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解説記事2021年04月12日 実務解説 会社法及び法務省令の改正を踏まえた株式会社の各種書類に関する経団連ひな型改訂の解説(2021年4月12日号・№878)

実務解説
会社法及び法務省令の改正を踏まえた株式会社の各種書類に関する経団連ひな型改訂の解説
 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部 浅野岳紀
 (前)一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部 宮内優彰


 2019年12月の会社法改正及び2020年11月の会社法施行規則・会社計算規則の改正等を踏まえ、3月9日、経団連は、「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型」(以下「ひな型」という。)を改訂した。
 本稿では、重要な改訂項目を解説する。ひな型の改訂内容は多岐にわたるので、その全容は添付の新旧対照表とともに、経団連のHPに掲載のひな型改訂版をご覧いただきたい(https://www.keidanren.or.jp/policy/2021/024.html)。

1. 改訂ひな型の適用時期

(1)事業報告(及びその附属明細書)
 改正会社法及び改正会社法施行規則(以下「改正施行規則」という。)の施行日である2021年3月1日(脚注1)以後に末日を迎える事業年度に関するものから適用する。ただし、補償契約及び役員等賠償責任保険契約に関する記載については、施行日以後に締結された契約について適用する。
(2)株主総会参考書類
 前述の施行日(2021年3月1日)以後に株主総会参考書類の記載事項を含めて会社法298条1項各号に掲げる事項が取締役会の決議によって決定された株主総会に係る株主総会参考書類から適用する。ただし、補償契約及び役員等賠償責任保険契約に関する記載については、施行日以後に締結される契約について適用する。
(3)計算書類及び連結計算書類
 会計上の見積りに係る改正会社計算規則は、2021年3月31日以後に終了する事業年度に係る計算書類及び連結計算書類から適用されている。
 金融商品の時価開示に係る改正会社計算規則、収益認識に係る改正会社計算規則は、2021年4月1日以後に開始する事業年度に係る計算書類及び連結計算書類について適用する。ただし、それ以前に終了する事業年度に係るものについては、改正会社計算規則の規定を適用できる。

2. 事業報告の記載事項

(1)親会社との重要な契約等の概要
 改正施行規則120条1項7号に対応するものとして、「親会社との間に事業報告作成会社の重要な財務及び事業の方針に関する契約等が存在する場合には、その内容の概要」の記載が必要となる。
 「契約等」とは、事業報告作成会社とその親会社との間でされた合意をいい、契約という形態に限られない。また、重要な財務及び事業の方針の決定を支配する内容(改正施行規則3条3項2号ハ)のものに限らず、当該方針に影響を及ぼす重要な契約等について記載する必要がある。
 親子会社間で締結される経営管理契約等においてグループに関する様々な事項が合意されていたとしても、事業報告に記載する必要があるのは、「重要な財務及び事業の方針に関する契約等」に該当する合意の内容の概要のみである。また、重要な財務及び事業の方針に及ぼす影響を踏まえ、少数株主保護のための措置を講ずることを親会社との間で合意をしている場合には、その内容の概要等を記載することが考えられる。
 なお、合意のみが「契約等」に該当するため、事業報告作成会社が関知していない親会社における方針等や、いわゆる株主間契約(事業報告作成会社が当事者となっていないもの)の内容の概要を記載する必要はない。
(2)役員等賠償責任保険契約
 改正施行規則121条の2に対応するものとして、「役員等賠償責任保険契約に関する事項」の記載が必要となる。
 役員等賠償責任保険契約の定義に関しては、改正会社法430条の3の1項及び改正施行規則115条の2に記載があるが、基本的にはD&O保険のことを指す。
 その上で、保険者との間で役員等賠償責任保険契約を締結している場合には、①当該契約の被保険者の範囲及び②当該契約の内容の概要を開示することになる。
 ①については、事業報告作成会社の役員等でない者が被保険者に含まれている場合、当該役員等でない者も記載の対象となる。被保険者の氏名の記載までは要しないが、被保険者の範囲等の記載により、被保険者となる者が特定できることが必要である。
 ②については、改正施行規則において、(a)被保険者が実質的に保険料を負担している場合におけるその負担割合、(b)塡補の対象とされる保険事故の概要、(c)当該契約によって被保険者である役員等(当該株式会社の役員等に限る。)の職務の執行の適正性が損なわれないようにするための措置を講じている場合におけるその内容、を含むとされている(改正施行規則121条の2の2号)。当該契約の内容の重要な点(特約がある場合には、主契約と特約を合わせた契約全体の重要な点)を理解するに当たり必要な事項を記載することが求められ、(b)としては、その重要な点を理解するに当たり必要な事項を記載することが求められる。また、(c)の一例としては、免責額についての定めを設け、一定額に至らない損害については塡補の対象としないことなどが考えられるが、特段の措置を講じていない場合には、記載を要しない。
 記載の範囲については、事業報告の対象とする事業年度の初日から末日までに有効であった全ての役員等賠償責任保険契約に関する記載が必要となる。
 記載の方法としては、会社役員に関する事項に注記する方法や、役員等賠償責任保険契約に関する事項として、別項目を立てて記載する方法が考えられる。別項目を立てて記載する場合の記載例は前頁ひな型事例1のとおり。

