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解説記事2017年06月05日 【資料解説】 債権法を見直す民法の改正案が国会で成立(2017年6月5日号・№693)

資料解説

約120年ぶりに改正
債権法を見直す民法の改正案が国会で成立

 民法の一部を改正する法律案が5月26日の参議院本会議で可決・成立した。約120年ぶりに民法の債権関係を見直すもの。準備期間を考慮し公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から施行される。なお、衆議院では、同法案の法律番号中「平成27年」を「平成29年」に改める修正が行われている。また、衆議院及び参議院の法務委員会ではそれぞれ附帯決議も付されている(次頁参照)。
税理士報酬の消滅時効は5年に  今回の主な改正は下記の表のとおり。このうち、消滅時効については、職業別の複雑な短期消滅時効についてすべて削除されることになった。
 現行、弁護士報酬は時効期間「2年」との規定があるが、同じ士業である税理士や司法書士等の報酬については規定がないため、原則「10年」とされているなど、分かりづらいものとなっている。このため、原則として、権利を行使することが可能であることを知った時から「5年」に統一される。例えば、税理士報酬などについては、契約の際に支払日が分かることから現行の「10年」から「5年」に短縮されることになる。

【表】改正の主な内容
① 消滅時効について、短期消滅時効の特例をいずれも廃止するとともに、消滅時効の期間について、原則として権利行使が可能であることを知った時から5年に統一する。
② 法定利率について、現行の年5パーセントから年3パーセントに引き下げた上で、市中の金利動向に合わせて変動する制度を導入する。
③ 事業用融資の債務の保証契約は、保証人になろうとする者が個人である場合には、主たる債務者が法人である場合のその理事、取締役等である場合などを除き、公証人が保証意思を確認しなければ、効力を生じないものとする。
④ 不特定多数の者を相手方とする定型的な取引に使用される定型約款に関し、定型約款を契約内容とする旨の表示があれば個別の条項に合意したものとみなすが、信義則に反して相手方の利益を一方的に害する条項は無効とすることを明記するとともに、定型約款を準備した者が取引の相手方の同意を得ることなく定型約款の内容を一方的に変更するための要件等を整備する。
⑤ 意思能力を有しなかった当事者がした法律行為は無効とすること、将来債権の譲渡が可能であること、賃貸借契約の終了時に賃借人は賃借物の原状回復義務を負うものの、通常の使用収益によって生じた損耗等についてはその義務の範囲から除かれることなど、確立した判例法理等を明文化する。


重要資料

民法の一部を改正する法律案に対する附帯決議

 平成29年4月12日
 衆議院法務委員会

 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 他人の窮迫、軽率又は無経験を利用し、著しく過当な利益を獲得することを目的とする法律行為、いわゆる「暴利行為」は公序良俗に反し無効であると明示することについて、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。
二 職業別の短期消滅時効等を廃止することに伴い、書面によらない契約により生じた少額債権に係る消滅時効について、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。
三 中間利息控除に用いる利率の在り方について、本法施行後の市中金利の動向等を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。
四 個人保証人の保護の観点から、以下の事項について留意すること。
 1 いわゆる経営者等以外の第三者による保証契約について、公証人による保証人になろうとする者の意思確認の手続を求めることとした趣旨を踏まえ、保証契約における軽率性や情義性を排除することができるよう、公証人に対しその趣旨の周知徹底を図るとともに、契約締結時の情報提供義務を実効的なものとする観点から、保証意思宣明公正証書に記載すること等が適切な事項についての実務上の対応について検討すること。
 2 保証意思宣明公正証書に執行認諾文言を付し、執行証書とすることはできないことについて、公証人に対し十分に注意するよう周知徹底するよう努めること。
 3 個人保証の制限に関する規定の適用が除外されるいわゆる経営者等のうち、代表権のない取締役等及び「主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者」については、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。
 4 我が国社会において、個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立は極めて重要なものであることを踏まえ、事業用融資に係る保証の在り方について、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。
五 定型約款について、以下の事項について留意すること。
 1 定型約款に関する規定のうち、いわゆる不当条項及び不意打ち条項の規制の在り方について、本法施行後の取引の実情を勘案し、消費者保護の観点を踏まえ、必要に応じ対応を検討すること。
 2 定型約款準備者が定型約款における契約条項を変更することができる場合の合理性の要件について、取引の実情を勘案し、消費者保護の観点を踏まえ、適切に解釈、運用されるよう努めること。
六 消滅時効制度の見直し、法定利率の引下げ、定型約款規定の創設、また、個人保証契約に係る実務の大幅な変更など、今回の改正が、国民各層のあらゆる場面と密接に関連し、重大な影響を及ぼすものであることから、国民全般に早期に浸透するよう、積極的かつ細やかな広報活動を行い、その周知徹底に努めること。


