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解説記事2019年08月26日 税務マエストロ 軽減税率制度(7)(2019年8月26日号・№800)

税務マエストロ
軽減税率制度(7)
#236
 熊王征秀(税理士)


略歴
学校法人大原学園に税理士科物品税法の講師として入社し、在職中に酒税法、消費税法の講座を創設。その後、会計事務所勤務を経て税理士登録、独立開業。『消費税トラブルの傾向と対策』等、著書多数。現在東京税理士会会員相談室委員東京税理士会調査研究部委員東京地方税理士会税法研究所研究員日本税務会計学会委員大原大学院大学教授

マエストロの解説
 本年10月からの実施が目前に迫った令和元年8月1日に国税庁消費税軽減税率制度対応室から「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」の改訂版が公表された。消費税の軽減税率制度に関するQ&Aは、平成28年4月に公表されて以来、今回で実に4度目の改訂となる。今月は、今回の改訂で明らかになった事例のうち、重要性が高いと思われるものをピックアップしてその内容を検証する。

1 飲用後に回収される空びんの取扱い
 ガラスびん入りの飲料を飲食店に販売し、空びんの回収時に飲食店に支払う「びん代」は飲食料品の対価ではない。したがって、飲食店から「容器保証金」を受領していない限り、「びん代」には標準税率が適用されることになるのであるが、「びん代」を飲料の売上値引として処理することも認められている。
 また、飲料メーカーにびんを返却する際に返還される「容器保証金」は単なる預け金であり、課税の対象とはならない(軽減税率Q&A(個別事例編)問30)。

参考:~消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)より

(飲用後に回収される空びん)
 当社は、ガラスびん入りの清涼飲料を飲食店等に卸しており、販売に当たっては、顧客から「容器保証金(容器等の返却を担保するために預かる保証金)」を預かることなく、全体を軽減税率の適用対象として販売しています。
 ところで、当社では、飲用後の空びんを飲食店等から回収し、「びん代」を飲食店等に支払っていますが、この「びん代」は、軽減税率の適用対象となりますか。
 また、当社では、飲食店等から回収した空びんを、当社の仕入先である飲料メーカーに返却していますが、当社は、仕入れの際、飲料メーカーに「容器保証金」を支払っていますので、返却の際は、支払った「容器保証金」が返還されます。この「容器保証金」はどのような取扱いになりますか(問30)。
 飲食料品の販売に際し使用される包装材料等が、その販売に付帯して通常必要なものとして使用されるものであるときは、その包装材料等も含め「飲食料品の譲渡」に該当します。
 ご質問の場合、飲食店等に対して清涼飲料を販売する際に使用するガラスびんは、その販売に付帯して通常必要なものとして使用されるものであるため、清涼飲料の販売は、ガラスびんも含めて「飲食料品の譲渡」として軽減税率の適用対象となります。
 他方、飲用後の空びんを回収する際に飲食店等に支払う「びん代」は、飲食店等から受けた「飲食料品の譲渡」の対価ではなく、「空びんの譲渡」の対価であることから、軽減税率の適用対象となりません。
 なお、この場合、「びん代」を売上げに係る対価の返還等として処理することも差し支えありません。
 また、容器等込みで飲料を仕入れる際に支払い、飲料を消費等した後に空の容器等を返却したときに返還を受けることとされているいわゆる「容器保証金」は、消費税の課税対象外であり、課税仕入れに該当しません(基通5-2-6)。
 このため、ご質問の飲料メーカーに空びんを返却する際に返還される「容器保証金」も、資産の譲渡等の対価に該当せず、消費税の課税対象外となります。
(参考)「容器保証金」について、容器等が返却されないことにより返還しないこととなった保証金等の取扱いは、次によることとされています(基通5-2-6)。
 ・当事者間においてその容器等の譲渡の対価として処理することとしている場合、資産の譲渡等の対価に該当します。
 ・当事者間において損害賠償金として処理することとしている場合、その損害賠償金は資産の譲渡等の対価に該当しません。
 ※上記のいずれによるかは、当事者間で授受する請求書、領収書その他の書類で明らかにするものとされています。

