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会社法ニュース2008年05月05日 東京高裁、蛇の目ミシン工業の代表訴訟で583億円余の賠償命ずる(2008年5月5日号・№257) 平成18年最高裁判決に基づく差戻し控訴審の判断

東京高裁、蛇の目ミシン工業の代表訴訟で583億円余の賠償命ずる
平成18年最高裁判決に基づく差戻し控訴審の判断

京高等裁判所第20民事部(宮崎公男裁判長)は4月23日、蛇の目ミシン工業が同社株式を買い占めた光進の元代表の恐喝に応じ、また債務肩代わり等により巨額の損害を被ったとし、株主が平成5年に提起した代表訴訟における平成18年最高裁判所判決を受けた差戻し控訴審で、株主の主張を容れて当時の取締役5人の責任を認定、会社に対し連帯して583億円余の支払いを命ずる判決を言い渡した。

これまでの経緯と株主の主張  事件の経過を表にまとめたので参照されたい(担保提供事件に係る各裁判所決定が別にあり、平成11年には被告1人の和解が成立)。最高裁判決については、本誌160号14頁において既報しているものである。

 元代表は昭和61年以降、光進および個人の名義で蛇の目ミシン工業株式を大量に買い付け、昭和62年3月には光進が3千万株超の筆頭株主に、元代表が3百万株を保有する13位の大株主になった。元代表は、同年6月の株主総会において同社取締役にも選任。昭和63年以降は光進が保有する株式の高値での買取りを要求し、同社に新社を設立させて光進保有の株式を保有させ、光進がファイナンス会社から借り入れた債務の肩代わりなどを画策した。取締役らは、光進の保有株をできるだけ早く引き取るためには要請に応じた方がよいと考えたが、同社のメインバンクによる反対があった。
 元代表は平成元年、暴力団関係者へ株式を売却済みであると信じさせ、取り消したいのであれば300億円を用立てるよう要求、「大阪からヒットマンが2人来ている」などと述べて脅迫した。同年8月10日、同社は光進に300億円を迂回融資。元代表は、その後も光進のファイナンス会社に対する966億円の債務の肩代わりを迫り、平成2年、同社の関連2社が肩代わりをした。
 株主は平成5年8月9日、このような状況に至るまでの①迂回融資300億円、②債務肩代わり600億円、③同366億円、④同250億円および所有不動産の担保提供、⑤同390億円および小金井第2工場の担保提供につき、同社に対しては合計1,125億円の損害を与えたとし、取締役らの忠実義務、善管注意義務違反(平成17年法律第87号による改正前の商法266条1項5号)、利益相反取引(同項4号)の責任を追及して提訴。①今回の差戻し控訴審で対象の5取締役に対して1,125億円、②一審被告の6人に対して340億円、また③同社が一審被告の破産管財人に対して1,125億円の破産債権を有することの確定を求めた株主代表訴訟である。
 なお、被告は当初29人であったが、一審での取下げ等により①・②・③を除く被告については訴訟が終了している。差戻し前控訴審(二審)と差戻し控訴審とでは損害額の主張の変更、新たな主張の追加等もあり、たとえば二審では、上記①の5取締役に対し一審が破産管財人に対する請求で認容した損害額939億円等を求める限度で不服を申立て、かつ、利益供与禁止規定違反(平成15年法律第134号による改正前の商法266条1項2号)による弁済として939億円等を求める請求を選択的に追加。また差戻し控訴審では、612億円余の請求に減縮した。ただし、基本的事実に相違はないものとされている。

差戻し前控訴審および上告審の判断  二審は、元代表の脅迫行為を前提とした場合、「当時の一般的経営者として、……それは誠にやむを得ないことであった」などとして取締役としての職務遂行上の過失・責任および各控訴を否定したため、株主は平成15年4月7日に上告した。
 最高裁は、二審の判断を是認できないものとし、300億円の恐喝に係る善管注意義務違反等について「会社経営者としては、……株主の地位を濫用した不当な要求がされた場合には、法令に従った適切な対応をすべき義務を有するものというべきである」と、利益供与禁止規定違反についても「(暴力団関係者の経営干渉を恐れ)これを回避する目的で、……約300億円というおよそ正当化できない巨額の金員を、う回融資の形式を取って元代表に供与したというのであるから、……商法294条ノ2第1項にいう『株主ノ権利ノ行使ニ関シ』されたものである」と明確に述べ、債務肩代わり等についても同様に判断し、二審の明らかな法令違反を指摘して破棄。5取締役が負担すべき損害額・利益供与額等の審理を尽くさせるため、東京高裁に差し戻した。

差戻し控訴審の判断  宮崎裁判長は、迂回融資や各債務肩代わり等を精査して5取締役の責任を仔細に検討。恐喝による迂回融資につき最高裁と同様の判断をなし、債務肩代わり等についても「(取締役らは元代表の)理不尽な要求に応ずるべきではなく、……肩代わりを避けるべき義務があった」などと述べ、忠実義務違反、善管注意義務違反による商法266条1項5号の責任を認定したうえで、損害の填補等によってもなお残る最終的損害額として583億6,039万8,183円を算出した。
 さらに、利益供与についても認定。その額は商法266条1項5号の損害額と同額になるものとしている。
 そのうえで、取締役らの過失相殺の適用・類推適用の主張を検討し、これを明確に否定。信義則による責任制限の主張についても、取締役らの元代表に対する「対応は、大局的視野に欠け、余りにも稚拙で、かつ、健全な社会常識と懸け離れたものであるといわざるを得」ないとし、一般条項による責任制限は相当でないとの判断を示した。

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