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資料2018年01月16日 【主要判例】 平成29(う)346 関税法違反,消費税法違反,地方税法違反

事件番号 平成29(う)346
事件名 関税法違反,消費税法違反,地方税法違反
裁判年月日 平成30年1月16日
裁判所名・部 福岡高等裁判所
結果 棄却

原審裁判所名 福岡地方裁判所
原審事件番号 平成29(わ)395

平成30年1月16日福岡高等裁判所第1刑事部判決
平成29 346号 関税法違反,消費税法違反,地方税法違反被告事件
主 文
本件控訴を棄却する。
理 由
論旨は,要するに,被告人を懲役1年,3年間執行猶予に処した原判決の量刑は
重過ぎて不当であり,罰金刑に処するべきである,というのである。
そこで記録を調査し,当審における事実取調べの結果を併せて検討すると,本件
は,被告人が,A及び氏名不詳者らと共謀の上,大韓民国から金地金約3㎏を隠匿
携行して航空機に搭乗して,B空港に到着後税関検査場を通過しようとし,税関長
の許可なく貨物を輸入しようとするとともに,不正の行為により消費税85万52
00円及び地方消費税23万0700円を免れようとした,という関税法違反未遂
並びに消費税法違反及び地方税法違反の事案である。
本件は,被告人に本件を持ちかけたA以外の共犯者は明らかではないにしても,
金地金を運搬する被告人以外に,韓国内で金地金を調達してそれを本邦内に持ち込
んで利益を得ようとする者など,複数の者が関与し,税金を免れることによる利益
を得るために行われた組織的かつ計画的な犯行である。金地金を隠匿した方法は,
足の裏に各1本を巻き付けて靴下を履き,股間に装着したサポーターに1本を収納
するという,それなりに工夫されたものであり,3㎏もの金地金を輸入しようとし
たことは看過できず,免れた税額も貨物の1回の携行での輸入によるものとしては
多額である。被告人は,C市交通局に勤務していたところ,デリバティブ取引で情
報を教示してくれていたAの求めに応じて,高額の報酬を目当てに,本件に関与
し,被告人以外の複数の者に同様に金地金を輸入させていたAの指示の下で,本件
以前にも同様の犯行を数回繰り返している。本件は継続して行われることが予定さ
れた利欲目的の犯行の一環ということができるのであり,これらの事情に照らす
と,被告人の刑事責任を軽くみることはできない。
他方,本件は,個人で貨物を隠匿携行して国内に持ち込もうとしたものにとどま
り,それほど大規模なものではない上,被告人は,デリバティブ取引で,Aからあ
まり情報が得られなくなったため多大な損失を受け,金銭に窮していたため,Aの
誘いを断れず,やむなく本件に及んでおり,終始Aの指示に従い,逮捕の危険が最
も高い運搬役という従属的な役割を果たしたにとどまる。また,被告人は,原審公
判において,反省の態度を示し,更生の意欲を示している上,これまで前科がな
く,本件で懲役刑に処せられると地方公務員の職を失うことになる。さらには,被
告人の妻が今後の監督を約束していることのほか,所論が指摘し記録からうかがえ
る被告人のために酌むことのできる事情もあるが,これらを十分考慮しても,本件
で罰金刑を選択する余地はなく,被告人を懲役1年,3年間執行猶予に処した原判
決の量刑は相当であって,これが重過ぎて不当であるとはいえない。
所論は,原判決は金地金が多量であるというが,組織的に行われる事案の中で
は,本件で輸入しようとした金地金の量が過大であるとの評価は困難である上,被
告人は,自身の行為が税法上どのような位置付けになるかを詳細に把握していなか
ったから,少なくとも積極的に消費税,地方消費税を免れる目的を有していなかっ
たという点で,主観的にも酌量の余地がある,という。しかし,金地金約3㎏を輸
入するということは,通常の旅行者が携行して輸入する量をはるかに超えたもので
あり,原判決の説示は,そのように理解すべきであり,組織的に行われる密輸事案
の中で,本件の輸入貨物が多量の部類に位置付けられると評価したものとはいえな
い。また,被告人は,原審公判において,消費税や地方消費税を免れようという積
極的な意図はなかった旨供述しているが,捜査段階においては,Aから税金を免れ
ることが目的であるという説明を受けていた旨供述している上,Aからの指示に従
って,金地金を外見からは携行していることがわからないように隠匿し,観光目的
で韓国に赴いたと理解されるような行動をとり,目立った行動は避けている。そう
すると,被告人は,本件にそれなりの違法性があることは十分認識していたという
ことができる。
論旨は理由がない。
よって,刑訴法396条により,主文のとおり判決する。
なお,原判決は,(証拠の標目)の項において,「反則物件鑑定書謄本(甲10)」
と摘示しているが,「犯則物件鑑定書謄本(甲10)」と摘示すべきである。
平成30年1月16日
福岡高等裁判所第1刑事部
裁判長裁判官 山 口 雅 髙
裁判官 平 島 正 道
裁判官 髙 橋 孝 治
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