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解説記事2018年02月05日 【税務マエストロ】 トランプ大統領が署名:米国税制改革法の成立①(2018年2月5日号・№725)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
トランプ大統領が署名:米国税制改革法の成立①

#206 品川克己
PwC税理士法人

略歴 89年より大蔵省主税局に勤務。90年7月より同国際租税課にて国際課税関係の政策立案・立法及び租税条約交渉等に従事。96年ハーバード・ロースクールにて客員研究員として日米租税条約について研究。97年より00年までOECD租税委員会に主任行政官として出向(在フランス)し、「OECD移転価格ガイドライン」及び「OECDモデル条約」の改定、及び関連会議の運営に従事。01年9月財務省を辞職し現職。

次回のテーマ
#207
非課税(7)

税理士 熊王征秀 消費税率引上げ、それに伴う課税の適正化など、消費税法の改正が続く。消費税マエストロが実務ポイントを解説する。

※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
 ta@lotus21.co.jp

マエストロの解説  米国トランプ大統領は、上下院の改正法案を統一化した最終の税制改正法案(以下「改正法」)に署名し(米国時間2017年12月22日)、当該改正法が当初の目標どおり2017年末に成立した。この改正法は、下院で11月16日に可決された税制改正法案「Tax Cuts and Jobs Act of 2017(H.R.1)」(以下「下院法案」)及び上院で12月2日未明に可決された税制改正法案「Tax Cuts and Jobs Act」(以下「上院法案」)を両院協議会において摺り合せて(Reconciliation)統一化したものとなる。改正法は、トランプ大統領が選挙時に提唱していた税制改正案と、共和党が2016年6月に発表した素案(ブループリント)との共通点も多々あるが、話題となった国境調整(Border Adjustment)の代わりに新たな税源浸食防止規定が織り込まれているなど、独自のポイントも見受けられる。
 以下、日本企業に影響する法人税関係の主要改正項目を概説する。
1 法人税率の引下げ  改正前の法定法人税率は、所得金額に応じて最高35%の累進税率(一定の人的役務提供法人については一律35%の税率)とされていた。今回の改正により、2018年1月1日以降の連邦法人税率は一律21%に引き下げられ、また、一定の人的役務提供法人に適用される一律35%の税率は撤廃されることになった。トランプ大統領の独自案では15%への引下げが、また上院、下院の案では20%への引下げが提案されていたが、他の歳入減となる措置による影響を考慮して、最終的に21%になったものと考えられる。しかしながら、21%の法人税率は、これまでの35%と比較すると劇的に低い税率であり、先に法人税率の引下げを先行させていた英国やオランダと同程度となる。また、今回の改正法の結果、21%とされた連邦法人税率に州税を加算した実効税率が25%前後となることが見込まれる。この結果、これまで35%の税率が適用され明らかに合算課税の対象とはなっていなかった米国子会社についても、当該子会社がペーパーカンパニーまたはキャッシュボックスに該当する可能性がある場合(トリガー税率が30%)には、外国関係会社の2018年4月1日以後に開始する事業年度(3月決算法人で2019年3月期、12月決算法人で2019年12月期)以降の租税負担割合を検証し、日本のタックスヘイブン対策税制の対象となるか否か検討する必要がある。
 なお、内国歳入法15条の規定により、連邦法人税率引下げの適用開始日が課税年度の途中となる場合、新旧の税率の加重平均により適用税率を算定することになる。この結果、3月決算法人の場合、2018年3月期から部分的に引下げ後の法人税率を享受することが可能となり、例えば、2018年3月期は2017年12月31日まで旧税率(35%)が、2018年1月1日から2018年3月31日までは新税率(21%)が適用される結果、日数按分による実効税率は約31.5%(35%×275日/365日+21%×90日/365日)になる。
 また、12月決算法人は、2018年から連邦法人税については一律21%の新税率を用いて税効果会計を適用することになり、3月決算法人は2018年3月期は約31.5%、2019年3月期以降は21%の税率を用いることになる。なお、繰越欠損金、その他の繰延税金資産がある場合、法人税率の引下げは一般に繰延税金資産の将来価値が減じるため、税制改正の施行日を含む会計期間に追加の税金費用が発生することになる。

