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解説記事2021年02月01日 判例評釈 源泉徴収義務の所在~破産管財人の源泉徴収義務に関する最高裁判決を軸に~(2021年2月1日号・№868)

判例評釈
源泉徴収義務の所在
~破産管財人の源泉徴収義務に関する最高裁判決を軸に~
 弁護士 佐藤朋征


 最高裁判所は、平成23年1月14日判決(民集65巻1号1頁。以下「本判決」という。)において、破産管財人が支給した破産管財人報酬及び破産前に生じた破産会社の従業員に対する退職金債権の配当について、前者については破産管財人の源泉徴収義務を肯定する反面、後者についてはこれを否定する判断を示した。破産管財人の源泉徴収義務については、裁判例、学説を中心とした多様な議論がなされてきたが、本判決は最高裁が破産管財人報酬及び退職金債権の配当に関する源泉徴収義務の存否について初めて判断を明らかにしたものである。本判決で示された源泉徴収義務に関する考え方は、破産管財人の源泉徴収義務にとどまらず、源泉徴収義務の存否が問題となった他の事例における判断にも影響を与えていると思われる。本稿では、本判決における源泉徴収義務に関する考え方を解説するとともに、影響を受けたものと考えられる裁判例を紹介し、本判決を中心とした源泉徴収義務の所在に関する問題点について考察するものである(脚注1)。

1 事案の概要

 本件は、破産管財人である弁護士Xが、破産法(平成16年法律第75号による廃止前のもの。以下「旧破産法」という。)の下において、破産管財人の報酬の支払をし、破産債権である元従業員らの退職金の債権に対する配当をしたところ、税務署長は、上記支払には所得税法第204条第1項第2号の規定が、上記配当には同法第199条の規定がそれぞれ適用されることを前提として、源泉所得税の納税の告知及び不納付加算税の賦課決定を行った。そこでXは、主位的に、上記源泉所得税及び不納付加算税の納税義務が存在しないことの確認を求めるとともに、予備的に、上記源泉所得税及び不納付加算税の債権が財団債権でないことの確認を求め提訴した事案である(実質的当事者訴訟)。

参照法令

【所得税法第204条第1項】
 居住者に対し国内において次に掲げる報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者は、その支払の際、その報酬若しくは料金、契約金又は賞金について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない。
(中略)
② 弁護士(外国法事務弁護士を含む。)、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士その他これらに類する者で政令で定めるものの業務に関する報酬又は料金
【所得税法第199条】
 居住者に対し国内において第30条第1項(退職所得)に規定する退職手当等(以下この章において「退職手当等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その退職手当等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない。

2 争 点

 本件の争点は多岐に渡るが、大きくは、①破産管財人報酬について、源泉徴収義務について定めた所得税法第204条第1項第2号にいう「支払をする者」にあたり、源泉徴収義務を負うか(脚注2)、②退職金債権に対する配当について、所得税法第199条にいう「支払をする者」にあたり、源泉徴収義務を負うかというものである。なお、源泉徴収義務に係る債権が財団債権(破産法第148条)に該当するかという点も争点となったが、本稿では割愛する。

3 原審までの判断

 第1審である大阪地裁平成18年10月25日判決 判時1980号55頁及び控訴審である大阪高裁平成20年4月25日判決 金法1840号36頁(以下、総称して「原審等」という。)は、争点①及び②の両方について、破産管財人は、「支払をする者」に当たらないものとしつつも、破産管財人の源泉徴収義務を肯定した。原審等は、「支払をする者」について、「経済的利益移転の一方当事者」すなわち経済的出捐の効果の帰属者を意味することから破産会社が該当するとしたが、破産管財人が自己に専属する管理処分権により管財人報酬の支払及び退職金債権の配当等を行うことから、これに付随する職務上の義務として、源泉徴収義務を負うとされた。このように、原審等では「支払をする者」と源泉徴収義務者を分ける判断が示された。