【ひな型事例1】

[記載例](別項目を立てて記載する際の例)
(役員等賠償責任保険契約の内容の概要)
①被保険者の範囲
  当社および当社のすべての子会社のすべての取締役、執行役および監査役。
②保険契約の内容の概要
 被保険者が①の会社の役員としての業務につき行った行為(不作為を含む。)に起因して損害賠償請求がなされたことにより、被保険者が被る損害賠償金や争訟費用等を補償するもの。ただし、贈収賄などの犯罪行為や意図的に違法行為を行った役員自身の損害等は補償対象外とすることにより、役員等の職務の執行の適正性が損なわれないように措置を講じている。保険料は全額当社が負担する。

(3)業績連動報酬等に関する事項
 改正施行規則121条5号の2に対応する事項として、報酬等に業績連動報酬等が含まれている場合には、「イ 当該業績連動報酬等の額又は数の算定の基礎として選定した業績指標の内容及び当該業績指標を選定した理由」、「ロ 当該業績連動報酬等の額又は数の算定方法」、「ハ 当該業績連動報酬等の額又は数の算定に用いたイの業績指標に関する実績」を記載する必要がある。
 イについては、当該業績連動報酬等が会社役員に適切なインセンティブを付与するものであるかを判断するために必要な記載が求められるが、当該業績連動報酬等の算定の基礎として選定された全ての業績指標を網羅的に記載するこことが必ずしも求められるものではない。
 ロについては、業績連動報酬等と業績指標との関連性等、業績連動報酬等の算定に関する考え方を株主が理解することができる程度の記載が求められるが、計算式を記載することや、株主が開示された業績指標に関する実績等から業績連動報酬等の具体的な額又は数を導くことができるような記載が必ずしも求められるものではない。
 ハについては、具体的な数値を記載することも考えられるが、必ずしも数値を記載することを求めるものではなく、有価証券報告書において「当該業績連動報酬に係る指標の『目標及び実績』」の記載が求められる(企業内容等の開示に関する内閣府令第二号様式記載上の注意(57)c)のと同様、実績について記載することでも足りる。
(4)各会社役員の報酬等の額又はその算定方法に係る決定方針に関する事項
 改正施行規則121条6号及び6号の2に対応する事項として、株式会社において、各会社役員の報酬等の額又はその算定方法に係る決定方針(改正会社法361条7項の方針又は同法409条1項の方針)を定めているときは(脚注2)、①当該方針の決定の方法、②その方針の内容の概要、③当該事業年度に係る取締役(監査等委員である取締役を除き、指名委員会等設置会社にあっては、執行役等)の個人別の報酬等の内容が当該方針に沿うものであると取締役会(指名委員会等設置会社にあっては、報酬委員会)が判断した理由、を記載する必要がある(脚注3)。
 また、改正会社法361条7項の方針又は同法409条1項の方針の対象外である会社役員(監査等委員である取締役、監査役又は会計参与)の報酬等の額又はその算定方法に係る決定に関する方針が任意に定められている場合、当該方針の決定の方法及びその方針の内容の概要についても事業報告に記載する必要がある。
 その上で、①としては、取締役会の決議により決定したこと等に加えて、例えば、方針を決定するに当たって任意に設置した報酬諮問委員会の答申を得たことや外部の専門家の助言を受けたことなど、当該方針を決定する過程に関する重要な事実があれば、それを記載することが考えられる。
 ②については、その記載の順序等について特に定めはなく、また、「概要」であることから、改正施行規則98条の5各号の事項(脚注4)を網羅的に記載しなければならないわけでもない。そのため、会社が定めたいわゆる報酬プログラムや報酬ポリシーの中に同条各号に掲げる方針の内容の概要が含まれていれば、報酬プログラムや報酬ポリシーとしてまとめて開示することもできる。
