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解説記事2019年02月18日 【ニュース特集】 所得税・消費税の 審理事例をチェック(2019年2月18日号・№775)

ニュース特集
事業者向け電気通信利用役務の提供etc.
所得税・消費税の審理事例をチェック

 課税当局が確認している所得税、消費税の審理事例が明らかになった。所得税関係では、奨学金の返済免除に係る利得の課税関係、雑貨等と併せて割引券を使用した場合のセルフメディケーション税制対象商品の金額、e-Taxで更正の請求をした場合の源泉徴収票の提出義務などが取り上げられている。消費税関係では、外国法人が運営する外国人観光客向けウェブサイトに掲載した広告料に係る取扱いなどが示されている。

Ⅰ 課税・非課税
奨学金の返済免除に係る利得の課税関係 Q  平成28年4月以降にA県から奨学金(以下「本件奨学金」という)の貸与を受けた医学生が、医師免許取得後にA県が設置・運営する医療機関に一定期間従事することにより、本件奨学金の返還及び利息の支払に係る債務を免除された場合、当該債務免除に係る課税関係はどのようになるのか。
A  所得税法9条1項15号の規定に該当し、非課税となる。
(解説)  平成28年度税制改正により、所得税法9条1項15号の規定が改正され、非課税所得の対象とならない給与その他対価の性質を有する学資金から、通常の給与に加算するものであって、同号イないしニに該当するもの以外のものが除かれた。
 これにより、平成28年4月1日以後に受けるべき学資金については、学資金の貸与先が地方公共団体で、勤務先が地方公共団体の設置・運営する医療機関である場合には、上記の非課税所得の対象とならない給与その他対価の性質を有する学資金から除かれることとなったため、本件奨学金に係る債務免除益は非課税となる。
 なお、平成28年度税制改正後においても、「学資に充てるため給付される金品」から、給与その他対価の性質を有するものは除かれるほか、給与所得を有するものがその使用者から受けるものにあっては、通常の給与に加算して受けるものであって、所得税法9条1項15号のイないしニに該当する場合は非課税とならないことに留意する。
【参考】  平成28年度税制改正前の所得税法9条1項15号の規定(以下「旧学資金非課税規定」という)では、勤務先が学資金の貸与をした地方公共団体の設置・運営する医療機関である場合における債務免除益は旧学資金非課税規定にいう「給与その他対価の性質を有するもの」に該当し、当該地方公共団体から受ける給与所得として課税されていた。
 なお、平成24年3月9日の文書回答事例「県から奨学金の貸与を受けた医学生が医師免許取得後県内の医療機関に一定期間従事することによりその返還及び利息の支払に係る債務を免除された場合の課税関係について」は、旧学資金非課税規定に基づき回答がされていることに留意する。

Ⅱ 所得区分
特許を受ける権利に係る使用者原始帰属制度に基づく相当の利益の所得区分 Q  特許法35条3項は、従業者等がした職務発明(使用者等の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明)については、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から当該使用者等に帰属する旨規定している。
 また、特許法35条4項は、上記の場合、従業者等は、使用者等から「相当の利益」を受ける権利を有する旨規定している(以下「使用者原始帰属制度」という)。
 従業者等が使用者原始帰属制度により使用者等から取得する「相当の利益」(以下「本件利益」という)は、所得税法上、どの所得に区分されることとなるのか。
A  雑所得に該当する。
(解説)  所得税基本通達は、特許を受ける権利を使用者に承継させたことにより支払を受ける報償金等のうち、権利の承継に際し一時に支払を受けるものは譲渡所得、承継させた後において支払を受けるものは雑所得として取り扱う旨を定めている(所得税基本通達23~35共-1)。
 しかし、使用者原始帰属制度は、使用人等に帰属する特許を受ける権利を使用者等に承継させるものではないことから、上記取扱いによらず検討する必要がある。
(1)譲渡所得  本件利益は、従業者等から使用者等へ特許を受ける権利を移転させることにより生ずるものではないことから、譲渡所得には該当しない。
(2)給与所得  本件利益は、使用者等から支払を受けるものであるが、特許法の考え方では、労務を提供する地位に基づいて支給されるものではなく発明者としての地位に基づいて支払を受けるものであることから、給与所得には該当しない。
(3)一時所得  本件利益は、契約等により、使用者等にその権利を原始的に取得させることによって生ずるものであることから、相当の対価性が認められるものであり、臨時・偶発的な所得である一時所得には該当しない。
(4)雑所得  上記(1)ないし(3)のとおり、本件利益は、他の所得のいずれにも該当しないことから、一般的には雑所得に該当する。

