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解説記事2020年12月28日 第2特集 Q&Aで読む改正会社法に伴う法務省令のポイント~取締役等の報酬規定等編~(2020年12月28日号・№864)

第2特集
取締役等に株式を付与する場合には定款又は株主総会決議が必要
Q&Aで読む改正会社法に伴う法務省令のポイント~取締役等の報酬規定等編~


 令和元年12月11日に公布された改正会社法等を踏まえた会社法施行規則等の一部を改正する省令(令和2年法務省令第52号)が11月27日に公布された(原則として令和3年3月1日施行)。第3回目となる今回は、取締役又は執行役(取締役等)の報酬等に関する規定及び役員等のために締結される保険契約(いわゆるD&O保険)について法務省令案に寄せられた意見に対する法務省の考え方などを元にQ&A形式で解説する。
 改正会社法により、取締役等の報酬等として株式若しくは新株予約権又はこれらと引換えにする払込みに充てるための金銭を付与する場合においては、定款又は株主総会の決議により法務省令で定める一定の事項を定めなければならないこととされている。また、一定の株式会社の取締役会は取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として法務省令で定める事項を決定するとされた。「役員等賠償責任保険契約」(会社法430条の3第1項)については、役員等賠償責任保険契約に該当しない保険契約を定める規定を新設している。

取締役等の報酬規定等

インセンティブ付与が必要かを株主が判断する事項を決議
Q

 報酬等のうち当該株式会社の募集株式については、募集株式の数の上限その他法務省令で定める事項について定款に定めていないときは、株主総会の決議によって定めるとされている(会社法361条1項3号)。このうち、法務省令では、「一定の事由が生ずるまで当該募集株式を他人に譲り渡さないことを取締役に約させることとするときは、その旨及び当該一定の事由の概要」(会社法施行規則98条の2第1号)と規定されているが、「当該一定の事由の概要」として、どの程度の内容を定款又は株主総会の決議によって定めなければならないか。
A
 会社法施行規則98条の2第1号は、取締役の報酬等として募集株式(取締役が募集株式と引換えにする払込みに充てるための金銭を報酬等として付与された場合における当該募集株式を含む。)を付与する場合において、一定の事由が生ずるまで当該募集株式を他人に譲り渡さないことを取締役に約させることとするときは、その旨及び当該事由の概要を定款又は株主総会の決議によって定めなければならないこととしているが、その趣旨は、株主が希釈化等の影響や募集株式を報酬等として付与する必要性を判断することができるようにすることにある。これを踏まえると、募集株式を付与することが取締役に適切なインセンティブを付与するものであるかどうかを株主が判断するために必要な事項は、定款の定め又は株主総会の決議によって定められる必要があると考えられる。一方で、当該事由の細目等の決定を取締役会に委ねることは可能であると考えられる。

契約の定めにより取締役に効力
Q

 会社法施行規則98条の2第2号における「一定の事由」を株主総会の決議によって決定したとしても、実際に締結される契約の内容となっていない限り、効果を及ぼさないという理解でよいか。
A
 会社法施行規則98条の2第2号は、募集株式を取締役の報酬等とする場合において、一定の事由が生じたことを条件として当該募集株式を当該株式会社に無償で譲り渡すことを取締役に約させることとするときは、当該一定の事由の概要を定款又は株主総会の決議によって定めることを求めているが、当該事由が生じたことを条件として当該募集株式を当該株式会社に無償で譲り渡す旨の約定は、取締役に募集株式等を割り当てる際に、当該株式会社と取締役との間の契約等において定められることによって、当該取締役に対して効力を有することになると考えられる。

希釈化等の影響などを判断
Q

 会社法施行規則98条の3第1号及び98条の4第2項1号において、個別の発行に際しての新株予約権の内容の定めである「法第236条第1項第1号から第4号までに掲げる事項」をそのまま引用している趣旨は何か。
A
 会社法236条1項1号から4号までに掲げる事項は、新株予約権の目的である株式の数等であり、株主が希釈化等の影響を判断する上で重要な事項となっている。