4 本判決の概要

 これに対し、本判決は、以下のように破産管財人報酬については源泉徴収義務を肯定し、退職金の配当等については否定した。
(1)破産管財人報酬
 本判決は、まず所得税法第204条第1項の「支払をする者」について、「同項の規定が同号(※同2号)所定の報酬の支払をする者に所得税の源泉徴収義務を課しているのは、当該報酬の支払をする者がこれを受ける者と特に密接な関係にあって、徴税上特別の便宜を有し、能率を挙げ得る点を考慮したことによるものである(最高裁昭和31年(あ)第1071号同37年2月28日大法廷判決・刑集16巻2号212頁参照)。」と源泉徴収義務が課される根拠を明らかにした上、破産管財人の報酬について、「弁護士である破産管財人は、その報酬につき、所得税法204条1項にいう「支払をする者」に当たり、同項2号の規定に基づき、自らの報酬の支払の際にその報酬について所得税を徴収し、これを国に納付する義務を負うと解するのが相当である。」と判示した。
(2)退職金債権の配当
 他方で退職金については、所得税法第199条の規定についても前掲最高裁昭和37年2月28日大法廷判決を踏まえ、退職手当等を支給する者の源泉徴収義務の根拠を「退職手当等の支払をする者がこれを受ける者と特に密接な関係にあって、徴税上特別の便宜を有し、能率を挙げ得る点を考慮したことによるものである」とした上で、「破産管財人は……破産者が雇用していた労働者との間において、破産宣告前の雇用関係に関し直接の債権債務関係に立つものではなく、破産債権である上記雇用関係に基づく退職手当等の債権に対して配当をする場合も、これを破産手続上の職務の遂行として行うのであるから、このような破産管財人と上記労働者との間に、使用者と労働者との関係に準ずるような特に密接な関係があるということはできない」と認定した。また、原審等が依拠していた破産管財人が有する管理処分権についても「破産宣告前の雇用関係に基づく退職手当等の支払に関し、その支払の際に所得税の源泉徴収をすべき者としての地位を破産者から当然に承継すると解すべき法令上の根拠は存しない。」とし、これを根拠に源泉徴収義務を負う点を否定した。そして、退職金の配当等に関して破産管財人は所得税法第199条にいう「支払をする者」に含まれず、源泉徴収義務を負うものでないと判示した。

