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解説記事2021年07月12日 税制改正解説 令和3年度における納税環境整備に関する改正について(1)(2021年7月12日号・№890)

税制改正解説
令和3年度における納税環境整備に関する改正について(1)
 和栗佑介

はじめに

 令和3年度税制改正では、ポストコロナに向けた経済構造の転換及び好循環の実現、家計の暮らしと民需の下支え等の観点から、個人所得課税、資産課税、法人課税、消費課税、国際課税、納税環境整備等について所要の措置が講じられた。
 このうち納税環境整備については、税務関係書類における押印義務の見直しを行うとともに、電子帳簿等保存制度の見直しを行う等の措置が講じられている。
 以下では、これらの法令改正の主な内容について説明する。

一 税務関係書類における押印義務の見直し

Ⅰ 改正の背景等

 今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のためにテレワークの推進が課題とされる中、我が国における書面主義・押印原則・対面主義がその阻害要因となっているとの指摘があったことや、デジタル・ガバメントの推進による行政コスト削減の観点を踏まえ、こうした官民の規制・制度や慣行について、規制改革推進会議が方針を取りまとめた上で見直しを実行するよう、内閣総理大臣より関係省庁に指示がなされた。その後、規制改革推進会議によって示された見直しの具体的な基準や「規制改革実施計画」等に掲げられた方向性に沿って、緊急対応及び恒久的な制度的対応が政府全体として進められてきた。
 このうち税務関係書類への押印については、国税通則法第124条第2項をはじめとする法令の規定により必要とされてきたところ、政府税制調査会及び同調査会の下に設置された納税環境整備に関する専門家会合における議論等を踏まえ、今回の改正において必要な措置が講じられた。
 以下では、押印義務の見直しに関する国税通則法等の国税通則関係の改正について説明する。

Ⅱ 国税通則法等の整備

1 国税通則法等の整備
(1)改正前の制度の概要

① 税務書類への押印義務
  国税に関する法律に基づき税務署長その他の行政機関の長又はその職員に提出する申告書、申請書、届出書、調書その他の書類(以下「税務書類」という。)には、次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める者が押印しなければならないこととされていた(旧通法124②)。
 イ その税務書類を提出する者が個人である場合……その税務書類を提出する者
 ロ その税務書類を提出する者が法人である場合……その法人の代表者
 ハ 納税管理人又は代理人によってその税務書類を提出する場合……その納税管理人又は代理人
 ニ 不服申立人が総代を通じてその税務書類を提出する場合……その総代
  なお、各税法において押印に関する規定が置かれている場合には、特別法たる各税法の規定に従うこととなる。
② 再調査の請求書等を補正する際に作成する録取書への押印
  再調査の請求がされている再調査審理庁は、再調査の請求書の記載事項等に不備がある場合には、相当の期間を定め、その期間内に不備を補正すべきことを求めなければならないこととされている(旧通法81③)。再調査の請求人は、この補正が求められた場合には、その再調査の請求に係る税務署その他の行政機関に出頭して補正すべき事項について陳述し、その陳述の内容をその行政機関の職員が録取した書面(録取書)に押印することによっても、これをすることができることとされていた(旧通法81④)。
  審査請求書の補正についても同様とされていた(旧通法91②)。
③ 交付送達書への押印
  税務署その他の行政機関の職員は、交付送達を行った場合には、その交付を受けた者に対し、その旨を記載した書面(交付送達書)にその者の署名押印(記名押印を含む。)を求めなければならないこととされていた(旧通規1①)。
④ 担保提供関係書類への押印義務
  納税の猶予等の適用を受ける場合には、担保の提供が必要とされている(通法46⑤等)。
  この場合において、土地、建物等(建物、立木及び登記される船舶並びに登録を受けた飛行機、回転翼航空機及び自動車並びに登記を受けた建設機械で、保険に付したもの)及び鉄道財団等(鉄道財団、工場財団、鉱業財団、軌道財団、運河財団、漁業財団、港湾運送事業財団、道路交通事業財団及び観光施設財団)(以下「土地等」という。)を担保として提供するときはその土地等の所有者が税務署長等に提出する「抵当権の設定の登記又は登録を承諾する旨の書類」(通基通第54条関係3(1))に、税務署長等が確実と認める保証人による保証を担保として提供するときはその保証人が税務署長等に提出する「保証を証する書面」(旧通令16④)に、運用上、それぞれ押印することが求められていた。また、これらの書類に添付する印鑑証明書など担保の種類ごとに必要な提出書類についても、運用上の取扱いとして定められていた(通基通第54条関係1、3)。
(2)改正の内容
① 税務書類、録取書、交付送達書等への押印の廃止
  国税に関する法律に基づき税務署長その他の行政機関の長又はその職員に提出する税務書類、再調査の請求書等を補正する際に作成する録取書及び交付送達書について、押印を要しないこととされた(通法81④、91②、旧通法124②、通規1①)。
  上記の書類のほか、納付書、納税告知書、督促状及び納税証明書交付請求書について、これらの様式における押印欄が削除された(通規別紙第1号書式、別紙第1号の2書式、別紙第2号書式〜別紙第3号書式、別紙第8号書式)。
② 担保提供関係書類への押印義務等の明確化
  土地等を担保として提供する場合又は保証人による保証を担保として提供する場合の提出書類については、書類提出者の意思確認が真に必要な書類として実印による押印及び印鑑証明書の添付を求めるものに該当することから、その押印義務が法令上明確化された。また、これらの提出書類への押印義務の明確化と併せて、担保の種類ごとに必要となる提出書類(担保提供関係書類)についても、法令上明確化された(通令16、通規11②〜⑥)。