Ⅲ 所得控除

割引券を使用した場合のセルフメディケーション税制対象商品の金額
Q
 納税者Aが、ドラッグストアにてセルフメディケーション税制対象商品及び雑貨等を購入した。また、Aは、購入に当たり、ドラッグストアの割引券(購入ポイントが貯まるともらえる500円の割引券)を使用した。
 セルフメディケーション税制対象商品と併せて雑貨等を購入した場合、セルフメディケーション税制の対象となる金額は、どのように計算するか。
 なお、レシートにおいては、購入した商品の合計額から割引券の券面額が差し引かれており、セルフメディケーション税制対象商品と雑貨等に按分して差し引かれた金額は表示されていない。
A  割引金額(500円)については、雑貨等の金額から差し引いて差し支えない。
(解説)  平成28年度税制改正により、租税特別措置法41条の17の2が創設され、平成29年1月1日から平成33年12月31日までの間に、健康の保持増進及び疾病の予防への取組として「一定の取組」を行っている居住者が、自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族のために特定一般用医薬品等(セルフメディケーション税制対象商品)の購入費を支払った場合には、支払った特定一般用医薬品等(セルフメディケーション税制対象商品)の購入費の合計額から12,000円を差し引いた金額(最高88,000円)を医療費控除として控除することができるようになった。
 特定一般用医薬品等(セルフメディケーション税制対象商品)は、一般的にはドラッグストア等の小売業者から購入する場合が多く、これら小売業者では割引券を発行している場合もある。
 また、小売業者は、レシート等にセルフメディケーション税制対象商品である旨のほか、金額等の明記が必要となるものの、割引券が使用された場合、そのレシート等においては、購入した商品の合計額から割引券の券面額を差し引くこととし、セルフメディケーション税制対象商品と雑貨等を按分して差し引いた表示をすることができないケースが多い。
 このとき、セルフメディケーション税制の対象となる「支払った金額」の算定の方法については税法上の規定がないことから、納税者有利の観点から計算することとし、割引金額(500円)については、セルフメディケーション税制対象商品以外の商品の金額から差し引いて差し支えない。
【参考】  セルフメディケーション税制は、所得税法73条に規定する医療費控除との選択適用となり、セルフメディケーション税制を選択適用し確定申告した場合には、その後における更正の請求や修正申告での選択替えはできないことに留意する。

Ⅳ 申告・更正の請求等

相続人が準確定申告書を提出した後に相続放棄した場合の取扱い
Q
 被相続人Aの相続人であるX及びYは、Aの死亡後4ヶ月以内にAの平成28年分所得税等の準確定申告書及び平成28課税期間分消費税等の準確定申告書(以下「本件各準確定申告書」という)を提出したが、X及びYは、いずれも本件各準確定申告書を提出した後に相続を放棄した。
 このとき、本件各準確定申告書及び納付すべき税額の取扱いはどうなるか。
〈時系列〉
 平成28年4月28日 被相続人A死亡
 平成28年8月26日 X及びYが、本件各準確定申告書を提出
 平成28年9月1日  〇〇家裁××支部が、X及びYの相続放棄の申述を受理
A  本件各準確定申告書は、無効な申告書となるため、本件各準確定申告書に係る無効確認決議を行う。
 また、本件各準確定申告書に基づく納税は要しない。
(解説)  居住者(個人事業者)が年(課税期間)の中途において死亡した場合において、その者のその年分の所得税(消費税)について所得税法120条1項(消費税法45条1項)の規定による申告書を提出しなければならない場合に該当するときは、その相続人は、その相続の開始があったことを知った日の翌日から4月を経過した日の前日までに、所得税(消費税)の確定申告書を提出しなければならない(所法125①、消法45③)。
 しかし、相続を放棄した者は、相続開始の時から相続人でなかったものとみなされる(民法939条)ことから、上記規定の「その相続人」に該当しない。
 したがって、相続を放棄した者には、被相続人に係る所得税(消費税)の確定申告書を提出する義務は生じないこととなるため、申告義務のないX及びYから提出された本件各準確定申告書は無効となる。
【参考】  「民法上の相続人が不存在の場合の準確定申告の手続」については、国税庁ホームページの「質疑応答事例」に掲載されている。