 ③の記載は、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定の全部又は一部を取締役その他の第三者に委任する場合にも必要となる。
 なお、どの時点において存在する方針について記載すべきかについては、事業報告の作成時又は当該事業年度末日のいずれの考え方もあり得ると考えられる。ただし、事業年度中又は事業年度末日後に当該方針について変更があった場合には、変更前の当該方針についても、当該事業年度に係る取締役又は執行役の個人別の報酬等の内容が当該方針に沿うものであると取締役会が判断した理由の説明のために必要な記載をすることが考えられる。
(5)社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要
 改正施行規則124条4号に対応するものとして、「社外取締役が果たすことが期待される役割に関して行った職務の概要」の記載が必要となる。
 同職務が、既存の記載事項(脚注5)と重複する場合であっても、期待される役割との関連性を示した上で、当該社外取締役が行った職務の概要をより具体的に記載することとなる。なお、例えば、社外取締役が、任意の委員会(指名報酬委員会など)の委員となって活動している場合などにおいては、当該委員会における出席・発言等の状況なども職務の概要に該当すると考えられる。
 記載方法としては、別項目として記載する方法のほか、主な活動状況として、既存の開示事項と同じ項目の中で記載することが考えられる。既存の開示項目の中で記載する場合の記載例は前頁ひな型事例2のとおり。

【ひな型事例2】

[記載例]
(社外役員の主な活動状況)
区 分 氏 名 主な活動状況
取締役
  当事業年度開催の取締役会のほぼ全回に出席し、主に○○の観点から、議案・審議等につき必要な発言を適宜行っております。また、上記のほか、当社の経営陣幹部の人事などを審議する指名諮問委員会の委員長を務め、当事業年度開催の委員会の全て(○回)に出席することなどにより、独立した客観的立場から会社の業績等の評価を人事に反映させるなど、経営陣の監督に務めております。
監査役   (省略)

3.計算書類及び連結計算書類の記載事項

(1)収益認識の開示(計算書類・連結計算書類)
≪重要な会計方針に係る事項に関する注記≫

 企業会計基準を適用する会社は、「収益及び費用の計上基準」として、「①当該会社の主要な事業における顧客との契約に基づく主な義務の内容」「② ①に規定する義務に係る収益を認識する通常の時点」「③ ①及び②のほか、当該会社が重要な会計方針に含まれると判断したもの」を記載する。ひな型では、①②を「記載例」に盛り込み、③の開示が必要な場合の例を「記載上の注意」で示した。
 連結計算書類で提示した①②の記載例は、ひな型事例3のとおり。

【ひな型事例3】

[記載例](別項目を立てて記載する際の例)
(4)収益及び費用の計上基準
 商品又は製品の販売に係る収益は、主に卸売又は製造等による販売であり、顧客との販売契約に基づいて商品又は製品を引き渡す履行義務を負っております。当該履行義務は、商品又は製品を引き渡す一時点において、顧客が当該商品又は製品に対する支配を獲得して充足されると判断し、引渡時点で収益を認識しております。
 保守サービスに係る収益は、主に商品又は製品の保守であり、顧客との保守契約に基づいて保守サービスを提供する履行義務を負っております。当該保守契約は、一定の期間にわたり履行義務を充足する取引であり、履行義務の充足の進捗度に応じて収益を認識しております。
 当社グループが代理人として商品の販売に関与している場合には、純額で収益を認識しております。