2 税理士法等の整備
(1)改正前の制度の概要

① 税務代理をする場合の租税に関する申告書等への署名押印義務
  税理士又は税理士法人(以下「税理士等」という。)が税務代理をする場合において、租税に関する申告書等を作成して税務官公署に提出するときは、その税務代理に係る税理士は、その申告書等に署名押印しなければならないこととされていた。この場合において、その申告書等が租税の課税標準等に関する申告書又は租税の還付金の還付の請求に関する書類であるときは、その申告書等には、併せて納税義務者本人が署名押印しなければならないこととされていた(旧税理士法33①)。
② 税理士等が作成をした税務書類への署名押印義務
  税理士等が税務書類の作成をしたときは、その税務書類の作成に係る税理士は、その書類に署名押印しなければならないこととされていた(旧税理士法33②)。
③ 計算事項、審査事項等を記載した添付書面への署名押印義務
  税理士等は、申告納税方式の国税若しくは申告納付若しくは申告納入の方法による地方税の課税標準等を記載した申告書を作成したとき、又はその申告書で他人の作成したものにつき審査して、法令の規定に従って作成されていると認めたときは、その申告書の作成に関する計算事項、審査事項等を記載した書面をその申告書に添付することができることとされている(税理士法33の2①②)。
  また、税理士等がこの書面を作成したときは、その書面の作成に係る税理士は、その書面に税理士である旨その他の事項を付記して、署名押印しなければならないこととされていた(旧税理士法33の2③、旧税理士規第9号様式、第10号様式)。
④ 所属税理士が自ら委嘱を受けて税理士業務等に従事する場合に委嘱者に交付する書面等への押印義務
 イ 所属税理士が自ら委嘱を受けて税理士業務等に従事する場合に委嘱者に交付する書面への署名押印
   所属税理士が他人の求めに応じ自ら委嘱を受けて税理士業務等に従事しようとする場合には、その都度、あらかじめ、その使用者である税理士等の書面による承諾を得なければならないこととされている(税理士規1の2②)。この承諾を得た所属税理士は、所属税理士である旨、その使用者である税理士等の承諾を得ている旨その他の事項を記載した書面に署名押印した上、その承諾を得たことを証する書面の写しを添付し、これを委嘱者(納税義務者)に対して交付するとともに、その事項につき説明しなければならないこととされていた(旧税理士規1の2③④)。
 ロ 所属税理士が委嘱者に説明を行った旨を記載した書面への委嘱者の署名押印
   所属税理士は、委嘱者に対して上記イの説明を行った場合には、その旨を記載した書面にその委嘱者の署名押印を得るとともに、その書面の写しをその使用者である税理士等に提出しなければならないこととされていた(旧税理士規1の2⑤⑥)。
(2)改正の内容
 上記(1)①の租税に関する申告書等への税理士及び納税義務者本人の押印、上記(1)②の税務書類への税理士の押印、上記(1)③の計算事項、審査事項等を記載した添付書面への税理士の押印、上記(1)④イの書面への所属税理士の押印並びに上記(1)④ロの書面への委嘱者の押印について、要しないこととされた。なお、これらの書類へのこれらの者の署名は、引き続き必要となる(税理士法33、33の2③、税理士規1の2④〜⑥、16①、第9号様式、第10号様式)。
 上記の書類のほか、指導教授の証明書及び税務代理権限証書について、これらの様式における押印欄が削除された(税理士規第4号様式、第8号様式)。