名義貸しをした者から提出された過去7年分の更正の請求書の取扱い
Q
 歯科医業を営むAは、Aが経営する甲診療所及び乙診療所から生ずる利益を享受していたところ、乙診療所から生じた利益(平成23年分~平成29年分)をBに申告させ、不正に課税を免れていた。
 そのため、Aは、税務調査により、Bに申告させていた乙診療所から生じた利益はAに帰属するとして平成23年分から平成29年分までの各年分の所得税等の更正処分を受けた。
 Aの行為は国税通則法70条4項に規定する「偽りその他不正の行為」に該当するとして、Aに対し更正処分を行ったことに伴い、Bが過去7年分の更正の請求書を提出した場合、Bに対し過去7年間分の減額更正を行うこととなるか。
A  過去5年分の減額更正を行う。
(解説)  国税通則法23条2項2号は、その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算に当たってその申告をし、又は決定を受けた者に帰属するものとされていた所得その他課税物件が他の者に帰属するものとする当該他の者に係る国税の更正又は決定があったときは、当該更正又は決定があった日の翌日から起算して2月以内に更正の請求ができる旨規定しているが、同号の事由は、同法71条が規定する更正決定等の期間制限の特例の対象となる事由に該当しない。
 したがって、Aに対し7年間遡及して増額更正を行ったことに伴い、Bが、確定申告した所得金額の減少を理由として過去7年分の更正の請求をしたとしても、過去6、7年分の減額更正は認められない。

外国税額控除の対象とした外国税額を必要経費に振り替える更正の請求の可否
Q
 納税者Aは、確定申告によって外国税額控除の対象とした外国税額を、不動産所得の必要経費に振り替える更正の請求書を提出した。
 Aの更正の請求は認められるか。
A  更正の請求は認められない。
(解説)  国税通則法23条1項は、納税申告書を提出した者は、国税に関する法律の規定に従っていなかった場合に更正の請求をすることができる旨規定している。
 また、所得税法95条1項は、居住者が各年において外国所得税を納付することとなる場合には、その外国所得税の額をその年分の所得税の額から控除する旨規定している。
 そして、所得税法46条は、所得税法95条1項の規定の適用を受ける場合は、同項に規定する控除対象外国所得税の額を不動産所得等の金額の計算上、必要経費に算入しない旨規定している。
 したがって、控除対象外国所得税について所得税法95条1項の規定を適用するか又は不動産所得等の必要経費に算入するかの選択は、納税者に委ねられていることとなる。
 Aは、確定申告において、外国税額控除の規定を適用するか又は不動産所得の必要経費に算入するかいずれかを選択できたところ、外国税額控除の規定を適用することを選択したのであり、この選択は、所得税法の規定に基づいたものである。
 そうすると、Aが外国税額控除の規定を適用して不動産所得の必要経費に算入しなかったことは、国税通則法23条1項の「国税に関する法律の規定に従っていなかったこと」に該当しないため、Aの更正の請求は認められない。

