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解説記事2018年08月13日 【SCOPE】 外国子会社合算税制における管理支配基準をめぐる裁決(2018年8月13日号・№751)

本店所在地で事業管理等を自ら行っているか?
外国子会社合算税制における管理支配基準をめぐる裁決

 外国子会社合算税制の適用除外要件である管理支配基準を満たすか否かが争われた裁決で、国税不服審判所は香港社の董事長兼総経理(日本の「代表取締役」に相当)は、香港社の中国子会社に常駐し、当該中国子会社において香港社の経営状況の管理を行っていると認められるなど、香港社は、香港において事業の管理、支配及び運営を自ら行っていたとは認められないとし、外国子会社合算税制の適用を受けるとの判断を示した(東裁(法)平29第36号)。

請求人、親会社から独立しているか否かで判断すべき
 今回紹介する事案は、外国子会社合算税制における管理支配基準を満たすか否かが争われたもの。管理支配基準は、実体基準とともにペーパーカンパニーを判定するための基準の1つであり、外国関係会社が本店所在地国においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っていることが要件となっている。
 本件についてみると、原処分庁は、①独立企業の重要な意思決定機関である株主総会や取締役会を香港において開催しておらず、②本件各董事(日本の「取締役」に相当)が香港において香港社の事業の管理や運営を行っていたとは認められない上、③香港社の重要な意思決定については、日本国内での指示や確認が必要であったと認められるなど、香港において業務遂行上の重要事項の意思決定は実質的に行われていなかったと認められるとし、外国子会社合算税制の適用除外要件である管理支配基準を満たさないとして法人税等の更正処分等を行っている。一方、請求人は、特定外国子会社等が管理支配基準を満たしているか否かは、当該特定外国子会社等の業務執行に関する意思決定及びその決定に基づく具体的な業務の執行が親会社等から独立して行われているか否かをもって判断するべきなどと主張していた(参照)。

【表】当事者の主張
原処分庁 請求人
 特定外国子会社等が管理支配基準を満たしているか否かは、当該特定外国子会社等の重要な意思決定機関である株主総会及び取締役会の開催、役員の職務執行、会計帳簿の作成及び保管等が本店所在地で行われているかどうか、業務遂行上の重要事項を当該特定外国子会社等が自らの意思で決定しているかどうか等の諸事情を総合的に考慮し、当該特定外国子会社等が本店所在地において、事業の管理、支配及び運営を自ら行い、独立した法人としての実体を備えて活動しているといい得るか否かによって判断すべきものであると解するのが相当である。  特定外国子会社等が管理支配基準を満たしているか否かは、当該特定外国子会社等の業務執行に関する意思決定及びその決定に基づく具体的な業務の執行が親会社等から独立して行われているか否かをもって判断するべきある。
 香港社は、①引き合い、②見積り、③試作、④工場監査、⑤受注・納品、⑥代金回収及びクレーム対応の各過程を経て、顧客に対する××××の販売業務を行っている。また、香港社の顧客の多くは、香港や中国に進出している日系メーカー等であり、当該顧客に対して受注製品を販売していることから、香港社は、ペーパーカンパニー等ではなく、香港において業務の管理、支配及び運営を自ら行っている。

株主総会の開催や役員の職務執行などの諸事情を総合的に考慮
 審判所は、外国子会社合算税制は国際的な租税回避に対処し、税負担の実質的な公平を図ることを目的とする制度だが、特定外国子会社等が独立企業としての実態を備え、かつ、その本店所在地国等で事業活動を行うにつき十分な経済合理性があると認められる場合まで同税制を適用することは、日本企業の正常な海外投資活動を阻害する結果となり得るので避けるべきであるとの趣旨から適用除外要件を規定し、その要件のすべてを満たしている場合は、例外的に外国子会社合算税制の適用を排除していると指摘。その際、特定外国子会社等が管理支配基準を満たしているといえるか否かは、当該特定外国子会社等の重要な意思決定機関である株主総会及び取締役会の開催、役員の職務執行、会計帳簿の作成及び保管等が当該特定外国子会社等の本店の所在する国又は地域で行われているかどうか、業務遂行上の重要事項を当該特定外国子会社等が自らの意思で決定しているかどうかなどの諸事情を総合的に考慮し、当該特定外国子会社等がその本店の所在する国又は地域において、独立した企業としての実体を備えて活動しているといえるか否かによって判断すべきものと解するのが相当であるとした。
常駐する董事も他の複数の関連会社を兼務  その上で審判所は、香港社各事業年度における株主総会及び董事会(日本の「取締役会」に相当)の決議事項等については、基本的に毎年7月に日本において開催される報告会において、あらかじめ香港社各株主及び本件董事に対して報告等が行われた上で、その後その多くが書面決議等に至ったものと認められるほか、香港社各事業年度においては、香港社の所在地である香港で董事会の決議事項の一部が決議されたものの、株主総会が香港で開催されたと認めることができないことからすると、香港社の業務執行上の重要事項の決定が香港において行われたと認めることはできないとした。
 また、香港社各董事長兼総経理は中国子会社に常駐しており、香港事務所には常駐していなかったこと、香港に唯一常駐する香港社の董事は、他の複数の関連会社の董事及び総経理を兼務しており、関連会社の業務を通じて香港社の営業に関与していたにとどまることなどから、香港社は、香港においてその事業の管理、支配及び運営を自ら行っていたとは認められず、請求人は外国子会社合算税制の適用を受けることになるとの判断を示した。
 なお、請求人は管理支配基準を満たしているかについて、特定外国子会社等の業務執行に関する意思決定及びその決定に基づく具体的な業務の執行が親会社等から独立して行われているか否かをもって判断するべきあると主張するが、審判所は当該主張のみで判断すべきものとはいえないとしている。

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