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解説記事2018年11月19日 【税務マエストロ】 平成30年度改正(2018年11月19日号・№764)

税務マエストロ
税務における第一人者“税務マエストロ”による税実務講座

今週のマエストロ&テーマ
平成30年度改正

#221 熊王征秀(税理士)

略歴 学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。
現在
東京税理士会会員相談室委員
東京税理士会調査研究部委員
東京地方税理士会税法研究所研究員
日本税務会計学会委員
大原大学院大学教授

マエストロの解説  今月は、平成30年度税制改正のうち、消費税に関する改正内容を解説する。
 なお、平成30年3月31日に消費税法施行令等の一部を改正する政令(政令第135号)が制定されたことを受け、同日付で消費税法施行規則等の一部を改正する省令(財務省令第18号)が定められているが、これらの改正法政省令で明らかにされた適格請求書等保存方式(日本型インボイス制度)に関する取扱いについては、本稿では解説しない。

1 平成30年度改正の概要  次頁図表1参照。


2 簡易課税制度のみなし仕入率の見直し
(1)概要
 軽減税率制度の実施により、食用の農林水産物を生産する農林水産業については、売上げに軽減税率が適用されるのに対し、種子や農薬、農耕器具などの仕入れのほとんどが標準税率となる。
 簡易課税制度においては、売上税額にみなし仕入率を乗じて算出した額が仕入税額とされるため、現行のみなし仕入率(70%)を維持すれば、仕入税額が過少に算出されることになる。そこで、食用の農林水産物を生産する農林水産業について、第3種事業とされている現行70%のみなし仕入率を80%(第2種事業)に引き上げることとしたものである(改消令57⑤二)。
 ただし、農林水産業がすべて第2種事業に区分されるわけではない。飲食料品の譲渡だけが80%のみなし仕入率の適用となるので、飲食料品以外の資産の譲渡は、次頁図表2のようにその取引形態に応じて判断することになる。
 また、仕入商品の販売であれば、食品か否かに関係なく、第1種事業または第2種事業に区分することができる。
 例えば、「天然きのこ採取業」は、日本標準産業分類の大分類で林業(A)に区分することとされている(細分類番号0239)。したがって、伐採した材木の譲渡は第3種事業となるのに対し、山から採取した天然きのこの譲渡は第2種事業に区分することができるのである。
(2)国税庁質疑応答事例  改正法に基づき、国税庁の質疑応答事例(抜粋)をアレンジすると下記のようになる(太字が改正による変更点)。

○日本標準産業分類からみた事業区分(大分類-A農業、林業、B漁業)
 事業者が行う事業の区分は、原則として、それぞれの資産の譲渡等ごとに判定を行うことになるが、日本標準産業分類を基に事業の種類を区分するとおおむね次のように分類される。
<注意> 1 事業区分のうち、第三種事業及び第五種事業については、日本標準産業分類(大分類)の製造業等及びサービス業等の分類を基準に、これらの製造業等及びサービス業等として一般的に行われる資産の譲渡等に該当するかどうかにより判定を行うものであるが、すべての業種の判定について日本標準産業分類からみた事業区分の目安に過ぎないものである。
2 この表の事業区分欄は日本標準産業分類の各業種分類における一般的な事業の種類を表示したものであり、この表の留意事項欄に例示のない資産の譲渡等については、個別に判定する必要がある。
3 平成20年4月1日から各中分類ごとに設けられた小分類「管理、補助的経済活動を行う事業所」は、おおむねそれぞれの事業所において行う事業が該当する小分類の事業区分に従って判定される。

(3)適用時期(平成30年改正令附則11の2)  改正法による簡易課税制度は、平成31年10月1日を含む課税期間から適用されるが、平成31年9月30日までの「食用の農林水産物」の譲渡については適用しないこととされている。よって、平成31年4月1日~平成32年3月31日課税期間分の申告については、「食用の農林水産物」の売上高を、平成31年4月1日~平成31年9月30日期間分と平成31年10月1日~平成32年3月31日期間分に区分して、それぞれ異なるみなし仕入率を適用することになる。


3 適格簡易請求書の電子化(改消法30⑨二)  適格請求書等保存方式においては、適格請求書の電磁的記録により提供が可能とされているが、不特定かつ多数の者に対して交付する適格簡易請求書については、買い手を特定して電磁的記録を提供することができないことから、適格簡易請求書を電磁的記録により提供することはできないこととされていた。
 一方、平成29年6月9日に閣議決定された「未来投資戦略2017」では、「レシートの電子化促進のためのフォーマットの統一などの環境整備を29年度内に行う」ことが決定されている。これにより、「電子レシート」がコンビニ等の小売業者を中心に急速に普及していく可能性があり、既に一部の小売店でも、独自の形式での「電子レシート」の提供が行われている。
 こうした現状や、軽減税率へのシステム対応とともに適格請求書等保存方式への対応を円満に行えるよう、適格簡易請求書を電磁的記録により提供できることとしたものである。
 電磁的記録による適格簡易請求書は、適格(簡易)請求書が導入される平成35年10月1日以後の取引について提供することができる。

