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解説記事2021年10月18日 未公開判決事例紹介 マンション販売事業者のもう1つの控訴審判決(1)(2021年10月18日号・№902)

未公開判決事例紹介
マンション販売事業者のもう1つの控訴審判決(1)
東京高裁、消費税の仕入税額控除で国が逆転勝訴


 本誌893号4頁で紹介した消費税更正処分等取消請求控訴事件の判決について、一部仮名処理した上で2回に分けて紹介する。なお、原審の判決は本誌850号に掲載。

○住宅用賃貸部分を含むマンションの購入が「課税売上のみ要する課税仕入れ」あるいは「課税売上と非課税売上に共通して要する課税仕入れ」のいずれに区分されるかが争点となった事件。東京高裁(岩井伸晃裁判長)は令和3年7月29日、各課税仕入れに係る消費税額はその全額が控除対象仕入税額となるとの判断を示したマンション販売事業者(被控訴人)が勝訴した原判決を取り消した(令和2年(行コ)第190号)。現在上告中である。なお、先行する同種の事件の判決は886号参照。

主  文

1 原判決を取り消す。
2 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人の負担とする。

事実及び理由

第1 控訴の趣旨
 主文同旨
第2 事案の概要(略語は、特に断りのない限り、原判決の例による。以下同じ。)
1
 本件は、被控訴人が、平成27年3月期(平成26年4月1日から平成27年3月31日までの課税期間をいい、他の課税期間についても同様に表記する。)から平成29年3月期までの各課税期間(以下「本件各課税期間」という。)における各確定申告(以下「本件各確定申告」という。)において、将来の転売を目的として購入したマンション84棟(以下「本件各マンション」という)に係る課税仕入れ(以下「本件各課税仕入れ」という。)を消費税法(平成31年法律第6号による改正前のもの。特に断りのない限り、以下同じ。)30条2項1号にいう「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」(以下「課税対応課税仕入れ」という。)に区分されるものとし、本件各課税仕入れに係る消費税額の全額を本件各課税期間に係る課税標準額に対する消費税額から控除して申告をしたところ、K税務署長(処分行政庁)から、本件各課税仕入れは同号にいう「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」(以下「共通対応課税仕入れ」という。)に区分されるべきであるから、本件各課税仕入れに係る消費税額の一部しか控除することができないとして、平成30年7月30日付けで本件各課税期間に係る消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)並びにこれらに伴う過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」といい、本件各更正処分と併せて「本件各処分」ともいう。)を受けたことから、本件各課税仕入れは課税対応課税仕入れに区分すべきものであると主張して、本件各更正処分のうち申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求める事案である。
  原審は、本件各課税仕入れは課税資産の譲渡等にのみ要するものとして課税対応課税仕入れに区分するのが相当であるから、本件各課税仕入れに係る消費税額の全額が控除対象仕入税額になるとして、被控訴人の請求を全部認容したところ、控訴人がこれを不服として控訴した。
2 関係法令の定め、前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張は、以下のとおり原判決を補正し、後記3のとおり当審における当事者の主張を付加するほかは、原判決の「事実及び理由」中の第2(以下「原判決第2」という。)の2ないし5(同2及び5の引用に係る原判決別紙2ないし4を含む。)に記載のとおりであるから、これを引用する(以下、補正後の原判決第23(1)以下の前提事実を「前提事実(1)」のようにいう。)。
(1)原判決5頁13行目末尾の次に改行して次のとおり加える。
 「(3)消費税法基本通達等について
ア 消費税法基本通達(平成7年12月25日付け課消2−25(例規))11−2−12は、消費税法30条2項1号に規定する「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」とは、「課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ等をいい、例えば、次に掲げるものの課税仕入れ等がこれに該当する」として、「(1)そのまま他に譲渡される課税資産 (2)課税資産の製造用にのみ消費し、又は使用される原材料、容器、包紙、機械及び装置、工具、器具、備品等 (3)課税資産に係る倉庫料、運送費、広告宣伝費、支払手数料又は支払加工賃等」を掲げており、同通達に係る消費税法基本通達逐条解説は、「個別対応方式により仕入控除税額を計算する場合の課税資産の譲渡等にのみ要するものとは、文字どおり課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ等であって、課税資産の譲渡等を行うために要したものではない。」と解説している(乙2)。
