解説記事2019年04月08日 【ニュース特集】 Q&Aで読み解く個人版事業承継税制(2019年4月8日号・№782)
ニュース特集
事業ごとであれば複数の後継者もOK
Q&Aで読み解く個人版事業承継税制
平成31年度税制改正では個人版事業承継税制が創設された。個人版事業承継税制とは、認定相続人が2019年1月1日から2028年12月31日までの間に、相続等により特定事業用資産(土地、建物、機械・器具備品などの減価償却資産)を取得し事業を継続していく場合には、認定相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対する相続税の納税を猶予するもの。適用を受けるには、2024年までに個人事業承継計画を作成し、都道府県知事に提出し、認定を受ける必要がある。ベースは法人版事業承継税制(特例措置)と同様だが、いくつか異なる点も見受けられる。本特集では個人版事業承継税制の留意点について、取材等に基づきQ&A形式で解説する。
5年以内に個人事業承継計画の提出を
Q
個人版事業承継税制を適用するには、2019年4月1日より2024年3月31日までの5年以内に個人事業承継計画を都道府県知事に提出することとされていますが、計画を提出した場合には、必ず事業承継をしなければなりませんか。
A 個人事業承継計画(様式21の3)を提出したからといって必ずしも事業承継をしなければならないわけではない。ただし、2024年3月31日までに個人事業承継計画を提出していなければ、その後、相続が発生し個人版事業承継税制の適用を受けたいと思ってもできないので留意したい。この点、法人版事業承継税制(特例措置)と同じだ。したがって、少しでも事業承継の可能性があれば提出期限内までに計画の提出だけはしておくべきだろう。
変更届は2024年4月1日以降の提出も可
Q
個人事業承継計画の提出後、例えば、後継者を変更する場合には変更届を提出する必要があると思いますが、提出期限(2024年3月31日)後に提出することも可能ですか。
A 個人版事業承継税制は10年間の期間限定措置として導入された。具体的には、2019年1月1日から2028年3月31日までの間に贈与・相続等により取得する特定事業用資産に係る贈与税又は相続税に適用される。ただし、特例を受けるには2019年4月1日から2024年3月31日までに「個人事業承継計画」を作成し、都道府県に提出しなければならない(計画の作成には認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けることが必要)。前述した通り、個人事業承継計画の提出が期限内になければ、その後、個人版事業承継税制の適用を受けることができない。
ただし、提出期限内に個人事業承継計画を提出しておけば、仮に後継者の変更を迫られた場合であっても、提出期限後である2024年4月1日以降に個人事業承継計画の変更届(様式24の3)を提出し、再度都道府県知事の確認を受けることができる。この点も法人版事業承継税制(特例措置)と同じである。
不動産貸付業、駐車場業などは対象外
Q
個人版事業承継税制の対象外となる事業はありますか。
A 青色申告者であれば、不動産貸付業、駐車場業及び自転車駐車場業などを除き対象となる(本誌769号参照)。医業や農業など、対象事業者は幅広く認められている。
原則として先代の事業者1人から後継者1人
Q
法人版事業承継税制(特例措置)では、複数の株主から最大3人までの後継者に非上場株式を譲渡することができましたが、個人版事業承継税制も複数の後継者に特定事業用資産を譲渡することは可能ですか。
A 原則として先代の事業者1人から後継者1人に譲渡することとされている。ただし、事業ごとであれば複数の後継者に特定事業用資産を贈与等することは可能。個人事業者が対象であるため、ケースとしては多くはないと想定されるものの、A事業は長男、B事業は次男に特定事業用資産を贈与等することは可能となっている。人数制限もない。
生計を一にする親族等が所有する特定事業用資産も対象
Q
先代の事業者の配偶者が不動産を所有しており、配偶者は経営には従事していないものの、不動産は事業の用に供しています。配偶者の所有している不動産は納税猶予の対象になりますか。
