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解説記事2020年11月16日 新会計基準解説 実務対応報告第40号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」について(2020年11月16日号・№858)

新会計基準解説
実務対応報告第40号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」について
 企業会計基準委員会 専門研究員 遠藤和人

Ⅰ はじめに

 企業会計基準委員会(以下「ASBJ」という。)は、2020年9月29日に、実務対応報告第40号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い」(以下「本実務対応報告」という。)を公表(脚注1)した。本稿では、本実務対応報告の概要を紹介する。なお、文中の意見に関する部分は筆者の私見であり、企業会計基準委員会の見解を示すものではないことを、あらかじめ申し添える。

Ⅱ 本実務対応報告の公表の経緯

 現在、2014年7月の金融安定理事会(FSB)による提言に基づく金利指標改革(以下「金利指標改革」という。)が進められているが、この報告書の中では次の提言が行われている。
(1)ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)、欧州銀行間取引金利(EURIBOR)、全銀協TIBOR(TIBOR)といった既存の金利指標である銀行間金利(IBORs)の信頼性と頑健性の向上、及び銀行の信用リスク等を反映しないリスク・フリー・レートの特定
(2)それぞれの金利指標を、金融商品や取引の性質を踏まえて利用していくことが望ましい旨
 こうした中、LIBORの公表が2021年12月末をもって恒久的に停止され、LIBORを参照している契約においては参照する金利指標の置換が行われる可能性が高まっている。LIBORは5つの主要な通貨について公表されており、LIBORを参照する取引は広範に行われているため、金利指標改革により多くの取引に影響が生じる可能性がある。
 このような金利指標改革に起因するLIBORの置換は、企業自身の意思決定に基づくものではなく、既存の会計基準をそのまま適用した場合、当該会計基準の開発時には想定されていなかった結果が生じる可能性がある。特にヘッジ会計の適用については、金利指標改革の影響のみに起因して、現行の会計基準の定めに従い、その適用を中止又は終了し、損益を認識することに対する懸念が多く聞かれたため(図表1参照)、適切な適用範囲を定めたうえでヘッジ会計の適用に関する特例的な取扱いを定めることが必要であると考えられた。

 このような状況を踏まえ、ASBJは、2020年6月3日に、実務対応報告公開草案第59号「LIBORを参照する金融商品に関するヘッジ会計の取扱い(案)」(以下「公開草案」という。)を公表し、広くコメント募集を行った。その後、寄せられたコメントを検討し、公開草案の修正を行ったうえで本実務対応報告を公表するに至っている。

Ⅲ 本実務対応報告の概要

1 範 囲

 前述のとおり、金利指標改革に起因するLIBORの置換に直接関係のある部分に特例的な取扱いを定めることが必要であると考えられる一方、金利指標改革に起因するLIBORの置換とは直接関係のない部分にまで特例的な取扱いを認めることは、本実務対応報告の趣旨を逸脱し、財務諸表の有用性を損ねるものと考えられる。そのため、本実務対応報告の適用範囲を適切に定めることが重要であると考えられた。この点、本実務対応報告は、LIBORを参照している金融商品について金利指標を置き換える場合に、「その契約の経済効果が金利指標置換の前後で概ね同等となることを意図した金融商品の契約上のキャッシュ・フローの基礎となる金利指標を変更する契約条件の変更」(以下「経済効果が概ね同等となることを意図した契約条件の変更(脚注2)」という。)のみが行われる金融商品を適用範囲とすることとした。また、こうした契約条件の変更と同様の経済効果をもたらす契約の切替3に関する金融商品も適用範囲に含まれることとした(図表2)。

