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税務ニュース2021年03月05日 減資による中小税制適用の否認リスクは(2021年3月8日号・№873) 立法趣旨には反しても、「外国税額控除事件」ほどの悪質性認定は困難

  • 大手旅行会社が資本金を23億400万円から1億円に減資。外形標準課税や中小企業特例の立法趣旨に反するとの指摘も。
  • 過去には、条文にない課税をしたに等しい事案として「外国税額控除事件」が存在も、今回の減資に、制度の“濫用”と断定された外国税額控除事件ほどの悪質性を認定することは困難。

 コロナ禍の直撃を受けた大手旅行会社が、法人税法・租税特別措置法上の中小企業特例の適用や外形標準課税の回避を念頭に、資本金を1億円に減資する。このような行為が税務上問題とされることはないのか、検証してみよう。
 まず外形標準課税についてみると、外形標準課税の立法趣旨は「赤字法人にも広く税の負担を求めること」にある。この点からすれば、今回の減資は外形標準課税の立法趣旨に反していると言える。しかし、現行地方税法にはこれを禁止する規定は存在しておらず、実務上、こうした減資は一般に広く行われている。この現状が示すように、減資による外形標準課税の回避は、納税者側の問題というよりも、そもそも「資本金」という納税者が操作可能な指標を適用基準にしていることに原因があるとも言えよう。これは、財務体力の弱い中小企業の税負担軽減という立法趣旨に基づく法人税法・租税特別措置法上の中小企業特例についても同様のことが言える。これまでも、「資本金」ではなく税務上の資本、すなわち「資本金等の額」をメルクマールにすべきという議論はあったが、現状、資本金を基準に税制上の取扱いを分けるという仕組みが多々存在する中、それらをすべて見直すのは現実的ではないだろう。
 では、「立法趣旨に反する」という観点から課税処分を行うことは可能だろうか。憲法84条に定める租税法律主義は「課税要件法定主義」を含むと解されているため、法律上の要件の定めのない課税は憲法84条に違反することになるが、条文にない課税をしたに等しい事案として、外国税額控除事件(42頁参照)が知られている。ただ、今回の減資に、制度の濫用と断定された外国税額控除事件ほどの悪質性が認めれるとは考えにくい。なぜなら、外国税額控除事件は同制度がおよそ想定していなかったような使い方をされた事案であるのに対し、今回のような事案は、そもそも税法が「資本金」をメルクマールとした時点で、減資による適用回避は容易に想定できたと考えられるからだ。
 結論として、今回の減資が否認を受ける可能性は低いと言えよう。

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