A 先代の事業者と生計を一にする親族等が所有し、かつ、先代事業者の事業の用に供していれば納税猶予の対象となる。この場合、特定事業用資産が先代事業者の贈与又は相続開始の年の前年分の事業所得に係る青色申告書の貸借対照表に計上されていなければならない。
ただし、配偶者など、生計を一にする親族等については、最初に先代事業者から後継者への贈与等を行っている必要があり、先代事業者からの贈与等が行われた後、1年以内に行われた同一生計親族等からの贈与等が対象になる(図参照)。
自宅兼事務所の場合は事務所部分のみが対象
Q
自宅兼事務所の場合、事務所部分が納税猶予の対象になるという理解でよいですか。
A 自宅兼事務所など、事業用以外の用に供されている部分がある場合には、事業の用に供されている部分のみが納税猶予の対象となる。
事業用の預貯金などは対象外
Q
対象となる特定事業用資産について教えてください。例えば、事業用の預貯金などは特定事業用資産の対象になりますか。
A 事業用の預貯金は対象外となる。特定事業用資産とは、先代の事業者が事業の用に供していた①宅地等(事業の用に供されていた土地又は土地の上に存する権利で、建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち、棚卸資産に該当しないもの)、②建物(事業の用に供されていた建物で棚卸資産に該当しないもの)、③減価償却資産(固定資産税等が課税される償却資産(構築物、機械装置、器具備品、船舶等)、自動車税又は軽自動車税において営業用の標準税率が適用される自動車等、その他の減価償却資産(乳牛等の生物、特許権等の無形減価償却資産))となる。
したがって、事業用の預貯金以外にも売掛金、棚卸資産、不動産貸付用の宅地・建物は特定事業用資産の対象外となる。
担保提供が必要
Q
個人版事業承継税制についても担保提供が条件となっていますが、法人版事業承継税制とは異なり、担保の「みなす充足」の適用はないのですか。
A 法人版事業承継税制については、対象となる非上場株式のすべてを担保提供すれば、非上場株式等についての納税猶予の適用については必要担保額に見合う担保の提供があったものとみなされる(みなす充足)。しかし、個人版事業承継税制については、この「みなす充足」の規定はない(本誌777号参照)。株式とは異なり、仮に機械装置などの動産について差押えが行われたとすると事業の継続が困難になってしまうからだ。
このため、個人版事業承継税制の適用を受けるには、不動産、国債・地方債、税務署長が確実と認める有価証券、税務署長が確実と認める保証人の保証など(国税通則法50条)の担保提供が必要になる。
買換えも可、1年以内に税務署長の承認が必要
Q
個人版事業承継税制については、終身の事業・資産保有の継続が要件となっていますが、仮に機械装置を買い換えた場合、納税猶予は打ち切りになりますか。
A 機械装置等の減価償却資産について買換えを行っても納税猶予は継続する(耐用年数満了前での買換えも可)。この点、土地や建物についても買換えは可能だ(本誌772号参照)。
ただし、特定事業用資産を譲渡した場合、その譲渡対価の全部又は一部により同様の特定事業用資産を1年以内に取得する見込みであることについて、納税地の所轄税務署長の承認を受ける必要がある。
雇用確保要件はなし
Q
法人版事業承継税制の場合、「雇用の8割以上を5年間平均で維持」するという雇用確保要件がありますが、個人版事業承継税制の場合は特に要件はありませんか。
A 法人版事業承継税制とは異なり、個人版事業承継税制の場合には雇用確保要件はない。
資産保有型会社に該当した場合の弾力的な取扱いは個人版にも
Q
平成31年度税制改正では、法人版事業承継税制について、資産保有型会社等に該当した場合の弾力的な取扱いが措置されましたが、個人版事業承継税制についても同様の規定が導入されましたか。
