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解説記事2018年06月04日 【税務マエストロ】 タックスヘイブン対策税制関連のQ&Aについて②(2018年6月4日号・№741)

税務マエストロ 税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
タックスヘイブン対策税制関連のQ&Aについて②

#214 品川克己
PwC税理士法人

略歴 89年より大蔵省主税局に勤務。90年7月より同国際租税課にて国際課税関係の政策立案・立法及び租税条約交渉等に従事。96年ハーバード・ロースクールにて客員研究員として日米租税条約について研究。97年より00年までOECD租税委員会に主任行政官として出向(在フランス)し、「OECD移転価格ガイドライン」及び「OECDモデル条約」の改定、及び関連会議の運営に従事。01年9月財務省を辞職し現職。

次回のテーマ
#215
免税(2)~外国貨物とその関連取引
税理士 熊王征秀 消費税率引上げ、それに伴う課税の適正化など、消費税法の改正が続く。消費税マエストロが実務ポイントを解説する。

※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
 ta@lotus21.co.jp

2 特定外国関係会社の判定(承前)

(4)ペーパーカンパニーにおける管理支配基準
 ペーパーカンパニーに該当するか否かを判定するための管理支配基準は、実体基準と同様、対象外国関係会社を判定する際の経済活動基準(改正前の適用除外基準)における管理支配基準と同様の概念であり、会社の機能面から独立した企業としての実体があるかを判定する基準となる。
 この「機能面から独立」しているという意味は、具体的には、外国関係会社が本店所在地国においてその「事業の管理、支配及び運営を自ら行っているということ」と説明されている。しかしながら、法人の事業について、その管理、支配及び運営を行うということの意味、概念はきわめて曖昧な部分が多いのではないだろうか。事業の管理とはどういうことか。事業の支配とはどういうことか。こうした点について、Q&A(編注:国税庁「平成29年度改正 外国子会社合算税制に関するQ&A(情報)」、本誌726号・727号参照)では、「法人が事業を行うに当たり事業方針や業績目標などを定め、それらを達成するために、事業計画等を策定するなど、事業をどのように運営していくかを決定し、それらに基づき、裁量をもって事業を執行することと考えられます。」と説明されている。しかしながら、外国関係会社は基本的には日本法人の子会社であり、当該事業方針や業績目標などは、親会社の指示等なんらかの影響を受けることは常識であろう。親会社とは全く別の存在として独自に事業活動を行っていくこととは通常考えられないところでもある。その意味では、裁量の度合いが非常に重要な尺度となることも考えられる。また、関与度合いという程度の問題は、明確な判定基準とはなりえないといえよう。
 また、「管理支配基準における「自ら」行うということは、外国関係会社が事業の管理・支配・運営を自ら行うことを意味するものであることから、その行為の結果と責任等が外国関係会社自らに帰属することであると考えられます。」とされている。ここでいう「結果と責任等が帰属すること」の概念も曖昧ではないだろうか。Q&Aでは、「独立企業として事業を行っていれば通常生じることとなる結果及び負担すべき責任が帰属することをいうのであって、外国関係会社の利益が配当を通じて株主である親会社に帰属することまでを意味するものではありません。」とされているが、非常に理解することが難しい説明である。
 なお、管理支配基準の適否にあたっては、役員の存在、機能が非常に重要なファクターといえる。この役員については、次のように具体的な説明がなされている。
イ)外国関係会社の役員が、その親会社又は地域統括会社(以下「親会社等」)の役員又は使用人を兼務している場合であっても、その役員が本店所在地国において外国関係会社の役員の立場で外国関係会社の事業計画の策定等を行い、かつ、その事業計画等に従い職務を執行している限りにおいては、管理支配基準を満たす。
ロ)外国関係会社の役員が、いわゆる常勤か非常勤かによっては区別されない。
ハ)外国関係会社の役員が、責任を負い、裁量をもって事業を執行しているのであれば、外国関係会社はその活動に対する報酬を負担するのが通常であると考えられる。したがって、外国関係会社からの報酬の支払いが認められない場合には、役員が責任を負い、裁量をもって事業を執行していることの証明には乏しく、ひいては外国関係会社自らが事業の管理、支配及び運営を行っていないと判断される重要な要素となりえる。