e-Taxにより更正の請求書を提出した場合における源泉徴収票の提出義務
Q
 納税者Aは、e-Taxにより、確定申告書に記載をしていない給与(以下「本件給与」という)を含める内容の更正の請求書を提出した。また、Aは、「給与所得の内訳」欄に本件給与に係る所定の事項を入力し送信することで、源泉徴収票の提出を省略した。
 Aは、本件給与の源泉徴収票を提出する義務があるか。
A  e-Taxにより所定の事項を入力し送信した場合は、本件給与の源泉徴収票を提出する義務はない。
 ただし、Aは、税務署の担当者から源泉徴収票の提出を求められた場合には、源泉徴収票を提出しなければならない。
(解説)  国税関係法令に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令5条2項は、e-Taxを利用して申請等(更正の請求を含む)が行われる場合において、税務署長等は、当該申請等につき規定した法令の規定に基づき添付すべきこととされている書面等(源泉徴収票を含む。以下「添付書面等」という)に記載されている事項等(以下「添付書面等記載事項」という)を、当該申請等に併せて入力して送信する方法により送信させることをもって、当該添付書面等の提出に代えさせることができるとしている。
 また、国税関係法令に係る行政手続等における情報通信の技術の利用に関する省令5条3項は、同条2項の場合において、税務署長等は、一定の期間、添付書面等記載事項の確認のために必要があるときは、添付書面等を提示又は提出させることができるとし、同条4項は、同条2項の規定は、申請等を行った者が添付書面等の提示又は提出に応じない添付書面等には適用しないとしている。
 以上の規定から、e-Taxを利用して更正の請求をしようとする者は、源泉徴収票の内容につき所定の事項を入力して送信すれば足り、それとは別に源泉徴収票を提出する義務はない。
 ただし、税務署長等は添付書面等記載事項の確認のために必要があるときは、添付書面等の提出をさせることができるのであるから、Aは、税務署の担当者から源泉徴収票の提出を求められた場合には、源泉徴収票を提出しなければならない。
※実務上は、申告内容に応じ、適宜、源泉徴収票の提出を依頼する。

Ⅴ 消費税

事業者向け電気通信利用役務の提供
Q
 国内にある店舗で飲食店業を営んでいる個人事業者A(当該店舗以外に飲食店業に係る業務を行う場所はない)は、外国人観光客向けのインターネットのウェブサイトを運営している外国法人B社と広告契約を締結し、当該ウェブサイト上に自身が経営する飲食店の広告(以下「本件広告」という)を掲載しており、平成30年中にB社に対して総額100,000円の広告料(以下「本件広告料」という)を支払っている。
 次の場合に、本件広告料は、Aの平成30年分の消費税の納付税額の計算において、それぞれどのように計算すべきか。
(1)Aの住所が国内にある場合
(2)Aの住所が国外にある場合
 なお、Aは、国内に賃貸用アパートを所有しており、平成30年分の課税売上割合は95%未満となる。
 また、簡易課税制度の適用は受けていない。
A  いずれの場合も、本件広告料100,000円は課税標準額に算入されるとともに、その6.3%(6,300円)は控除対象仕入税額に算入される。
(解説)  インターネットのウェブサイト上に広告を掲載する役務の提供は、電気通信回線を介して行われる役務の提供であり、「電気通信利用役務の提供」に該当する(消法2①八の三、消基通5-8-3(5))。
 さらに、国外事業者(消法2①四の二)であるB社が行う本件広告の掲載は、その性質からこれを受ける者が通常事業者に限られるものであると認められるため、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当する(消法2①八の四、消基通5-8-4(1))。
 また、「事業者向け電気通信利用役務の提供(及び特定役務の提供)」を「特定資産の譲渡等」といい(消法2①八の二)、「事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等」を「特定仕入れ」といい(消法4①)、「課税仕入れのうち特定仕入れに該当するもの」を「特定課税仕入れ」という(消法5①)ことから、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当する本件広告の掲載が国内において行われたとすると、本件広告料100,000円は、「特定課税仕入れに係る支払対価の額」として課税標準額に算入される(消法28②)とともに、本件広告料100,000円の6.3%(6,300円)は、「特定課税仕入れに係る消費税額」として控除対象仕入税額に算入されることとなる(消法30①)。
 ところで、国外事業者から受けた「事業者向け電気通信利用役務の提供」の内外判定は、原則として、それを受けた事業者の住所により行う(消法4④本文)。
 したがって、Aの住所が国内にある場合、本件広告の掲載は、国内において行われたこととなり、本件広告料は上記のとおり計算される。
 他方、平成29年1月1日以後に、非居住者(所法2①五)が恒久的施設(所法2①八の四)で国外事業者から受けた「事業者向け電気通信利用役務の提供」のうち、国内において行う資産の譲渡等に要するものは、国内取引とされる(消法4④ただし書、平成28改正法附則1三ハ)。
 ここで、Aの住所が国外にある場合、Aは非居住者であり、国内の店舗は恒久的施設に該当するものと認められる。
 さらに、本件広告の掲載は、国内において行う資産の譲渡等に要するものであるから、この場合にも、本件広告の掲載は国内において行われたこととなり、本件広告料は上記のとおり計算される。
 なお、当分の間、その課税期間において課税売上割合が95%以上である場合又は簡易課税制度の適用を受ける場合には、特定課税仕入れがなかったものとされるが(平成27改正法附則42、44②)、Aにこの経過措置の適用はない。