2 代替ミニマム税(AMT)の廃止  改正法においては、2018年1月1日以降に開始する課税年度より代替ミニマム税(Alternative Minimum Tax、以下「AMT」)が撤廃され、既存のAMTクレジットの繰越額と通常税額との相殺が認められることとなる。更に、2018年から2020年の間に開始する課税年度では、相殺後のAMTクレジットの未使用残高の50%を限度として還付が認められ、残余額は2021年に開始する課税年度において100%(全額)還付が認められる。
 このAMTとは、従前の15%~35%の累進税率による通常の税額とは別に、課税所得に一定の調整を加えた額に対して一律20%の税率によるAMTの計算も行い、いずれか多い税額が最終的な法人税額とされていたもので、AMTの当期支払額は、翌課税年度以降に無期限で繰越され、通常税額がAMTを上回る課税年度において、AMTクレジットとして税額控除の対象とされていた。
 なお、AMTが廃止されAMTクレジットは還付可能となるため、AMTクレジットに係る繰延税金資産に対して評価性引当金が計上されている場合は取り崩すことになる。

3 繰越欠損金の使用制限  改正前の制度においては、繰越欠損金について2年間の繰り戻し還付、20年間の繰越控除が認められていた。改正法においては、繰戻還付が廃止される一方、無期限に繰越が可能となる。なお、繰越欠損金の使用制限額は課税所得の80%までとされた。
 欠損金の使用制限は2018年1月1日以降に開始する課税年度において生じる欠損金について適用され、無期限の繰越及び繰戻還付の廃止は2018年1月1日以降に終了する課税年度から適用される。
 繰越欠損金の使用制限と繰越期間の恒久化により2018年以降に発生する欠損金に関しては改正法を考慮して評価性引当金の評価を行う必要がある。特に繰越期間の恒久化により従前は利用出来なかった繰延税金負債との相殺の可能性、繰戻還付制度の廃止の影響等を勘案して判断する必要がある。

4 固定資産の即時償却制度の創設  これまでは、一定の固定資産について特別減価償却が認められており、2017年は取得価額の50%、2018年は40%、2019年は30%を即時償却により事業の用に供した年度に損金算入することが可能となっていた。改正法においては、2017年9月28日以降、2022年末までに取得かつ事業供用された適格資産の取得価額の100%を即時償却できることとなった。
 また2023年以降に取得され事業供用された適格資産については、段階的に一部即時償却 (80%~20%)が認められ、2017年9月27日以前に取得され、2017年9月28日以降に事業供用された資産に関しては引き続き従前の制度が適用される。経過措置として、2017年9月28日以降に終了する直近の課税年度においては、50%の即時償却を選択することができる。なお、資産の取得契約がすでに締結されている場合は、契約日を基準に取得日を判定することとなるため、取得日を遅らせることにより100%の即時償却の対象とすることはできないよう手当されている。
 また、適格資産の定義は原則として現行法と相違はなく、1)MACRS(加速度償却)の対象となる償却年数20年以内の資産、2)水道供給設備、3)コンピューターソフトウェア(内国歳入法197条の適用を受けるものを除く)、4)適格賃借物件改良費となり、現行法とは異なり、中古資産も対象資産に含まれる。

5 内国歳入法179条即時償却選択の拡大  改正法において、内国歳入法179条による即時償却制度が拡大された。課税年度毎に$1,000,000までの即時償却が認められ、年間の固定資産取得価額の合計が$2,500,000を超えると即時償却額は逓減され、$3,500,000以上になると適用されないこととなる。当該制度は2018年1月1日以降開始課税年度に事業の用に供される資産に適用される。
 なお、改正前は、内国歳入法179条の規定により、課税年度毎に$500,000までの固定資産の即時償却が認められており、固定資産取得価額の年間合計が$2,000,000を超える場合は即時償却額は逓減され、$2,500,000以上になると即時償却は適用されないこととされていた。

6 国内受取配当控除の縮小(内国歳入法243条)  これまでは、株式を80%以上所有(議決権および株式価値ベース。以下同じ)している国内法人から受領した配当には100%の配当控除(Dividends Received Reduction)が適用されていた。この配当控除は、株式所有が20%以上の場合には80%、また、株式を20%未満所有している国内法人から受領した配当には70%の配当控除が適用されていた。改正法においては、株式を20%以上所有している国内法人から受領した配当には65%、株式所有が20%未満の場合は50%へとそれぞれ控除率が縮小される。ただし、80%以上を保有する場合の100%の配当控除は維持されている。この改正は、2018年1月1日以降に開始する課税年度から適用される。

