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解説記事2022年01月17日 SCOPE 税理士に相続財産伝えず、“特段の行動”に該当するか(2022年1月17日号・№914)

取消裁決と棄却裁決との分岐点
税理士に相続財産伝えず、“特段の行動”に該当するか


 重加算税が課されるには、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為の存在が常に必要になるわけではなく、納税者が、当初から無申告又は過少申告であることを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づき期限内申告書を提出しなかった又は過少申告をした場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解されている。相続関係の裁決では、税理士に相続財産の有無を伝えたかどうかが1つの争点になることが多い。審判所は、納税者が税理士に相続財産の存在を伝えなかったからといってすぐに隠蔽・仮装と判断するわけではなく、事実について詳しく調べた上で判断を行っている。本誌900号4頁では、「相続税関係における最新の重加算税取消裁決」と題し、税理士への相続財産の有無の伝達に関するものも含め、重加算税が取り消された裁決事例を4件紹介しているが、今回のスコープでは、納税者の請求が棄却された裁決事例を紹介する。

税理士からの再三の確認に対して存在を秘匿

 本件は、請求人が調査による指摘を受けて相続税の修正申告をしたところ、原処分庁が被相続人(母)名義の普通預金を申告していなかったことについて「隠蔽し又は仮装し」に該当する事実があるとして重加算税の賦課決定処分をしたもの(東裁(諸)令2第59号)。請求人は、金融機関に預金は相続税の納税資金と答えており、実際に預金を原資とした請求人名義の定期預金を解約して納税をしていることからも、当初から相続財産を過少に申告することを意図したものではないとしたほか、税理士には預金の説明をしたものと思っていたと主張した(参照)。

【表】当事者の主な主張

原処分庁 請求人
 請求人には、以下のとおり、通則法68条1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実があった。
(1)請求人は、預金の存在を把握し、相続税の課税財産として申告する必要性を認識していたにもかかわらず、税理士に申告に必要な他の書類を交付する際にあえて預金に係る資料を交付せず、預金を課税財産として申告しなかったのであるから、当初から相続財産を過少に申告することを意図していた。
(2)請求人は、①税理士から被相続人名義の預金に係る資料を全て提出するように言われて、平成29年7月24日に税理士法人の事務所に申告書の作成に必要な資料として通帳等を持参し、また、②平成30年2月2日又は同月6日には、税理士から申告書の原案の内容について説明を受けており、少なくとも2回は税理士に預金の存在を伝える機会があった。
 請求人には、以下のとおり、通則法68条1項に規定する「隠蔽し、又は仮装し」に該当する事実はなかった。
(1)請求人は、金融機関に赴いて預金の解約手続をした際、その解約金の使途について尋ねられたときに、相続税の納税資金と答え、実際に預金を原資とした請求人名義の定期預金を解約して納税をしていることからも、当初から相続財産を過少に申告することを意図していたものではない。
(2)請求人は、平成29年7月24日に税理士を訪問し、持参した相続税の資料についての説明をしたが、主な訪問の目的は、経営する会社の決算説明を受けることにあり、多くの時間を決算内容の説明、会社の現状や今後の見通しなどの話に費やし、また色々な話をしたので、そこで預金についての説明もしたものと思っていた。

 審判所は、請求人は父の相続に係る相続税の申告を経験し、被相続人(母)の預貯金が相続財産として申告が必要なものであることは十分に認識し、自ら金融機関に確認し、預金があることを把握したのであるから、この時点で預金が被相続人の相続財産として申告が必要な財産であることを認識していたといえるとした。
 その上で審判所は、請求人は①相続税申告に係る金融機関等の資料を税理士に交付した際に、本件預金に係る資料を交付していない、②資料の提出のない金融機関について預金の有無を確認するように税理士から求められた際にも、既に預金を把握していることを告げていない、③税理士から本件金融機関の預金の有無を尋ねられたことに対し、「確認したがなかった」旨の回答をしている、④税理士から相続財産の記載漏れがないか確認を受けた際にも、本件預金の記載漏れを指摘していないなど、預金が申告に必要な相続財産であることを認識しながら、税理士からの再三の確認に対して、何度も預金の存在を申し出る機会があったにもかかわらず、あえて繰り返し預金の存在を秘匿したといえ、当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をしたものと認められると判断した。
 また、請求人は、預金は税理士に報告したつもりであえて申告から除外する意図はなかったと主張したが、審判所は、請求人が仮に税理士に対して預金の報告をしたと誤認していたのであれば、税理士から本件金融機関の名称を挙げて預金の有無を尋ねられた際に報告することが自然であるとして請求人の主張には理由がないとした。

税理士に相続財産の存在と伝えずとも重加算税を取り消し
 本誌900号掲載の「相続税関係における最新の重加算税取消裁決」で紹介した1つ目の裁決(関裁(諸)令2第13号)は、被相続人の死亡により取得した共済金の申告漏れが重加算税の賦課要件を満たすかどうか争われたもの。請求人は、共済金が振り込まれてから相続税の納付を行う過程で共済金を意識する機会があったにもかかわらず、税理士にその存在を一切伝えていなかったが、審判所は、税理士は関係資料等の提出時や申告書の作成時に請求人に対して具体的な確認等をしていなかったことなどから、重加算税の賦課決定処分を取り消している。
 また、2つ目の裁決(東裁(諸)令2第65号)は、死亡保険金の1つを申告しなかったため、重加算税が賦課された事案だ。請求人は、死亡保険金について税理士にその存在を伝えていなかったが、相続税の課税の対象とはならないものと誤解したものと認定され、重加算税の賦課決定処分は取り消されている。

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