≪収益認識に関する注記≫
 企業会計基準を適用する会社は、重要性の乏しいものを除き、「① 当該事業年度に認識した収益を、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づいて区分をした場合における当該区分ごとの収益の額その他の事項」「② 収益を理解するための基礎となる情報」「③ 当該事業年度及び翌事業年度以降の収益の金額を理解するための情報」を、各社の実情に応じて、必要な記載をする。  
 「収益認識に関する会計基準」において具体的に規定された事項であったとしても、各社の実情を踏まえ、計算書類・連結計算書類においては当該事項の注記を要しないと合理的に判断される場合には、計算書類・連結計算書類において当該事項について注記しないことも許容される。「収益認識に関する会計基準」では、開示目的を「顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が開示すること」としており、収益認識に関する注記の要否、注記する場合の内容は、係る開示目的に照らして判断する。
 ひな型では、①を「記載例」に盛り込み、②は上述の「重要な会計方針に係る事項に関する注記」の「収益及び費用の計上基準」に記載のとおりとして省略した。③は「記載上の注意」で例を示した。
 連結計算書類で提示した①②の記載例は、ひな型事例4のとおり。

【ひな型事例4】

[記載例(当事業年度及び翌事業年度以降の収益の金額を理解するための情報の注記を要しないと合理的に判断される場合)]
(1)収益の分解
  当社グループは、○○事業、○○事業及びその他の事業を営んでおり、各事業の主な財又はサービスの種類は、△商品、△製品及び△保守サービスであります。
  また、各事業の売上高は、×××百万円、×××百万円及び×××百万円であります。
(2)収益を理解するための基礎となる情報
  「会計方針に関する事項」の「収益及び費用の計上基準」に記載のとおりであります。

 「記載上の注意」で示した③の記載例は、ひな型事例5のとおり。

【ひな型事例5】

[当連結会計年度及び翌連結会計年度以降の収益の金額を理解するための情報を記載する例]
 当連結会計年度末における残存履行義務に配分された取引価格の総額は、〇〇〇百万円であり、当社グループは、当該残存履行義務について、履行義務の充足につれて〇年から〇年の間で収益を認識することを見込んでいます。

(2)会計上の見積りの開示(計算書類・連結計算書類)
 「会計上の見積りに関する注記」については、「① 会計上の見積りにより当該事業年度に係る計算書類・連結計算書類にその額を計上した項目であって、翌事業年度に係る計算書類・連結計算書類に重要な影響を及ぼす可能性があるもの」「② 当該事業年度に係る計算書類・連結計算書類の①の項目に計上した額」「③ ②のほか、①に掲げる項目に係る会計上の見積りの内容に関する理解に資する情報」を、各社の実情に応じて、必要な記載をする。
 「会計上の見積りに関する注記」の記載にあたっては、「会計上の見積りの開示に関する会計基準」において具体的に例示された事項であったとしても、各社の実情を踏まえ、計算書類・連結計算書類においては当該事項の注記を要しないと合理的に判断される場合には、計算書類・連結計算書類において当該事項について注記しないことも許容される。
 ひな型では、①②を「記載例」に盛り込み、③については「記載上の注意」で例を示した。
 連結計算書類で提示した①②の記載例は、前頁ひな型事例6のとおり。

【ひな型事例6】

[記載例(会計上の見積りの内容に関する理解に資する情報の注記を要しないと合理的に判断される場合)]
 会計上の見積りにより当連結会計年度に係る連結計算書類にその額を計上した項目であって、翌連結会計年度に係る連結計算書類に重要な影響を及ぼす可能性があるものは、次のとおりです。
  繰延税金資産 ×××百万円

