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解説記事2022年02月14日 SCOPE バークレイズ銀行、社債利子に係る実質所得者争う裁判で勝訴(2022年2月14日号・№918)

47億円の源泉所得税納税告知処分取消し
バークレイズ銀行、社債利子に係る実質所得者争う裁判で勝訴


 バークレイズ銀行東京支店が発行した社債の利子に係る実質所得者について争われている裁判で、東京地裁民事38部(鎌野真敬裁判長)は令和4年2月1日、外国法人に対する利子の支払いとして課された源泉所得税の納税告知処分を取り消し、国に約53億円(本税分約47億円)の還付金の支払いを命じた。実質所得者は処分行政庁が主張する外国子会社ではなく原告のロンドン本店であるとした納税者の主張がほぼ認められる形となった。

資金調達取引全体の仕組みや関係者の認識からロンドン本店に帰属と判断

 バークレイズ銀行東京支店は、事業資金を調達するために、ロンドンの本店に対して社債を発行し、ロンドン本店は、本件社債の取得資金を調達するために、本件社債を海外子会社であるルクセンブルク法人BCL社に譲渡し、BCL社もまた、本件社債を日本法人ITS社に譲渡した。本件は、東京支店がITS社に対し源泉徴収せずに支払った社債の利子につき、処分行政庁が、BCL社を所得税法第12条に規定する実質所得者に該当すると認定した上で、外国法人に対する利子の支払いとして、源泉所得税の各納税告知処分等を行ったことから訴訟に至った事案である。
 東京支店は、本件社債発行前は、ロンドン本店から本支店間取引としての融資取引により資金調達を行っていたが、原告において、英国税法上の外国税額控除の額の計算上、日本課税額が控除を受けられずに多額に繰り越されていることが問題となっていた。そこで、本支店間融資取引の経済的実質を変えずに、この繰越額を多く活用するため、利益連動プレミアムを利率の計算要素の一つとする社債を発行し、当該社債を最終的に英国外の第三者(日本法人ITS社)が保有する方法(本件資金調達取引・参照)を考案した。

 本件資金調達取引は、ITS社に何らの不利益が生じないようにするため、社債の購入費用は原告グループから提供されること、ITS社が当該取引に係るリスクを一切負担せず、逆に一定の手数料収入を享受できること、ITS社の会計において、本件資金調達取引がパス・スルーとして取り扱われるようにすべく、ITS社がロンドン本店から直接社債を購入するのではなく、BCL社がロンドン本店から社債を購入した上で、ITS社がBCL社に対してその購入資金の貸付けを行い、当該貸付けに係る担保として社債を譲り受ける形式にすることとした。
判断すべきは社債の帰属ではなく利子の帰属
 東京地裁は、所得税法12条(実質所得者課税の原則)の解釈を示した上で、「本件利子の実質所得者を判断するに当たっては、本件利子に係る経済的損益の帰属先のほか、本件資金調達取引全体の仕組み、本件資金調達取引に至る経緯あるいは関係者の認識、本件資金調達取引の実施状況など諸般の事情を総合的に考慮すべきものと解される。」と判示した。
 そして、「本件各契約においては、東京支店から本件ITS社口座に支払われた本件利子につき、それらに相当する金額を、ITS社はBCL社に対して担保余剰金額として、BCL社はロンドン本店に対して平準化返済金額としてそれぞれ支払う義務を負うこととされ、本件利子に係る経済的な損益は、その支払義務の名目を変化させつつも、法的な支払義務を通じて最終的にロンドン本店に帰属するものとなっている」、「本件資金調達取引は、本件本支店間融資取引の経済的実質を変えず、原告グループにおける財務効率を改善させることを目的として作り上げられたものであるところ、BCL社やITS社の財務状況には一切悪影響を与えず、一定の手数料収入のみを取得させることを不可欠の要素としていたこと、本件各契約の関係者の財務諸表においても、本件社債及び本件利子についてはロンドン本店の資産又は収益として計上され、BCL社の資産又は収益としては計上されていないことが認められるなど、本件資金調達取引が行われるに至る経緯や関係者の認識としても本件社債等に係る損益につきロンドン本店に全て帰属させることを想定していたものである。」などと判断し、「本件利子に係る収益については、実質的にロンドン本店が支配するものであり、ITS社あるいはBCL社が当該収益を支配するものではないというのが、本件資金調達取引の関係者間の真実の法律関係であると認めるのが相当であり、ロンドン本店が本件利子の実質所得者であるというべきである。」と結論づけた。
 国は、①本件ファイナンス契約において、本件社債をロンドン本店が買い戻す旨の条項等は設けられていないこと、②本件各契約において、ロンドン本店が本件社債等を自由に処分し得る権限を付与する条項はないこと、③本件ファイナンス契約においてBCL社が支払うのは平準化返済金額が平準化LIBOR金額を超過する場合のその超過額であり、本件利子相当額とはされていないこと、④ロンドン本店において、本件利子が入金される本件ITS口座の管理等を行っていた事実もないことなどから、ロンドン本店は本件利子の実質所得者ではないと主張したが、①については、本件における実質所得者を判断すべきは本件利子であって、本件社債ではない、②や④の事情は考慮要素とはなり得るものの、前記の総合的判断を覆すには足りないなどとして、すべて斥けられた。

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