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解説記事2020年11月23日 第2特集 財務省が問題視、国際的な徴収逃れに法的対応も(2020年11月23日号・№859)

第2特集
徴収共助を回避する行為が散見
財務省が問題視、国際的な徴収逃れに法的対応も


 財務省が国際的な徴収逃れを問題視している。国際的な徴収逃れについては徴収共助などで対応を進めているが、最近では徴収共助を回避する行為が散見されているようだ。例えば、滞納処分免脱罪における滞納処分の執行には徴収共助による徴収は含まれていないため、徴収共助の要請の開始後、徴収共助の要請ができない国に移転することにより徴収を逃れることができる。また、第二次納税義務も滞納者の国外財産は対象外となっているため、滞納者の国外財産を国内の第三者に贈与することで第二次納税義務を逃れることが可能。財務省は、このような国際的な徴収逃れは運用で対応することは難しいとし、法的な対応が必要との認識だ。政府税制調査会でも国税徴収法を改正する方向性に賛成する意見が多数となっている。

徴収共助による要請で外国の租税債権を徴収

 滞納者が海外に財産を有している場合であっても、日本の税務当局がその財産について滞納処分を執行することはできない。租税を徴収するための権限は自国に限られているためだが、各国の税務当局が相互主義の下、互いに条約相手国の租税債権を徴収していこうとする仕組みが徴収共助と呼ばれる制度だ。
 具体的には、ある国の税務当局が他国の税務当局からの要請に基づき、当該他国の租税債権をその国にある当該他国の納税者の財産から徴収することをいう(図1参照)。日本においては、多国間条約である税務行政執行共助条約(平成25年10月1日発効)と二国間租税条約に基づき実施されている。条約締結国は年々増えているものの、徴収共助が可能な国と地域は、英国、フランス、イタリア、オーストラリア、韓国、ドイツ、米国など、69となっている。なお、令和元年から令和2年6月までの実施実績は、日本からの要請は29件、金額は37億円程度となっている。また、他国からの要請は7件、金額は2億円程度である。

徴収共助に対する滞納処分免脱罪などの対応が間に合わず

 また、徴収逃れなどを抑止する仕組みとなる制度が滞納処分免脱罪と第二次納税義務だ。滞納処分免脱罪は、納税者が滞納処分の執行を免れる目的で財産を隠ぺい、損壊、国の不利益に処分等した場合には3年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金(又は併科)を科すことによって、国税徴収の確保を侵害する危険を防止するための制度となっている(国税徴収法187条)。
 第二次納税義務については、滞納者の財産だけでは徴収すべき国税が不足している場合、一定の範囲で二次的な納税義務を課す制度。滞納者が受贈者に自分の財産を贈与することにより自分の財産を減少させる行為をした結果、滞納国税に徴収不足が発生し、あるいは徴収不足が拡大した場合には、受贈者に受益の限度で二次的に納税義務を課すことができるというものである(国税徴収法39条、図2参照)。

徴収共助による徴収は対象外
 徴収共助のほか、滞納処分免脱罪や第二次納税義務によって悪質な徴収逃れに対応しているわけだが、最近では法制上の不備による税逃れが散見されているという(図3参照)。

 滞納処分免脱罪においては、滞納処分の執行には徴収共助による徴収は含まれておらず、あくまでも国内において行われる滞納処分、執行を免れる目的で財産を隠ぺいしたり、移転するなどといったことが滞納処分免脱罪の構成要件となっている。このため、滞納者が国内財産を国外に移転した場合には滞納処分免脱罪を適用することができるが、滞納者の国外財産が徴収共助の要請可能な国にあって、徴収共助が開始されたことを滞納者が察知して当該財産を徴収共助の要請が不可能な国に移転させたケースについては、滞納処分免脱罪が適用できない状況となっている。
第二次納税義務、国外財産は対象外
 一方、第二次納税義務についても法制上の不備がある。第二次納税義務の場合は、滞納国税に徴収不足が生じている必要があるが、この場合の徴収不足は、現行制度上、滞納処分が可能な国内財産のみで判断することになっている。このため、滞納者の財産が国外財産の場合には、これが贈与され、徴収不足になったとしても第二次納税義務を課すことができない。このため、最近では、滞納者の国外財産を配偶者(受贈者)などに贈与することによって第二次納税義務を回避する行為が見受けられているという。
 財務省ではこのような徴収共助逃れを問題視しており、制度上の運用では解決できないとし、法的措置が必要との認識を示している。

納税管理人制度の見直しも課題
 財務省は納税管理人制度についても問題意識を持っている。国際的な取引が活発化する中で、外国法人や非居住者に対する税務調査が課題となっている。これらの者に対しては、租税条約に基づいた情報交換要請等のほか、国内に所在する納税管理人を通じた接触によって対応しているのが現状である。国内に拠点のない納税者が納税申告書の提出などをする必要があるときは納税管理人の設置が義務付けられているが(国税通則法117条)、設置義務を履行しなかったとしても罰則等はない。納税管理人を定めた納税者と定めていない納税者との間で公正性が確保できないという問題点が指摘されており、何らかの立法措置を講じる必要があるとしている。
 また、地方税法についても、納税義務者が国外に居住するなど、納税義務を負う地方団体内に住所などを有しない場合には納税管理人を定めるとされているが、国税とは異なり、条例により罰則規定を設けることができる仕組みとなっている。例えば、住民税の場合は、納税管理人に係る虚偽の申告等を行った場合は30万円以下の罰金、納税管理人に係る不申告の場合には10万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。ただ地方税の場合は、特に住民税の徴収ができないといったことが実務上の問題となっている。住民税は前年所得に対して課税されるため、1月1日時点で日本にいた外国人が帰国してしまったケースが多くあるようだ。このため、総務省では、関係省庁等と連携しながら納税管理人の設置を周知する取組みを今後も行っていくとしている。

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