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解説記事2019年07月08日 【実務解説】 四半期報告書 作成上の留意点(2019年6月第1四半期提出用)(2019年7月8日号・№794)

実務解説
四半期報告書 作成上の留意点(2019年6月第1四半期提出用)
 公益財団法人 財務会計基準機構 企画・開示室 高野裕郎

Ⅰ はじめに

 財務会計基準機構では、FASFセミナー「四半期報告書 作成上の留意点」を6月6日から20日にかけて全国9か所10回にわたり開催した。
 本稿は、同セミナーで説明した内容を基に、2019年6月第1四半期の四半期報告書における作成上の留意点についてまとめたものであり、「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告を踏まえた「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下「開示府令」という。)等の改正に関する留意点や、企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)から公表された企業会計基準等を適用する場合の留意点について解説する。
 なお、文中において意見にわたる部分は私見であることをあらかじめ申し添えておく。

Ⅱ 非財務情報に関する留意点

1「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告を踏まえた改正
 「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(平成31年内閣府令第3号)が2019年1月31日に公布・施行された。本改正は、2018年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告の提言を踏まえたものである。
 四半期報告書においては、「事業等のリスク」及び「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(以下「MD&A」という。)について主に改正がなされている。改正後の開示府令の規定は、2020年4月1日以後に開始する事業年度に係る四半期報告書について適用される。ただし、2019年4月1日以後に開始する事業年度に係る四半期報告書にこれらの規定を適用することができるとされている。
 なお、「事業等のリスク」又は「MD&A」に係る改正後の開示府令の規定については、2019年3月期の有価証券報告書(以下「有報」という。)から早期適用することができるため、2019年3月期の有報において、上記2項目について、(1)改正後の開示府令の規定を早期適用しているケースと(2)改正前の規定に基づいて記載している(早期適用していない)ケースが考えられる。2019年6月第1四半期に係る四半期報告書における早期適用の取扱いとしては、前述の(1)のケースについては、当該四半期報告書から改正後の規定を適用するものと考えられ、(2)のケースについては、当該四半期報告書から改正後の規定を早期適用することができるものと考えられる。

2 事業等のリスク  「事業等のリスク」については、改正後の開示府令第四号の三様式記載上の注意(以下「記載上の注意」という。)(7)aにおいて、経営者が連結会社の経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクが発生した場合又は重要な変更があった場合には、その旨及びその具体的な内容を分かりやすく、かつ、簡潔に記載することとされている。「経営者が連結会社の経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスク」とは、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項をいい、例として、連結会社の経営成績等の異常な変動、特定の取引先・製品・技術等への依存、特有の法的規制・取引慣行・経営方針、重要な訴訟事件等の発生、役員・大株主・関係会社等に関する重要事項等が掲げられている。
 記載事例1は、記載上の注意(7)の規定を当事業年度に係る四半期報告書から早期適用する場合の記載事例である。

 記載事例1の冒頭に掲げているように、本改正による改正後の記載上の注意(7)の規定を当事業年度に係る四半期報告書から適用する場合には、その旨を記載することが考えられる。
 記載事例2は、提出会社が将来にわたって事業活動を継続するとの前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況その他提出会社の経営に重要な影響を及ぼす事象(以下「重要事象等」という。)が存在する場合の記載事例である。

 本改正により、記載上の注意(7)bでは、また書きが追加されているが、当該規定において記載が求められている内容は、改正前の記載上の注意(8)bで求められていた内容と同様と考えられる。このため、記載事例2は、改正前において「事業等のリスク」において記載すべき内容と「MD&A」において記載すべき内容を併せて記載することを想定している。