2 製作物供給契約による飲食料品の販売
 いわゆる製作物供給契約により飲食料品を製造する場合には、その取引が、「製造販売」か「賃加工」かにより適用税率が異なることとなる。
 「製造販売」であれば、「飲食料品の譲渡」として軽減税率の適用対象となり、「賃加工」であれば、「役務の提供」として軽減税率の適用対象とはならない。
 取引内容が「製造販売」に該当するか「賃加工」に該当するかについては、その契約内容等により個別に判断することとされており、国税庁の軽減税率Q&Aでは、次の①~③のような点を踏まえて判断をすることとしている(軽減税率Q&A(個別事例編)問41)。
※国税庁の軽減税率Q&A(個別事例編)問41については、文書回答事例(国税庁ホームページ)において、「飲食料品の製造業者が発注元から有償又は無償で支給される原材料等を使用して飲食料品を製造し、発注元へ納品した場合の資産の譲渡等に係る適用税率について」が掲載されているので参照されたい。

①受託者の使用する原材料や包装資材は、どのように調達されるか(委託者からの無償支給か、有償支給か、自社調達か)
②契約に係る対価の額はどのように設定されるか
③完成品の所有権がどちらにあるか

 要するに、原材料や包装資材がメーカーから無償支給されているのであれば、受託者(製造者)の請求金額(売上高)は加工賃だけとなり、標準税率が適用されるということである。
 また、製品の所有権は委託者であるメーカーに帰属することになる。
 原材料や包装資材がメーカーから有償支給されている場合や受託者が自社で調達している場合には、受託者(製造者)は加工賃に原材料や包装資材の代金を加算した金額をメーカーに請求することになる。この請求金額は、まさに飲食料品の対価であり、軽減税率が適用されることになる。
 また、製品の所有権は受託者に帰属することになる。

参考:~消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)より

(製作物供給契約による飲食料品の譲渡等の取扱い)
 当社は、飲食料品の製造販売を行っています。
 当社では、飲食料品メーカーとの間で、いわゆる製作物供給契約を締結し、当社が受託製造した飲食料品をメーカーに納品していますが、この取引は軽減税率の適用対象となりますか。
 なお、飲食料品メーカーとの契約の概要は、以下のとおりです。
・当社は、製造する飲食料品の原材料及び包装資材について、飲食料品メーカーから有償支給を受ける。
・当社は、原材料代と包装資材代に加工賃を加算した金額を、販売代金として飲食料品メーカーに請求する。
・完成品の引渡時に、その所有権が当社から飲食料品メーカーへ移転する(問41)。
 ご質問のようないわゆる製作物供給契約により飲食料品を製造する場合、その取引が、「製造販売」に当たるか「賃加工」に当たるかにより適用税率が異なることとなります。
 この点、「製造販売」であれば、「飲食料品の譲渡」として軽減税率の適用対象となり、「賃加工」であれば、「役務の提供」として軽減税率の適用対象となりません。
 なお、「製造販売」に当たるか「賃加工」に当たるかは、その契約内容等により個別に判断することとなりますが、例えば、
・受託者の使用する原材料や包装資材は、どのように調達されるか(委託者からの無償支給か、有償支給か、自社調達か)
・契約に係る対価の額はどのように設定されるか
・完成品の所有権がどちらにあるか
といった点等を踏まえて判断することとなります。
 ご質問の場合、契約内容を踏まえると、一般に製造業者が原材料等を仕入れて製品を製造して販売する取引と何ら変わらず、飲食料品の「製造販売」に該当すると考えられます。
 したがって、その取引は「飲食料品の譲渡」に該当し、軽減税率の適用対象となります。
【参考】○文書回答事例(国税庁ホームページ)国税庁ホームページ>法令等>文書回答事例>消費税>「飲食料品の製造業者が発注元から有償又は無償で支給される原材料等を使用して飲食料品を製造し、発注元へ納品した場合の資産の譲渡等に係る適用税率について」(URL省略)をご参照ください。