民法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
 平成29年5月25日
 参議院法務委員会

 政府は、本法の施行に当たり、次の事項について格段の配慮をすべきである。
一 情報通信技術の発達や高齢化の進展を始めとした社会経済状況の変化による契約被害が増加している状況を踏まえ、他人の窮迫、軽率又は無経験を利用し、著しく過当な利益を獲得することを目的とする法律行為、いわゆる「暴利行為」は公序良俗に反し無効であると規定することについて、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。
二 職業別の短期消滅時効等を廃止することに伴い、書面によらない契約により生じた少額債権に係る消滅時効について、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。
三 法定利率が変動した場合における変動後の法定利率の周知方法について、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じた対応を検討すること。
四 中間利息控除に用いる利率の在り方について、本法施行後の市中金利の動向等を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。
五 個人保証人の保護の観点から、以下の取組を行うこと。
 1 いわゆる経営者等以外の第三者による保証契約について、公証人による保証人になろうとする者の意思確認の手続を求めることとした趣旨を踏まえ、保証契約における軽率性や情義性を排除することができるよう、公証人に対しその趣旨の周知徹底を図るとともに、契約締結時の情報提供義務を実効的なものとする観点から、保証意思宣明公正証書に記載すること等が適切な事項についての実務上の対応について検討すること。
 2 保証意思宣明公正証書に執行認諾文言を付し、執行証書とすることはできないことについて、公証人に対し十分に注意するよう周知徹底するよう努めること。
 3 個人保証の制限に関する規定の適用が除外されるいわゆる経営者等のうち、代表権のない取締役等及び「主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者」については、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。
 4 我が国社会において、個人保証に依存し過ぎない融資慣行の確立は極めて重要なものであることを踏まえ、個人保証の一部について禁止をする、保証人の責任制限の明文化をする等の方策を含め、事業用融資に係る保証の在り方について、本法施行後の状況を勘案し、必要に応じ対応を検討すること。
六 譲渡禁止特約付債権の譲渡を認めることについては、資金調達の拡充にはつながらないのではないかという懸念や、想定外の結果が生じ得る可能性があることを踏まえ、更に幅広い議論を行い、懸念等を解消するよう努めること。
七 定型約款について、以下の事項について留意すること。
 1 定型約款に関する規定のうち、いわゆる不当条項及び不意打ち条項の規制の在り方について、本法施行後の取引の実情を勘案し、消費者保護の観点を踏まえ、必要に応じ対応を検討すること。
 2 定型約款準備者が定型約款における契約条項を変更することができる場合の合理性の要件について、取引の実情を勘案し、消費者保護の観点を踏まえ、適切に解釈、運用されるよう努めること。
八 諾成的消費貸借における交付前解除又は消費貸借における期限前弁済の際に損害賠償請求をすることができる旨の規定は、損害が現実に認められる場合についての規定であるところ、金銭消費貸借を業として行う者については、資金を他へ転用する可能性が高いことを踏まえれば、基本的に損害は発生し難いと考えられるから、その適用場面は限定的であることを、弱者が不当に被害を受けることを防止する観点から、借手側への手厚い周知はもちろん、貸手側にも十分に周知徹底を図ること。
九 諾成的消費貸借における交付前解除又は消費貸借における期限前弁済の際に損害賠償請求をすることができる旨の規定については、本法施行後の状況を踏まえ、必要に応じ対応を検討すること。
十 消滅時効制度の見直し、法定利率の引下げ、定型約款規定の創設、また、個人保証契約に係る実務の大幅な変更など、今回の改正が、国民各層のあらゆる場面と密接に関連し、重大な影響を及ぼすものであることから、国民全般、事業者、各種関係公的機関、各種の裁判外紛争処理機関及び各種関係団体に早期に浸透するよう、積極的かつ細やかな広報活動を行い、その周知徹底に努めること。
十一 公証人の果たす役割が今後更に重要となることに鑑み、本法施行後の状況も踏まえつつ、公証人及び公証役場の透明化及び配置の適正化、公証役場の経営状況の把握、民間等多様な人材の登用等、公証制度が国民に更に身近で利用しやすいものとなるよう努めること。
十二 消費者契約法その他の消費者保護に関する法律について検討を加え、その結果に基づいて所要の措置を講ずること。

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