A 個人版事業承継税制についても、資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合の弾力的な取扱いが措置されている(本誌776号参照)。一定のやむを得ない事情により資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合においても、その該当した日から6月以内にこれらの会社に該当しなくなったときは、納税猶予の取消事由に該当しないものとするというものだが、一定のやむを得ない事情とは、「事業活動のために必要な資金を調達するための資金の借入れ、その事業の用に供していた資産の譲渡又は当該資産について生じた損害に基因した保険金の取得その他事業活動上生じた偶発的な事由でこれらに類するものとする」と規定された(措規23条の9⑭)。
従来の取扱いでは、1度でも資産保有型会社等に該当した場合には納税猶予が取消しとなってしまうため、金融機関からの借入れに躊躇し、特定資産への設備投資が行われないといった問題点が指摘されていた。
破産や重度障害になった場合などは免除
Q
猶予税額が免除される場合とはどのようなケースが該当しますか。
A 個人版事業承継税制の適用を受けるには、中小企業経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受け、事業を継続することが求められるが、事業継続後、一定の場合には納税猶予された贈与税が免除等されることになる。例えば、①先代事業者の死亡(相続税の課税対象となる)、②後継者の死亡(猶予税額の免除)、③後継者が重度障害になった場合、④申告期限から5年後に次の後継者へ贈与した場合、⑤後継者が破産した場合、⑥経営環境の変化により特定事業用資産(納税猶予の適用を受けたもの)を譲渡又は廃業する場合等が該当する。一方、青色申告の承認取消しや総収入金額が零になった場合、特定事業用資産を譲渡等したり、資産保有型事業等に該当した場合には猶予税額を納税する必要がある。
事業承継の予定時期や経営の見通しなどを記載
Q
個人事業承継計画には具体的に何を記載すればよいのですか。
A 個人事業承継計画には、後継者候補(個人事業承継者)の氏名や事業承継の予定時期、承継時までの経営見通しや承継の事業計画などを記載し、その内容について税理士などの認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受ける必要がある。なお、個人事業承継者は1名しか記載できず、個人事業承継者が複数いる場合には、個人事業承継者ごとに個人事業承継計画を作成する必要がある。具体的な記載例は次頁の通りである。
個人事業者も事業承継補助金の対象
Q
事業承継補助金というものがありますが、個人事業者の場合も対象になっていますか。
A 個人事業者も事業承継補助金の対象である。この事業承継補助金とは、事業承継・世代交代を契機として、経営革新等に取組む中小企業や事業転換に挑戦する中小企業に対して、設備投資や販路の拡大、既存の事業の廃業等に必要な経費を支援するというもの。新商品への挑戦といった新市場の開拓や新規設備導入による生産性向上等については最大200万円、事業転換(事業所の廃止等)を伴う場合であれば最大300万円が上乗せされ500万円の補助金を受けることが可能だ。事業承継補助金は代表者が交代すればよいとされているため、個人版事業承継税制の適用の有無は関係ない。2016年4月1日から2019年12月31日までに事業承継を行えばよいが、今年4月12日から5月31日(19時)までに申請しておく必要がある。
事業ごとであれば複数の後継者もOK
Q&Aで読み解く個人版事業承継税制
平成31年度税制改正では個人版事業承継税制が創設された。個人版事業承継税制とは、認定相続人が2019年1月1日から2028年12月31日までの間に、相続等により特定事業用資産(土地、建物、機械・器具備品などの減価償却資産)を取得し事業を継続していく場合には、認定相続人が納付すべき相続税額のうち、相続等により取得した特定事業用資産の課税価格に対する相続税の納税を猶予するもの。適用を受けるには、2024年までに個人事業承継計画を作成し、都道府県知事に提出し、認定を受ける必要がある。ベースは法人版事業承継税制(特例措置)と同様だが、いくつか異なる点も見受けられる。本特集では個人版事業承継税制の留意点について、取材等に基づきQ&A形式で解説する。
5年以内に個人事業承継計画の提出を