調整対象固定資産又は高額特定資産を取得した場合の納税義務
Q
 個人Aは、平成28年中に、不動産業(賃貸の仲介のほか、売買がある。以下「本件不動産業」という)を開業するとともに、同年分を適用開始課税期間とする「消費税課税事業者選択届出書」(以下「本件選択届出書」という)を提出したが、平成29年5月には「消費税課税事業者選択不適用届出書」(以下「本件不適用届出書」という)を提出している。
 ところで、Aは、平成29年12月に、建物1棟(以下「本件建物」という)を税抜価額1,200万円で取得しているところ、次の場合に、Aの平成30年分の納税義務はそれぞれどのようになるか。
(1)本件建物を本件不動産業の用に供する事務所として取得した場合
(2)本件建物を本件不動産業に係る棚卸資産として取得した場合
 なお、Aの平成28年中における課税売上高は200万円であり、これまでに「消費税簡易課税制度選択届出書」は提出していない。
A  いずれの場合も、Aの平成30年分の納税義務は免除されない。
(解説)
(1)本件建物を本件不動産業の用に供する事務所として取得した場合
 「消費税課税事業者選択届出書」の強制適用期間中に、国内における調整対象固定資産(棚卸資産以外の一定の資産のうち、税抜価額が100万円以上のものをいう(消法2①十六、消令5))の課税仕入れを行った場合、その課税期間の初日以後2年間は「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することができず、この提出制限期間の初日から当該調整対象固定資産の課税仕入れを行った日までの間に「消費税課税事業者選択不適用届出書」の提出があった場合、当該提出は、なかったものとみなされる(消法9⑦)。
 そうすると、本件選択届出書の強制適用期間中である平成29年12月に、Aが調整対象固定資産に当たる本件建物を取得したことにより、同年5月にされた本件不適用届出書の提出は、なかったものとみなされる。
 したがって、Aの平成30年分の納税義務は免除されない(本件選択届出書の効力が継続している)。
 なお、Aが改めて「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することができるのは、平成31年1月1日以後となる。
(2)本件建物を本件不動産業に係る棚卸資産として取得した場合  簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に、国内における高額特定資産(税抜価額が1,000万円以上の棚卸資産又は調整対象固定資産をいう(消令25の5))の課税仕入れを行った場合、その課税期間の初日以後3年間は、事業者免税点制度の適用を受けることができない(消法12の4①)。
 そうすると、本件不適用届出書の提出によって平成30年1月1日以後の本件選択届出書の効力は失われるが、Aは、平成29年12月に高額特定資産に当たる本件建物を取得しているため、同年1月1日から平成31年12月31日までの間、事業者免税点制度の適用を受けることができない。
 したがって、Aの平成30年分の納税義務は免除されない。
 なお、このことにより、Aは、速やかに「高額特定資産の取得に係る課税事業者である旨の届出書」を提出しなければならない(消法57①二の二)。
(補足)  (1)の場合における本件建物は、調整対象固定資産に該当すると同時に、高額特定資産にも該当する。
 したがって、(1)の場合もAは、高額特定資産を取得したことを理由として、平成29年1月1日から平成31年12月31日までの間、事業者免税点制度の適用を受けることができないこととなる。
 しかしながら、上記解説の(1)では、調整対象固定資産を取得したことを理由として、本件不適用届出書の提出がなかったものとみなされる(本件選択届出書の効力が継続している)ため、高額特定資産を取得したことによる事業者免税点制度の適否(消費税法12条の4第1項の適用の有無)を問題とするまでもなく、Aの平成30年分の納税義務は免除されないとの結論に至っている。
 また、(1)と(2)は、いずれも平成30年分の課税売上高が1,000万円以下であった場合、平成32年分から事業者免税点制度の適用を受けることが可能となる点で共通しているが、(1)の場合には改めて事前に「消費税課税事業者選択不適用届出書」の提出が必要となる点が異なる。

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