 また、「経済効果が概ね同等となることを意図した契約条件の変更」に該当するかどうかの例示として、図表3の項目を示している。

2 会計処理

 本実務対応報告では、金利指標置換前、置換時、置換後について次のように定義したうえで、それぞれ会計処理を定めている。
・金利指標置換前
 金利指標置換時よりも前の期間をいう。
・金利指標置換時
 金利指標改革に起因して公表が停止される見通しであるLIBORに関して、ヘッジ対象の金融商品及びヘッジ手段の金融商品の双方の契約において後継の金利指標を基礎とした計算が開始される時点(双方の契約において時点が異なる場合はいずれか遅い時点)をいう。ヘッジ対象又はヘッジ手段の金融商品のうちいずれかのみがLIBORを参照している場合は、そのいずれかにおいて後継の金利指標を基礎とした計算が開始される時点をいう。
・金利指標置換後
 金利指標置換時よりも後の期間をいう。
 以下、現行の金融商品会計基準等における取扱いと比較する形で解説する。
(1)金利指標置換前の会計処理
① ヘッジ対象又はヘッジ手段の契約の切替
金融商品会計基準等における取扱い

 金融商品会計基準及び日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品実務指針」という。また、金融商品会計基準及び金融商品実務指針を合わせて、以下「金融商品会計基準等」という。)では、ヘッジ手段が消滅したときには、ヘッジ会計の適用を中止し、その時点までの当該ヘッジ手段に係る損益又は評価差額は、ヘッジ対象に係る損益が認識されるまで繰り延べるとされている。
 また、ヘッジ対象が消滅したときには、ヘッジ会計の適用を終了し、繰り延べられているヘッジ手段に係る損益又は評価差額は当期の損益として処理しなければならないとされている。
 ここで、金融商品会計基準等では、契約条件の変更又は契約の切替が行われた場合の会計処理は明確に定められていないが、特に契約の切替が行われた場合、法的に既存の契約を終了し新たな契約を締結することになるため、ヘッジ会計の適用を終了又は中止することになると考えられる。
本実務対応報告における取扱い
 上述のように、金利指標改革に起因する契約の切替が行われた場合にヘッジ会計の終了又は中止を行うことは、財務諸表利用者に対する有用な財務情報の提供につながらないと考えられた。したがって、本実務対応報告では、金利指標改革に起因する契約の切替が行われたときであっても、ヘッジ会計の適用を継続することができることとした。
② ヘッジ対象となり得る予定取引の判断基準
金融商品会計基準等における取扱い

 金融商品会計基準等では、ヘッジ会計において、ヘッジ対象である予定取引が実行されないことが明らかになったときは、ヘッジ会計を終了しなければならないとされている。
本実務対応報告における取扱い
 ヘッジ対象がLIBORを参照している場合、企業が予定取引の取引条件の予測可能性及びその実行可能性を判断することは困難であり、ヘッジ会計を終了させる必要性が生じる可能性があるものと考えられる。こうした状況は、金融商品会計基準等の開発時には想定されていなかったものである。
 したがって、本実務対応報告では、ヘッジ対象である予定取引が実行されるかどうかを判断するにあたって、金利指標置換前においては、ヘッジ対象の金利指標が、金利指標改革の影響を受けず既存の金利指標から変更されないとみなすことができることとした。
③ ヘッジ有効性の評価の取扱い
金融商品会計基準等における取扱い

i. 事前テスト
 金融商品会計基準等では、ヘッジ開始時点で、ヘッジ対象のリスク及びこれらのリスクに対していかなるヘッジ手段を用いるかを明確化し、ヘッジ手段に関してその有効性を事前に予測しておくこと、及び相場変動又はキャッシュ・フロー変動の相殺の有効性を評価する方法等を正式な文書(以下「ヘッジ文書」という。)によって明確化することが要求されている。
ii. 事後テスト
 ヘッジ取引時以降において、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が高い程度で相殺される状態又はヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される状態が引き続き認められることによって、ヘッジ手段の効果を定期的に確認することにより、ヘッジ有効性の評価を行うことが要求されている。
本実務対応報告における取扱い
i. 事前テスト
 事前テストに関しては、後継の金利指標が未だ判明していない、又は、関連する市場で活発な取引が行われていないなどの理由から、後継の金利指標に基づく事前テストが困難となる可能性があると考えられる。
 そのため、本実務対応報告では、ヘッジ対象及びヘッジ手段の参照する金利指標は金利指標改革の影響を受けず既存の金利指標から変更されないとの仮定を置いて事前テストを実施することができるとした。
ii. 事後テスト
 金利指標改革に起因するLIBORの置換に関する見込みが、事後テストに影響を与えることも考えられた。この点、事後テストを実施するうえで、金利指標改革に起因する要因とそれ以外の要因に分解したうえで、有効性の判定を行うことも考えられるが、そうした分解は一般に実務上困難であると考えられた。
 したがって、本実務対応報告では、事後テストにおいてヘッジ有効性が認められない場合であってもヘッジ会計の適用を継続することができるとした。
④ 包括ヘッジの取扱い
金融商品会計基準等における取扱い

