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解説記事2021年03月29日 SCOPE ケイマンSPCへのCFC税制の適用巡りみずほ銀行敗訴(2021年3月29日号・№876)

東京地裁、「租税回避の目的等」は考慮せず
ケイマンSPCへのCFC税制の適用巡りみずほ銀行敗訴


 みずほ銀行(原告)がケイマンに置いたSPC(特別目的会社)に係るタックス・ヘイブン対策税制(以下、「CFC税制」)の適用の可否が争われた事件で、東京地方裁判所民事51部(清水知恵子裁判長)は令和3年3月16日、課税処分を適法と認め、原告の請求を棄却した。
 原告の「租税回避の目的も実態もない本件にCFC税制を適用すべきでない」との主張に対し、東京地裁は、同税制の適用の可否判断はあくまで「文理解釈」によるべきとの考え方を明確に打ち出した。近年、租税回避といえないような案件にもCFC税制による課税が行われているとの懸念が企業や実務家の間で広がっており、訴訟に発展する事案も増えている。本件はその懸念を一層強めることになりそうだ。

「請求権勘案保有株式等割合」は規定の文理から事業年度終了時の現況で判断

 本件は、みずほ銀行(原告)の特定外国子会社等(措置法66条の6①、平成28年改正前)に該当するケイマン子SPC(MHCB及びMHBKの2社)について、原告の益金の額に算入されるべき「課税対象金額」が争われた事件である。課税対象金額は、特定外国子会社等における「適用対象金額」に「請求権勘案保有株式等割合」を乗じて算定されるところ(措置法施行令39条の16①)、「請求権勘案保有株式等割合」を0%として申告した原告に対し、処分行政庁が「100%として算定すべき」として更正処分等を行ったことから訴訟に至ったものである。
 本件を巡る資金の流れ(本件資金調達スキーム)は図表のとおり。本件各子SPCの株式等の保有状況をみると、原告が普通株式の全てを保有し、みずほFGの100%子SPC(以下、「本件持株SPC」)が優先出資証券の全てを保有していた。しかし、原告が劣後ローンを本件各子SPCに返済すると同時に、本件各子SPCが本件優先出資証券の全てを本件持株SPCに償還したため、本件各子SPCの事業年度末における株式等は、原告が保有する普通株式のみとなっていた。

 事業年度末における「請求権勘案保有株式等割合」は100%であるとの国の主張に対し、原告は、事業年度末の状況はたまたま生じた形式的な状況にすぎず、本件資金調達スキームはバーゼルⅡ規制に対応するための方法として邦銀で広く採用されていた方法であり、また、各子SPCの稼得した所得は全て優先出資証券について配当され原告には帰属しないことなどから、租税回避の実態を伴うものではないなどと反論し、「請求権勘案保有株式等」の概念が導入された平成17年改正の趣旨・目的はオーバー・インクルージョン(過剰包摂)の除去にあることも踏まえると、本件は、目的論的解釈により、期中(本件優先出資証券の償還前)における「請求権勘案保有株式等割合」0%により「課税対象金額」を算定すべきと主張していた。
原告の主張する「目的論的解釈」は排斥
 東京地裁は、請求権勘案保有株式等を判断すべき時点について、措置法施行令(39条の16①、2一)の規定の文理から「当該外国子会社等の事業年度終了時」との判断を示した上で、本件各子SPCの事業年度末における状況から、「原告の請求権勘案保有株式等割合は100%」として国の主張を支持した。
 そして、原告の「租税回避の目的・実態のない本件にCFC税制を適用すべきでない」旨の主張に対しては、「措置法66条の6が明文で規定する要件とは別に、租税回避の目的や実態の有無等が同条1項の適用又は適用除外の要件となるものとは解することができない」と、あくまで文理解釈によるべきとの考えを明確に示した。
 また、「請求権勘案保有株式等」の概念については、「特定外国子会社等が発行する株式等の請求権の内容を勘案することにより可及的に課税対象金額と内国法人が実際に受領できる配当等の金額との接近を図るもの」とした上で、「原告が主張するような、規定の文言から離れた解釈を許容するものと解することはできない」と、原告の主張を一蹴。原告が主張する「当該特定外国子会社等の当該事業年度における課税対象金額と、内国法人が当該特定外国子会社等から実際に受領できる配当等の金額との間にかい離が生じること」の不当性に対しても、「このようなかい離が生じ得ることも法は当然に予定しており、このことが立法府及び行政府に委ねられた立法裁量の範囲を逸脱するものということはできない」との判断を示した。

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