5 検 討

(1)本判決の意義
 本判決は、源泉徴収義務を負う者は所得税法上の「支払をする者」であり、かかる「支払をする者」が源泉徴収義務を負う根拠は、支払を受ける者と「特に密接な関係」にあって、徴税上特別の便宜を有し能率を挙げ得る者であることを明確にした上で、「支払をする者」とは、このような徴税の便宜を有する者のうち、支払いを受ける者との間に「特に密接な関係」のある者をいうとの解釈を採用した。
 本判決は、基本的に破産管財人の支給した管財人報酬及び破産前の退職金債権への配当に関する源泉徴収義務の存否に関する判断である。また、本判決の考え方は、退職金債権に対する配当のみならず、給与等の債権等、源泉徴収の対象となり得る破産債権に対する配当、現行破産法の下における破産債権に対する配当及び弁済許可(破産法第101条)に関しても基本的に妥当するものと考えられる(脚注3)。
(2)本判決の影響を受けたと考えられる裁判例
 もっとも、本判決が示す源泉徴収義務を負う者の範囲に関する「特に密接な関係」という考え方は、破産管財人に限らず、源泉徴収義務の存否が問題となった他の事例における裁判例でも引用されていると思われる。例えば、以下のような裁判例が存在する。
 ア 東京地裁平成24年4月17日(税資262号順号11930)
 都内のナイトクラブの経営に関与するA社が、税務署長より、共に経営に関与するB社の従業員給与等に関して源泉徴収義務者と認定され、所得税の納税告知処分、不納付加算税賦課決定処分及び重加算税賦課決定処分を受け、その取り消しを求めた事案において、東京地裁は、源泉徴収義務を負う者の範囲について、「給与所得に係る源泉徴収義務を定める所得税法183条1項が「給与等の支払をする者」に源泉徴収義務を課しているのは、〈1〉給与等の支払を受ける者と「特に密接な関係」にあって、〈2〉徴税上特別の便宜を有し能率を挙げ得る者を義務者とする趣旨によるものであるから、同項にいう「支払をする者」とは、支払を受ける者との間で当該支払につき法律上の債権債務関係に立つ本来の債務者又はこれに準ずると評価することができる程度の関係にある者をいい、原則として、給与等の支払義務を負う雇用契約上の雇用主等を意味すると解される。」とした上で、「本件クラブは、原告B社の設立前の期間、その後のA・B期間においても原告A社が経営していたものであり……原告A社と原告B社との間で本件店舗スタッフの給与等の支払に関する契約書等は存在せず、原告B社の設立前の期間、A・B期間のいずれにおいても本件店舗スタッフの勤務形態に何ら変更がないことからすると……本件店舗スタッフの雇用主は、本件クラブの経営主体である原告A社であり、原告A社が所得税法183条1項の給与等の支払をする者に該当するものと認められる」とあてはめを行い、A社を源泉徴収義務者として認定した(脚注4)。
 イ 大阪地裁平成26年11月10日判決(判例タイムズ1424号338頁)
 高級クラブにおいて、「社長」の肩書を有する被告人が源泉徴収義務を怠ったことにより所得税法違反が問われた事案において、大阪地裁は、被告の源泉徴収義務について「源泉徴収義務者について、所得税法183条1項は「給与等の支払をする者」、同法204条1項は「報酬若しくは料金、契約金又は賞金の支払をする者」として定める。給与や報酬等の支払をする者と支払を受ける者との間に特に密接な関係があって、徴税上特別の便宜を有し、その能率を挙げ得ることが、そのような支払をする者に源泉徴収義務が課された趣旨であることに鑑みると、かかる特に密接な関係とは、それが濫用的脱法的である場合は別として、原則として、雇用契約や請負契約等の法律上の債権債務関係を意味すると解され、給与等の支払をする者とは、本来の債務者あるいはこれに準ずる関係にある者とみるのが相当である……」とし、諸事情を勘案し、被告人を幹部従業員であり当該クラブ運営会社の経営者ではなく、源泉徴収義務を負う者ではないと判示した(脚注5)。
 ウ 東京地裁平成27年5月28日判決(税資265号順号12671)
 外資系証券会社の従業員が、所得税の確定申告に際し、株式報酬制度に基づいて取得した同社親会社の株式等に係る経済的利益を所得金額の計算に含めず申告したところ、税務署長が、同利益は給与所得にあたるとして更正処分等をしたことから、同処分が違法であると主張してその取消しを求めた事案において、東京地裁は、当該従業員の納税義務に係る判断に関連して、当該証券会社の源泉徴収義務の存否について次のように判断した。すなわち、源泉徴収義務者の範囲に関し「給与所得に係る源泉徴収義務を定める所得税法183条1項が「給与等の支払をする者」に所得税の源泉徴収義務を課しているのは、当該給与等の支払をする者がこれを受ける者と特に密接な関係にあって、徴税上特別の便宜を有し、能率を挙げ得る点を考慮したことによるものであるから、同項にいう「支払をする者」とは、支払を受ける者との間で当該支払につき法律上の債権債務関係に立つ債務者又はこれに準ずるような特に密接な関係にある者をいうものと解するのが相当である(最高裁平成20年(行ツ)第236号、同年(行ヒ)第272号同23年1月14日第二小法廷判決・民集65巻1号1頁参照)。」とし、その上で、当該証券会社が属するグループの中核企業や当該証券会社の親会社が「本件利益の支払債務者ではない」当該証券会社「にその支払をさせることもあり得るところ、その場合、同社が原告の雇用主であって原告と密接な関係にあることを考慮すると、当該支払については同社に源泉徴収義務が生じる余地もあるというべきである。」と当該証券会社が源泉徴収義務を負う場合を明らかにし、ただ本件については、当該証券会社自身が従業員にその支払いを行ったと認めるだけの事情はないことから、同社は源泉徴収義務を負うものということはできない旨判示した(脚注6)。
