどのような性質が、親会社の所得としてみなして合算課税の対象となるのか、合算課税の対象としなければならないのかの説明が不足しているのではないだろうか。この点、BEPSでの議論や諸外国の類似の制度が根拠として持ち出されるが、当該制度はあくまで日本の法人に対する特例的な課税である。法人税率の引き下げの一方で、いたずらに課税範囲を広げることとなっていないか危惧されるところである。
 また、受動的所得はそもそも経済実体のない事業の結果の果実(に違いない)という考え方に基づいているとも捉えることができる。しかしながら、この考え方は、受動的所得の合算課税が、経済活動基準を満たしている場合であっても合算課税の対象となることと矛盾しているといえよう。さらに、経済活動基準を満たしていながら合算課税の対象とするのであるから、当該受動的所得は本質的に親会社が稼得しているはずのものという考え方ができよう。しかしながら、新たに定められた各受動的所得について、こうした観点からの説明が十分ではないといえよう。より深い議論が必要な論点ではないだろうか。
(2)適用対象となる受動的所得  部分合算課税制度の対象となる受動的所得は、次に掲げる所得とされている(税制改正大綱の文言による)。これは、改正前の資産性所得の合算課税の対象範囲より広く定められているが、その範囲はより明確にされたといえる。
 ① 利 子  次の利子については、対象から除外される。旧制度の資産性所得の合算課税では、債券利子のみが対象とされていたことと比較すると、その範囲が相当広くとらえることとなっている。
(イ)本店所在地国においてその役員又は使用人が金銭の貸付け等を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たす外国関係会社が関連者等に対して行う金銭の貸付けによって得る利子。当該外国関係会社が、多国籍企業のグループ内のファイナンスセンター等(資金調達、貸し付け等を行う企業)に該当するケースが該当すると思われる。
(ロ)上記(イ)の要件を満たす外国関係会社の関連者等である他の外国関係会社が上記(イ)の要件を満たす外国関係会社に対して行う金銭の貸付けによって得る利子
(ハ)本店所在地国の法令に準拠して貸金業を営む外国関係会社で、本店所在地国においてその役員又は使用人が貸金業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たすものが金銭の貸付けによって得る利子。免許を受けた銀行等が該当するものと思われる。したがって、特に銀行業の免許を受けていない場合、たとえばグループ内の資金を株式、債券等の運用を行うようなケースで、利子として得られる部分は合算課税の対象となると思われる。
(ニ)外国関係会社が行う事業に係る業務の通常の過程で得る預金利子。通常の事業の運転資金等を銀行預金としている部分から得られる利子が該当すると思われる。
 ② 配当等  持分割合25%以上等の要件を満たす法人から受ける配当等は対象から除外される。資産性所得の合算課税では、持分割合10%未満の利子が合算課税の対象とされていた。これと比較すると、合算課税の対象範囲は広げられた。また、外国関係会社が取引先の株式を持つことも十分考えられる。こうした場合に受け取る配当は合算課税されることとなるが、その趣旨、必要性は不明確と言える。
 ③ 有価証券の貸付けの対価
 ④ 有価証券の譲渡損益
 持分割合25%以上等の要件を満たす法人の株式等に係る譲渡損益については、対象から除外される。資産性所得の合算課税では10%未満がその対象とされていたことに比し、範囲が拡大されている。
 ⑤ デリバティブ取引損益  次のデリバティブ取引損益については、対象から除外される。
(イ)ヘッジ目的で行われることが明らかなデリバティブ取引等に係る損益
(ロ)商品先物取引業を行う外国関係会社で、本店所在地国においてその役員または使用人がこれらの事業を的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たすものが行う事業から生ずる商品先物取引等に係る損益
 ⑥ 外国為替差損益  外国関係会社が行う事業の通常の過程で生ずる外国為替差損益については、対象から除外される(外国為替相場の変動によって生ずる差額を得ることを目的とする事業を除く)。
 ⑦ 上記①から⑥までに掲げる所得を生ずべき資産から生ずるこれらの所得に類する所得  いわゆる金融資産から生じる所得全般を対象とする一方で、ヘッジ目的で行われることが明らかな取引に係る損益については、対象から除外される。
 ⑧ 有形固定資産の貸付けの対価  次の対価については、対象から除外される。
(イ)主として本店所在地国において使用に供される有形固定資産等の貸付けによる対価
(ロ)本店所在地国においてその役員又は使用人が有形固定資産の貸付けを的確に遂行するために通常必要と認められる業務の全てに従事していること等の要件を満たす外国関係会社が行う有形固定資産の貸付けによる対価
 ⑨ 無形資産等の使用料  外国関係会社が自己開発した無形資産等及び外国関係会社が相当の対価を支払って取得し、又は使用許諾を得た上で一定の事業の用に供している無形資産等に係る使用料については、対象から除外される。いわゆるロイヤリティであるが、資産性所得の合算課税と同様の免除規定となっている。「自己開発」の範囲、「事業の用に供している」ことの概念等、不明確な部分が多い。事業の海外展開において非常に有用な分野であり、今後の明確化が望まれる。
 ⑩ 無形資産等の譲渡損益  外国関係会社が自己開発した無形資産等及び外国関係会社が相当の対価を支払って取得し、又は使用許諾を得た上で一定の事業の用に供している無形資産等に係る譲渡損益については、対象から除外される。
 ⑪ 外国関係会社の当該事業年度の利益の額から上記①から⑩までに掲げる所得種類の所得の金額及び所得控除額を控除した残額に相当する所得  なお、上記の「所得控除額」は、外国関係会社の総資産の額、減価償却累計額及び人件費の額の合計額に50%を乗じて計算した金額とされている。この所得控除額及び前掲の受動的所得を控除した残額ということは、受動的所得以外の所得(一般的な意味での営業利益)の半分が受動的所得として合算課税の対象となるということであろうか。その趣旨、意味が不明確である。
(3)適用免除  次の場合には、部分合算課税は免除される。
① 外国関係会社の当該事業年度の租税負担割合が20%以上である場合。資産性所得の合算課税では、5%がその基準とされていたことに比し、緩和されている。なお、トリガー税率が廃止されたことから、基本的には外国関係会社の税負担割合に関係なく適用されることとなるが、実質的にはこの免除基準である20%がトリガー税率と同様の意義を持つこととなる。
② 少額免除基準:各受動的所得の収入金額の合計が2,000万円以下である場合。資産性所得の合算課税では1,000万円以下が免除基準とされていたことに比し、緩和されている部分と言える。なお、部分合算課税の少額免除に係る適用要件について、少額免除基準を満たす旨を記載した書面の確定申告書への添付要件及びその適用があることを明らかにする資料等の保存要件は廃止された。

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