カートの中身空

閲覧履歴

最近閲覧した商品

表示情報はありません

最近閲覧した記事

解説記事2019年05月27日 【ニュース特集】 印紙税調査マニュアルを読む(2019年5月27日号・№788)

ニュース特集
同時処理・3倍過怠税Q&A
印紙税調査マニュアルを読む

 印紙税について、国税当局は所得税調査や法人税調査等の際の同時処理の充実を図っており、若手職員の知識・技術を向上させるための研修を実施している。また、課税文書を多量に作成している大規模事業者等に対する印紙税調査では、間接諸税担当特別国税調査官による同行指導なども行われているようだ。本特集では、国税当局が作成している印紙税同時処理及び3倍過怠税事務処理に係るマニュアル等の内容をQ&A形式で確認する。

同時処理編

Ⅰ 取組方針と同時処理フロー
Q
 印紙税同時処理に対する国税当局の取組みは?
A
 平成30事務年度の課税部(部門)特留(特に留意すべき事項)において、印紙税同時処理の充実が指示されています。具体的には、「署個人課税部門、署資産課税部門、署法人課税部門の調査等の際に確認した各種文書について、印紙税の不納付事実を把握した場合には、不納付申出の勧奨及び『印紙税不納付文書等連絡せん』の作成を的確に行うなど、印紙税の同時処理を確実に実施する」としています。

Q
 印紙税同時処理はどのような流れで行われますか。
A
 所得税調査、法人税調査等における印紙税同時処理は、①準備調査→②実地調査→③証拠書類の保全→④自主監査の内容確認→⑤調査結果の内容説明等(不納付事実の申出の勧奨)→⑥過怠税賦課決定といった流れになります(図表1参照)。


Ⅱ 準備調査
Q
 準備調査で検討される事項は?
A
 準備調査では、調査担当者が、調査対象者の過去の調査における非違の有無(非違がある場合は、不納付文書の現物・非違内容を確認)、過去の質疑内容などを確認します。また、調査対象者の業種・業態に基づき、作成が想定される課税文書もチェックしているようです(次頁図表2参照)。
 そのほか、収支内訳書等からも作成が想定される課税文書を検討するようです(次頁図表3参照)。


Ⅲ 実地調査
Q
 事前通知、作成文書の把握はどのように行われますか。
A
 所得税調査、法人税調査等の事前通知の際、調査担当者は、印紙税を調査対象税目に含めませんが、調査対象者には、事前通知した税目以外でも、非違が疑われる場合は調査できる旨を通知します。
 調査の過程において調査担当者は、事業概況の聴取や帳簿調査時にどのような文書が作成されているかなど、印紙税の観点からも確認、検討を行い、作成文書の把握に努めているようです。具体的には、①重要書類である契約書等については現物確認を徹底するなどし、相当額の収入印紙が貼付されているか確認する、②小売業、料理・飲食業、旅館業等における領収書、レシートなど、取引の相手先に交付する課税文書については、一定期間の収入印紙の購入額と当該領収証等の発行枚数を比較検討するなどとしています。

Ⅳ 不納付文書を把握した場合
Q
 調査対象税目に印紙税を追加する場合の説明は?
A
 調査担当者は、所得税調査、法人税調査等の着手後、その調査の過程で印紙税の不納付文書を把握し、印紙税を調査対象税目に追加する必要があると判断した場合、「事前通知事項以外の事項」として調査を行うこととし、調査対象者に対して、①調査対象税目に「印紙貼付分に係る印紙税」を追加する旨、②調査の目的は「収入印紙の貼付状況を確認するため」である旨、③調査の対象となる帳簿書類その他の物件は「契約書や領収書等の印紙税の課税文書と認められる文書等」である旨、④調査対象期間を説明します。
 印紙税の調査対象期間は、原則として、所得税調査、法人税調査等の調査対象期間及び進行期のうち調査着手日の属する月の前月までの期間となります。ただし、課税文書の作成が特定の期間に偏っているなど、事業概況の聴取等において特段の事情が把握されている場合は、所得税調査、法人税調査等の調査対象期間にかかわらず調整が可能とされています。

Q
 不納付文書の把握から1.1倍過怠税賦課までの流れは?
A
 不納付文書の把握から1.1倍過怠税の賦課決定までは、①証拠書類の保全→②不納付事実及び1.1倍過怠税の説明→③自主監査の内容及び不納付事実の申出の意思の確認→④調査結果の説明書の作成→⑤調査結果の説明→⑥不納付事実の申出の勧奨という流れになります。
 上記のうち、証拠書類の保全は、調査対象者に不納付事実を説明するとともに、調査対象者の許可を得て、不納付文書を預かる、写しを作成することなどにより行われます。
 また、不納付文書を把握した場合で、その課税文書の作成枚数及び収入印紙の貼付状況について調査対象者が自主監査の申出をした場合、調査担当者は、「当該課税文書が不納付となっている事実」及び「不納付事実の申出を行う場合、1.1倍過怠税が賦課決定されること」を説明します。

Q
 調査結果の説明はどのように行われますか。
A
 調査担当者は、調査対象者が実施した自主監査の内容を確認した後、更正決定等をすべきと認められた非違事項の内容及び金額を記載した「調査結果の説明書」を作成し、統括官等から決裁を受けます。その決裁を受けた説明書に基づき、調査担当者が、調査対象者に対して、更正決定等をすべきと認めた非違事項の内容及び「申出書」が提出された場合の過怠税の金額等を説明し、不納付事実の申出を勧奨します。
 不納付事実の申出の勧奨を行う際、調査担当者は、調査対象者に対して、①不納付申出書が提出された場合には印紙税法20条2項の規定に基づく1.1倍過怠税が賦課決定されること、②過怠税は所得税法上の必要経費や法人税法上の損金の額に算入できないこと、③過怠税は納税の猶予(通則法46③二)が受けられないことを説明します。