  また、消費税法基本通達11−2−20は、「個別対応方式により仕入れに係る消費税額を計算する場合において、課税仕入れ及び保税地域から引き取った課税貨物を課税資産の譲渡等にのみ要するもの、その他の資産の譲渡等にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものに区分する場合の当該区分は、課税仕入れを行った日又は課税貨物を引き取った日の状況により行うこととなるのであるが、課税仕入れを行った日又は課税貨物を引き取った日において、当該区分が明らかにされていない場合で、その日の属する課税期間の末日までに、当該区分が明らかにされたときは、その明らかにされた区分によって法第30条第2項第1号《個別対応方式による仕入税額控除》の規定を適用することとして差し支えない。」としており、同通達に係る消費税法基本通達逐条解説は、課税仕入れ等についての用途区分は、その課税仕入れ等を行った日の状況により行うことが原則となり、同通達の前段ではそのことを明らかにしているが、課税仕入れ等の時においては、その用途区分が明らかでない場合もままあるところ、課税仕入れ等に係る用途区分が消費税の課税関係に影響するのは、仕入税額控除の計算の結果としての確定申告によってであるから、その課税仕入れ等を行った日の属する課税期間の末日までにその区分が明らかにされた場合には、その区分されたところによって個別対応方式による仕入控除税額の計算を行っても差し支えないとしたものであると解説している(乙2)。
イ 消費税法30条3項の趣旨について、同法の逐条解説書(DHCコンメンタール消費税法。乙24)は、「その課税期間における課税仕入れ等のうち個別対応方式における共通用の課税仕入れ等に係る仕入税額控除の計算において、事業者における事業状況が、その課税仕入れ等のあった課税期間の課税売上割合に必ずしも反映していない場合の存することが考えられるところから、かかる事例に対処するため、課税売上割合よりもより合理的な割合を適用することがその事業者にとって適切であるならば、その合理的な割合を認めることを妥当とする趣旨によるものである。具体的には、個別対応方式を適用する場合において、共通用の課税仕入れ等に係る消費税の控除額の計算をする場合、課税売上割合に準ずる割合(その割合がその事業者の営む事業の種類の異なるごと又はその事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の異なるごとに区分して算出したものである場合には、その区分して算出したそれぞれの割合)で、①その割合がその事業者の営む事業の種類又はその事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるものであること及び②その割合を用いて共通用の課税仕入れ等に係る消費税の額を計算することにつき納税地の所轄税務署長の承認を受けたものであることの要件の全てに該当するものであるときは、その事業者の承認を受けた日の属する課税期間以後の課税期間については、課税売上割合に代えてその承認を受けた割合により仕入税額控除の計算ができるとするものである。」と解説している。
  そして、この課税売上割合に準ずる割合について、消費税法基本通達11−5−7は、「使用人の数又は従事日数の割合、消費又は使用する資産の価額、使用数量、使用面積の割合その他課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものの性質に応ずる合理的な基準により算出した割合をいう」ものとし、同11−5−8は、「課税売上割合に準ずる割合の適用に当たっては、その事業者が行う事業の全部について同一の割合を適用する必要はなく、例えば、次の方法によることもできるのであるから留意する」として、「(1)当該事業者の営む事業の種類の異なるごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法」、「(2)当該事業者の事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類の異なるごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法」及び「(3)当該事業者の事業に係る事業場の単位ごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法」を掲げている(甲72、乙24)。