4 延払基準の廃止と経過措置(平成30年改正法附則44)
(1)延払基準の廃止と経過措置
 長期割賦販売等をした場合に選択が認められていた「延払基準」が廃止になる。ただし、平成30年4月1日前に長期割賦販売等に該当する資産の譲渡等を行った事業者は、平成35年3月31日までに開始する各年または各事業年度について、引き続き延払基準の適用を受けることができる。
 また、平成30年4月1日以後に終了する課税期間において延払基準の適用をやめた場合の賦払金の残額を10年均等で売上高に計上することができる。


(2)ファイナンス・リース取引の取扱い  ファイナンス・リース取引については、現行法どおり売買として取り扱われるとともに、リース延払基準の特例も適用することができる。


 また、所有権移転外ファイナンス・リースについて認められている一括控除と分割控除の選択についても変更はない。

5 券面のない有価証券等を譲渡した場合の内外判定(改消令6①九ハ~ニ)  株券や受益証券などの有価証券はペーパレス化が進んでおり、上場株式などはそのほとんどが振替機関により管理されている。そこで、振替機関で保護預りとなっている現物株式や、振替機関により管理されている有価証券を譲渡した場合の内外判定は、振替機関の所在地によることとした。
 外国の機関が取り扱う外国株式は、外国の機関の所在地が国外であることから、改正前も改正後も国外取引に該当することになる。
 また、同族法人の株式のように振替機関が取り扱わない有価証券は、その株式等の発行法人の本店、主たる事務所その他これらに準ずるものの所在地で判定することとなった(注1)。


<用語解説>
○券面(けんめん)とは?  金融実務上、商法上の意義の有価証券として、権利を化体する紙片そのものをいう言葉である。商法上の有価証券は券面に権利が付着していることを特徴とするが、いわゆるペーパーレス化(無券面化)により、券面から権利が分離され、権利自体が振替制度を通じて流通するようになった。
○振替機関とは?  2009年1月の「株券電子化」以後、国内のすべての上場株式は、「株式等振替制度」の下で管理されるようになった。この制度では、株主としての権利を、「ほふり」や証券会社等の振替機関に開設された口座で、電子的な記録として管理しており、株主としての権利の移転(証券決済)も、その残高記録の増減により行われている。

6 輸出物品販売場制度の改正  輸出物品販売場制度については、平成26年度から28年度にかけて連年にわたり改正が行われている。また、平成30年度改正では、免税販売手続の電子化や免税対象物品の下限額の引き下げなどの改正が行われ、訪日観光客に対する税制や利便性といった観点からの配慮がなされている(注2)。
(1)現行制度の概要(消法8、消令18、消規7)  輸出物品販売場(DFS)で非居住者に販売した商品は、その購入した非居住者により国外に輸出され、最終的に国外で消費、使用されることになる。そこで、免税ショップで所定の手続のもとに販売されたものについては、輸出免税と同様に、その譲渡について消費税を免除することとしている。


 輸出物品販売場を経営する事業者は、非居住者に対し、免税で商品を販売しようとする場合には、購入者のパスポートを確認し、購入者誓約書に必要事項を記入させるとともに、これを確定申告期限から7年間保存することが義務付けられている。
 また、輸出物品販売場を経営するためには、その事業者の納税地を所轄する税務署長の許可を受けなければならない。この場合、免税事業者については許可を受けることはできないため、結果として課税事業者についてしか輸出物品販売場における免税規定は適用されないことになる。
(2)免税販売手続の電子化(改消令18の4、平成30年改正消令附則1三~四・4③)  外国人旅行者のパスポートの情報について、その内容を電磁的記録により国税庁長官に提供することとした。
 この改正に伴い、現行法で義務化されている購入記録票の貼付けと割印、購入者誓約書の作成と保存などの手続等は廃止となる。
 改正法は平成32年4月1日以後の取引から適用されることとなるが、平成32年4月1日~平成33年9月30日期間中は現行法の手続等によることもできる。
(3)免税対象物品の下限額の判定の見直し(改消令18⑬、平成30年改正消令附則1一)  平成30年7月1日以後の取引については、消耗品と一般物品の合計販売金額が5,000円を超えることにより、免税対象品とすることができることとなった(注3)。

脚注
注1 改正前は、株券の発行がない株式を譲渡した場合には、譲渡者の譲渡に係る事務所等の所在地で判定することとされていた。よって、内国法人が券面のない外国法人の株式を譲渡した場合には、外国法人の発行した株式の譲渡であるにも係らず国内取引に該当し、「譲渡対価×5%」を非課税売上高に計上する必要があった。今回の改正により、こういった実務上の弊害が解消されたことになる。
注2 輸出物品販売場制度の改正については、本誌760号(前回号)と解説が重複する箇所があることをご承知おき願いたい。
注3 現行法では、消耗品と一般物品それぞれについて、5,000円の下限額が設けられている。

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