地位の内容は限定されず
Q

 会社法施行規則98条の3第2号及び111条の2第2号について、新株予約権を行使することができる「一定の資格」は限定されていないとの理解でよいか。例えば、新株予約権の付与時に当該株式会社の取締役又は執行役であった者が当該株式会社の他の役職又は他のグループ会社の役職に就任した場合であっても、新株予約権を行使することができると定めることもできるのか。
A
 会社法施行規則98条の3第2号は、募集新株予約権を取締役の報酬等とする場合において、当該募集新株予約権を行使することができる者が行使する際に一定の地位にあること等を求めるときは、その地位等の内容の概要を決定することを求めるものであるが、「一定の資格」に該当することとなる当該地位等の内容を限定するものではない(会社法施行規則111条の2第2号についても同様)。

変更がなければ取締役会決議は求めず
Q

 会社法施行規則98条の5について、既に取締役会において取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を全て決定している場合には、同条各号に掲げる事項について特段の変更がある場合を除いて、毎年取締役会において当該方針を決定する必要はないという理解でよいか。
A
 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針(会社法361条7項)について、当該方針や取締役の報酬等の内容に関する同条第1項各号に掲げる事項についての定款又は株主総会の決議による定めに変更がない場合にまで、一定の頻度での取締役会の決議による決定を求めるものではない。

非財務指標に基づく額又は数が算定されれば業績連動報酬に該当するケースも
Q

 財務指標のほか、非財務指標もその一要素としている報酬等も、会社法施行規則98条の5第2号の業績連動報酬等に該当するのか。
A
 取締役の報酬等が会社法施行規則98条の5第2号の業績連動報酬等に該当するかどうかは当該報酬等の内容に応じて個別に判断されることになるが、非財務指標に基づいて額又は数が算定される取締役の報酬等が業績連動報酬等に該当する場合もあると考えられる。

業績指標の内容の決定に関する方針の定めが必要
Q

 会社法施行規則98条の5第2号は、業績指標の内容を定めることを求めているのか、業績指標の内容の決定に関する方針を定めることを求めているのか。
A
 会社法施行規則98条の5第2号は、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として、業績指標の内容の決定に関する方針を定めることを求めるものである。なお、業績指標の内容の決定に関する方針として、必ずしも個別の業績指標の詳細を定めることが求められるものではない。

個人別報酬内容を決定すべき会社は金銭でない報酬も
Q

 会社法施行規則98条の5第3号は、会社法361条1項6号に基づき定款又は株主総会の決議により定められた取締役全員の金銭でない報酬等の内容の範囲で、個人別の非金銭報酬等の内容についての決定に関する方針を定めることを求めているという理解でよいか。また、同号に基づき取締役の個人別の金銭でない報酬等を定款又は株主総会の決議によって具体的に定めた場合には、会社法施行規則98条の5第3号に掲げる事項を定める必要はないという理解でよいか。
A
 会社法361条7項の規定により取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を定めなければならない株式会社においては、同条1項6号の規定による定款の定め又は株主総会の決議に基づいて付与される金銭でない報酬等についても、当該定款の定め又は株主総会の決議によって当該報酬等について取締役の個人別の報酬等の内容が定められていない場合には、取締役会の決議により会社法施行規則98条の5第3号に掲げる事項を定めなければならないこととなる。なお、金銭でない報酬等について定款の定め又は株主総会の決議によって取締役の個人別の報酬等の内容が定められている場合には、同号に掲げる事項を定めることは要しない。

全ての募集株式等を含む
Q

 会社法施行規則98条の5第3号の「金銭でないもの」には、同号括弧書きで定められている募集株式又は募集新株予約権と引換えにする払込みに充てる金銭を取締役の報酬等とする場合における当該募集株式又は当該募集新株予約権に限らず、全ての募集株式又は募集新株予約権が含まれるという理解でよいか。
A
 会社法施行規則98条の5第3号の非金銭報酬等には、取締役に対して募集株式又は募集新株予約権を付与する場合における当該募集株式及び募集新株予約権も含まれる。