ウ 平成24年3月に公表された国税庁消費税室作成の「−平成23年6月の消費税法の一部改正関係−「95%ルール」の適用要件の見直しを踏まえた仕入控除税額の計算方法等に関するQ&A[Ⅰ]【基本的な考え方編】(甲74)は、「たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の適用」に関し、たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認については、土地の譲渡が単発のものであり、かつ、当該土地の譲渡がなかったとした場合には事業の実態に変動がないと認められる場合には(たまたま(偶発的に)発生した土地の譲渡が、消費税法30条3項で規定する課税売上割合に準ずる割合の算出方法を採り得ない事情にあることを前提として)、便宜的に当該土地の譲渡があった課税期間の前3年に含まれる課税期間の通算課税売上割合と前課税期間の課税売上割合とのいずれか低い割合を課税売上割合に準ずる割合として承認しても差し支えないものとしており、その理由につき、①土地の販売を事業としていない事業者において、譲渡することを予定していなかった本社用地や工場用地など事業者が事業の用に供するために取得していた土地の譲渡が経営上の事情等によりたまたま発生し、その結果、課税売上割合が急激に減少したような場合には、当該土地の議渡は本来の事業として予定されていなかったものであるから、このような取引まで取り込んで課税売上割合により仕入控除税額の計算を行うことは事業の実態を反映したものといえず、不合理であると考えられること、②たまたま土地の譲渡があった場合には、(a)事業者は土地の販売を事業としていないため、事業の種類の異なるごとの割合は採り得ないこと、(b)土地の譲渡がたまたま行われたものであるため、事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類の異なるごとの割合も採り得ないから、これらの区分により算出することができないと考えられることによるものとしている。」
(2)原判決6頁1行目の「ということがある。)。」の次に「被控訴人のウェブサイト(甲4)によれば、被控訴人グループの収益は、「収益不動産販売事業」(本件事業)と、同社の特徴である個人富裕層に特化した不動産運用のためのサービス提供から発生する「ストック型フィービジネス」の二つから成り立っており、「収益不動産販売事業」では、個人富裕層の投資に適した5億円以下の住居系物件を主に取り扱い、独自の情報ルートを駆使して、首都圏1都3県から物件をピックアップし、これまでの経験をいかして、優れた目利き力でポテンシャルのある物件だけを厳選し、バリューアップを行って個人富裕層に販売すると説明し、「ストック型フィービジネス」では、オーナーに代わって、リーシングやビルマネジメント、賃料回収などの不動産経営管理をトータルで提供するほか、不動産鑑定・デューデリジェンス、不動産活用コンサルティングなど多角的なアセット・コンサルティングを提供すると説明し、更に「ストック型フィービジネス」の収益の中には、被控訴人が中古物件を仕入れた後、販売するまでの間に確保できる賃料収入も含まれており、収益不動産残高の拡充を進め、賃料収入を増加させることで、安定した収益モデルへの転換を図っているとしている。」を加える。
(3)原判決8頁13行目末尾の次に改行して次のとおり加える。
 「(8)ア 株式会社M(以下「M社」という。)は、平成28年11月15日付けで、N税務署長に対し、居住契約が存在する物件で取得時に棚卸資産に計上する物件の建物取得費用を適用範囲とし、居住契約付物件の建物から生じた課税売上高及び非課税売上高の合計額に占める当該課税売上高の占める割合を課税売上割合に準ずる割合として、課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請を行ったところ、同年12月27日、N税務署長から、①当該準ずる割合を適用する範囲について、同一の種類の費用のうち、適用しようとする課税期間内に譲渡した居住契約付物件の建物に係る費用のみを対象としていること、②当該準ずる割合を適用する範囲について、各営業部において営む不動産販売等の業務のうち、居住契約付物件に係る業務のみを対象としていること、③当該準ずる割合は、適用しようとする課税期間における居住契約付物件の建物から生じた課税売上高及び非課税売上高により計算されるものではないこと、④当該準ずる割合は、居住契約付物件の建物の売却価額が一定ではなく、また、継続反復して売却されるものではないため、消費税法30条6項に規定する課税売上割合よりも合理的なものであるとは認められないとして、当該承認申請を却下された(以下「M社当初承認申請却下処分」という。甲77)。
 イ また、M社以外の同業者(以下「別同業他社」という。)は、平成26年7月23日付けで、S税務署長に対し、居住契約が存在する物件又は居住契約が予定されている物件で取得時に棚卸資産に計上する物件の建物に係る取得費用及び当該建物に係る改修費等を適用範囲とし、居住契約付物件の建物から生じた直近3か年分通算の課税売上高及び非課税売上高の合計額のうち、当該課税売上高の占める割合を課税売上割合に準ずる割合として、課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請を行ったところ、同年11月26日、S税務署長から、①当該準ずる割合を適用する範囲について、同一の種類の費用のうち、居住契約付物件の建物に係る費用のみを対象としていること、②当該準ずる割合を適用する範囲について、各事業部において営む居住契約付物件に係る業務及び不動産販売等の業務のうち、居住契約付物件に係る業務のみを対象としていること、③当該準ずる割合は、適用しようとする課税期間における居住契約付物件の建物から生ずる課税売上高及び非課税売上高により計算されるものではないこと、④当該準ずる割合は、居住契約付物件の建物の売却価額が一定ではなく、また、継続反復して売却されるものではないため、大きく変動することから、消費税法30条6項に規定する課税売上割合より合理的なものであるとは認められないとして、当該承認申請を却下された(甲78)。