 金融商品会計基準等では、次の双方を満たす場合には、企業内部の部門ごと又はその企業において、包括ヘッジが認められている。
i. リスク要因(金利リスク、為替リスク等)が共通していること
ii. リスクに対する反応が同一グループ内の個々の資産又は負債との間でほぼ一様であること
本実務対応報告における取扱い
 金利指標改革の結果、ヘッジ対象に指定されているグループ内に存在している個々の資産又は負債の金利指標が置き換えられる場合、置換のタイミングが異なることにより、上記iiの条件を満たさなくなることが考えられる。
 したがって、本実務対応報告では、個々の資産又は負債のリスクに対する反応とグループ全体のリスクに対する反応がほぼ一様であると認められなかった場合であっても、包括ヘッジを適用することができるとした。
⑤ 金利スワップの特例処理の取扱い
金融商品会計基準等における取扱い

 金融商品会計基準では、金利スワップの特例処理が認められており、その具体的な条件が金融商品実務指針で次のように定められている。
i. 金利スワップの想定元本と貸借対照表上の対象資産又は負債の元本金額がほぼ一致していること
ii. 金利スワップの契約期間とヘッジ対象資産又は負債の満期がほぼ一致していること
iii. 対象となる資産又は負債の金利が変動金利である場合には、その基礎となっている金利指標が金利スワップで受払される変動金利の基礎となっている金利指標とほぼ一致していること
iv. 金利スワップの金利改定のインターバル及び金利改定日がヘッジ対象の資産又は負債とほぼ一致していること
v. 金利スワップの受払条件がスワップ期間を通して一定であること(同一の固定金利及び変動金利の金利指標がスワップ期間を通して使用されていること)
vi. 金利スワップに期限前解約オプション、支払金利のフロアー又は受取金利のキャップが存在する場合には、ヘッジ対象の資産又は負債に含まれた同等の条件を相殺するためのものであること
本実務対応報告における取扱い
 金利指標改革に起因して、上記の条件を満たさなくなった場合、金利スワップの特例処理の適用は認められなくなる。しかしながら、金利指標改革のみを原因として、金利スワップの特例処理の要件を満たさないとしてこれを認めないことは、有用な財務情報の提供につながらないと考えられる。
 したがって、本実務対応報告では、上記ⅲからⅴで示した条件を満たしているかどうかの判断において、ヘッジ対象及びヘッジ手段の参照する金利指標は金利指標改革の影響を受けず既存の金利指標から変更されないとみなして判断することができることとした。
⑥ 振当処理の取扱い
外貨建会計処理基準等における取扱い

 企業会計審議会「外貨建取引等会計処理基準」(以下「外貨建会計処理基準」という。)及び日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(以下「外貨建実務指針」という。また、外貨建会計処理基準及び外貨建実務指針を合わせて、以下「外貨建会計処理基準等」という。)では、外貨建金銭債権債務等と為替予約等(為替予約、通貨先物、通貨スワップ及び通貨オプション)との関係が、金融商品会計基準におけるヘッジ会計の要件を満たしている場合には、当該外貨建取引及び外貨建金銭債権債務等について、当分の間、振当処理ができるとされている。ただし、振当処理が認められるのは、為替予約等によって円貨でのキャッシュ・フローが固定されているときに限られるとされている。
本実務対応報告における取扱い
 上記の振当処理が認められるのは、為替予約等によって円貨でのキャッシュ・フローが固定されているときに限られるとされているが、金利指標改革の影響により円貨でのキャッシュ・フローが固定されない可能性が生じる(図表4参照)。しかしながら、金利指標改革に起因するLIBORの置換のみを原因として、振当処理を認めなかった場合、財務諸表利用者に対する有用な財務情報の提供につながらないと考えられる。