 「記載上の注意」で示した③の記載例は、前頁ひな型事例7のとおり。

【ひな型事例7】

[会計上の見積りの内容に関する理解に資する情報を記載する例]
 繰延税金資産の認識は、将来の事業計画に基づく課税所得の発生時期及び金額によって見積っております。当該見積りは、将来の不確実な経済条件の変動などによって影響を受ける可能性があり、実際に発生した課税所得の時期及び金額が見積りと異なった場合、翌連結会計年度の連結計算書類において、繰延税金資産の金額に重要な影響を与える可能性があります。

(3)金融商品の時価の開示(連結計算書類)
 「金融商品に関する注記」は、重要性の乏しいものを除き、「① 金融商品の状況に関する事項」「② 金融商品の時価等に関する事項」「③ 金融商品の時価の適切な区分ごとの内訳等に関する事項」について、各社の実情に応じて、必要な記載をする。今般の会社計算規則の改正では③が盛り込まれた。
 ③に関連して、「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」において「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項」として注記を求められる事項であったとしても、各社の実情を踏まえ、連結計算書類において当該事項の注記を要しないと合理的に判断される場合には、連結計算書類において当該事項について注記しないことも許容される。
 ひな型では、「金融商品に関する注記」について、「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項を記載しない記載例」「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項も記載する記載例」の2つを用意した。
 「金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項を記載しない記載例」のひな型での記載はひな型事例8のとおり。③については、各金融商品についての時価がレベル1〜3のいずれに該当するかの定性的な説明にとどめている。

【ひな型事例8】

[金融商品の時価のレベルごとの内訳等に関する事項を記載しない記載例]
1.金融商品の状況に関する事項
 当社グループは、資金運用については短期的な預金等に限定し、銀行等金融機関からの借入により資金を調達しております。
 受取手形及び売掛金に係る顧客の信用リスクは、与信管理規程に沿ってリスク低減を図っております。また、投資有価証券は主として株式であり、上場株式については四半期ごとに時価の把握を行っています。
 借入金の使途は運転資金(主として短期)及び設備投資資金(長期)であり、一部の長期借入金の金利変動リスクに対して金利スワップ取引を実施して支払利息の固定化を実施しております。なお、デリバティブは内部管理規程に従い、実需の範囲で行うこととしております。
2.金融商品の時価等に関する事項
 ○年○月○日(当期の連結決算日)における連結貸借対照表計上額、時価及びこれらの差額については、次のとおりであります。なお、市場価格のない株式等(連結貸借対照表計上額xxx 百万円)は、「その他有価証券」には含めておりません。また、現金は注記を省略しており、預金は短期間で決済されるため時価が帳簿価額に近似することから、注記を省略しております。

(注)時価の算定に用いた評価技法及びインプットの説明
 金融商品の時価を、時価の算定に用いたインプットの観察可能性及び重要性に応じて、以下の3つのレベルに分類しております。
レベル1の時価:同一の資産又は負債の活発な市場における(無調整の)相場価格により算定した時価レベル2の時価:レベル1のインプット以外の直接又は間接的に観察可能なインプットを用いて算定した時価
レベル3の時価:重要な観察できないインプットを使用して算定した時価

 時価の算定に重要な影響を与えるインプットを複数使用している場合には、それらのインプットがそれぞれ属するレベルのうち、時価の算定における優先順位が最も低いレベルに時価を分類しております。

投資有価証券
 上場株式は相場価格を用いて評価しております。上場株式は活発な市場で取引されているため、その時価をレベル1 の時価に分類しております。

デリバティブ取引
 金利スワップの特例処理によるものは、ヘッジ対象とされている長期借入金と一体として処理されているため、その時価は、当該長期借入金の時価に含めて記載しております(下記「長期借入金」参照)。

受取手形及び売掛金
 これらの時価は、一定の期間ごとに区分した債権ごとに、債権額と満期までの期間及び信用リスクを加味した利率を基に割引現在価値法により算定しており、レベル2の時価に分類しております。

支払手形及び買掛金、並びに短期借入金
 これらの時価は、一定の期間ごとに区分した債務ごとに、その将来キャッシュ・フローと、返済期日までの期間及び信用リスクを加味した利率を基に割引現在価値法により算定しており、レベル2の時価に分類しております。