 ウ 一方、オフィスビル及び居住契約付マンション(住宅用)の物件を購入してバリューアップ後に転売する業者が平成26年5月19日付けで作成したとされる資料(甲79)には、居住契約のある建物(まだ居住契約はないが将来居住契約を締結する予定のものも含む。)の課税仕入れについては、将来売却予定(課税収入)であるが、一部賃貸の用に供している(非課税収入)ため、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ(共通対応課税仕入れ)として消費税法上処理しているところ、上記の共通対応課税仕入れに乗ずる課税売上割合が、実際の事業内容等の課税売上割合と著しくかい離している状況になっているとして、課税売上割合に代えて課税売上割合に準ずる割合の適用を検討することにより、事業内容等の実態を反映した合理的な割合による仕入れに係る消費税の算定を検討しており、具体的には、販売目的資産である居住契約付物件ごとの収入を一定の基準を基にグルーピングすることにより事業内容に即した課税売上割合(課税売上割合に準ずる割合)を算定することが可能であり、直近3か年の実績を通算することにより著しい変動を回避し、恣意性の介入を除外することもできると記載されている。
 エ M社は、平成29年12月27日、平成25年12月期ないし平成27年12月期の各課税期間について消費税等の更正処分及び加算税の賦課決定処分を受けたことを不服として、東京地方裁判所に上記各処分の取消しを求める訴えを提起する一方(以下「別件訴訟」という。)、その訴訟係属中の平成30年11月19日、N税務署長に対し、平成28年に申請した課税売上割合に準ずる割合の算定方法とは異なる算定方法の承認を申請したところ、同年12月26日、同署長から同申請を承認する旨の通知を受けた。M社は、同日、関係者に対し、これらの経緯を告知するとともに、同年12月期以降の消費税の仕入控除税額の計算においては、課税売上割合に代えて、承認を受けた算定方法により算定される課税売上割合に準ずる割合を適用することとなり、その結果、納付すべき消費税等の額は減少する見込みである旨を告知した(甲88)。
 オ 被控訴人は、平成30年12月14日に本件訴訟を提起した後の平成31年2月27日、K税務署長に対し、消費税法30条3項2号に規定する課税売上割合に準ずる割合の適用の承認を受けたいとして、課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書を提出した(乙26の1)。被控訴人は、同申請書において、採用しようとする計算方法(課税期間中の住宅用賃貸部分を含む販売用建物に関する全売上高に基づき算出する方法)により算出した平成30年3月期の課税売上割合に準ずる割合を92.29パーセントとしていたが、同年3月18日に改めて提出した訂正後の適用承認申請書においては、上記の計算方法上、住宅用賃貸部分を含まないオフィスビル等に係る売上高については集計から除外すべきであったがこれを集計に含めてしまっていたとして、上記の準ずる割合を91.58パーセントに訂正した(乙26の1)。この91.58パーセントの割合は、①平成29年度(平成30年3月期)における建物売上高及び②同年度における課税売上げ(賃料収入)の合計額を上記①及び②並びに③同年度における非課税売上げ(賃料収入)の合計額で除するという算定方法により算出されたものであった(以下、上記の割合を「本件準ずる割合」という。)。
   K税務署長は、同月28日、適用開始日を平成30年4月1日として、被控訴人の申請(平成30年3月期の課税売上割合に準ずる割合を本件準ずる割合とするもの及びその算定方法)を承認した(乙26の2)。
 (9)令和2年度の税制改正において、居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除制度等の適正化を図るための消費税法の改正が行われ、令和2年法律第8号による改正後の消費税法においては、居住用賃貸建物(住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物であって、高額特定資産(12条の4第1項)又は調整対象自己建設高額資産(同条2項)に該当する建物)に係る課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除制度の適用を認めないこととされ(30条10項)、その結果、課税仕入れの時点で住宅の貸付けの用に供するか否かが不明な建物についても、住宅の貸付けの用に供する可能性のあるものについては、原則として居住用賃貸建物に該当することとなり、①事業者が、仕入税額控除制度を適用しないこととされた居住用賃貸建物について、居住用賃貸建物の仕入れ等の日から同日の属する課税期間の初日以降3年を経過する日の属する課税期間の末日までの間(以下「調整期間」という。)