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税務ニュース2011年07月04日 貸付金債権の存在を認めず、相続税更正処分の一部取消し(2011年7月4日号・№409) 東京地裁、仮に存在した場合も既判力により回収不可能と指摘

貸付金債権の存在を認めず、相続税更正処分の一部取消し
東京地裁、仮に存在した場合も既判力により回収不可能と指摘

京地裁民事第2部(川神裕裁判長)は5月17日、相続財産に被相続人の貸付金債権が含まれるか否かが争われた事案で、当該貸付金債権は存在せず、仮に存在した可能性があったとしても、債権金額の全部が課税時期においてその回収が不可能または著しく困難であると見込まれるものとして、それらの金額は元本の価額に算入しないこととすべきであると判示。原告の更正処分取消請求の一部を認容する判決を言い渡した(平成21年(行ウ)第333号)。

貸金請求訴訟で請求棄却の判決確定  本事案は、被相続人の相続に際して、相続税の申告をした原告が、税務署長から被相続人の医療法人またはその理事長に対する貸付金債権(以下「本件貸付金債権」という)等が相続財産に含まれるなどとして相続税の更正処分等を受けたため、その一部の取消しを求めたもの。
 被相続人は、平成15年に死亡。同人の相続人は、長男、次男、三男(原告)の3名であり、本件貸付金債権に関して、原告は、平成17年、裁判所に対し、医療法人を被告として、本件貸付金債権に基づく貸付金のうち自己の相続分に相当する金額の支払いを求める貸金請求訴訟(三男別件訴訟)を提起し、同裁判所から請求を棄却する旨の判決の言渡しを受け、同判決は確定した。
 次男は、平成19年頃、裁判所に対し、医療法人等を被告として、本件貸付金債権に基づく貸付金のうち自己の相続分に相当する金額の支払い等を求める貸金等請求訴訟(次男別件訴訟)を提起し、同裁判所から請求をいずれも棄却する旨の判決の言渡しを受け、同判決は確定している。

本件貸付金債権発生事実の証拠なし  本事案で争点となった本件貸付金債権の有無について、川神裁判長は、以下の点から、被相続人の死亡時に被相続人の医療法人または理事長に対する本件貸付金債権が存在したと認めることはできないと判断している。①被相続人から医療法人または理事長に貸付けがされたとすればあるべき契約書等がなく、本件貸付金債権の存在をうかがわせる内容の書面の作成者であるAや理事長にはそれぞれの供述の信用性を減殺する事情がある点で、必ずしも被相続人から医療法人または理事長に対して現実に金銭の授受が行われたことを推認させるに十分なものとはいえない、②仮に、被相続人から医療法人または理事長に対する金銭の授受が推認できたとしても、その金銭の授受は、長男が、被相続人の了解を得ずに行い、Aと申し合わせて貸付金の外形をとったにすぎないものであるとの合理的な疑いが残るというべきであるから、被相続人と医療法人または理事長との間で本件貸付金債権に係る返還合意がされたと推認することはできず、他に本件貸付金債権発生事実を認めるに足りる証拠はない、③上記各別件訴訟における原告および次男の各請求を棄却する旨の判決が確定している。

仮に貸付金債権が存在した場合の価額は  川神裁判長は、さらに、仮に被相続人の死亡時に被相続人の医療法人または理事長に対する本件貸付金債権が存在した可能性があったとした場合における本件貸付金債権の価額についても、「念のため」として、検討を行っている。
 具体的には、まず①相続税法が、相続により取得した「財産」の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による(相法22条)と規定していること、②評基通204は、貸付金、売掛金、未収入金、預貯金以外の預け金、仮払金、その他これらに類するものの価額は、元本の価額および利息の価額との合計額によって評価し、評基通205は、前項の定めにより貸付金債権等の評価を行う場合、その債権金額の全部または一部が、課税時期(相続開始時)においてその回収が不可能または著しく困難であると見込まれるときには、それらの金額は元本の価額に算入しない旨定めていることに言及。そして、被相続人が有していたとされる貸付金債権等について、その相続開始後、その相続人が当該貸付金債権等の債務者とされる者に対して当該貸付金債権に基づき金員の支払いを求める民事訴訟を提起した場合、当該相続人の請求を棄却する旨の確定判決を受けたときは、その主文に包含される「当該相続人の当該債務者とされる者に対する貸付金債権等がその口頭弁論終結時に存在しない」という点について、当該訴訟の当事者である上記両名間に既判力を生じ(民事訴訟法114条1項、115条1項1号)、もはや当該相続人が当該債務者とされる者に対して当該貸付金債権の強制履行(民法414条参照)を求めることができなくなる。そのため、そのような判決を受けることとなった原因が、相続開始時から当該訴訟の口頭弁論終結時までに生じた事情によると認められる場合を除き、原則として、その債権金額の全部が課税時期においてその回収が不可能または著しく困難であると見込まれたものであるというべきであるから、それらの金額は元本の価額に算入しないことになるものと解すべきであるとした。

強制履行を求めることはできなくなった  そのうえで、本事案について、原告および次男は、医療法人を被告として各別件訴訟を提起したところ、いずれもその請求を棄却する旨の判決を受け、これらの判決が確定したことが認められることから、上記各判決の既判力により、もはや原告および次男が医療法人に対してそれぞれ本件貸付金債権の強制履行を求めることはできなくなっているものといわざるを得ないと判断。本事案で被相続人の医療法人または理事長に対する本件貸付金債権は、その債権金額の全部が課税時期においてその回収が不可能または著しく困難であると見込まれるとして、それらの金額を元本の価額に算入しないこととすべきであるとした。

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