長期借入金
 これらの時価は、元利金の合計額と、当該債務の残存期間及び信用リスクを加味した利率を基に、割引現在価値法により算定しており、レベル2 の時価に分類しております。なお、変動金利による長期借入金は金利スワップの特例処理の対象とされており(上記「デリバティブ取引」参照)、当該金利スワップと一体として処理された元利金の合計額を用いて算定しております。

(4)新型コロナウイルス感染症関係の開示(計算書類・連結計算書類)
 企業会計基準委員会が公表した「会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症の影響の考え方」(https://www.asb.or.jp/jp/info/105236.html)では、会計上の見積りを行う際の仮定についての情報を適切に開示することを求めていることから、ひな型でも、ひな型事例9のような記載例を示すこととした。

【ひな型事例9】

[新型コロナウイルス感染症の記載例]
 当社グループは、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響を受けており、今後、〇年の〇〇頃まで影響が続くものと見込み、その後、徐々に回復に転じるものと仮定して有形固定資産の減損処理、繰延税金資産の回収可能性等の会計上の見積りを行っております。なお、新型コロナウイルス感染症の広がりや収束時期等の見積りには不確実性を伴うため、実際の結果はこれらの仮定と異なる場合があります。

 なお、当該開示は、会社計算規則第116条(その他の注記)として記載するほか、会社計算規則第102条の3の2(会計上の見積りに関する注記)として記載することも考えられる。

4. 株主総会参考書類

(1)役員候補者を被保険者とする役員等賠償責任保険契約の内容の概要
 改正施行規則74条1項6号、74条の3の1項8号、75条6号、76条1項8号、77条7号により、取締役が役員選任議案を提出する場合には、株主総会参考書類において、「候補者を被保険者とする役員等賠償責任保険契約を締結しているとき又は役員等賠償責任保険契約を締結する予定があるときは、その保険契約の内容の概要」を記載する必要がある。
 契約の「締結」には「更新」も含まれる。会社がすでに候補者を被保険者として保険会社との間で役員等賠償責任保険契約を締結している場合の記載例はひな型事例10のとおり。

【ひな型事例10】

[記載例](選任議案に注記として記載)
(注)○○氏は、現在、当社の取締役であり、当社は、同氏が被保険者に含まれる会社法第430条の3第1 項に規定する役員等賠償責任保険契約を保険会社との間で締結しております。当該保険契約では、被保険者が会社の役員等の地位に基づき行った行為(不作為を含みます。)に起因して損害賠償請求がなされたことにより、被保険者が被る損害賠償金や訴訟費用等が塡補されることとなり、被保険者の全ての保険料を当社が全額負担しておりますが、同氏の再任が承認された場合、同氏は引き続き当該保険契約の被保険者に含められることとなります。なお、当社は、当該保険契約を任期途中に同様の内容で更新することを予定しております。

(2)社外取締役候補者が選任された場合に果たすことが期待される役割の概要
 改正施行規則74条4項3号により、取締役が社外取締役(社外役員に限る。)の選任議案を提出する場合には、候補者が選任された場合に果たすことが期待される役割の概要について、株主総会参考書類での記載が必要になる。記載例はひな型事例11のとおり。

【ひな型事例11】

[記載例](選任議案に注記として記載)
(注)取締役候補者のうち、○○氏は、会社法施行規則第2条第3項第7号の社外取締役候補者であります。
 ○○氏を社外取締役候補者とした理由は、同氏は長年にわたり××株式会社の経営に携り、その経歴を通じて培った経営の専門家としての経験・見識[、及び業務執行から独立した客観的な視点に基づく利益相反等を含む経営の監督とチェック機能、客観性の更なる向上への貢献]/[に基づき、独立した客観的な立場から、適切に会社の業績等の評価を行い、その評価を経営陣幹部の人事に適切に反映することなどにより、経営陣に対する実効性の高い監督を行うこと]を期待したためであります。同氏の選任が承認された場合、当社は同氏との間で責任限度額を○円又は会社法第425条第1項に定める最低責任限度額のいずれか高い額とする責任限定契約を締結する予定です。