に、その居住用賃貸建物を住宅の貸付け以外の貸付けの用に供した場合であって、その居住用賃貸建物を第3年度の課税期間の末日に有している場合には、当該居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額に課税賃貸割合(調整期間内に行った当該居住用賃貸建物の課税賃貸用の貸付けの額の合計額/調整期間内に行った当該居住用賃貸建物の貸付けの額の合計額)を乗じて計算した金額に相当する消費税額を、第3年度の課税仕入れ期間の仕入れに係る消費税額に加算することとされ、②事業者が、仕入税額控除制度を適用しないこととされた居住用賃貸建物について、その全部又は一部を居住用賃貸建物の仕入れ等の日から同日の属する課税期間の初日以降3年を経過する日の属する課税期間の末日までの間に、他の者に譲渡した場合には、その譲渡をした居住用賃貸建物に係る課税仕入れ等の税額に課税譲渡等割合((譲渡した日までに行った当該居住用賃貸建物の課税賃貸用の貸付けの額の合計額+当該居住用賃貸建物の譲渡の額)/(譲渡した日までに行った当該居住用賃貸建物の貸付けの額の合計額+当該居住用賃貸建物の議渡の額))を乗じて計算した金額に相当する消費税額を、譲渡をした日の属する課税期間の仕入れに係る消費税額に加算することとされた(甲105)。」
(4)原判決8頁20行目の「国税通則法65条4項」の次に「(平成28年法律第15号による改正後は同項1号。以下、同改正の前後を通じて「国税通則法65条4項」という。)」を加える。
3 当審における当事者の主張
 争点(1)(本件各課税仕入れの用途区分)について
(控訴人の主張)
(1)用途区分の判定基準について

 消費税に係る税負担の累積をいかに実現するかについては立法政策に委ねられているところ、消費税法30条が規定する仕入税額控除制度の仕組みは、納税者である事業者が同条1項ないし3項の規定する各算出方法を適切に使い分けることにより、その事務負担にも配慮しつつ、具体的な事業状況に即した税負担の累積の排除を適正・公平に実現することを可能とする合理的なものといえる。
 特に、個別対応方式における共通対応課税仕入れに係る消費税額に課税売上割合を乗じて計算した金額(以下「共通対応課税仕入控除税額」という。)の計算方法については、課税売上割合という合理的な割合を用いる方法(消費税法30条2項1号ロ)と、事業者における事業状況に照らして課税売上割合よりも合理的な割合がある場合には、その割合を課税売上割合に準ずる割合として事業者の申請と所轄税務署長の承認に基づき用いる方法(同条3項)とを設けており、事業者がその事業の状況に即して税負担の累積の排除を適正・公平に実現することを可能とする合理的な仕組みが設けられている。個別対応方式における共通対応課税仕入控除税額の計算方法の仕組みの下では、同条2項1号ロの課税売上割合を用いて計算する場合とは、事業者が課税売上割合に準ずる割合を用いる旨の申請をしない場合、又は事業者が申請した割合が課税売上割合よりも事業状況に即した合理的なものとは認められない場合ということになり、いずれの場合についても、課税売上割合を用いて計算することに合理性があるということができる。
 また、個別対応方式による控除対象仕入税額を計算する場合には、課税仕入れを課税対応課税仕入れ、非課税対応課税仕入れ又は共通対応課税仕入れのいずれかに区分する必要があるところ、消費税法30条2項1号が各区分についていずれも「要するもの」と規定し、「要したもの」と規定していないこと、また、課税仕入れに係る消費税額は、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から控除することとされていることからすれば、個別対応方式による用途区分の判定は、その後に実際に行われた資産の譲渡等の内容に応じて行われるものではなく、飽くまで課税仕入れを行った日の状況に基づいて行われるべきものである。そして、①仕入税額控除の趣旨からすれば、本来控除対象とされるべき仕入税額は、課税資産の譲渡等に対応するもの又は部分であり、控除対象とされるべきでない仕入税額は、その他の資産の譲渡に対応するもの又は部分であること、②消費税法30条2項1号が、課税対応課税仕入れにつき「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」、非課税対応課税仕入れにつき「課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(以下この号において「その他の資産の譲渡等」という。)にのみ要するもの」とそれぞれ限定的に規定し、これと並列して、共通対応課税仕入れにつき「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」と規定していること、③税負担の累積の排除をいかに実現するかについては立法政策に委ねられているところ、消費税法30条の定める仕入税額控除制度の仕組みは、事業者の事業状況に即し、共通仕入税額控除額についても課税売上割合又は課税売上割合に準ずる割合を用いることによって課税資産の譲渡等に対応する部分の金額がいずれにしても合理的に算出され、税負担の累積の排除を適正・公平に実現する内容となっていることからすると、同条2項1号の定める課税対応課税仕入れとは、同号の文言に即し、当該課税仕入れにつき将来課税売上げを生ずる取引のみが客観的に見込まれている課税仕入れのみを、非課税対応課税仕入れとは、当該課税仕入れにつき将来非課税売上げを生ずる取引のみが客観的に見込まれる課税仕入れのみをいい、当該課税仕入れにつき将来課税売上げを生ずる取引と非課税売上げを生ずる取引の双方が客観的に見込まれる課税仕入れについては、全て共通対応課税仕入れに区分されると解するのが相当である。