具体的な割合を定めるかは取締役会で判断
Q

 会社法施行規則98条の5第4号の「割合の決定に関する方針」について、業績連動報酬や非金銭報酬はあらかじめ金額を定めることはできないことから、どの程度の具体的な方針を定めることが求められているのかが不明確である。同号の「割合」は、一定の枠や範囲での方針を定めることを求めているという理解でよいか。
A
 会社法施行規則98条の5第4号は、取締役の個人別の報酬等の額について、報酬等の種類別の割合の決定に関する方針を定めることを求めるものであり、当該方針として具体的な割合を定めるかどうかは、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を定める取締役会において判断されることになる。

会社法施行規則98条の5第1号の報酬等の額が全部を占める旨を方針に
Q

 会社法施行規則98条の5第4号について、業績連動報酬等の額又は非金銭報酬等の定めのない会社においては、「業績連動報酬等の額又は非金銭報酬等の取締役の個人別の報酬等の額に対する割合の決定に関する方針」を決定する必要はないという理解でよいか。
A
 取締役に対して会社法施行規則98条の5第2号の業績連動報酬等又は同条3号の非金銭報酬等を付与しないこととする場合には、同条1号の報酬等の額が取締役の個人別の報酬等の額の全部を占めるため、同条4号の方針としては、その旨を定めることになる。

内容が同じ方針は重ねて定める必要なし
Q

 会社法施行規則98条の5第5号の「報酬等を与える時期又は条件の決定に関する方針」は、同条第1号から第3号までの「報酬等の額又は数の算定方法の決定に関する方針」に含まれるように思われる。同条第1号から第3号までに掲げる事項の内容に含まれない「報酬等を与える時期又は条件」とは、具体的にどのようなものを想定しているのか。
A
 会社法施行規則98条の5第5号の方針には、例えば、取締役の報酬等として金銭を付与する場合において、在任中に定期的に支払うか、退職慰労金等として退任後に支払うかなどの点についての方針が含まれると考えられる。一方で、例えば、株式を報酬等として交付する場合において、それをいわゆる事前交付型とするか事後交付型とするかは、非金銭報酬等の内容(同条第3号)の一部であるとも考えられる。
 このように、同条第5号の方針に相当する内容が同条1号から3号までに掲げる方針に含まれるものとして定められている場合には、同条5号の方針として重ねて定める必要はないと考えられる。

個人別の報酬等の内容を決定しなければ報酬諮問委員会設置も関係なし
Q

 会社法施行規則98条の5第6号について、現在の上場会社における実務においては、任意の報酬諮問委員会等を設置している例が多いと思われるが、これらの委員会に対して報酬等に係る意見を諮問するにとどまり、報酬等に関する決定権限を委任しない場合には、同号の「取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の全部又は一部を取締役その他の第三者に委任すること」には該当しないという理解でよいか。
 また、同号ハについて、例えば、取締役の個人別の報酬等の内容の決定の全部又は一部の決定を代表者に委任しつつ、社外取締役を中心とした任意の報酬委員会等を設置することは、同条1号から3号までに掲げる方針ではなく、同条6号ハの「権限が適切に行使されるようにするための措置」に該当するという理解でよいか。
A
 その通りである。いわゆる任意の報酬諮問委員会等を設置する場合であっても、当該報酬諮問委員会等が取締役の個人別の報酬等の内容の決定をしないのであれば、会社法施行規則98条の5第6号に掲げる事項を定める必要はない。また、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の全部又は一部を代表取締役等に委任する場合において、任意の報酬諮問委員会等を設置し、委任を受けた代表取締役等が当該報酬諮問委員会等の見解を踏まえて当該決定をすることとする場合には、同号ハの「権限が適切に行使されるようにするための措置」に該当することになると考えられる。

