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税務ニュース2007年01月08日 法人税額等相当額を控除して評価し直した再更正等を容認(2007年1月8日号・№193) 「保有土地の評価方法の見直し」を求める控訴人主張は時機に後れたもの

法人税額等相当額を控除して評価し直した再更正等を容認
「保有土地の評価方法の見直し」を求める控訴人主張は時機に後れたもの


東京高等裁判所第5民事部(小林克巳裁判長)は平成18年12月20日、非公開株式の低額譲渡と認定して行った所得税更正処分等の取消請求に係る差戻し控訴審において、課税庁が本件差戻し前上告審の判決を受けて、法人税額等相当額を控除した純資産価額により行った再更正等を容認し、控訴人の請求(控訴)を棄却する判決を言い渡した(平成17年(行コ)286号)(上告審については本誌135号8頁・138号6頁の税務ニュースを参照)。

事案の概要
 本件は、控訴人X1・X2の昭和62年分の所得税に関し、①控訴人X3(X1が代表取締役である株式会社)が、X1に対して、X3が保有するA会社の株式を譲渡したこと、②X3がX1・X2に対し、X3の新株をいずれも1株500円で発行したこと、③X1が発行された新株をB会社に1株500円で譲渡したことをとらえて、被控訴人(税務署長)らが、①につき、A株式の譲渡が低額譲渡に当たり、時価と譲渡価額との差額がX1に対する賞与であるとして、②につき、新株の時価と発行価額との差額が一時所得になるとして、③につき、譲渡所得が発生しているとして、X1およびX2に対して更正処分および賦課決定処分を、X3に対して賞与に係る源泉所得税の納税告知をしたのに対して、控訴人らが更正処分等の取消しを求めるものである。
 本件では、X3の新株発行について所得の帰属先、株式の評価方法および訴えの利益が争点となった。
 差戻し前の上告審では、最高裁第三小法廷が評価対象会社(A会社・X3)の株式について、1株当たりの純資産価額(法人税額等相当額を控除したもの)と類似業種比準価額の低い方をもって評価し、これに基づいて納付すべき税額を算定させるため、審理を東京高裁に差し戻す判決を平成17年11月8日に言い渡していた。

差戻し控訴審での審理
 本件上告審判決を受けて、課税庁は評価対象会社の株式について、1株当たりの純資産価額(法人税額等相当額を控除したもの)を計算し直し、平成17年12月16日付をもって、改めて、控訴人らに対し、再更正および訂正の告知を行い、控訴人らの税額を軽減した。差戻し控訴審の審理の対象は、本件再更正等の適法性である。
 控訴人らは、これまでの主張のほか、評価対象株式の時価が純資産価額方式によって算定されるとして、保有土地の評価の見直し(公示価格に比準した土地価格・形状調整による価格見直し)を差戻し控訴審において新たに主張した。
 控訴人らの新たな主張に対し、課税庁は、当該資産の額は控訴人らが自認してきたものであり、「原審段階から主張することが十分に可能であったにもかかわらず、原審及び差戻し前控訴審を通じてその主張を行わず、差戻し後の当審に至って、それまで堅持してきた自らの主張を覆すものであって、このような主張・立証は、故意又は重大な過失により時機に後れたものというほかはないし、訴訟上の信義則にも反するものである。」などと反論し、当該主張の却下を求めた。

差戻し控訴審の判示
 小林裁判長は、控訴人らに課税することの適法性を認めたうえで、控訴人らの新たな主張に対しては、「控訴人らの主張を前提に再更正等が行っているのであって、これらの処分が行われた後になって、控訴人らが、自らのこれまでの主張を覆すような新たな主張を行うことは、訴訟上の信義則にも反するものである。」と判示して当該主張を却下した。
 控訴人らの納付すべき所得税額は、いずれも評価対象会社の純資産価額(法人税額等相当額を控除したもの)を算定したところ、類似業種比準価額を下回っており、課税庁の再更正処分により、当該株式の時価は純資産価額(法人税額等相当額を控除したもの)をもって評価されている。「本件再更正等は、いずれも適法である。」との判断が示された。

通達の見直しは言及されず
 本件訴訟の経緯からすると、上告審として受理された段階において、「時価」の解釈誤り以外の争点が排除されており、この争点について差戻し控訴審においては、実質的には審理されない。また、上告審判決を受けて、課税庁側が、評価対象株式について、法人税額等相当額を控除して純資産価額評価を行い、再更正等を行ったため、「時価」の問題も、差戻し控訴審においてはすでにクリアされており、大きな争点とはならなかった。
 しかしながら、本件上告審判決は、本件課税後に通達化された、現行の所基通59-6・法基通9-1-14にみられる「評価通達186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除しないこと。」とする取扱いを、課税当時においては「読み取ることが不可能である。」として覆した。課税庁は「通達課税」の問題はさておき、上告審の判示に従い、本件については評価方法の見直しを行っているが、現行通達の見直しには着手していない。
 課税の実態として、本件課税当時において「評価通達186-2により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除しないこと。」を読み取ることは不可能であったろうが、そうであるとすれば、一片の通達改正により課税関係が納税者に不利益に変更されることも、裁判所が容認したとも受け取れる。また、通達の発遣によれば、課税関係の変更時期が創設的か留意的かによって異なることになり、納税者からは読み取れない場合も生じてくる。
 通達課税の問題を提起した本件訴訟ではあるが、差戻し控訴審は、そのような問題とは離れ、機械的に純資産価額(法人税額等相当額を控除したもの)が算定され、再更正等が容認されている。

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