 消費税法30条2項1号の文言を離れて、殊更に共通対応課税仕入れを限定的に解釈し、課税対応課税仕入れを拡大的に解釈した上で、本件各課税仕入れが課税対応課税仕入れに該当すると判断することは、税負担の累積排除の適正・公平な実現を図る同条の趣旨及び構造に反し許されない。消費税法は、課税仕入れに係る消費税額について税負担の累積を招くものとそうでないものとに適正に配分するという観点につき、用途区分の解釈適用によって担保するのではなく、その割合を課税売上割合又は課税売上割合よりも事業状況に即して合理的と認められる課税売上割合に準ずる割合のいずれかを用いることによって担保する仕組みを採用していることは明らかである。課税期間中の共通対応課税仕入れに対応する資産の譲渡等による売上げ全体のうちに課税資産の譲渡等による売上げの占める割合(後記第33(1)アの共通対応課税仕入れ課税売上割合)と比して課税売上割合が低い場合など、事業者による事業状況が当該課税期間の課税売上割合に反映されていない場合には、仕入税額控除制度の仕組み上、消費税法30条3項に定める課税売上割合に準ずる割合を選択することで解消することが想定されているのであり、それにより税負担の累積排除の適正・公平な実現を図ることができる。
 控訴人は、個別対応方式による場合の用途区分の判定基準について、単に課税売上割合に準ずる割合の制度があることをのみを根拠として主張するのではなく、仕入税額控除の制度趣旨、消費税法30条2項1号の文理、消費税法の定める仕入税額控除制度の仕組み等を踏まえて主張している。被控訴人は、本件各課税期間を通じて課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請すらすることなく、本件各課税仕入れを課税対応課税仕入れに区分し、平成29年3月期の末日から約2年後の平成31年2月26日に至って初めて課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請をしたものであるから、本件各課税期間において、あるべき消費税額に係る控除対象仕入税額と被控訴人の低い各課税売上割合に起因する低い控除対象仕入税額との間のギャップ(以下「本件ギャップ」という。)の問題が解消されていなかったとしても、申告納税方式の下で、課税売上割合に準ずる割合を用いることを選択せず、その適用承認申請をしなかった結果にすぎない。その間において、被控訴人が、課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請を仮に行ったとしても却下されるという判断にしかおよそなり得ないと考えていたことを裏付ける客観的な資料は存せず、本件各課税期間中、課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請をすることを検討することなく、本件各課税仕入れを課税対応課税仕入れに区分していたことがうかがわれる。M社及び別同業他社に対する各承認申請却下処分は、各申請当時に認められた種々の事実関係や事情を踏まえ、所轄行政庁において当該各申請に係る割合(計算方法)が当該事業者の営む事業の種類又は費用の種類に応じて合理的に算定されるものであるかを総合考慮して個別に判断されたものであるから、M社及び別同業他社に対する各承認申請却下処分の存在から直ちに本件各課税期間の当時に課税庁において組織的に被控訴人の主張する解釈及びその執行が採用されたとの結論が導かれるものではない。仮に、本件各課税期間の当時、被控訴人の主張する課税庁の解釈及びその執行が存在していたとしても、被控訴人としては、本件各課税期間中に、所轄税務署長に対し、平成31年3月13日に承認された申請と同内容の申請を行い、消費税法30条3項の解釈適用を誤った承認却下処分がされた場合には、当該却下処分の取消訴訟を提起することによって、当該処分の是正を求めることができたものであり、特定の時期における課税庁の法律の解釈適用の誤りをもって、その当時の消費税法が課税売上割合に準ずる割合の承認により本件ギャップの問題を解決することを予定していなかったとの結論が導かれるものではない。
 さらに、令和2年度の税制改正後(令和2年法律第8号による改正後)の消費税法の規定は、本件各課税期間に適用されるものではない上、課税対応課税仕入れに当たるか否かの解釈を変えるものではないから、その存在は本件の争点に関する判断に影響を及ぼすものではない。
(2)本件各課税仕入れの用途区分について
 被控訴人の本件事業におけるビジネスモデル(本件ビジネスモデル)の下では、本件各課税仕入れについては、本件各仕入日において、将来、住宅の貸付けによる賃料収入という非課税売上げが見込まれるとともに、本件各マンションの売却により課税売上げも見込まれることから、消費税30条2項1号に規定する「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」(課税対応課税仕入れ)及び「課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(以下この号において「その他の資産の譲渡等」という。)にのみ要するもの」(非課税対応課税仕入れ)のいずれにも該当せず、「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通するもの」(共通対応課税仕入れ)に該当することが明らかである。そして、被控訴人は、本件各課税仕入れにつき、本件各課税期間において課税売上割合に代えて課税売上割合に準ずる割合を用いて共通対応課税仕入控除税額を計算することの承認申請をせず、所轄税務署長から消費税法30条3項2号の承認を受けていないことから、本件各課税仕入れに係る共通対応課税仕入控除税額の計算に当たっては、同条2項1号ロにより被控訴人の本件各課税期間における課税売上割合を用いることになる。
