カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2019年02月11日 【第2特集】 金融庁の考え方から読む企業内容等開示府令(上)(2019年2月11日号・№774)

第2特集
金融審議会DWG報告を踏まえた見直し
金融庁の考え方から読む企業内容等開示府令(上)

 企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(平成31年内閣府令第3号)が1月31日に公布された。昨年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告を踏まえたもの。例えば、経営方針・経営戦略等については、市場の状況、競争優位性、主要製品・サービス、顧客基盤等に関する経営者の認識の説明を含めた記載を求めるほか、事業等のリスクについて、顕在化する可能性の程度や時期、リスクの事業へ与える影響の内容、リスクへの対応策の説明を求める。また、監査役会等の活動状況、監査法人による継続監査期間、ネットワークファームに対する監査報酬等の開示も求める。これらは平成32年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用(平成31年3月31日以後終了する事業年度からの早期適用も可)することとしている(役員報酬等については次号以降に掲載予定)。
 本特集では、意見募集を行っていた内閣府令案に対して寄せられたコメントに対する金融庁の考え方などをもとに、実務上の留意点をQ&A形式で解説する。

経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は各企業の実情に応じて記載
Q
 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等の記載に当たっては、連結会社の経営環境として、例えば、企業構造、事業を行う市場の状況、競合他社との競争優位性、主要製品・サービスの内容、顧客基盤、販売網等が挙げられていますが(第二号様式記載上の注意(30)a)、これらのすべてを記載する必要がありますか。
A  「企業構造、事業を行う市場の状況、競合他社との競争優位性、主要製品・サービスの内容、顧客基盤、販売網等」はあくまでも例示にすぎず、すべてを記載しなければならないわけではない。各企業が個社の実情に応じて工夫して記載すればよいものとされている。
 また、各企業の企業秘密に該当する情報等、開示することにより企業価値等を損なう情報まで記載を求めるものではないとしている。

経営上の目標達成を判断するための指標とは?
Q
 「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等がある場合には、その内容を記載すること。」(第二号様式記載上の注意(30)a)とありますが、具体的には何を記載すればよいのですか。
A  目標の達成度合を測定する指標、算出方法、なぜその目標を利用するのかについての説明等を記載することが考えられる。経営計画等の具体的な目標数値の記載を義務付けるものではないが、当該目標数値を任意で記載することは妨げられないとしている。
 また、有価証券報告書に合理的な検討を踏まえて設定された経営計画等の具体的な目標数値を記載する場合には、有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものを記載すべきであり、必要に応じて記述情報による補足も含めるべきとしている。有価証券報告書の提出以降に有価証券届出書を提出する際には、必要に応じて当該有価証券届出書提出日現在における当該目標数値の状況等について補足して記載することが望ましいとしている。いずれにせよ、それぞれの企業の経営内容に即して企業が各自判断することになる。

経営陣が考えるリスクを記載
Q
 事業等のリスクを具体的に記載する場合の例示として、「当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に連結会社の経営成績等の状況に与える影響の内容、当該リスクへの対応策を記載するなど」とされていますが(第二号様式記載上の注意(31)a)、あくまでも例示として考えてよいですか。
A  「経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクについて」記載することを求めており、リスク項目を羅列するのではなく、主要なリスクを記載することになる。リスク情報の記載に当たっては、リスクの発生可能性や企業への潜在的影響の大きさの観点から、企業の成長、業績、財政状態、将来の見込みについて重要であると経営陣が考えるものに限定するとともに、企業に固有でない一般的なリスクを記載する場合は、具体的にどのような影響が当該企業に見込まれるのか明らかにすることが求められる。

リスクの顕在化は経営者の判断を根拠に
Q
 「当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期」(第二号様式記載上の注意(31)a)は何を根拠として記載すればよいのですか。
A  事業等のリスクは、翌期以降の事業運営に影響を及ぼし得るリスクのうち、経営者の視点から重要と考えるものを説明するものである。また、取締役会や経営会議において、そのリスクが企業の将来の経営成績等に与える影響の程度や発生の蓋然性に応じて、それぞれのリスクの重要性をどのように判断しているかについて、投資者が理解できるような説明をすることが期待されるものであるため、「顕在化する可能性の程度や時期」については、経営者として判断した根拠が記載されることが望ましいものとされている。

