閲覧履歴

最近閲覧した商品

最近閲覧した記事

解説記事2022年01月10日 SCOPE サンリオ、タックス・ヘイブン税制の書面添付漏れで再び敗訴(2022年1月10日号・№913)

高裁も主たる事業が「著作権の提供」か示さず
サンリオ、タックス・ヘイブン税制の書面添付漏れで再び敗訴


 株式会社サンリオの香港子会社がタックス・ヘイブン対策税制の適用除外要件(事業基準)を満たすか否かが争われている裁判では、一審で東京地裁が、香港子会社の主たる事業が「著作権の提供」に該当するか否かという注目の争点については判断を示さず、原告が確定申告書に適用除外記載書面を添付しなかったことから適用除外規定の適用を受けることができないとの判断を下していたが(本誌878号40頁参照)、令和3年11月24日、東京高裁第15民事部も一審同様に香港子会社の主たる事業についての判断を示さず、適用除外記載書面の添付漏れを理由に原処分を適法とした原判決を支持し、納税者の控訴を棄却した。

東京高裁も、適用除外記載書面の添付は適用除外規定の要件と判示

 キャラクター商品等の企画・販売等を行う(株)サンリオは、処分行政庁から、同社の香港子会社2社の主たる事業が「著作権の提供」に該当し、外国子会社合算税制(タックス・ヘイブン対策税制)の適用除外規定の要件の一つである事業基準を満たさず合算課税されるべきとして法人税等の更正処分を受けたことから訴訟を提起していた。
 本件について国税不服審判所は、デンソー事件最高裁判決で示された規範を採用し、「それぞれの事業活動によって得られた収入金額又は所得金額、事業活動に要する使用人の数、事務所の状況等を総合的に勘案して判定すると」、本件各香港子会社は「著作権の提供を主たる事業としている」と判断していた。
 しかし、一審の東京地裁は、本件各香港子会社の主たる事業が「著作権の提供」に該当するか否かという注目の争点については判断を示さず、原告が確定申告書に適用除外記載書面を添付しなかったことから、適用除外規定の適用を受けることができないとして、課税処分の取消しを求めた原告の請求を棄却した。
 そのため、控訴審が本件各香港子会社の主たる事業についてどのような判断を下すのか、あるいは再び判断を避けるのかが注目されていたが、東京高裁も、控訴審における納税者の主張に対する判断を加えた(参照)ほかは、ほぼ原判決を引用し、一審同様、本件各香港子会社の主たる事業についての判断を示さなかった。

【表】

争点2 原告は、本件法人税等の確定申告書に適用除外記載書面を添付していなくても、本件各適用除外規定の適用を受けられるか
納税者の主張  措置法66条の6第7項及び措置法68条の90第7項は、単なる手続規定にすぎず、納税者が確定申告書に適用除外記載書面を添付しなければ本件各適用除外規定の適用を受けることができないと解することは、本件適用除外要件の位置付けと矛盾し、日港租税条約に実質的にも違反する、適用除外記載書面を添付しただけでは、情報量の観点からしても、本件適用除外要件該当性を確定的に判断するための根拠とはなり得ない。 東京高裁の判断  同項の文言及びその規定の趣旨によれば、適用除外記載書面の添付が本件各適用除外規定の適用要件と解されることは明らかである。
 また、本件各適用除外規定の適用を受けるために確定申告書への適用除外記載書面の添付という手続的要件を定めることが実体的に国際的な二重課税防止を目的とする日港租税条約に実質的に違反するということはできない。
 さらに、措置法66条の6第1項に掲げる内国法人又は措置法68条の90第1項に掲げる連結法人に確定申告書に適用除外記載書面を添付させることによって、当該内国法人又は連結法人に本件各適用除外規定の適用を受ける旨の意思を明らかにさせ、当該内国法人又は連結法人に本件各適用除外規定の適用のあることを明らかにする書類その他の資料の保存を義務付けることと相まって課税庁が本件適用除外要件該当性の判断となる資料を当該内国法人から早期かつ確実に収集し、本件各適用除外要件について適切かつ迅速に判断することが可能になるのであり、適用除外記載書面に本件適用除外要件の該当性を明らかにする記載などが法令上要求されていないとしても、適用除外書面の確定申告書への添付が本件各適用除外規定の適用要件であると解する妨げとはならない。
争点4 本件各香港子会社について措置法66条の6第1項及び措置法68条の90第1項が適用されるとして、本件各香港子会社が納付した外国法人税の額について、外国税額控除が適用されるか
納税者の主張  外国子会社合算税制の適用による二重課税の排除という機会を、確定申告書等に明細書を添付していないという形式的な理由のみで納税者から安易に奪うような法解釈は許されない、控訴人が、当初から、本件各香港子会社について本件適用除外要件の適用があることを前提としていたのであるから、確定申告書等に明細書を添付することはあり得ない。 東京高裁の判断  法人税法69条15項及び同法81条の15第9項の文言等に鑑みれば、これらの規定は、外国税額控除を受けるための要件を定めたことが明らかである。また、控訴人の不利益は、本件各香港子会社について本件適用除外要件に該当すると判断して本件各適用除外要件の適用を求めるか、本件各香港子会社について本件適用除外要件に該当しないと判断して外国税額控除の適用を求めるかを決定しなければならないという事実上のものにすぎず、前者を求めるとした場合でも、課税庁に本件各香港子会社について本件適用除外要件に該当しないと判断される場合に備えて確定申告書等に明細書を添付することも考えられること、外国税額控除制度が適用された場合にも内国法人が納税した金額が全額控除になるものではない上、税額控除がされない場合にも外国法人税額を損金算入することにより二重課税の調整をする方法もあることなどに鑑みれば、外国子会社合算制度の適用を受ける場合に必ず外国子会社が納付した税額を控除しなければならないという関係にあるものとは認められず、外国税額控除規定について明文の規定と異なる解釈をする必要があるともいえない。

 サンリオ側は、適用除外書面の添付が適用除外規定の適用を受けるための要件であるとした原判決に対し、適用除外書面の添付は手続規定にすぎないなどと反論し、また、予備的に、仮に外国子会社合算税制が適用されるならば、外国税額控除が適用されるべきとも主張したが、これらの主張は控訴審においてもすべて斥けられた。
 産業界は以前から、コンテンツビジネスを展開する海外子会社が、マーケティングやサポート活動を行っている場合においても、法令の機械的な解釈により「著作権を用いた事業」として一律合算となるのではないかという懸念を示しており、その懸念を払拭する一定の指針となり得る裁判所の判断を期待していただけに、控訴審でもこの点について何ら触れられなかったことに失望の声が広がっている。

当ページの閲覧には、
週刊T&Amasterのご購読契約が必要です。

週刊T&Amaster年間購読

お申し込み

T&Amaster の
お客様No.登録が未登録の方

お客様No.の登録

試読申し込みをいただくと、「【電子版】T&Amaster最新号1冊」と当データベースが2週間無料でお試しいただけます。

週刊T&Amaster無料試読申し込みはこちら

  • footer_購読者専用ダウンロードサービス
  • footer_法苑WEB
  • footer_裁判官検索