(3)取締役(監査等委員である取締役を除く。)の報酬の相当性
 取締役が取締役の報酬議案を提出する場合においては、改正前会社法のときから、株主総会参考書類において、額あるいはその算定方法が相当であることの理由の記載が必要であった。
 しかし、改正会社法において、前記注釈2の通り、監査役会設置会社や監査等委員会設置会社においても、取締役(監査等委員で取締役を除く。)の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針の決定を要するとされたことを踏まえると、改正会社法下では、この「相当である」ことの理由の説明に際しては、議案可決後に取締役会において決定し、又は変更することが想定されている(ただし、可決後でもなお従前の方針が妥当する場合は変更の必要はない。)方針の内容についても必要な記載をすることが求められると考えられている。この場合における、取締役の報酬議案の記載例はひな型事例12のとおり。

【ひな型事例12】

[記載例]
第〇号議案 取締役の報酬等の額改定の件
 当社の取締役の報酬等の額は、○年○月○日開催の第○回(期)定時総会の決議で、「月額○円以内」となり今日に及んでいますが、当社と同業または同規模の国内企業を主なベンチマークとしつつ、多様で優秀な人材を確保するため有効な報酬水準とすべく、当社の財務状況と外部環境を考慮のうえ(注:この部分は各社の事情に応じた内容を記載いただくこととなります)、これを「年額○円以内(うち社外取締役●円以内)」、に改定いたしたいと存じます。
 なお、当社における取締役の個人別の報酬等の内容に係る決定方針の内容の概要は事業報告○頁に記載のとおりであり、【その内容は、本議案をご承認いただいた場合の決定方針としても引き続き相当であると考えられることから、当該方針を変更することは予定しておりません。/本議案をご承認いただくことを条件に、その内容を○○と変更することを予定しております。】本議案は、取締役に対して付与する固定の金銭報酬に関する報酬枠を改定する議案であるところ、当該方針において定められた個人別の固定の金銭報酬に関する算定の基準、取締役報酬全体に対して占める割合の水準、付与対象となる取締役の人数水準などに照らした報酬枠として必要かつ合理的な内容となっており、相当であると判断しております。
 また、取締役の報酬等の額には、従来どおり使用人兼務取締役の使用人分給与は含まないものといたしたいと存じます。
 現在の取締役は○名(うち社外取締役○名)ですが、第○号議案が原案どおり承認可決されますと、取締役は●名(うち社外取締役●名)となります。

 なお、監査等委員である取締役の報酬等の決定については、それ以外の取締役の報酬等の決定と区別してしなければならない(改正会社法361条2項)ため、別議案での提出を要する。その際、内容が相当であることの理由の記載は必要であるものの、監査等委員である取締役の報酬は改正会社法361条7項の必須の対象ではないことから、取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針の内容について言及する必要はない。

脚注
1 株主総会資料の電子提供制度及び支店の所在地における登記の廃止以外
2 監査役会設置会社(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る。)である有価証券報告書提出会社及び監査等委員会設置会社においては、取締役の個人別の報酬等の内容が定款又は株主総会の決議により定められているときを除いて、取締役(監査等委員である取締役を除く。)の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を定めなければならない(改正会社法361条7項)。また、指名委員会等設置会社においては、報酬委員会は、執行役等の個人別の報酬等の内容に係る決定に関する方針を定めなければならない(同法409条1項)。
3 改正前の会社法施行規則においても、各会社役員の報酬等の額又はその算定方法に係る決定に関する方針を定めているときは、当該方針の決定の方法及びその方針の内容の概要の開示が求められていた。
4 改正会社法361条7項により委任を受け、改正施行規則が、注釈2の監査役会設置会社及び監査等委員会設置会社において、個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針として定めることを求めている事項。
5 取締役会及び監査役会(監査等委員会、監査委員会)への出席の状況、発言の状況、社外役員(取締役)の意見により会社の事業の方針又は事業その他の事項に係る決定が変更されたときで、重要でないとはいえないもの。

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