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解説記事2018年10月22日 【税務マエストロ】 輸出物品販売場制度(2018年10月22日号・№760)

税務マエストロ
税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
輸出物品販売場制度

#220 熊王征秀(税理士)

略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会調査研究部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学教授

マエストロの解説   地域の活性化や雇用機会の増大などの効果を期待しつつ、安倍政権では、観光立国の実現に向けて様々な取組みを実施している。これに伴い、輸出物品販売場制度については、平成26年度から28年度にかけて連年にわたり改正が行われている。また、平成30年度改正では、免税販売手続の電子化や免税対象物品の下限額の引き下げなどの改正が行われ、訪日観光客に対する税制や利便性といった観点からの配慮がなされている。
 今月は、この輸出物品販売場制度について、制度の内容と改正の経緯を確認するとともに、租税特別措置法の免税や臨時特例法関係の免税規定を紹介する。

1 輸出物品販売場制度の概要(消法8①⑥、消令18)  輸出物品販売場(DFS)で非居住者に販売した商品は、その購入した非居住者により国外に輸出され、最終的に国外で消費、使用されることになる。そこで、輸出物品販売場で所定の手続のもとに販売されたものについては、輸出免税と同様に、その譲渡について消費税を免除することとしたものである。


 輸出物品販売場を経営するためには、その事業者の納税地を所轄する税務署長の許可を受けなければならない。この場合、免税事業者については許可を受けることはできないため、結果として課税事業者についてしか輸出物品販売場における免税規定は適用されないことになる。

2 免税販売手続(消法8②、改消令18⑥、平成30年改正令附則4③、消規7)
(1)免税販売手続の電子化
 輸出物品販売場を経営する事業者は、非居住者に対し、免税で商品を販売しようとする場合には、購入者のパスポートを確認し、購入者誓約書に必要事項を記入させるとともに、これを確定申告期限から7年間保存することが義務付けられている(注1)。
 この免税販売手続については、平成30年度改正により、外国人旅行者のパスポートの情報について、その内容を電磁的記録により国税庁長官に提供することとされた。
 これに伴い、旧法で義務化されている購入記録票の貼付けと割印、購入者誓約書の作成と保存などの手続等は廃止となる。
 本改正は平成32年4月1日以後の取引から適用されることとなるが、平成32年4月1日~平成33年9月30日期間中は現行法の手続等によることも認められる。
(2)輸出物品販売場から海外へ直送する場合における免税手続の簡素化  平成28年度改正では、非居住者が輸出物品販売場で免税対象物品を購入する際に、輸出に係る運送契約を締結して、その場で国際第二種貨物利用運送事業者に引き渡す場合の免税購入手続の簡素化が図られた。

3 免税対象物品の範囲の拡大(消法8①、改消令18①③⑬、平成30年改正消令附則1一)  旧法における免税対象物品は、洋服やバッグ、家電製品などの通常生活の用に供する物品とされており、酒類などの飲食料品や化粧品のように、国内で旅行中に消費される可能性のある消耗品については免税対象物品から除かれていた。しかし、化粧品などの消耗品については外国人旅行者からのニーズが高いことから、平成26年度改正により、所定の方法により包装し、土産品として持ち帰ることを条件に免税対象物品に加えることとした。
 また、旧法では、事務手続の煩雑さを防ぐため、税抜価額が1万円以下の少額物品を免税対象物品から除外することとしたが、改正により新たに追加された消耗品については、旅行者に対する同一店舗での1日の販売金額が5千円~50万円の範囲につき、免税対象物品として取り扱うこととした。
 さらに、平成28年度改正では、金又は白金の地金を免税対象物品から除外することを明文化するとともに、平成30年7月1日以後の取引については、消耗品と一般物品の合計販売金額が5,000円を超えることにより、免税対象品とすることができることとなった(注2)。


4 罰則規定  金地金などの取引相場のある商品については、消費税込みの価格で貴金属店に買い取られる。そこで、輸出物品販売場において免税で購入した金地金などを国内において横流しをし、消費税相当分の利益を得ている事例が見受けられたことが28年度改正の理由であると財務省資料では説明されている。
 法令上、免税対象物品は「通常生活の用に供するもの」に限られている。従来より、通常生活の用に供しない「金又は白金の地金」は免税対象物品とはならないのであり、この旨を法令上明確化したということなのであろう。
 また、輸出物品販売場で免税対象物品を購入した外国人旅行者のなかには、免税で購入した物品を日本国内で横流しをした上で、出国時のチェックを免れるためにパスポートに貼付された購入記録票を自ら剥がす者もいるようだ。
 免税対象物品は、当然のことながら出国の際に持ち帰ることが義務付けられており、国内での売買(横流し)には厳しい罰則規定が設けられている(消法8③~⑤)。