 したがって、本実務対応報告では、金利指標置換前においては、円貨でのキャッシュ・フローが固定されているかどうかを判断するにあたって、ヘッジ対象及びヘッジ手段の参照する金利指標は金利指標改革の影響を受けず既存の金利指標から変更されないとみなして判断できることとした。
(2)金利指標置換時の会計処理
金融商品会計基準等における取扱い

 金融商品会計基準等においては、ヘッジ取引時にヘッジ文書でヘッジ取引日、識別したヘッジ対象とリスクの種類、選択したヘッジ手段等について明確にすることが求められている。金利指標置換時には、ヘッジ文書のこれらの内容に変更が生じることになるが、このような変更があった場合の取扱いは既存の会計基準に必ずしも明確に定められていないと考えられる。そのため、ヘッジ文書のこれらの内容に変更が生じた場合、ヘッジ会計を中止すべきか否かについて議論が生じる可能性もあると考えられた。
本実務対応報告における取扱い
 金利指標置換時に、金利指標改革に起因するヘッジ文書の変更のみでヘッジ会計を中止することは、金利指標置換前と同様に有用な財務情報の提供につながらないと考えられた。
 したがって、本実務対応報告では、金利指標置換時において、当初のヘッジ会計開始時にヘッジ文書に記載したヘッジ取引日(開始日)、識別したヘッジ対象、選択したヘッジ手段等を変更したとしても、ヘッジ会計の適用を継続することができるとこととした。
(3)金利指標置換後の会計処理
① 事後テストの取扱い

 金利指標置換後においては、置き換えた後の金利指標に基づいてヘッジ有効性の評価や会計処理を行うことが、ヘッジ会計の趣旨に適った会計処理であり、この点を強調した場合には、金利指標置換後も特例的な取扱いを定めることは、有用な財務情報を提供する観点からは望ましいとはいえない可能性がある。
 ここで、後継の金利指標については、主要通貨ごとにリスク・フリー・レートが特定され、新たな「ターム物リスク・フリー・レート」の構築も進められているが、その進捗状況は通貨ごとに異なる状況にあり、不確実な状況に直面している。
 したがって、事後テストに関する金利指標置換前の取扱い(本稿(1)③ⅱ)については、金利指標置換時以後も、その取扱いを適用し、2023年3月31日以前に終了する事業年度までヘッジ会計の適用を継続することができることとし、また、この間、再度金利指標を置き換え、ヘッジ文書の記載を変更したとしても、ヘッジ会計の適用を継続することができることとした。
② 包括ヘッジ及び金利スワップの特例処理等の取扱い
 と同様の考え方により、包括ヘッジの取扱い(本稿(1)④)並びに金利スワップの特例処理の取扱い(本稿(1)⑤)及び振当処理の取扱い(本稿(1)⑥)についても、2023年3月31日以前に終了する事業年度までヘッジ会計の適用を継続することができることとし、また、この間、再度金利指標を置き換え、ヘッジ文書の記載を変更したとしても、ヘッジ会計の適用を継続することができることとした。
事後テストの起点に関する取扱い
 なお、公開草案に寄せられたコメントの中には、(3)①に関して、2023年4月1日以降の事後テストの実施にあたって、どの期間を対象として有効性判定を行うべきかについて明確化を求めるものが複数あり、その後の審議を経て本実務対応報告において明確にしているため、その内容を以下で解説する。
 まず、2023年4月1日以降は、本実務対応報告による事後テストに関する特例的な取扱いは適用されないため、金融商品会計基準等が適用されることになる。具体的には、金融商品実務指針第156項では、ヘッジ有効性の判定は、原則としてヘッジ開始時から有効性判定時点までの期間において、ヘッジ対象及びヘッジ手段の相場変動又はキャッシュ・フロー変動の累計を比較するとされている。この点、金利指標改革の影響を受けるヘッジ関係については、ヘッジ開始時は少なくともヘッジ対象又はヘッジ手段のいずれかはLIBORを参照していると考えられるが、金利指標置換後の事後テストにおいても引き続きヘッジ開始時からの期間を検証すべきなのか、若しくは金利指標置換時以降の期間を検証すべきなのかが議論となり、それぞれ意見が聞かれた(図表5参照)。

