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解説記事2018年03月12日 【SCOPE】 資本及び利益剰余金の双方が配当原資、税務上の取扱いは(2018年3月12日号・№730)

資本の払戻しとした国側主張採用も課税取消し
資本及び利益剰余金の双方が配当原資、税務上の取扱いは

 原告法人が外国子会社から受け取った資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする配当の税務上の取扱いをめぐり、課税処分の全部を取り消す判決が下された(東京地裁平成29年12月6日判決)。裁判所は、資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当は「資本の払戻し」とした国側の主張を認めたものの、その計算過程で剰余金の配当により減少した資本剰余金の額を超える「払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等」が算出される結果となる限りにおいて法人税法施行令23条1項四号(資本部分の払戻しに係る株式又は出資に対応する部分の金額の計算方法等を規定)は法人税法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であると判断した。なお、全面敗訴した国側は控訴を提起している。

地裁、資本積立金がマイナスで配当をした本件において法令は無効と判断
 連結親法人である原告法人は、完全支配する外国子会社(米国デラウェア州法に基づき設立されたLLC)から資本剰余金1億ドル(以下「資本配当」)と利益剰余金5億4,400万ドル(以下「利益配当」)をそれぞれ原資とする剰余金の配当を受けた。原告法人は連結確定申告の際に、利益配当約410億円を益金不算入、資本配当については約129億円を損金(関係会社株式評価損)に算入した。これに対し課税当局は、資本配当と利益配当は効力発生日が同日であることなどからその全額が資本の払戻し(法法24①四)に該当するとして、利益配当の益金不算入額を約327億円、資本配当に係る有価証券譲渡損を約41億円と算定し、原告法人の連結所得金額を約80億円増額し、翌期繰越連結欠損金額を約80億円減額する課税処分を行った。これを不服として原告法人は、先になされた資本配当は資本の払戻しで、その後の利益配当は益金不算入の対象になる旨などを主張し、課税処分の取り消しを求めた。
 裁判所はまず、「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る)」(法法24①四)とは、資本剰余金のみを原資とする剰余金の配当及び資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当を指すと解釈。この解釈は、課税当局側(国側)の主張を採用したものだ(図表1参照)。

 一方で裁判所は、受取配当等を益金不算入とした法人税法は利益剰余金を原資とする部分の剰余金の配当が「株式又は出資に対応する部分の金額」(法法24①柱書き)に含まれて「有価証券の譲渡に係る対価の額」(法法61の2①一)として認識され、法人税の課税を受けることとなる事態を想定していないと解されるとした。そして裁判所は、法令23条1項四号(株式又は出資に対応する部分の金額の計算方法等を規定(図表2参照))により計算すると剰余金の配当直前の利益積立金額が0未満(マイナス)である場合には、減少した資本剰余金の額を超える「払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等」が算出されることとなるから、剰余金の配当が資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とするものであった場合には、利益剰余金を原資とする部分の剰余金の配当の額が「払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等」に含まれることとなり、ひいては「株式又は出資に対応する部分の金額」に含まれることになると指摘。この点を踏まえ裁判所は、資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当について、剰余金の配当により減少した資本剰余金の額を超える「払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等」が算出される結果となる限りにおいて法令23条1項四号は法人税法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるというべきであり、この場合の「払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等」は剰余金の配当により減少した資本剰余金の額と同額となるものと解するのが相当であるとした。そして本件については、「払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等」(約2億1,000万ドル)が利益配当と資本配当により減少した資本剰余金(1億ドル)を超えることなどからみなし配当は5億4,400万ドル(国側主張は約4億3,300万ドル)に修正され、本件の利益配当の額と同額となるなどとしたうえで、課税処分の全部を取り消した。

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