実際に異なっても虚偽記載にならず
Q
 リスクが顕在化する可能性の程度が低いと記載していたにもかかわらず当該リスクが顕在化してしまった場合であったとしても、虚偽記載には該当しないと考えてよいですか。
A  事業等のリスクの記載は、将来の不確実な全ての事象に関する正確な予想の提供を求めるものではなく、提出日現在において、経営者が企業の経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクについて、具体的な説明を求めるものである。事業等のリスクの記載が虚偽記載に該当するかどうかは個別に判断されるが、提出日現在に、経営者が企業の経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクについて、一般に合理的と考えられる範囲で具体的な説明がされていた場合、提出後に事情が変化したことをもって、虚偽記載の責任を問われるものではないとしている。
 一方、提出日現在において、経営者が企業の経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクを敢えて記載しなかった場合、虚偽記載に該当することがあり得ることになる。

内部留保資金は削除
Q
 改正開示府令案では、キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容などを記載するに際して、「キャッシュ・フローの状況」には内部留保資金の状況も含まれるとの記載がありましたが、最終的には削除されました。その理由を教えてください。
A  内部留保資金という用語は多義的であり、実務に混乱を生じさせる可能性もあることから削除された。キャッシュ・フローの状況における資金需要の動向に関する経営者の認識の説明に当たっては、企業が得た資金のうち、どの程度を成長投資、手許資金、株主還元とするかについて、経営者の考え方を記載することが有用になるとしている。

非常勤の監査役等も記載
Q
 個々の監査役、監査委員及び監査等委員の活動状況については、非常勤の監査役等も記載する必要がありますか。
A  監査役、監査委員及び監査等委員の活動状況については、常勤者のみの活動の記載だけではなく、非常勤の者も含めて記載される必要がある。

過去に合併等した場合の継続監査期間は?
Q
 継続監査期間の算定に関する考え方について教えてください。また、過去に合併があった場合など、どの時点まで遡って継続監査期間を計算する必要がありますか。
A  継続監査期間は、提出会社が有価証券届出書提出前から継続して同一の監査法人による監査を受けている場合には有価証券届出書提出前の監査期間も含めて算定する。過去に会社や監査法人の合併等が行われた場合の被監査継続期間の算定は以下のとおり。
① 過去に提出会社において合併、会社分割、株式交換及び株式移転があった場合であって、会計上の取得企業の監査公認会計士等が提出会社の監査を継続して行っているときは、当該合併、会社分割、株式交換及び株式移転前の監査期間も含めて算定する。
② 過去に提出会社において合併、会社分割、株式交換及び株式移転があった場合であって、会計上の被取得企業の監査公認会計士等が提出会社の監査を行っているときは、当該合併、会社分割、株式交換及び株式移転前の監査期間は含めないものとして算定する。
③ 過去に監査法人において合併があった場合、当該合併前の監査法人による監査期間も含めて算定する。
④ 提出会社の監査業務を執行していた公認会計士が異なる監査法人に異動した場合において、当該公認会計士が異動後の監査法人においても継続して提出会社の監査業務を執行するとき又は当該公認会計士の異動前の監査法人と異動後の監査法人が同一のネットワークに属するとき等、同一の監査法人が提出会社の監査業務を継続して執行していると考えられる場合には、当該公認会計士の異動前の監査法人の監査期間も含めて算定する。
 金融庁によると、継続監査期間の算定に当たっては、基本的には、可能な範囲で遡って調査すれば足り、その調査が著しく困難な場合には、調査が可能であった期間を記載した上で、調査が著しく困難であったため、継続監査期間がその期間を超える可能性がある旨を注記することが考えられるとし、継続監査期間の記載方法については、「○年間」と記載する方法のほか、「○年以降」といった記載も考えられるとしている。

同一のネットワークか把握できた時点で開示
Q
 報酬について、同一のネットワークに属するものに支払ったかどうかを判別するためには(第二号様式記載上の注意(56)d(f)ⅱ)、監査法人の同一のネットワークに含まれる外国の監査法人の事務所等を調査する必要がありますが、いつの時点のネットワークをベースにすればよいですか。事業年度末時点では実務上対応できないと思われます。
A  各企業の実情に応じ、把握できる時点の開示が考えられるが、把握した時点を記載する必要がある。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索