7 過大従業員報酬の損金算入制限(内国歳入法162条(m))  上場企業(Publicly Held Corporation)の特定従業員(Covered Employees)に支払われる報酬は、年$1,000,000を限度として損金算入が認められていた。この特定従業員とはCEO及び証券取引法により報酬金額の開示義務のある従業員となり、コミッションおよびパフォーマンスベースに基づく報酬は適用除外とされていた。改正法においては、この“上場企業(Publicly Held Corporation)”および“特定従業員(Covered Employees)”の定義が以下のとおり拡大され、また、コミッションおよびパフォーマンスベースに基づく報酬に関わる適用除外規定も廃止となり、損金算入制限が強化された。この改正は、2018年1月1日以降に開始する課税年度から適用される。
・米国預託証券(American Depositary Receipt)を通じて上場する外国法人も新たに“上場企業”に該当
・主たる経営責任者(Principal Executive Officers)および財務責任者(Principal Financial Officers)(対象課税年度中にこれらの肩書きを有した者も含む)の両者並びにこれら以外の従業員で上位3番目までの高額報酬を得ている者も“特定従業員”に該当

8 試験研究費の償却計上(内国歳入法174条)  2022年1月1日以降に開始する課税年度から一定の試験研究費について資産計上が強制され、その後5年間(研究開発活動が米国外で実施される場合には15年間)の期間にわたり償却されることとされた。従前は、減価償却を選択しない場合には試験研究費の支払いまたは発生した課税年度において全額を即時費用化することが認められていた。

9 支払利子の損金不算入制度(内国歳入法163条(j))  現行のアーニングス・ストリッピング税制(内国歳入法163条(j))は全面的に撤廃され新たな内国歳入法163条(j)が創設された。具体的には、事業上の支払利子(business interest)から事業上の受取利子(business interest income)及び一定の資産購入にかかる借入利子(floor plan financing interest)を控除した純支払利子のうち、調整後課税所得の30%を超える部分が損金不算入とされる。この損金不算入額は無期限に繰越され、将来に控除限度余裕額が発生する際にはその範囲で損金算入される。新制度においては、従前の内国歳入法163条(j)における負債・資本比率1.5:1のセーフハーバーは撤廃されている。なお、下院法案及び上院法案に含まれていたグローバルグループ・ベースにおける支払利子の損金不算入制度の創設(内国歳入法163条(n))は改正法において全面的に撤回されている。
 2018年1月1日以降に開始する課税年度から適用開始となるが、従前の内国歳入法163条(j)において支払利子の繰越不算入額又は控除限度余裕額(Excess limitation)がある場合の取り扱いは改正法では明示されていない。

(i) 損金不算入の対象となる支払利子の範囲  損金不算入の対象となる事業上の支払利子とは、事業に関連して生じる利子(投資活動に関連して生じる利子を除く)とされており、従前の内国歳入法163条(j)とは異なり、支払先が国外関連者となるものに制限されない。また、資産購入にかかる借入利子とは、以下の要件を充足する債務に係る支払利子となる。
イ)自動乗用車の販売又はリースの購入資金に充てられるもの
ロ)購入された自動乗用車そのものが当該債務の担保として供されていること
(ii) 損金算入限度額の計算  損金算入限度額は、調整課税所得の30%に事業受取利子を加算した額となる。調整課税所得は、連邦課税所得に以下の項目を加算又は減額調整した額となり、EBIT相当額とされている。なお、2021年12月31日以前に開始する課税年度においては、減価償却、減耗償却等を加算調整したEBITDA相当額とされている。
(iii) 適用対象・除外規定  改正法においては、パートナーシップや小規模法人(S Corporation)を含めたパススルー事業体も対象となっており、パススルー事業体レベルでの損金算入限度額の算定が要求されている。また、一定の適用除外基準が設けられており、直近過去3年間の平均総収入額が$25,000,000以下の小規模事業者については適用されず、選択により、不動産事業及び農業も適用対象外となる他、一定の役務提供事業や水道、電気、ガス等の公益供給事業も適用対象外となる。
(参考)アーニングス・ストリッピング税制  国外関連者からの借入金及び国外関連者による保証等の付された第三者からの借入金に関する支払利子について、借入米国法人の期末日現在の負債・資本比率が1.5:1超となる場合は、超過利子額(Excess interest expense)又は非適格利子(Disqualified interest)のうち、いずれか少ない金額が損金不算入とされていた。損金不算入額は無期限に繰越控除が可能となる。超過利子額とは、純支払利子額が調整後課税所得(利子、減価償却費、繰越欠損金控除額等を課税所得に戻し入れたキャッシュベースのEBITDAに相当)の50%を超過する額をいい、非適格利子は、米国連邦法人所得税の課税対象とならない国外関連者の受取利子となる。なお、純支払利子が調整後課税所得の50%に満たない場合は控除限度余裕額(Excess limitation)として翌課税年度以後3年間繰越され、翌年の超過利子額の計算上、調整後課税所得の50%に加算することが認められていた。

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