3 販売奨励金

 販売促進の目的で、販売数量や販売高に応じて金銭により受け取る(支払う)販売奨励金は仕入(売上)のマイナス(仕入れ(売上げ)に係る対価の返還等)として処理する。
 したがって、飲食料品の売買に伴い発生する販売奨励金には軽減税率が適用されることになるが、「販路拡大」などの目的で支払う(受け取る)販売奨励金は軽減税率の適用対象とはならないので注意が必要だ(軽減税率Q&A(個別事例編)問42)。
 また、商品の販売数量や販売高に応じて物流センターの使用料など(センターフィー)を支払っている場合にも、そのセンターフィーは商品の売買に伴う販売奨励金とは異なるものであり、標準税率が適用されることになる(軽減税率Q&A(個別事例編)問44)。

(注)自動販売機の設置手数料は役務提供の対価である。したがって、たとえ清涼飲料の販売数量等に応じて計算される場合であっても、そもそもが清涼飲料の売買に伴うものではないことから、仕入れ(売上げ)に係る対価の返還等に該当するものではない。結果、手数料には標準税率が適用されることになる(軽減税率Q&A(個別事例編)問43)。

参考:~消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)より

(販売奨励金)
 飲食料品に係る販売奨励金は、どのような取扱いになりますか(問42)。
 事業者が販売促進の目的で課税資産の販売数量、販売高等に応じて取引先(課税仕入れの相手方のほか、その課税資産の製造者、卸売業者等の取引関係者を含む。)から金銭により支払を受ける販売奨励金等は、仕入れに係る対価の返還等に該当します(基通12-1-2)。
 同様に事業者が支払う販売奨励金等は、売上げに係る対価の返還等に該当します(基通14-1-2)。
 売上げに係る対価の返還等又は仕入れに係る対価の返還等については、それぞれその対象となった課税資産の譲渡又は課税仕入れの事実に基づいて、適用される税率を判断することとなります(改正法附則34②)。
 したがって、その売上げに係る対価の返還等又は仕入れに係る対価の返還等の対象となった取引が「飲食料品の譲渡」であれば、軽減税率が適用されます。
(参考)「販売奨励金」という名目でやり取りが行われるものであっても、例えば、「販路拡大」などの役務の提供の対価として支払う(受け取る)ものは、軽減税率の適用対象となりません。
  したがって、「飲食料品の譲渡」に伴いやり取りされる「販売奨励金」やいわゆる「リベート」などは、その目的や性質等によって「売上げ(又は仕入れ)に係る対価の返還等」であるのか、あるいは「役務の提供の対価」として支払う(受け取る)ものであるのかを整理し、適用税率を判定する必要があります。この点、取引当事者間でこれらの認識を共有する必要がありますので、例えば、契約書等により、あらかじめ明らかにしておくといった対応が考えられます。
(自動販売機の手数料)
 当社は、清涼飲料の自動販売機を設置しており、飲料メーカーから、この自動販売機による清涼飲料の販売数量等に応じて計算された販売手数料を受領しています。この販売手数料は、軽減税率の適用対象となりますか(問43)。
 ご質問のような販売手数料は、自動販売機の設置等に係る対価として支払いを受けるものであるため、その対価の額が販売数量等に応じて計算されるものであったとしても、飲食料品の売上げ(又は仕入れ)に係る対価の返還等には該当せず、「役務の提供」の対価に該当することから、軽減税率の適用対象となりません。
(物流センターの使用料(センターフィー))
 当社は、食品卸売業を営んでおり、近隣地域にチェーン展開しているスーパーマーケットの物流センターに食品を納品しています。その際、食品の販売数量や販売高に応じて、物流センターの使用料等(いわゆるセンターフィー)を支払っていますが、このセンターフィーは、軽減税率の適用対象となりますか。
 なお、センターフィーの金額は、食品の販売数量等に応じて計算されています(問44)。
 ご質問のようないわゆるセンターフィーは、物流センターの使用等に係る対価として支払うものであるため、その対価の額が販売数量等に応じて計算されるものであったとしても、飲食料品の売上げ(又は仕入れ)に係る対価の返還等には該当せず、「役務の提供」の対価に該当することから、軽減税率の適用対象となりません。

この記事に関するご意見・お問合せは ta@lotus21.co.jp にお寄せください。

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