(被控訴人の主張)
(1)用途区分の判定基準について

 消費税法30条の文言及び課税売上割合に準ずる割合の趣旨並びに最高裁判例(最高裁平成28年(行ヒ)第224号同29年10月24日第三小法廷判決・民集71巻8号1522頁(以下「平成29年最高裁判決」という。)は、租税法の分野において、先決問題と後続問題の関係につき、先決問題の解釈が後続問題に係る規定の存在によって影響されることがない旨を判示している。)に照らせば、消費税法30条3項の規定があるからといって、用途区分の判定は将来課税又は売上げを生ずる取引が客観的に見込まれているか否かのみを基準として行うのが消費税法の仕組みであるとはいえない。
 M社及び別同業他社に対する承認申請却下処分の事例等(甲77ないし79)に表れた本件各課税期間の当時における課税庁の解釈及びその執行並びに課税庁が公表していた課税売上割合に準ずる割合に関する解釈等に照らして検討しても、本件各課税期間の当時において、本件準ずる割合及びその算定方法をもってしては、被控訴人が消費税法30条3項に基づく課税庁の承認を得ることはおよそ不可能であった。すなわち、本件各課税期間の当時に課税庁が公表していた解釈等についてみると、(a)消費税法基本通達11−5−8(1)は、「当該事業者の営む事業の種類の異なるごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法」が認められることを示しているが、収益不動産の販売に関する被控訴人の事業の種類としては、収益不動産販売事業という一つの事業しか存せず、また、同通達には「当該事業者の営む事業の種類の異なるごと」にいう事業の種類を更に販売される資産の内容に応じて細分化することが許される旨の定めはなく、同(2)は、「当該事業者の事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類の異なるごとにそれぞれ異なる課税売上割合に準ずる割合を適用する方法」を認めているが、被控訴人には、棚卸資産である収益不動産物件の購入費用という一つの種類の費用しかなく、その中に「居住用収益不動産物件の購入費用」や「事業用収益不動産物件の購入費用」という種類の費用は存せず、また、売上原価である棚卸資産の購入費用が課税売上割合に準ずる割合との関係で「費用」に含まれる旨を述べた課税庁による解釈は、本件各課税期間の当時において存在しない。また、(b)消費税法基本通達11−5−7において、課税売上割合に準ずる割合の計算に用いることのできる具体的な要素としては、課税売上割合の計算式に係る消費税法上の数値(課税売上げ及び非課税売上げ)とは全く無関係に、従業員の数又は従事日数、床面積や取引件数といった外形的事実から恣意を挟む余地がなく事前に区分することが可能となる事業状況を示す要素のみが想定されているところ、本件準ずる割合の算定方法は、居住用物件についての課税売上割合の計算式に係る消費税法上の数値(課税売上げ及び非課税売上げ)それ自体から、土地の売上げ(非課税売上げ)のみを分母から除外しただけに等しいもので、このような計算方法は、本件各課税期間の当時において課税庁が公表していた通達等から読み取れる課税売上割合に準ずる割合の指標とは異質なものである。そして、(c)課税庁は「たまたま土地の譲渡があった場合」、土地の譲渡がなかった過去の課税期間の課税売上割合を代替的に用いることで、その土地の譲渡があった課税期間内における課税売上割合の計算において、非課税売上げである土地の譲渡の対価を課税売上割合の計算上の分母から除外することと実質的に等しい扱いをすることを認めているが(甲74)、これは飽くまでも便宜的に差し支えないとする取扱いであるとしており、課税売上割合に準ずる割合に関する課税庁の解釈及びその執行に照らせば、本来承認される場合に該当しないにもかかわらず、これを承認するという意味と解されるところ、本件準ずる割合及びその算定方法は、たまたま土地の譲渡があった場合でさえ便宜的に差し支えないとして認められるにすぎない取扱いを恒常的に得ようとするものにほかならないから、被控訴人が本件各課税期間の当時において承認申請をするということはおよそ考えられない。さらに、(d)M社当初承認申請却下処分を受けて、税務実務の専門出版物である「ニュースPRO」は、平成30年11月13日付けで「この却下理由を見る限り、土地を除いて計算した「課税売上割合に準ずる割合」の適用承認申請を行っても、これが課税当局に承認される可能性は極めて低いと言えそうだ。」とし(甲82、83)、「週間T&A master」も同年12月3日付け765号において、「課税売上割合に準ずる割合」は同一種類の費用のうち特定の費用のみに適用することは認められず、居住契約付物件の建物から生じた課税売上高及び非課税売上高のみから「課税売上割合に準ずる割合」を計算することも、さらに売買価額が変動すること等により変動するものを「課税売上割合に準ずる割合」の計算に組み込むことも認められないとされたとし(甲84)、収益不動産販売事業の税務に精通した税理士も、同様の見解を明らかにしている(甲85)。