3 国税徴収法施行令等の整備
(1)改正前の制度の概要

 徴収職員は、滞納者又は特定の第三者の物又は住居その他の場所につき捜索したときは捜索調書を、また、滞納者の財産を差し押さえたときは差押調書を、それぞれ作成しなければならないこととされている(徴法54、146①)。
 上記の捜索調書又は捜索後に作成する差押調書には、立会人の署名押印(記名押印を含む。)を求めなければならないこととされ、立会人が署名押印をしないときは、その理由をその捜索調書又は差押調書に付記しなければならないこととされていた(旧徴令21②、52②)。
(2)改正の内容
 上記(1)の捜索調書又は捜索後に作成する差押調書への立会人の押印の求めについて、要しないこととされた。なお、その捜索調書又は捜索後に作成する差押調書への立会人の署名(記名を含む。)は、引き続き必要となる(徴令21②、52②、徴規別紙第11号書式)。

4 電子帳簿保存法施行規則の整備
(1)改正前の制度の概要

 国税関係帳簿書類のCOM(電子計算機を用いて電磁的記録を出力することにより作成するマイクロフィルムをいう。以下同じ。)による保存等を行う場合には、そのCOMの保存に併せて、次に掲げる書類の備付けを行うこととされていた(旧電子帳簿保存法規則4①一、②)。
① そのCOMの作成及び保存に関する事務手続を明らかにした書類
② 次に掲げる事項が記載された書類
 イ 保存義務者(保存義務者が法人である場合には、その法人の国税関係帳簿書類の保存に関する事務の責任者である者)のその国税関係帳簿書類に係る電磁的記録が真正に出力され、そのCOMが作成された旨を証する記載及び記名押印
 ロ そのCOMの作成責任者の記名押印
 ハ そのCOMの作成年月日
(2)改正の内容
 上記(1)②のCOMの保存に併せて備付けを行うべき書類への上記(1)②イの保存義務者及び上記(1)②ロのCOMの作成責任者の押印について、要しないこととされた。なお、その書類への氏名の記載(記名)は、引き続き必要となる(電子帳簿保存法規則3①一、②)。

5 その他様式の整備
 上記のほか、電子申請等証明書交付請求書、電子申請等証明書及び沖縄税理士法の規定により税理士資格を有することとなる者が受講する税法に関する講習の受講申請書について、これらの様式における押印欄が削除された(措規別表第十四(一)(二)、沖縄税特省令別紙様式第一)。

Ⅲ 適用関係

 上記Ⅱ1(2)2(2)3(2)4(2)及び5の改正は、令和3年4月1日から施行され(改正法附則1、改正通令附則①、改正通規附則1、改正税理士規附則①、改正徴令附則、改正徴規附則①、改正電子帳簿保存法規則附則1ただし書、改正措規等附則1、改正沖縄税特省令附則①)、同日以後に提出する税務関係書類について適用される。

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