カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2019年03月11日 【SCOPE】 未払役員報酬の解決金に係る源泉税の求償権行使を認めず(2019年3月11日号・№778)

元役員に対する不納付分の支払い請求を斥ける
未払役員報酬の解決金に係る源泉税の求償権行使を認めず

 未払役員報酬請求訴訟における和解により支払った解決金について、税務署から役員給与と認定されたうえで源泉所得税の納税告知処分を受けた原告会社が被告元役員に対して、所得税法222条の規定による求償権に基づき源泉税相当額の求償金の支払いを求めていた裁判で東京地裁は平成30年11月15日、原告会社の請求を棄却した。地裁は、未払役員報酬請求訴訟における和解条項に設けられた包括的清算条項を踏まえ、本件における源泉所得税の求償権は和解において清算されている(事後の清算は行わないというものであった)旨を判断したうえで、源泉所得税の納付に係る求償金を求めた原告会社の請求を斥けた。なお、地裁判決を不服とした原告会社は控訴を提起している。

税務署が解決金を役員給与と認定、原告会社に対し源泉税の納税告知処分
 本件は、未払役員報酬請求訴訟(以下「別件訴訟」)をめぐり、原告会社が被告元役員(2名)に対して別件訴訟における裁判上の和解により支払った解決金の課税関係が発端となったものである。原告会社は、被告元役員に対して支払った解決金約1億5,000万円を損害賠償金として損金に算入していた。これに対し税務署は、解決金の支払いを役員給与(賞与)と認定したうえで、賞与から所得税の源泉徴収をして納付すべきであるとして、原告会社に対し源泉税(約6,000万円)の納税告知処分を行った。原告会社は、所得税法222条の規定に基づく源泉税の求償権の行使により、被告元役員に対して原告会社が納付した源泉税約6,000万円の支払いを求める一方で、解決金に係る納税告知処分の取消しを求めて国税不服審判所に対して審査請求を申し立てていた。これに対し審判所は、解決金の支払いは役員給与に該当するから原告会社(請求人)はその解決金の支払いをする際に源泉徴収をする義務があると判断したうえで、審査請求を棄却していた(参照)。

【表】解決金の支払いの際に原告会社は源泉徴収義務を負うか否か(裁決要旨)
 請求人(編注・本件訴訟における原告会社のことである)は、請求人の役員の地位にあった者に対し、和解に基づいて支払った解決金について、当該役員に対する給与に該当せず、訴訟を終結させるための解決金であるから、当該解決金の支払について源泉徴収義務はない旨主張する。
 しかしながら、当該和解の内容からすると、当該和解に基づく解決金の支払は当該役員に対する給与の支払とみるべきものであるから、請求人は当該解決金の支払をする際に源泉徴収する義務がある(平成29年9月1日裁決)。


地裁、和解における包括的清算事項により求償権は清算済みと判断
 本件訴訟において原告会社から求償金(原告会社が負担した源泉税相当額)の支払いを求められた被告元役員は、別件訴訟における和解の際に解決金に関する支払義務のほかには一切の債権債務関係を包括的に清算する旨の条項が設けられている点を指摘したうえで、原告会社は包括的清算条項により求償権を行使できないと主張した。これに対し原告会社は、解決金の源泉税に係る求償権は税務署からの納税告知処分に応じて不納付分を支払った時点で発生したものであるから和解成立前の事由を原因とする債権ではなく、和解における包括的清算条項の対象とはならないと反論した。
原告会社は賞与認定を予期し得たと指摘  原告会社の主張に対し地裁は、課税当局が和解金の支払について解決金との名目にとらわれることなく、その実質から賞与と認定される可能性があることは当然に予期し得ると指摘。また、和解に弁護士が訴訟代理人として関与し、その税務処理全般に常時関与する税理士も当然存在していたであろうことからすれば、同様に当然に予期し得ると指摘した。この点を踏まえ地裁は、本件の求償権は原告会社において当然に予期し得る性質の債権であるといえるから、そのように将来発生し得る債権も含めて和解における清算の対象とすることは和解当事者の合理的意思としてあり得るものというべきであるとしたうえで、原告会社の主張は採用できないとした。
 そして地裁は、別件訴訟における和解は長期にわたり複数の訴訟において争われてきた原告会社及び被告元役員との間の一連の役員報酬をめぐる訴訟の最終局面にあったというべきであって、その和解条項に設けられた包括的清算条項には別件訴訟の当事者において解決金の支払いをもって役員報酬に係る一連の紛争を終局的に解決するものとして、その後の一切の清算はしないという双方の合理的意思が前提となっていたものというべきであると指摘した。さらに地裁は、別件訴訟における和解の際の当事者の合理的意思について、解決金の支払いをもって別件訴訟の一切の紛争を解決し、源泉所得税の求償権のように将来発生し得る債権も含めて事由のいかんを問わずに事後の清算は行わないというものであったと認定した。
 以上を踏まえ地裁は、本件における求償権については、別件訴訟における和解において清算されているというべきであると判断したうえで、源泉所得税の納付に係る求償金を求めた原告会社の請求を斥けた。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索