 さらにいえば、本件ギャップのような問題を課税売上割合に準ずる割合の適用の承認によって解決することはおよそ不可能である。本件ギャップの問題のように、課税売上割合に準ずる割合の適用の承認によって解決することがおよそ不可能であってそのような解決がおよそ消費税法上も予定されていない問題が存在すること自体、消費税法が税負担の累積排除の不全の解消を専ら課税売上割合に準ずる割合の適用に依拠していないことの証左といえる。被控訴人が本件準ずる割合の適用承認申請を行ったのは、飽くまで本件訴訟における被控訴人の立場を主位的には維持しつつ、被控訴人にとって無用な税負担に係る経済的損失を最小限に食い止めるための他の有効な選択肢が存在しない中での予備的なものであり、課税庁がこれを承認したのは、本件各課税期間のはるか後において突如として立場を変遷させたことによるもので、M社に係る別件訴訟及び本件訴訟の訴訟追行上の政策的考慮以外にはおよそ想定できないものである。
 税負担の累積の排除は、消費税の計算の基本であり、本質的な要素であるから(甲101、102)、消費税制度の立法趣旨を踏まえた法解釈が求められるところ、仮に控訴人が主張する用途区分の判定基準に基づいて本件各課税仕入れの用途区分を共通対応課税仕入れに区分するとすれば、本件各課税仕入れは、本件各マンションの建物部分の販売に必要なものはもとより、その本件各マンションの賃料収入にも必要であるとともに、(本件各課税売上割合の算出に当たって土地部分の販売価格が分母に含まれることを通じて)本件各マンションの土地部分の販売にも必要であると判断することに結果として等しく、本件各課税仕入れの64%ないし66%を無視することになる。その結果、被控訴人の下で創出された付加価値を超えて消費税が課税されることになり、税負担の累積を考慮する必要があることが明らかな部分についてまで控除を否認する点で、仕入税額控除の原則的な考え方に反するものである。このような事態が生ずるのは、消費税の計算の基本であり本質的な要素でもある税負担の累積の排除という消費税法の目的や適正配分の観点を無視し、用途区分について、客観的に見込まれているか否かという極めて形式的かつ画一的ないし一般的かつ抽象的な判断基準で判断し、本件各課税仕入れの用途区分を共通対応課税仕入れに区分するからである。
 控訴人は、本件各課税仕入れにおいて、非課税売上げを生ずる取引すなわち本件各マンションの賃料収入が生ずることが客観的に見込まれているか否かのみを基準に判断しており、これは、消費税法30条2項1号にいう課税資産の譲渡等又は非課税資産の譲渡等「に要する」課税仕入れとの文言を、課税資産の譲渡等又は非課税資産の譲渡等「が客観的に見込まれている」場合の課税仕入れをいうと解釈していることになるが、消費税法基本通達11−2−12によれば、「課税資産の譲渡等にのみ要するもの」は「課税資産の譲渡等を行うためにのみ必要な課税仕入れ等」をいうものとされており、「行うために」との表現を素直に解すれば、行為の目的を意味すると解するほかない。そして、課税仕入れの目的というものを忠実に解釈しようとすれば、①他の収入の得られる過程や位置付け、②他の収入が得られることが課税仕入れ等やこれに対応する取引にどのような影響を及ぼしているか、③全体の収入のうちに他の収入の見込額が占める割合などの事業者の経済活動に関する個別事情を踏まえて判断するのが相当である。また、消費税法30条2項1号の文言は、「課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するもの」であり、課税仕入れが「課税資産の譲渡等」のみならず「その他の資産の譲渡等」にも要すると積極的に認められることが要件とされており、課税対応仕入れに該当しない課税仕入れがすべからく共通対応課税仕入れに該当するとは規定されていない。
 さらに、令和2年度の税制改正により、販売用の居住用収益不動産の取得に係る消費税額の仕入税額控除の仕組みが改正され(甲105)、本件訴訟の争点は既に消滅したので、本件訴訟における判断が今後の課税実務に影響を与えることはないから、本件の事案については個別事案に応じた適正・妥当な解決が図られるべきである。
(2)本件各課税仕入れの用途区分について
 本件各課税仕入れは、本件各マンションの販売を専ら主眼として行われたものであって、本件各マンションの賃貸は、専らその販売の手段(つまりバリューアップ)として行われたものと評価すべきことは、通常の合理的な経験則をもって事実を認定評価すれば明らかというべきである。そうすると、消費税法上の税負担の累積の排除という趣旨から被控訴人に課されるべき消費税額は、本件各マンションの建物部分の販売の対価と仕入れの対価の差額、すなわち被控訴人の下で創出された付加価値に相当する額に対する消費税額であるべきことは明らかというべきである。

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