ニ)地域統括会社の役員又は従業員が、外国関係会社の役員を兼務している場合等、同じグループ会社に勤務している場合は、どちらの会社の立場で業務が執行されたのかの判別は困難であるため、合理的な理由(例えば、労務管理の事務負担の観点等から、別途外国関係会社が報酬を負担していると認められるような事実)なく、外国関係会社から報酬が支払われず地域統括会社から報酬が支払われているときは、その役員は、地域統括会社の役員又は従業員の立場で業務を執行していると判断されることもありえる。
ホ)外国関係会社の役員が、名義だけの役員や、不特定多数の会社のために業として行う役員のみである場合には、一般的にはその役員が外国関係会社の事業計画の策定等を行っておらず、職務を執行していないと考えられるため、外国関係会社は自ら事業の管理、支配及び運営を行っていないものと考えられる。
(5)管理支配基準に関するQ&A
Q4:役員が兼務役員である場合
 商社を営む内国法人P社は、F国に、その外国関係会社であるS社を設立した。このS社は、現地F国において発電事業を営むA社を子会社とし、当該A社の事業の管理等を行うことを事業としている。S社は、単にA社の株式を保有するだけでなく、F国において事務所を賃借し、その役員及び使用人はその事務所においてA社の行う設備投資や事業の進捗への関与、A社に提供する資金の調達や他の株主との調整等に従事している。
 S社には役員としてCのみがその職務に従事しており、その役員Cは、A社の行う設備投資や事業の進捗への関与、A社に提供する資金の調達や他の株主との調整等に係る事業計画の策定を行った上で、その事業計画に従い資金調達や与信の決定、これらの実行及び事後的な確認やその他の職務を執行している。なお、役員CはP社のF国における地域統括会社であるB社の使用人を兼務しているが、S社の業務に関わる報酬は、S社からその支払いを受けている。このような場合において、S社は管理支配基準を満たすことになるか。
(回答)  役員Cは、S社の役員の立場でS社の事業計画の策定を行った上で、その事業計画に従い資金調達や与信の決定、これらの実行及び事後的な確認やその他の職務を執行し、これらの職務に対してS社から役員Cに報酬が支給されている。この場合において、役員Cは、P社のF国における地域統括会社であるB社の使用人を兼務しているとのことであるが、単なる名義だけの役員として存在しているわけではなく、S社の役員の立場でS社の事業計画の策定を行い、かつ、その事業計画に従い職務を執行していることから、管理支配基準を満たすものと考えられる。
 他方、役員Cが地域統括会社B社の使用人として、その地域内のグループ全体の事業計画の策定を行っている場合であって、役員CがS社の役員の立場でS社の職務を執行していないのであれば、S社は管理支配基準を満たさないものと考えられる。このため、役員Cは、B社の使用人として行う職務とS社の役員として行う職務とを明確に区別しておく必要があるとされている。しかしながら、当該S社業務と地域統括会社B社の業務が近似している場合など、どちらの立場なのかを明確に区分することは難しいのではないだろうか。
Q5:一部の業務につき親会社等に確認を求めることがある場合  S社の業務のうち、資金調達及び与信に係る業務については、全て地域統括会社であるB社に確認を求めることとする場合、S社は管理支配基準を満たすことになるか。
(回答)  S社の業務のうち、資金調達及び与信に係る業務について、全て地域統括会社であるB社に確認を求めることとしているとのことであっても、最終的な確認は地域統括会社であるB社が行うだけであり、S社の役員が事業計画案を策定するなど職務執行の重要な事項を自ら判断しているのであれば、S社において事業の管理、支配及び運営を自ら行っているものと考えられる。また、例えば、一定額以上の案件については、S社は地域統括会社であるB社に情報を報告するのみであり、B社において実際の資金調達や与信に係る事業計画の策定を行う場合であっても、一定額未満の案件についてはS社において事業計画案を策定し、その事業計画に従って、実際に職務を執行しているのであれば、その範囲においては、S社において事業の管理、支配及び運営を自ら行っており、管理支配基準を満たすものと考えられる。しかしながら、S社において事業計画の策定は一切行わず、全ての事項について親会社等の指示を仰いで職務執行しているだけの場合には、S社において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていないものと考えられる。
 このQ&Aによれば、事業計画の策定が極めて重要なファクターとなっている。ここまで事業計画の策定に固執することは妥当であろうか。そもそも、事業計画は親会社の指示等に基づくことは経済的な常識である。実務的に問題となることも考えられる。