3 MD&A  「MD&A」については、本改正により、当四半期連結累計期間において、前事業年度の有報に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更があった場合には、その旨及びその具体的な内容を分かりやすく、かつ、簡潔に記載することとされた(記載上の注意(8)a(a)また書き)。
 また、連結会社が「優先的に」対処すべき事業上及び財務上の課題について重要な変更があった場合又は新たに事業上及び財務上の対処すべき課題が生じた場合におけるその内容、対処方針等について記載することとされている。このほか、「財務及び事業の方針を決定する者の在り方に関する基本方針」(以下「基本方針」という。)を定めている会社については、改正前においては、会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項の記載が求められていたが、本改正により、基本方針に重要な変更があった場合、又は新たに定めた場合に会社法施行規則第118条第3号に掲げる事項の記載が求められることとなった(記載上の注意(8)a(c))。
 記載事例3は、記載上の注意(8)の規定を当事業年度に係る四半期報告書から早期適用する場合の、改正後の規定を適用している旨に係る記載事例である。この記載事例で示しているように、本改正による改正後の記載上の注意(7)の規定を当事業年度に係る四半期報告書から適用する場合には、「事業等のリスク」と同様に、改正後の規定を適用している旨を記載することが考えられる。

 記載事例4~6は、前述の改正項目に関連した記載事例である。記載事例4は、前事業年度の有価証券報告書に記載した「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」中の会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定の記載について重要な変更があった場合の記載事例である。記載事例5は、当第1四半期連結累計期間において、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題が新たに発生した場合の記載事例である。記載事例6は、当第1四半期連結累計期間において、財務及び事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針に重要な変更があった場合の記載事例である。


Ⅲ 財務情報に関する留意点

1 実務対応報告第18号等(注)
 実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」等の改正が2018年9月にASBJから公表された。改正実務対応報告第18号等については、2019年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用するとされており、3月期決算の企業においては、2019年6月第1四半期に係る四半期報告書から適用となる。
 本改正では、在外子会社等において、国際財務報告基準(IFRS)第9号「金融商品」を適用し、資本性金融商品の公正価値の事後的な変動をその他の包括利益に表示する選択をしている場合、連結決算手続上、当該資本性金融商品の売却損益相当額及び減損損失相当額を当期の損益として計上するよう修正する等の改正が行なわれている。
 改正実務対応報告18号等の適用初年度においては、会計基準等の改正等に伴う会計方針の変更として取り扱うこととされている。ただし、会計方針の変更による累積的影響額を当該適用初年度の期首時点の利益剰余金に計上することができるものとされている。この場合、在外子会社等においてIFRS第9号「金融商品」を早期適用しているときには、遡及適用した場合の累積的影響額を算定する上で、在外子会社等においてIFRS第9号「金融商品」を早期適用した連結会計年度から本実務対応報告の適用初年度の前連結会計年度までの期間において資本性金融商品の減損会計の適用を行わず、本実務対応報告の適用初年度の期首時点で減損の判定を行うことができるとされている。
(注)実務対応報告第18号は2019年6月28日に改正が行われている。当該改正は、公表日以後適用するとされているので、当該改正についてもご留意いただきたい。

2 企業結合会計基準等  2019年1月に「企業結合に関する会計基準」及び「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(以下「結合分離適用指針」という。あわせて以下「改正企業結合会計基準等」という。)の改正がASBJから公表された。本改正においては、条件付取得対価の定義、対価が返還される条件付取得対価の会計処理及び結合分離適用指針の記載内容の改正等が行なわれており、本改正の適用時期については、2019年4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される組織再編から適用するとされている。
 改正企業結合会計基準等の適用初年度において、これまでの会計処理と異なることとなる場合には、会計基準等の改正等に伴う会計方針の変更として取り扱うこととされている。
 なお、改正企業結合会計基準等の適用前に行われた企業結合及び事業分離等の会計処理の従前の取扱いについては、改正企業結合会計基準等の適用後においても継続することとし、改正企業結合会計基準等の適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は行わないこととされている。

Ⅳ その他
 「元号を改める政令」(平成31年政令第143号)が4月1日に公布され、5月1日から元号を「令和」に改めることとされた。また、「無尽業法施行細則等の一部を改正する内閣府令」(令和元年内閣府令第2号)が公布・施行され、開示府令の各様式において「平成 年」と記載されていた箇所について、「平成」が削られる等の改正が行なわれている。
 開示府令において元号の使用に関する特段の定めはないことから、四半期報告書の記載にあたっては、和暦と西暦のいずれも用いることができるものと考えられる。

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