(3)問題点
 このように、本判決における源泉徴収義務を負う者に関する「特に密接な関係」という考え方は、破産管財人の源泉徴収義務の存否にとどまらず、実際には、破産手続きとは関係なく源泉徴収義務の存否が問題となった裁判例において「特に密接な関係」の理論は源泉徴収義務の存否を判断する考え方として引用されていると考えられる。今後も、かかる「特に密接な関係」論に基づく源泉徴収義務の存否の判断は続くもの思われる。ただ、この「特に密接な関係」論には以下に述べるような問題点も存在する。
 ア 基準として不明確性
 まず、「特に密接な関係」については、その意義や範囲が必ずしも明確にされていない(脚注7)。本判決の考え方は、上記裁判例のように源泉徴収義務の存否に関する判断一般にも採用されていると考えられるところ、不意打ち的に源泉徴収義務を負うことにならないよう意義や範囲が明確にされる必要がある。
 本判決では、「特に密接な関係」の意義について、「雇用」関係のような、支払を受ける者と「直接の債権債務関係」にある者と説示されている(脚注8)。また、上記イの裁判例では「雇用」とともに「請負契約」が例示されている。これらを前提に考えると、「債権債務関係」とは「雇用」や「請負」のような継続的契約に基づくものが想定されているように解され、その他単発型契約による債権債務関係について範囲に含まれ得るのか疑問が生じる。このように、想定される「債権債務関係」の内容について必ずしも明確ではないのではないか。
 また、裁判例に目を転じると、上記ウの裁判例では、従業員と雇用関係にある証券会社に源泉徴収義務が認められていない。本件では問題となった株式等の支給を証券会社が行ったものではないことから、本判決が説示する「徴税上特別の便宜を有し能率を挙げ得る者」とは言い難く、結論としては自然な印象を受ける。しかし、結局本判決が説示する「雇用」という「特に密接な関係」が存在するにもかかわらず源泉徴収義務が否定されたのであり、基準としての不明確性はより深まったと考えられる。
 なお、上記ウの裁判例の控訴審(東京高裁平成27年12月2日判決 税資265号順号12763)では、本判決について、「源泉徴収義務を課す理由について「給与・報酬の支払をする者がこれを受ける者と特に密接な関係にあって、徴税上特別の便宜を有し、能率を挙げ得る点を考慮したことによるものである。」としているのであって、支払をする者が支払債務者であることを必要とする旨を判断しているのではない。」と判示され、「支払をする者」について債務者であることは必須ではないものとしている。そうなると、上記のように、「特に密接な関係」とは「法律上の債権債務関係」とされたこととの整合性についてはどのように考えればよいのか甚だ疑問である。
 このように、本判決の示す「特に密接な関係」の意義及び範囲は不明確であり、これを基に源泉徴収義務の有無を判断することは困難ではないか。源泉徴収義務は、納税義務ではなく、納税義務者に生じた租税を徴収し納付する義務(徴収納付義務)であって、課税要件明確主義が直接妥当するものではないと考えられるが、源泉徴収義務は刑罰をもって担保される重大な義務であることを考えると、「特に密接な関係」の意義と範囲に関して、より明確化される必要があろう。
 イ 所得税法第204条第2項第2号との関係
 ところで、弁護士の業務に関する報酬であっても、給与等の支払をする個人事業者以外の個人から支払われる場合には、源泉徴収を要しないが(所得税法第204条第2項第2号)、本判決が破産管財人報酬について源泉徴収義務を肯定していることから、当該報酬の支払者である破産管財人自身が上記個人事業者以外の個人に当たらないと解したものと考えられる。しかし、その論拠が明確ではない(脚注9)。この点、本判決の調査官解説(脚注10)では、破産管財人の法的地位について、管理機構人格説、すなわち破産管財人の地位を、一般的な破産財団の管理機構と、その担当者に分け、管理機構としての破産管財人は破産財団の管理処分権が帰属する別の法人格であるとする見解に与したものであるかは定かではないとしつつも、「少なくとも破産管財人に実体法上の義務の帰属主体となり得る法主体性(法人格)を認める見解に立ったものであることはその説示する内容から明らか」としている。そうすると、破産管財人報酬は破産管財人という個人以外の法主体から当該弁護士への支払いであり、「個人」からの支払ではないと解する余地もあるように思えるが、そこまで説示されたものと解されるかは極めて疑問である。このように、所得税法第204条第2項第2号との関係では依然疑問が残る(脚注11)。

