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解説記事2018年02月05日 【ニュース特集】 確定申告期に再確認、重加算税の「特段の行動」(2018年2月5日号・№725)

ニュース特集
当局は「税理士に対する所得の秘匿」を重視
確定申告期に再確認、重加算税の「特段の行動」

 重加算税の適否が争われる場合、納税者の関与税理士に対する所得の秘匿や税務調査の際の対応が、「過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動」と認定され、重加算税賦課決定処分が維持されるケースがある。この判断は最高裁平成7年4月28日判決、同平成6年11月22日判決に基づくものといえそうだ。そこで本特集では、国税通則法68条1項の法令解釈を示した当該最高裁判決を再確認するとともに、最高裁判決を受けての課税当局の対応および隠蔽・仮装の事実を認定した最近の公表裁決事例を確認する。

最高裁平成7年4月28日判決の内容は
 重加算税賦課の適否が争われた場合、最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決(以下「最高裁平成7年判決」)の法令解釈を引用した判断がなされるケースが多い。
 最高裁平成7年判決の国税通則法68条1項の解釈は、重加算税を課すためには、過少申告行為そのものが隠蔽、仮装に当たるだけでは足りず、それとは別に隠蔽・仮装と評価すべき行為の存在が必要である。しかし、重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要ではなく、納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税を賦課できるというものだ(下線は編集部)。
顧問税理士に対して所得を秘匿  上記の法令解釈に基づき最高裁平成7年判決では、①上告人Aが3か年にわたって、株式等の売買による多額の雑所得を申告すべきことを熟知しながら、あえて申告書にこれを全く記載しなかったこと、②確定申告書の作成を依頼した顧問税理士から、株式等の売買による所得の有無について質問を受け、資料の提出も求められたにもかかわらず、確定的な脱税の意思に基づいて、その所得のあることを同税理士に対して秘匿し、何らの資料も提供することなく過少な申告を記載した確定申告書を作成させたことが(図1参照)、「当初から所得を過少に申告することを意図した上、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動」に該当すると判断している。

税理士は単なる履行補助者ではない  また、最高裁平成7年判決は、税理士に対する所得の秘匿等の行為と税務官公署に対する所得の秘匿等の行為の関係にも言及。税理士に対する所得の秘匿等の行為を税務官公署に対するそれと同視することはできないが、税理士が税務書類の作成等の事務を行うことについては、納税者の家族や使用人のようにその単なる履行補助者の立場にとどまるものではないとしている。

確定的な意図の下、事後的にも具体的な隠蔽工作を予定
 隠蔽・仮装の有無が争われる事例では、最高裁平成6年11月22日第三小法廷判決(以下「最高裁平成6年判決」)の判示内容に基づく判断がなされるケースもある。
 最高裁平成6年判決は、サラリーマン金融業を営んでいた被上告人Bが会計帳簿類や取引記録等で自らの事業規模を正確に把握していたにもかかわらず、確定申告において、3年間にわたり最終申告に係る総所得金額の約3~4%にすぎない額のみを申告し、税務調査の際に過少の店舗数等を記載した内容虚偽の資料を提出。その後2~3回にわたる修正申告を経た後に初めて飛躍的に多額の最終申告をするに至ったという事案だ(図2参照)。

 上記Bの行動について最高裁平成6年判決は、Bが真実の所得金額を隠蔽する態度、行動をできる限り貫こうとしているとしたうえで、Bの行為は、①認識ある過少な金額を記載した申告書の提出にとどまらず、②真実の所得金額を隠蔽しようという確定的な意図の下に、必要に応じ事後的にも隠蔽のための具体的工作を行うことも予定しつつ、所得金額を殊更過少に記載した内容虚偽の確定申告書を提出したことが明らかであると指摘。本件各確定申告は、単なる過少申告行為にとどまるものではなく、税額等の計算の基礎となるべき所得の存在を一部隠蔽し、その隠蔽したところに基づき納税申告書を提出した場合に当たるというべきであるとしている(下線は編集部)。

最高裁平成7年判決、同平成6年判決に対する課税当局の対応は

注目すべきは税理士に対する隠蔽行為
 最高裁平成7年判決、同平成6年判決を課税当局がどのように捉えているかも気になるところだ。
 この点、課税当局は、最高裁平成7年判決で注目すべきは申告書の作成を依頼した関与税理士に対する隠蔽行為を「(過少申告の)意図を外部からもうかがい得る特段の行動として、通則法68条1項の隠蔽または仮装と同等に評価すべき行為として位置づけていることであると指摘している。そのうえで、納税者が確定的な意図の下に過少申告を行っているものの、申告時までに納税者の行った隠蔽または仮装に該当する行為の存在を明確に指摘できない事例においては、「納税者の過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動」の有無を検討すべきであるとする。
 また、最高裁平成6年判決について課税当局は、被上告人Bが当初において極端な過少申告を行っていることや税務調査時における虚偽の資料を提示するなどの対応等が裁判所のBに対する心証を著しく害したと考えられ、このような事情が判決の行方を左右した背景にあると考えられるとしている。
特段の行動を含めた証拠保全に努める  平成27年7月1日裁決(収支内訳書に根拠のない額を記載する行為は過少申告行為そのものであるとした事例)に係る課税当局の取消原因等の分析は、本誌で紹介しているところだ(687号26頁参照)。そのなかで当局は、当該裁決が公表されたことを踏まえ、つまみ申告における隠蔽または仮装行為の立証にあっては、収支内訳書の虚偽記載だけではなく、収支内訳書の虚偽記載に至るまでの納税者の行動のほか、税務調査に際して内容虚偽の資料の提出税理士等に対する所得の秘匿等といった特段の行動も含めたところで証拠の保全に努め、原処分庁の主張し得る要素を増やし取消しの可能性を減殺していく必要があるとしている(下線は編集部)。
審判所が隠蔽・仮装を認めた最近の裁決事例  最高裁平成7年判決、同平成6年判決、課税当局の対応方針等を踏まえて、「当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動」が認定された最近の公表裁決事例をみると、以下のように、税理士等に対する所得等の秘匿や税務調査時の対応等に基づく判断がなされていることがわかる。
(1)平成28年9月30日裁決  請求人は、7年間にわたり、販売金額を過少に記載した下書用の収支内訳書を作成し、これを市職員(税理士法50条の許可あり)に提示して、販売金額が過少な収支内訳書・確定申告書を作成させ続けていた。
(2)平成28年4月19日裁決  被相続人の財産を管理していた請求人が多額の現金の存在を関与税理士に敢えて秘匿し、手元に残っていた現金は存在しない旨を示す書面を関与税理士に提出するなどして、現金を過少に記載した申告書を作成させて提出した。
(3)平成27年10月2日裁決  被相続人の妻が相続財産を関与税理士に告げず、相続税の過少申告を行い、その後の税務調査においても、根拠のない申述をして、真実の相続財産を隠蔽する態度を貫こうとした。

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