5 手続委託型輸出物品販売場制度と臨時販売場制度
(1)手続委託型輸出物品販売場制度の創設と対象範囲の見直し(消令18の2~18の3)
 外国人旅行者が複数の免税店で買物をした場合には、原則として各店舗ごとに書類作成や包装などの免税手続をすることになる。また、購入金額については下限額が設定されており、旧法の基では電化製品や洋服などの一般物品については1万円、化粧品や薬などの消耗品については5千円を超えなければ免税で購入することはできないこととされていた。
 「手続委託型輸出物品販売場制度」とは、商店街やショッピングモールなどに「免税手続カウンター」を設置し、この「免税手続カウンター」の営業者に免税手続を委託した場合には、「免税手続カウンター」で各店舗の免税手続をまとめて行うことができるというものである(平成27年度改正で創設)。
 具体的には、各免税店では外国人旅行者に商品を税込金額で販売する。外国人旅行者は、各店舗で購入した商品を「免税手続カウンター」に持ち込み、ここで免税手続をするとともに消費税相当額の返金を受けることになる。
 また、購入下限額の判定についても、各店舗ごとの購入金額ではなく、「免税手続カウンター」に持ち込んだ商品の合計金額で判定してよいこととされている。
 この「手続委託型輸出物品販売場制度」については、商店街の組合員が設置した大規模小売店舗内で非組合員が営業するテナントであっても、組合員である店舗と共同で免税手続カウンターを利用することが認められている(平成28年度改正で創設)。


(2)外航クルーズ船が寄港する港湾内に、臨時販売場を設置するための届出制度(消法8⑧)  免税店の経営者が、あらかじめ、港湾施設に臨時店舗を設置する見込みであることについて税務署長の許可を受けた場合には、出店の前日までに、具体的な臨時店舗の場所等を税務署長に届け出ることにより、免税販売を認めることとした。
 これにより、豪華客船などで世界旅行を楽しむセレブな旅行者は、免税店に足を運ばずとも、客船の近辺で免税品を購入することができることとなる。


6 サテライトショップと出国時に携帯する物品の取扱い
(1)サテライトショップの取扱い
 国際空港において、出国手続を済ませた後で無税で買い物ができる店舗のことを「サテライトショップ」というが、この「サテライトショップ」は輸出物品販売場とは異なるものである。ただし、「サテライトショップ」で販売する物品は、購入した旅行者がその物品を携帯して輸出することが明らかであることから、その「サテライトショップ」の経営者が、その販売した物品を輸出するものとして、輸出免税の規定を適用することが認められている(消基通7-2-21)。
(2)出国時に携帯する物品の取扱い  海外旅行等のため出国する者が、次の①又は②の用に供するための物品を輸出物品販売場で購入する場合には、輸出物品販売場の経営者が、その物品を輸出するものとして、輸出免税の規定を適用することが認められている(消基通7-2-20)。
①渡航先において贈答用に供するものとして出国の際に携帯する物品(1個当たりの対価の額が1万円を超えるものに限る。)
②渡航先において2年以上使用し、若しくは消費するもの
 なお、この取扱いは、次の③及び④の要件を満たす場合に限り、適用することとされている。
③購入者が、上記①及び②に該当する物品であることを誓約した書類を輸出物品販売場の経営者に提出すること
④税関長から交付された輸出証明書を保存すること

7 租税特別措置法等の免税
(1)航海中に消費する物品の取扱い(消法7①・消基通7-2-18・措法85)
 国際輸送などに用いる船舶や航空機に積み込む燃料や飲食物などは、航海中に海の上で消費されてしまうものである。そこで、積み込みのための船用品や機用品を譲渡した場合には、税関長の承認を受けることにより、その譲渡に係る消費税を免除することとしている。なお、外国籍の船舶や航空機に貨物を積み込む場合には、その貨物はまさに「輸出」されるものであり、船用品や機用品に限らず、また、税関長の承認も要せずに、輸出免税の規定により、その譲渡に係る消費税は免除されることになる。
(2)大使館との取引等(措法86・措令45の4)  国税庁長官の指定を受けた事業者が、外国の大使館や大使などに対して課税資産の譲渡や貸付け、役務の提供を行った場合には、その大使館や大使などから交付を受けた証明書の保存を条件として、その譲渡等に係る消費税は免除される。
(3)合衆国軍隊との取引等(措法86の2・消基通7-2-19)  合衆国軍隊の兵隊などが海軍販売所等で購入する物品は、国外に輸出され、最終的に国外で消費、使用されることになる。そこで、海軍販売所などに対して物品を販売する場合や合衆国軍隊の公認調達機関に納入するものについては、書類の保存を条件として、消費税を免除することとしている。
(4)米軍基地からの受注工事の取扱い(所得臨時法7・所得臨時令2)  建設業者が、在日米軍の基地から軍用に供する施設の工事の注文を受けた場合には、その建設工事については消費税が免除される。なお、免税の適用を受けるためには、合衆国軍隊の権限ある官憲の発給する証明書で、合衆国軍隊の用に供されるものであることを証明するものを保存することが要件とされている(消費税実例回答集10訂版465頁/税務研究会出版局~木村剛志編)。
※この取扱いは、租税特別措置法ではなく、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う所得税法等の臨時特例に関する法律」に基づくものである。

脚注
注1 購入者誓約書の提出については、平成28年度改正により、輸出する旨を誓約する電磁的記録の提供によってすることが認められている。
注2 平成30年度改正で利便性の向上した「合計販売金額による免税対象品の判定」は、国土交通大臣及び経済産業大臣が財務大臣と協議して指定する方法により包装した一般物品を消耗品として取り扱うことにより、当該一般物品と消耗品の販売金額を合計して5,000円判定をするものである。

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