6 結 び

 このように、本判決により源泉徴収義務の存否に関する判断が示されたわけではあるが、本判決により示された源泉徴収義務の存否に関する「特に密接な関係」の意義及び範囲の不明確性、所得税法第204条第2項第2号との関係について依然として疑問が残る。今後も本判決に依拠した源泉徴収義務の存否に関する判断が続くことが予想されるが、かかる問題点について手当がなされることを期待したい。

佐藤朋征 (さとう ともゆき)
中央大学法学部卒業、中央大学大学院法務研究科修了。ベンチャー企業、上場企業を中心に、資金調達、コーポレート、M&Aその他企業法務及び訴訟を中心とした紛争案件等に従事。その他にも、削除請求や発信者情報開示請求等、インターネット関連の案件も多く手掛ける。

脚注
1 なお、本稿校了後に接した文献ではあるが、酒井克彦「破産管財人弁護士に課せられる源泉徴収義務−「密接関係拡張論」及び「密接関係課税要件論」を中心として−」租税訴訟第13号は、本稿と問題意識を同じくするものである。
2 ①の前提として、破産管財人報酬は所得税法第204条第1項第2号にいう「弁護士の業務に関する報酬又は料金」に該当するかという点も論点となるが、この点は第1審(大阪地裁平成18年10月25日判決 判時1980号55頁)から本判決に至るまで一貫して該当すると判断されている。
3 判例タイムズ1343号99頁。また、伊藤眞「破産法・民事再生法第4版」348頁等は、さらに論を進めて、破産管財人代理や履行補助者としての弁護士等に対する報酬についても妥当するものとする。
4 控訴審(東京高裁平成24年9月19日判決 税資262号順号12039)及び上告審(最高裁平成26年12月6日判決 税資264号順号12573)も一審の判断を維持し、いずれも棄却の判断を下している。
5 大阪地裁は、被告人の待遇は、幹部従業員のトップとして考えても合理的なものであること、被告人には、裁量でホステスの採用を決定する権限はないこと、本件クラブの開店当初被告人が経営者とはいえないことは明らかであり、その後被告人が経営を担うようになったことを示す事情がないこと等を理由に、被告人は、Xの幹部従業員に過ぎないとしている。なお、控訴審(大阪高裁平成27年11月20日判決 判例集未登載)でも1審の考え方が維持されている。
6 控訴審(東京高裁平成27年12月2日判決 税資265号順号12763)及び上告審(最高裁平成29年2月14日判決 税資267号順号12979)も一審の判断を維持し、いずれも棄却の判断を下している。
7 本判決の調査官解説(古田孝夫・平成23年度最高裁判所判例解説〔民事篇〕〔上〕1頁)でも「「特に密接な関係」にある者の意義及び範囲については、前掲最大判昭和37年2月28日において具体的に明らかにされておらず、本判決も一般論としては明示していない。」としている(同16頁)。
8 前掲調査官解説16頁でも「本判決の説示する内容からすると、本判決は基本的には、支払を受ける者との間で当該支払につき法律上の債権債務関係に立つ本来の債務者を想定し、これに準ずると評価できる程度の関係にある者を「特に密接な関係」にある者とする解釈手法を採ったものと解することができる。」としている。
9 この点について、前掲判例タイムズ98頁では「もっともこの点は、破産管財人報酬の支払原資である破産財団が破産者の所有に帰することを重視し、破産者本人が個人事業者以外の個人である場合には破産管財人報酬についても源泉徴収を要しないとする見解もあり得るところであろう。」と説明されている。
10 前掲最高裁判所判例解説17頁。
11 前掲最高裁判所判例解説18乃至19頁では、所得税法第204条第2項第2号は「一般の個人が源泉徴収を行うことは現実的には困難な場合が多いと考えられることから、源泉徴収制度に慣熟している給与等についての源泉徴収義務者に限って報酬等についても源泉徴収をしなければならないものとし、その他の一般の個人については源泉徴収を要しないこととしたものである」と同規定の趣旨を明示した上で、「破産管財人がこのような源泉徴収義務を免れる一般の「個人」には該当する場合があるか問題となるが、破産管財人は弁護士の中から選任されるのが一般的であり、そうでない場合でもその職責に鑑み一定水準の法的素養のある者の中から選任されるのが通常と考えられるから、上記のような趣旨で立法された所得税法第204条第2項第2号の適用対象として破産管財人はそもそも想定されておらず、同号の規定は破産管財人には適用がないものと解するべき」としている。

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