Q
個人版事業承継税制を適用するには、2019年4月1日より2024年3月31日までの5年以内に個人事業承継計画を都道府県知事に提出することとされていますが、計画を提出した場合には、必ず事業承継をしなければなりませんか。
A 個人事業承継計画(様式21の3)を提出したからといって必ずしも事業承継をしなければならないわけではない。ただし、2024年3月31日までに個人事業承継計画を提出していなければ、その後、相続が発生し個人版事業承継税制の適用を受けたいと思ってもできないので留意したい。この点、法人版事業承継税制(特例措置)と同じだ。したがって、少しでも事業承継の可能性があれば提出期限内までに計画の提出だけはしておくべきだろう。
変更届は2024年4月1日以降の提出も可
Q
個人事業承継計画の提出後、例えば、後継者を変更する場合には変更届を提出する必要があると思いますが、提出期限(2024年3月31日)後に提出することも可能ですか。
A 個人版事業承継税制は10年間の期間限定措置として導入された。具体的には、2019年1月1日から2028年3月31日までの間に贈与・相続等により取得する特定事業用資産に係る贈与税又は相続税に適用される。ただし、特例を受けるには2019年4月1日から2024年3月31日までに「個人事業承継計画」を作成し、都道府県に提出しなければならない(計画の作成には認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けることが必要)。前述した通り、個人事業承継計画の提出が期限内になければ、その後、個人版事業承継税制の適用を受けることができない。
ただし、提出期限内に個人事業承継計画を提出しておけば、仮に後継者の変更を迫られた場合であっても、提出期限後である2024年4月1日以降に個人事業承継計画の変更届(様式24の3)を提出し、再度都道府県知事の確認を受けることができる。この点も法人版事業承継税制(特例措置)と同じである。
不動産貸付業、駐車場業などは対象外
Q
個人版事業承継税制の対象外となる事業はありますか。
A 青色申告者であれば、不動産貸付業、駐車場業及び自転車駐車場業などを除き対象となる(本誌769号参照)。医業や農業など、対象事業者は幅広く認められている。
原則として先代の事業者1人から後継者1人
Q
法人版事業承継税制(特例措置)では、複数の株主から最大3人までの後継者に非上場株式を譲渡することができましたが、個人版事業承継税制も複数の後継者に特定事業用資産を譲渡することは可能ですか。
A 原則として先代の事業者1人から後継者1人に譲渡することとされている。ただし、事業ごとであれば複数の後継者に特定事業用資産を贈与等することは可能。個人事業者が対象であるため、ケースとしては多くはないと想定されるものの、A事業は長男、B事業は次男に特定事業用資産を贈与等することは可能となっている。人数制限もない。
生計を一にする親族等が所有する特定事業用資産も対象
Q
先代の事業者の配偶者が不動産を所有しており、配偶者は経営には従事していないものの、不動産は事業の用に供しています。配偶者の所有している不動産は納税猶予の対象になりますか。
A 先代の事業者と生計を一にする親族等が所有し、かつ、先代事業者の事業の用に供していれば納税猶予の対象となる。この場合、特定事業用資産が先代事業者の贈与又は相続開始の年の前年分の事業所得に係る青色申告書の貸借対照表に計上されていなければならない。
ただし、配偶者など、生計を一にする親族等については、最初に先代事業者から後継者への贈与等を行っている必要があり、先代事業者からの贈与等が行われた後、1年以内に行われた同一生計親族等からの贈与等が対象になる(図参照)。
自宅兼事務所の場合は事務所部分のみが対象
Q
自宅兼事務所の場合、事務所部分が納税猶予の対象になるという理解でよいですか。
A 自宅兼事務所など、事業用以外の用に供されている部分がある場合には、事業の用に供されている部分のみが納税猶予の対象となる。
事業用の預貯金などは対象外
Q
対象となる特定事業用資産について教えてください。例えば、事業用の預貯金などは特定事業用資産の対象になりますか。
