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解説記事2021年05月03日 SCOPE 税理士の脱税は信頼を毀損、日税連の税理士登録拒否は適法(2021年5月3日号・№881)

執行猶予期間満了後も適正を欠くと判断
税理士の脱税は信頼を毀損、日税連の税理士登録拒否は適法


 元税理士(原告)が日本税理士会連合会(被告)に対して税理士登録拒否決定の取消しなどを求めた裁判で、東京地方裁判所(市原義孝裁判長)は令和3年1月15日、同連合会の決定は適法であるとし、原告の税理士登録の義務付けを求める部分を却下するとともに、その他の請求を棄却した。市原裁判長は、1億円超の法人税を脱税させた原告の行為は非常に重大であるとした同連合会の決定処分の評価が合理性を欠くとはいえないとの判断を示した。

欠格事由に該当しなくても税理士の適正を欠けば登録拒否事由に

 本件は、原告(元税理士)が法人税法違反の罪により、懲役1年6月、罰金1,200万円、懲役刑につき3年間執行猶予の判決を受けたが、執行猶予期間等が満了したため、日本税理士会連合会(被告)に対し税理士登録の申請をしたところ、税理士法24条6号ロ及び同条7号に該当するとして、登録拒否決定を受けたことから本件決定の取消し及び税理士登録の義務付けを求めた裁判である。
 税理士法では、税理士の資質を担保するため欠格事由を定める(税理士法4条)とともに、有罪判決を受けその執行を終えてから欠格事由に該当する年数を経過した後であっても、税理士業務を行わせることがその適正を欠くおそれがある者(同法24条6号ロ)、税理士の信用又は品位を害するおそれがある者その他税理士の職責に照らし税理士としての適格性を欠く者(同法24条7号)を登録拒否事由として定めている。
新聞報道もあり社会的な影響は大きい
 日本税理士会連合会は、原告が税務の専門家として有する知識経験を悪用し私欲のために1億円超の法人税を免れるという非常に悪質かつ重大な犯罪であるから、税理士に対する社会一般の信頼を著しく毀損したものであり、その社会的影響は大きかったと主張した。

処分の取消しは社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかな場合

 裁判所は、日本税理士会連合会が行う登録拒否処分における税理士法24条6号柱書きの「税理士業務を行わせることがその適正を欠くおそれがある者」及び同条7号の「税理士の信用又は品位を害するおそれがある者」の各登録拒否事由該当性の判断には一定の裁量が認められていると指摘。日本税理士会連合会による登録拒否処分が違法なものとして取り消されるのは、その判断が事実の基礎を欠き又は事実に対する評価が合理性を欠くこと等によりその判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであって、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したと認められる場合に限られるとした。
2か月での申請は反省の姿勢が見られず
 本件についてみると、原告は税理士として4社の法人税確定申告手続に関与するに当たり、架空の広告宣伝費を計上する方法により所得を秘匿して4社に合計5,589万4,100円の法人税を免れさせるとともに、業務委託をしていた税理士法人の確定申告に当たり、売上げの一部を除外するなどの方法により所得を秘匿して4,432万3,800円の法人税を免れさせており、本件非行は非常に重大であって、その方法も極めて悪質であるとした決定処分の評価が合理性を欠くとはいえないとの判断を示した。また、有罪判決があった当時に、「元税理士」という肩書を付けた原告の氏名とともに全国紙で重ねて報道されるなど税理士の品位、信用を害する事件として社会的にも強く非難されているとした決定処分の評価が合理性を欠くとはいえないとした。
 そのほか、裁判所は、原告が裁決からわずか2か月で登録申請に及んでおり、前回裁決から申請までに事情の変化があったとも認められないことからすれば、原告には前回裁決の内容を真摯に受け止め、反省しようという姿勢に乏しいものと評価されても合理性を欠くとはいえないとした。

他の税理士の登録申請の可否
 本件税理士法人の法人税法違反に関し逮捕されたことのあるH税理士に対しては、平成30年7月に税理士登録が認められている。裁判所は、H税理士は不起訴処分となっており、原告と異なり法人税法違反により有罪判決を受けたものではないため、そもそも税理士法24条6号ロの登録拒否事由に該当する余地はないとしている。一方、税理士法人の代表社員であるEに関しては税理士法24条7号に該当するとして税理士登録拒否決定を受けている。Eは税理士法人の法人税法違反及び関与していた2社の法人税法違反の各罪により懲役1年、執行猶予3年の判決を受け、執行猶予期間満了後4か月で登録申請を行っていた。

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