Q6:事業計画の策定は親会社が行い、外国関係会社の役員はその策定された計画に従って職務を執行しているのみである場合  地域統括会社であるB社は、その地域内におけるグループ全体の与信に係る業務に関する事業計画の策定を行っており、S社の役員はその事業計画に従って職務を執行している。その事業計画では、与信に当たっての資金調達をどのように行うかは記載されていないため、S社の役員は資金調達に関しては、自ら資金調達計画を策定し、金融機関等から必要となる資金を調達している。このような場合において、S社は管理支配基準を満たすことになるか。
(回答)  地域統括会社B社がS社の全ての事業計画の策定を行い、S社の役員Cがその事業計画に従い与信の実行をしているだけの場合には、S社において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていることにはならないものと考えられる。他方、S社は別途、資金調達等、与信に係る業務以外の業務に関する事業計画の策定を自らが行い、S社の役員Cがその事業計画に従い実際に資金調達等を実行していることから、S社において事業の管理、支配及び運営を自ら行っており、管理支配基準を満たすものと考えられる。
 このQ&Aでは、外国関係会社が自ら資金調達することが前提となっているが、多くの点で親会社から指示をうける外国関係会社(海外子会社であれば常識ともいえる)が、現地で自ら資金調達を行うことは、現実的には想定できないところでもある。
Q7:業務の一部を委託している場合  S社の業務のうち、資金調達や与信に係る業務の一部についてはF国における金融機関に委託している。また、契約書の作成についてはF国における弁護士に助言を求め、帳簿作成等に係る業務はP社のF国における地域統括会社であるB社からシェアードサービスの提供を受けている。このような場合において、S社は管理支配基準を満たすことになるか。
(回答)  管理支配基準では、事業の管理、支配及び運営を自ら行っていることが要件とされている。自ら事業計画の策定等を行っており、その事業計画等に従って業務を行っているのであれば、その業務の一部を委託していたとしても、そのことだけでは管理支配基準を満たさないことにはならないと考えられる。
 本件については、S社において、例えばA社の資金需要を把握し、外貨の調達の規模、入金・回収の時期といった事業計画の策定を行った上で、実際の調達業務や入金・回収業務については金融機関に委託しているのであれば、S社はその事業の管理、支配及び運営を自ら行っており、管理支配基準を満たすものと考えられる。なお、契約書の作成等の補助業務(広告宣伝、市場調査、専門的知識の提供その他の当該外国関係会社が業務を行う上での補助的な機能を有する業務)について、例えば現地法令に詳しい弁護士等の外部専門家に助言を求めることは、管理支配基準の判定の要素にはならないと考えられる。また、経理事務等のような、いずれの会社にあっても共通的に発生する業務について、経済的合理性の観点からいわゆるシェアードサービスの提供を受けたとしても、そのことのみをもって管理支配基準を満たさないことにはならないと考えられる。
 一部の業務を外部の専門業者に委託することは事業上の常識であり、そもそも管理支配基準の判定の要素にはなりえない。その点では妥当な回答であろう。
Q8:外国関係会社の事業が工業所有権に係る使用料を得ることのみである場合  内国法人であるP社(製造業)は、かねてからF国において工業所有権を保有しているS社(外国関係会社に該当)の株式を保有している。S社はF国にあるビルの一室を事務所用に賃借しているが、S社の主たる事業はその保有する工業所有権に係る使用料を得ることのみであり、S社の銀行口座に使用料が振り込まれるだけであるため、S社の役員及び使用人はその一室を使用して主たる事業に係る活動を行っている実態はない。
 この場合で、弁護士事務所に所属するD弁護士がS社の役員として登記されており、S社には他に役員や使用人は存在していない。S社の役員Dは、P社の指示の下、S社専用の銀行口座に使用料が振り込まれたらP社に報告するとともに、一定額が貯まったらP社に送金する業務を行っている。このような場合において、S社は管理支配基準を満たすことになるか。
(回答)  S社は資産として工業所有権を有し、P社の指示の下、その使用料の入金を受け、親会社Pに報告をするとともに、一定額が貯まったら親会社Pに送金することが主な業務となっている。このことからすると、役員Dが行っていることは判断を伴わない単なる取次ぎにすぎず、S社は自ら事業計画の策定等を行い、その事業計画等に従い裁量をもって事業を執行しているとは考えられない。このため、S社は管理支配基準を満たさないものと考えられる。
 この前提においては、妥当な結論である。

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