A 事業用の預貯金は対象外となる。特定事業用資産とは、先代の事業者が事業の用に供していた①宅地等(事業の用に供されていた土地又は土地の上に存する権利で、建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち、棚卸資産に該当しないもの)、②建物(事業の用に供されていた建物で棚卸資産に該当しないもの)、③減価償却資産(固定資産税等が課税される償却資産(構築物、機械装置、器具備品、船舶等)、自動車税又は軽自動車税において営業用の標準税率が適用される自動車等、その他の減価償却資産(乳牛等の生物、特許権等の無形減価償却資産))となる。
したがって、事業用の預貯金以外にも売掛金、棚卸資産、不動産貸付用の宅地・建物は特定事業用資産の対象外となる。
担保提供が必要
Q
個人版事業承継税制についても担保提供が条件となっていますが、法人版事業承継税制とは異なり、担保の「みなす充足」の適用はないのですか。
A 法人版事業承継税制については、対象となる非上場株式のすべてを担保提供すれば、非上場株式等についての納税猶予の適用については必要担保額に見合う担保の提供があったものとみなされる(みなす充足)。しかし、個人版事業承継税制については、この「みなす充足」の規定はない(本誌777号参照)。株式とは異なり、仮に機械装置などの動産について差押えが行われたとすると事業の継続が困難になってしまうからだ。
このため、個人版事業承継税制の適用を受けるには、不動産、国債・地方債、税務署長が確実と認める有価証券、税務署長が確実と認める保証人の保証など(国税通則法50条)の担保提供が必要になる。
買換えも可、1年以内に税務署長の承認が必要
Q
個人版事業承継税制については、終身の事業・資産保有の継続が要件となっていますが、仮に機械装置を買い換えた場合、納税猶予は打ち切りになりますか。
A 機械装置等の減価償却資産について買換えを行っても納税猶予は継続する(耐用年数満了前での買換えも可)。この点、土地や建物についても買換えは可能だ(本誌772号参照)。
ただし、特定事業用資産を譲渡した場合、その譲渡対価の全部又は一部により同様の特定事業用資産を1年以内に取得する見込みであることについて、納税地の所轄税務署長の承認を受ける必要がある。
雇用確保要件はなし
Q
法人版事業承継税制の場合、「雇用の8割以上を5年間平均で維持」するという雇用確保要件がありますが、個人版事業承継税制の場合は特に要件はありませんか。
A 法人版事業承継税制とは異なり、個人版事業承継税制の場合には雇用確保要件はない。
資産保有型会社に該当した場合の弾力的な取扱いは個人版にも
Q
平成31年度税制改正では、法人版事業承継税制について、資産保有型会社等に該当した場合の弾力的な取扱いが措置されましたが、個人版事業承継税制についても同様の規定が導入されましたか。
A 個人版事業承継税制についても、資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合の弾力的な取扱いが措置されている(本誌776号参照)。一定のやむを得ない事情により資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合においても、その該当した日から6月以内にこれらの会社に該当しなくなったときは、納税猶予の取消事由に該当しないものとするというものだが、一定のやむを得ない事情とは、「事業活動のために必要な資金を調達するための資金の借入れ、その事業の用に供していた資産の譲渡又は当該資産について生じた損害に基因した保険金の取得その他事業活動上生じた偶発的な事由でこれらに類するものとする」と規定された(措規23条の9⑭)。
従来の取扱いでは、1度でも資産保有型会社等に該当した場合には納税猶予が取消しとなってしまうため、金融機関からの借入れに躊躇し、特定資産への設備投資が行われないといった問題点が指摘されていた。
破産や重度障害になった場合などは免除
Q
猶予税額が免除される場合とはどのようなケースが該当しますか。