委任の決定も同時に
Q

 取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針において、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の全部又は一部を特定の取締役に委任する旨を定め、その定めによって実際に委任を受ける取締役を明確に特定することができる場合には、以後、当該特定の取締役への委任について個別に取締役会の決議を経る必要はないという理解でよいか。
A
 事案に応じて個別に判断されることとなるが、取締役会の決議によって会社法施行規則98条の5第6号に掲げる事項を定めた場合において、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の全部又は一部を取締役その他の第三者に委任すること並びに委任を受ける者及び委任する権限の内容が一義的に明確なものとされているときは、当該委任をすることについての決定も併せてされたものと考えることができる場合もあると考えられる。

任意に設置された委員会の活用も含む
Q

 会社法施行規則98条の5第6号ハにおいては、受任者の「権限が適切に行使されるようにするための措置……の内容」を取締役会の決議によって定めることが求められているが、どのようなものを想定しているのか。例えば、任意の委員会に委任する場合の委員会構成や決議プロセスの透明性の工夫、また、取締役社長に一任した場合の取締役社長による決定に対する任意の委員会による事前及び事後のチェックプロセスなどという理解でよいか。
A
 その通りである。会社法施行規則98条の5第6号ハの措置には、任意に設置された委員会を活用することなども含まれると考えられる(会社法施行規則121条6号の3ニについても同様)。

報酬等を返還させる決定に関する事項など
Q

 会社法施行規則98条の5第8号の「取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する重要な事項」に該当する事項としてどのようなものを想定しているのか。
A
 例えば、一定の事由が生じた場合に取締役の報酬等を返還させることとする場合におけるその事由の決定に関する方針等が考えられる。

役員等のために締結される保険契約(D&O保険)

一般にはD&O保険も内容に応じて個別に判断
Q

 いわゆるD&O保険のみが役員等賠償責任保険契約に該当するのか。
A
 会社法施行規則115条の2においては、いわゆるD&O保険やそれに準ずる保険契約が役員等賠償責任保険契約に該当することを想定した規律を設けている。ただし、一般にD&O保険と称される保険契約やそれに準ずる保険契約であっても、その内容は多様であり、また、今後、新たな類型の保険契約が実務で利用されるようになることも考えられる。その場合、これらの保険契約が役員等賠償責任保険契約に該当するかは、各保険契約の内容に応じてその都度個別に判断されることとなる。

保険契約の類型は限定列挙
Q

 会社法施行規則115条の2各号に掲げる保険契約の類型は限定列挙であり、仮に、同条各号に定める類型にない保険契約が問題となった場合には、当該保険契約が「職務の執行の適正性が著しく損なわれるおそれ」がないとしても、会社法の規律の対象に含まれるという理解でよいか。
A
 その通り、会社法施行規則115条の2各号は限定列挙である。

「主たる目的」は主契約と特約を合わせた契約全体で判断
Q

 特約のある保険や役員及び会社の両方の責任が対象となる事項に係る保険等において、どのように「主たる目的」(会社法施行規則115条の2第1号)を判断するのか。
A
 主契約と特約が一体のものとして役員等賠償責任保険契約を構成する場合には、会社法施行規則115条の2第1号の「主たる目的」は、主契約と特約を合わせた契約全体について判断されることとなる。また、被保険者に役員と会社の両方を含む役員等賠償責任保険契約についても、それぞれを被保険者とする部分を別の保険契約であると整理することが適切でない場合には、契約全体について「主たる目的」が判断されることとなる。その判断は、主契約か特約かなどの外形的な事情だけでなく、経済的な機能等にも着目し、個別具体的にされることになる。

個別具体的な事情を踏まえて判断
Q

 役員を被保険者とする自動車賠償責任保険については、役員が職務中に自ら自動車を運転して不注意により事故を起こしたような場合の損害賠償責任をも対象とする保険であったとしても、会社法430条の3第1項の「役員等賠償責任保険契約」には該当しないとの理解でよいか。
A
 会社法施行規則115条の2第2号に掲げるものに具体的にどのような保険契約が含まれるかについては、保険契約の内容や保険契約を締結する会社の状況に応じて様々であることから、個別具体的な事情を踏まえ解釈されることになる。

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