 これらの分析を踏まえ、本実務対応報告では以下のとおり、継続適用を条件に、ヘッジ開始時又は金利指標置換時を起点とすることを選択できることとした(図表6参照)。

(1)金利指標置換後も2023年3月31日まで、事後テストに関する特例的な取扱いを適用する場合(本実務対応報告第14項及び第15項を適用)
 ・有効性評価①(2023年3月31日以前) 
  →有効性評価の結果、ヘッジ有効性が認められなかった場合であってもヘッジ会計の適用が継続可(図表6では、破線で示している)
 ・有効性評価②(2023年4月1日以降)
  →ヘッジ開始時(②-a)又は金利指標置換時(②-b)を起点として事後テストを実施(継続適用を条件に②-aか②-bを選択可能)
(2)金利指標置換後は、事後テストに関する特例的な取扱いを適用しない場合(本実務対応報告第16項を適用)
 ・有効性評価①(2023年3月31日以前)
  →ヘッジ開始時(①-a)又は金利指標置換時(①-b)を起点として事後テストを実施(継続適用を条件に①-aか①-bを選択可能)
 ・有効性評価②(2023年4月1日以降)
  →有効性評価①で選択した方法を継続

3 注記事項

 報告日時点において本実務対応報告を適用することを選択した企業は、本実務対応報告を適用しているヘッジ関係について、次の内容を注記することとした。
(1)ヘッジ会計の方法(繰延ヘッジか時価ヘッジか)並びに金利スワップの特例処理及び振当処理を採用している場合にはその旨
(2)ヘッジ手段である金融商品の種類
(3)ヘッジ対象である金融商品の種類
(4)ヘッジ取引の種類(相場変動を相殺するものか、キャッシュ・フローを固定するものか)
 また、本実務対応報告を一部のヘッジ関係にのみ適用する場合には、その理由を注記する。
 ただし、連結財務諸表において上述の内容を注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しない。
 なお、審議の過程では、LIBORの公表停止までに契約条件の変更又は契約の切替が完了しないリスクに関する注記を求めることも検討したが、本実務対応報告は、LIBORを参照する金融商品について必要と考えられるヘッジ会計に関する取扱いを明らかにするものであり、LIBORの公表停止そのもののリスクを取り扱うものではないため、このような注記は求めないこととした。
 また、本実務対応報告を適用していなければ発生していた損益に対する潜在的な影響額の注記を求めることについても検討したが、実務上の困難さを考慮し、このような注記は求めないこととした。

4 適用時期等

 本実務対応報告で定める特例的な取扱いは、金利指標の置換に関する実務への配慮から、可能な限り速やかに行われることが望ましいと考えられたため、公表日以後適用できることとした。

Ⅳ おわりに

 金利指標改革は現在もなお進行中であるため不確定な要素も多く、また、会計基準の開発についても、国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)とほぼ並行して行われた。そのため、実際に金利指標改革が会計処理にどのような影響を及ぼすのかについて、想定外の事象が生じていないかどうか、引き続き注視していきたい。

脚注
1 本実務対応報告の全文については、ASBJのウェブサイト(https://www.asb.or.jp/jp/accounting_standards/practical_solution/y2020/2020-0929.html)を参照のこと。
2 「契約条件の変更」とは、既存の契約条件の内容を変更することをいう。
3 「契約の切替」とは、既存の契約をその満了前に中途解約し、直ちに新たな契約を締結することをいう。

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