A 個人版事業承継税制の適用を受けるには、中小企業経営承継円滑化法に基づく都道府県知事の認定を受け、事業を継続することが求められるが、事業継続後、一定の場合には納税猶予された贈与税が免除等されることになる。例えば、①先代事業者の死亡(相続税の課税対象となる)、②後継者の死亡(猶予税額の免除)、③後継者が重度障害になった場合、④申告期限から5年後に次の後継者へ贈与した場合、⑤後継者が破産した場合、⑥経営環境の変化により特定事業用資産(納税猶予の適用を受けたもの)を譲渡又は廃業する場合等が該当する。一方、青色申告の承認取消しや総収入金額が零になった場合、特定事業用資産を譲渡等したり、資産保有型事業等に該当した場合には猶予税額を納税する必要がある。
事業承継の予定時期や経営の見通しなどを記載
Q
個人事業承継計画には具体的に何を記載すればよいのですか。
A 個人事業承継計画には、後継者候補(個人事業承継者)の氏名や事業承継の予定時期、承継時までの経営見通しや承継の事業計画などを記載し、その内容について税理士などの認定経営革新等支援機関による指導及び助言を受ける必要がある。なお、個人事業承継者は1名しか記載できず、個人事業承継者が複数いる場合には、個人事業承継者ごとに個人事業承継計画を作成する必要がある。具体的な記載例は次頁の通りである。
個人事業者も事業承継補助金の対象
Q
事業承継補助金というものがありますが、個人事業者の場合も対象になっていますか。
A 個人事業者も事業承継補助金の対象である。この事業承継補助金とは、事業承継・世代交代を契機として、経営革新等に取組む中小企業や事業転換に挑戦する中小企業に対して、設備投資や販路の拡大、既存の事業の廃業等に必要な経費を支援するというもの。新商品への挑戦といった新市場の開拓や新規設備導入による生産性向上等については最大200万円、事業転換(事業所の廃止等)を伴う場合であれば最大300万円が上乗せされ500万円の補助金を受けることが可能だ。事業承継補助金は代表者が交代すればよいとされているため、個人版事業承継税制の適用の有無は関係ない。2016年4月1日から2019年12月31日までに事業承継を行えばよいが、今年4月12日から5月31日(19時)までに申請しておく必要がある。
重要資料
様式第21の3 施行規則第17条第4項の規定による確認申請書(個人事業承継計画) ●●●●年●●月●●日 ●●県知事 殿 郵便番号 000-0000 住 所 ●●県●●市… 電話番号 ***_***_**** 氏 名 中小 一郎 印 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則第17条第1項第3号の確認を受けたいので、下記のとおり申請します。 記 1 特定事業用資産に係る事業について
2 先代事業者について
3 個人事業承継者について
4 先代事業者が有する特定事業用資産を個人事業承継者が取得するまでの期間における経営の計画について
5 個人事業承継者が特定事業用資産を承継した後の経営計画
(備考) ① 用紙の大きさは、日本工業規格A4とする。 ② 記名押印については、署名をする場合、押印を省略することができる。 ③ 申請書の写し(別紙を含む)及び施行規則第17条第4項に定める書類を添付する。 ④ 別紙については、中小企業等経営強化法に規定する認定経営革新等支援機関が記載する。 ⑤ 認定経営革新等支援機関名については、中小企業庁ホームぺージ等で公表する場合がある。 (記載要領) ① 申請は個人事業承継者が行うものとし、郵便番号・住所・電話番号・氏名は、「個人事業承継者」の内容を記載する。 ② 「2 先代事業者について」は、本申請を行う時における個人である中小企業者を記載する。 ③ 「4 先代事業者が有する特定事業用資産を個人事業承継者が取得するまでの期間における経営の計画について」は、特定事業用資産を個人事業承継者が取得した後に本申請を行う場合には、記載を省略することができる。 |
(別紙) 認定経営革新等支援機関による所見等 1 認定経営革新等支援機関の名称等
2 指導・助言を行った年月日 2019年5月10日 3 認定経営革新等支援機関による指導・助言の内容
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