Ⅴ その他
Q
 税理士業務との関係で当局が留意している点はありますか。
A
 印紙税は税理士業務(税務代理等)の対象税目となっていないことから、通則法上の税務代理人に該当しないため、印紙税の同時処理を行う際の「事前通知事項以外の事項」の説明、調査結果の内容の説明及び「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」の送達は、必ず納税者に対して行う(所得税及び法人税等に係る「更正決定等をすべきと認められない旨の通知書」を納税者に代えて税務代理人に送達する場合でも、印紙税の通知は納税者と税務代理人の双方に対して送達する)としています。
 また、税理士業務に付随して印紙税に関する事務等を受託している税理士については、納税者の求めに応じて、印紙税の調査に立ち会うこと、更には、調査結果の内容の説明の際に同席できることに留意するとしています。

3倍過怠税編

Ⅰ 調査区分等
Q
 印紙税単独調査が実施されるケースは?
A
 収入印紙の不正使用に関する資料情報の活用期待度が高く、所得税、法人税等の観点での実地調査等の予定がなく、不正行為の規模が大きいと想定され、深度ある調査が必要と認められるなどの場合に、印紙税単独調査が実施されます(下図参照)。
 また、所得税調査、法人税調査等の際の印紙税同時処理の過程において、①不納付通数の算定に調査日数を多く要すると認められる事案、②収入印紙の再使用など印紙税の不納付の形態が悪質と認められる事案、③自主監査や不納付事実の申出の勧奨に応じない事案で、かつ、調査担当者のみでの対応が困難と認められる場合は、間接諸税調査事務担当者に支援が要請され、②③の事案については、3倍過怠税の賦課に向けた対応が行われます(5頁・図表1参照)。


Q
 印紙税単独調査・実態調査の調査対象期間は?
A
 印紙税単独調査及び実態調査の事前通知における調査対象期間(事前通知期間)は、原則、調査着手日の属する月の前月以前3年間とされます。
 なお、事前通知期間における調査において把握した非違と同様の非違が事前通知期間以外の期間にあると疑われる場合で、その調査において通知した事項以外の事項として当該事前通知期間以外の期間を調査対象期間に追加する場合は、調査着手日の属する月の前月以前5年間の範囲で調査対象期間に追加することが可能とされています。
 また、印紙税単独調査・実態調査及び印紙税同時処理において、収入印紙の再使用など偽りその他不正の行為があったと認められる場合は、その不納付文書の作成の日から7年を経過する日まで過怠税の賦課決定が可能とされています(通則法70④)。

Ⅱ 調査時(収入印紙の不正使用を把握した場合等)の処理
Q
 3倍過怠税賦課決定までの流れは?
A
 収入印紙の再使用など収入印紙の不正使用が疑われる場合、収入印紙の受払簿の改ざんなど印紙税の不納付の形態が悪質と認められる場合、自主監査や不納付事実の申出の勧奨に応じない場合の3倍過怠税の賦課決定までは、①不納付事実の保全→②印紙税不納付等事実調査書の作成等→③争点整理表の作成→④調査結果の説明書の作成→⑤重要事案審議会の開催→⑥調査結果の説明といった流れとなります。
 上記のうち、不納付事実の保全では、調査対象者の許可を得て、不納付文書の留め置き、写しの作成(デジタルカメラでの撮影を含む)などにより証拠書類が保全されます。
 また、確認書、質問応答記録書の作成による不納付事実の保全も行われます。具体的には、不納付文書の現物の確認ができており、調査対象者が非違を認めている場合は、調査担当者が調査対象者から不納付事実を記載した確認書(争訟における証拠能力はなし)を徴し、それ以外の場合(破棄等により現物の確認が困難な場合を含む)は、「質問応答記録書」が作成されます。
 なお、当局は不納付事実の保全に係る留意事項として、契約書の写し(署名・押印等をしていないもの)に収入印紙のコピーを貼付したものなど、そもそも印紙税の不納付事実がないもの(過怠税賦課決定対象とならないもの)に該当しないかについても必ず確認するとしています。

Q
 「印紙税不納付等事実調査書」とはどのようなものですか。
A
 印紙税不納付等事実調査書には、課税文書(号別、名称等)、記載金額、不納付又は不消印の区分、不納付税額などが記載されます。当該調査書は3枚複写で、2枚目が「印紙税不納付等事実確認証」、3枚目は「過怠税の内訳書」となっています。
 調査担当者は、「印紙税不納付等事実確認証」の記載内容を調査対象者に説明し、記載内容の事実を確認させた上で、署名・押印を徴するとされています。その際、調査対象者には3倍過怠税が賦課決定される旨が説明されます。

Q
 調査結果の説明はどのように行われますか。
A
 調査担当者は、「印紙税不納付等事実調査書」に基づき、更正決定等をすべきと認められた非違事項の内容及び金額を記載した「調査結果の説明書」を作成し、決裁を受けた後、その説明書に基づき、調査対象者に対して、更正決定等をすべきと認めた非違事項の内容及び過怠税の金額等を説明します。また、印紙税法20条1項による3倍過怠税が賦課決定されること、過怠税は必要経費、損金の額に算入できず、納税の猶予が受けられないことも説明され、不納付事実の申出の勧奨は行われません。

当ページの閲覧には、週刊T&Amasterの年間購読、
及び新日本法規WEB会員のご登録が必要です。

週刊T&Amaster 年間購読

お申し込み

新日本法規WEB会員

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

人気記事

人気商品

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索